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7.理科室の動き出す標本

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図書室の一件が無事に片付き、奈緒、ケンジ、そして騒がしい鏡夜の三人は、次なる七不思議が待つ「理科室」の前に立っていた。
理科室に入ると、独特な古びた薬品の匂いが鼻をつく。棚には様々な標本やガラス瓶、フラスコが並び、天井には不気味なまでに静かな白い蛍光灯が灯っている。だが、この場で一番目を引いたのは――
「うわぁ…。」
ケンジが驚きの声をあげた。教室の奥に、大きなガラスケースがあり、中には魚や蛇などの標本が仕舞われている。その手前にはホルマリン漬けの瓶が棚の上に置かれ不気味に並んでいた。そして、標本の中でもひときわ目を引くのが、ケースの中央に置かれた人間の骨格標本だった。白くて細い骨が、暗闇の中で静かにこちらを見下ろしているかのようだ。
「これが…七不思議の一つ、『動き出す標本』。」
奈緒がつぶやくとやや警戒しながら標本の周囲を見渡すと、どこかから微かな音が聞こえた気がしたからだ。
「ゴトッ…」
「あれ?」
ケンジが声を上げた。その時、教室の中で微妙に動いているものが見えた。それは、棚の上に置かれていた小さな瓶が、まるで意思を持つかのようにカタカタと揺れているのだ。
「え…?これって…」
奈緒が近づいた瞬間、理科室に置かれていた骨格標本が、ゆっくりとガタガタと音を立てて動き始めた。標本の頭がガクッと揺れ、そしてまるで生きているかのように、こちらを見つめている。
「これは…やばい!」
奈緒は後ずさりしながら叫んだ。鏡夜は目を細めてその光景を眺め、ケンジは奈緒の後ろに隠れるように身を縮めた。
このまま放って置けばガラスケースを壊してこちらに襲い掛かってくるのではないかと嫌な想像をしてしまう。冗談じゃないと奈緒は少し焦りながらも、周囲を見回した。そして、ふと目に止まったのが標本の台座に刻まれていた文字だった。
「『荒ぶりし魂とその体を一致させよ』…?」
鏡夜は落ちかけそうになったホルマリン漬けの瓶をひょいと持ち上げると標本と瓶をまじまじと見始めた。ケンジが瓶が置いてあった棚を指さして叫んだ。
「瓶が置いてあったところ、魚のマークが書いてあるよ!」
奈緒は急いで瓶を棚の上からおろした。同様に蛙のマークが書いてある。
「もしかしたら、この瓶を元に戻せば…!」
魚、蛙、蛇、鳥、脳、心臓、手足、臓器、眼球の入った瓶をそれぞれ該当するマークの上に置いていく。
鏡夜が最後の瓶を置くと、標本が一瞬ピタリと動きを止めた。そして――
「パキパキ…」
音を立てて、骨格標本が静止した。理科室は再び静寂に包まれ、緊張していた奈緒とケンジはほっとした表情を浮かべた。その時、人体模型のあごがパカリと外れ、二人は小さく飛び跳ねた。
鏡夜は人体模型の口の中を覗くとガラリとガラス戸を動かした。それをみた二人の体がまた小さく飛び跳ねた。
人体模型の口の中に手を突っ込んだかと思うと小さな木片を拾い上げ、にんまりと笑った。「これで六つ目のピースが揃ったわね。」
奈緒は木片を受け取り、これまで集めた木片と合わせてみた。六つの木片がぴたりと重なり合い、形を成している。
「あと一つ…。」
奈緒は木片を見つめ、次なる七不思議が待ち受ける場所へ向けて、深く息を吸い込んだ。
そんな三人の背後で、再び小さな物音が聞こえた――まるで、標本が彼らを見つめているかのように。
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