Bonds〜最強勇者と最強女魔王が異世界からやってきた〜

ひがしの くも

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騎士団長クリストファーの決意

王との謁見

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訓練場では色々とあったものの、遂に王と勇者達の謁見の時間がやってきた。

王は玉座に座り、その脇にはムー大臣が立っている。

王の前には一直線に赤い絨毯がひかれており、その絨毯の両脇に私たち騎士団長を含めた家臣18名が並んで立って待っていた。

時間になると、王の間の扉は開かれ、ジークと女魔王の2人が入ってきて、ゆっくりと絨毯の上を歩き、王の元へと向かってゆく。

王の目の前には5段程の階段があり、ジークと女魔王はその階段の前で立ち止まり、膝を着いた。

王との謁見、会話はこの距離でするのがこの国での習わしだ。

謁見前に教えたことを忠実に守ってくれている。

勇者と呼ばれるジークならまだしも、魔王と呼ばれたあの女までもが王の御前で膝をついてくれたことには少々驚いた。

「まだ傷も疲れも癒えてないだろうに、呼び出してすまなかったな」

王が会話を切り出した。

「いえ。私も早くこの世界のことを知り、1日も早く元の世界に戻れる方法を探したいと思っていたので良かったです」

「戻れる方法か。わしらにもお主らが、この地に来た方法が分からぬ以上は何も力になってやれぬ。だがお主らがここに来た理由はわかるぞ」

「理由?」

ジークは軽く首をかしげた。

「今から遥か昔、この地にはかつて、人間以外にも多くの種族が存在しておった。それらの種族を片っ端から根絶やしにしていった邪悪な種族がおった。そやつらの種族の名は「龍神族」といってな、見た目は人間とあまり変わりはないのだが、ドラゴンのような強き肉体と神様のような深き叡智と魔力を持ち合わせておる最強の種族じゃ」

王の表情と声がどんどん暗くなっていくが王の話は続く

「龍神族は全ての種族を超越している自分達こそが世界を統治するに相応しいと考え、自分達の配下に入らない種族は抹殺していったのだ。世界の種族が10分の1程までに減った1200年前に、世界中の強き魔力を持った10名の賢者が集まり、龍神族は封印されたのだが、つい1年ほど前に龍神族の封印が解けてしまってな。今この世界はまた龍神族の脅威にさらされておるのじゃ。聞くところによると、世界中の至る町や王国が次々と龍神族に堕とされていっとる。龍神族の脅威に配下に入る王国や種族もいて、今や龍神族はかつての勢力を取り戻しつつある。」

ここまで話した所で王の目がキラリと輝いた。

「そんな絶望の中に現れたのがお主らが2人じゃ!!私が祈りの間において、龍神族を打ち倒す救世主の出現を祈っていたときに来たのじゃ!これを運命と言わず何と言う?お主らはこの龍神族を倒し、この地に平和をもたらす為に異世界から来たのじゃ!是非私達に力を貸してほしい。
先ほどレビンや土の騎士団達と一戦交えて、驚異的な力を見せてくれたと聞いておる。」


王のあんな晴れやかな表情は久々に見た。よほどこの2人をあてにしているのだろう。

しばらくの沈黙の後、勇者が口を開いた

「王様…。」

「なんじゃ?引き受けてくれるか?」

王は子供のようにワクワクとした表情を見せる

「申し訳ありませんが、お断りします」

その一言に一瞬にして王の間全体に激しい緊張が走った

「な…なぜじゃ?」

王の表情が突如として曇った。

「こちらの世界の事情は確かに同情します。が、私はこの地のことは何も知りませんし、この地に守りたい物があるわけでもありません。それなのにいきなり命懸けでその様な依頼を受けるほど、私はお人好しではありません」

ジークははっきりと断った。
勇者というから、正義の塊のような存在で困っている人は誰でも助けるのかと思ったが、ジークは違うらしい。
というより、ジークの言い分はもっともだ。
つい2日前に訪れた土地、会ったばかりの人達にいきなり命懸けで自分達を守ってくれと言われても、あまりに都合が良すぎる話だ。

「私もお断りします」

続けて女魔王が口を開いた。

「私も一族を束ねる王として、あなたのお気持ちはよくわかります。一族を、国を救うためであれば、どんなことにでもすがりたい気持ちも、何でもしたいという気持ちも。
ですが、私も王として1日も早く国へ帰り、民達を安心させてやりたいのです」

ジークの話を聞いて、魔族というのは凶暴で野蛮な種族かと思っていたが、その女魔王の立ち振る舞いと言葉は凛としていて、王者の風格と気品を漂わせている。

「ですが、王様」

ジークが再び話始めた

「私達もいつ帰れるか分からぬ身です。これから私は世界中を旅をして帰る方法を探すつもりです。もしその途中でこの地を好きになり、守りたいと思えたときは是非力をお貸ししますよ」

そう言うとジークと女魔王は王に背を向け、王の間の出口へ歩き始めた。

王はうな垂れてプルプルと小刻みに震えている。

ジークと女魔王の言い分はもっともだ。
しかし、我が主人である王は今この場において恥をかかされた。
これは騎士団長として見過ごすわけにはいかない。
たとえ到底敵わない相手であってもだ。

「待て!!!」

私が口にするよりも先に怒声が王の間に響いた。
この声は火の騎士団長のサランさんだ。
サランさんはこの王国最強の騎士だ。

「我が国王の願いを聞き入れてもらえぬ以上は、お前達をここから出すわけにはいかない」

サランさんはそう言い王の間の出口を塞いだ。

「やめてください。あなた方のお力にはなれませんが、傷の手当てをしていただいたことと、一宿一飯の恩はあります。戦いたくはありません」
ジークが言う。

「その口ぶり、まるで私に勝てるような言い方だな。レビンには勝ったようだが、私はレビンの様にはいかないぞ」

サランさんが紅き刀身の剣を抜き、剣先をジークへ向けた。

その瞬間にジークの表情が変わり、険しい顔つきとなった。

その時、サランの後ろの王の間の扉が勢いよく開き、1人の騎士が駆け込んできた。

「国王、大変です。城下町に龍神族のしもべ達が進入してきました。数は200名程度。龍神族はいませんが、その配下の種族とモンスターたちです。」

「なんじゃと!!レビン、クリストファー!すぐに騎士達を引き連れて城下町へ行け!サランはこのまま王宮へ残り、私達の護衛に回れ」

「はい!!」

王の指示の通り、私は自身の氷の騎士団を引き連れてて城下町へ向かった。
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