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僕たちのこじれた関係②
26.side M ➍ & おまけ
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「うわっ!な、なに?!」
スヒョンの目の前で、僕は女の子みたいにひょいっと抱き上げられた。その行動は、まるでスヒョンへのマウントみたいに感じられ、驚きながらもどこか嬉しくて……。
スヒョンは目を見張り、ニヤッと口元を歪めたかと思うと手を振って僕たちを見送った。
「僕の部屋のシーツは換えたんですけど、またキャンドルの香りに気持ち悪くなるといけないので、ミンジェの部屋に行きましょうか」
ズンズンと僕の部屋に連れていかれ、ベッドに放り投げるように転がされる。その際、僕の視界を赤い物がいくつか跳ねて、僕の上にぱらぱらと落ちた。
摘まみ上げてよく見ると、造花じゃなくて本物の薔薇の花弁が、僕のベッドに散らされていた。香りも香料ではなく、天然の香りのようだ。
びっくりしてヨングを見ると、Tシャツを首から抜き去り、着痩せする逞しい裸身を堂々と晒しているところだった。今さらドキッとして目を逸らす。
「ミンジェが僕との『初めて』に、どんな理想を持っていたのか聞いてなかったので参考にしたのは女性の口コミです。貴方は、花が好きでしたよね?」
「好きだけど、いつの間に?」
「昨日の、音楽祭の受賞の時もらった花束の中に薔薇があったので、数本もらいました」
ヨングが、今から僕たちの『初めて』をやり直そうとしてくれるのはわかった。時間がない中で、素敵な演出のサプライズも嬉しい。
だけど……。
ヨングから発せられる気配は甘いものではなく、なんだかピリピリとしている。
それは多分、さっき僕がスヒョンに抱きついた事へのやり場の無い憤り。
そんな嫉妬にまみれた感情で、このまま僕を抱こうとしてるの?
「あの、あのさ?さっきの、スヒョナのことはね……」
「聞きたくないです」
「待って待って、聞いてよ!…んっ」
これ以上会話は無理なんだろうか。覆い被さってくるヨングにTシャツを脱がされると、唇を塞がれ……舌が絡まれば言葉は奪われる。
「あっ、ぁ…はぁっ、待……ぁっ」
あっという間に身体が熱くなってきて、欲情が昂って堪らなくなってくる。
チクリ、チクリと肌を刺すような痛みに胸元を見てみれば、桜の花弁の様だった痕が、薔薇の花弁のように色濃く塗り替えられていく。
お互いこんな気持ちのまま、本当の意味で愛し合えるのか。こんなんで『初めて』をやり直す意味があるのか。
何とかしてヨングに、僕の気持ちと素直に向きあってくれないか考えた。
脳内はすでに快楽に溶かされていて、アイデアは浮かばない。仕方なく、ただヨングに僕の気持ちを伝えようと、胸の辺りにあるヨングの頭を両腕で包み込みんだ。
髪を撫でながら抱き締めて、精一杯、気持ちを込める。
「……ヨング、好きだよ?……ヨング、僕の気持ちが伝わる?」
それでもしばらくは、ヨングの愛撫とは呼べない与えられる快楽に身体を捩り、正直な喘ぎが溢れてしまう。
「あっあっ、そこ、強くしないでっ」
「強くされても気持ちいいでしょう?」
「んんっ!やだ、やさしく、してよぅ」
気持ちの籠らない行為に、僕の喘ぎは啼くように細くなり目尻から生理的な涙が滲む。
「ヨン……グ!やだ、やだ!このままイかせないで……ぅ、ひっ……く!やだ……よぉ」
啜り泣く僕に気がついたヨングが、長いため息を吐いて僕の胸に顔を伏せた。しばらくそうやって耳を胸にあて、僕の鼓動を聞いているようだった。
「……ミンジェ、ごめん」
ゆっくりと顔を上げたヨングは、いつもの優しい彼に戻っていて。そのまま近づいてくる口唇を僕は笑顔で、少しだけ舌を出して迎えた。
乱れた呼吸を懸命に調える僕を、ヨングは自分の胸の上に引っ張り上げて、さっき僕がしたように髪を撫でながら、そっと抱え込む。
ヨングの心臓のリズムが、全力疾走した後のような早さで僕を打つ。まるでまだドクドクと穿たれているような気分になって、ぎゅっとしがみついた。
二人の呼吸のリズムが重なって、波に揺られる小舟のように揺蕩う心地好さ。
『初体験』の上書きが出来た事に、安堵したからか、僕の顔が綻んだ。
「ミンジェは『思春期が落ち着いたら、女性を好きだと思うかもしれない』と言いましたね。僕がミンジェの事を想う気持ちは『錯覚』かもしれないと」
「うん……」
「だから、体を繋げないって」
「……そうだね」
ヨングはずっとその言葉を守って、僕に無理強いしなかった。
「将来自分の子供が欲しいか、ずっとミンジェの隣にいたいか、考えたんです。それで……どんなに考えても、今の僕の答えは『ミンジェの隣にいたい』でした」
「……本当に僕の隣にいることを選ぶの?ヨングの子どもなら、目がくりくりしてて可愛いに決まってるのに……」
「自分の息子がミンジェに懐いたら、どっちに嫉妬するかわかりませんね」
「ふふふっ、たしかに!」
「きっと僕たちは、前世の前世の前世くらい前から一緒にいて、やっぱり離れられないんだと思うんです」
「つまり…『Destiny』なんだね?」
「僕たちは、対になっていて『運命』はずっと廻り続けているんです」
「まるで月になって、太陽に恋してる気分だよ。僕はヨングの光を受けて輝く、月だったんだ……。そうだ!僕たちが将来アーティストとして成功したら、ロケットに乗って月に行こうよ!」
「何年か後には、月へ旅行に行けるようになるかもしれないですね」
「うん、ヨング!一緒に月へ行こう!」
fin.
Never Ending
♪*°.*Happy Ever After*.°*♪
FOREVER
★このお話はフィクションです。★
Special Thanks!
side Y (おまけ)
トクン…トクン…トクン…トクン…
トクン…トクン…トクン…トクン…
ミンジェの心臓の音が、僕のささくれた心を包み込んで浮上させる。
『 ……ヨング、好きだよ?』
『 ……ヨング、僕の気持ちが伝わる?』
ミンジェの声が聴こえて、眼を開けば。
雪原のように白い無垢なミンジェの肌に、鬱血がいくつも散らされていて。
こんな風に、乱暴するみたいにしなくてもよかったのに。
僕はスヒョンとミンジェの2人が絡むと、冷静でいられなくなってしまう。
2人が大好きなのに、ミンジェの全ては僕だけのミンジェでいて欲しいと思ってしまうんだ。
僕はまだ、わがままな子どもなんだ。
こんな自分は、きっとミンジェを困らせる。
年下だけど、ミンジェを守れる存在に成りたい。
ゆっくりと顔を上げて、ミンジェにキスをした。
どこか泣きそうな表情にも見える笑顔で、少しだけ舌を出して迎えてくれた。
そうやって、いつも僕を誘って欲しい。
僕は貴方に囚われて、掴まえてくれた貴方を、もう離さないから。
「チカラを抜いて……そう、大丈夫です。奥まで……ゆっくり、ね?ほら…、僕が挿入っていくのがわかりますか?」
「あ…あぅ、…ん…」
「ミンジェの中、柔らかくて……凄く熱いです」
「……ヨング…が、熱いよ…」
「痛い、ですか?」
「い、たくない…」
「……動きますよ?」
触れたことがなかったミンジェの奥は、もう知らない感覚ではなかったけど。
「あっあっ、ヨング!僕たち、ちゃんと、繋がってる、ね!」
昨夜とは確かに違う、違うよミンジェ。
「好きっ、だよ!ヨング、あぁっ、」
僕の腕や肩にすがりつく、その腕にだって、ちゃんと意志がある。
僕を見上げる目線や、キスを求める口許も……。
ミンジェはちゃんと感じていて、全身で僕を求めて啼いている。
「ミンジェ!……愛してます!」
「あっ、ぁん、あい、してる。ヨン、グ」
その啼く声を、何度でも聞きたい……。
スヒョンの目の前で、僕は女の子みたいにひょいっと抱き上げられた。その行動は、まるでスヒョンへのマウントみたいに感じられ、驚きながらもどこか嬉しくて……。
スヒョンは目を見張り、ニヤッと口元を歪めたかと思うと手を振って僕たちを見送った。
「僕の部屋のシーツは換えたんですけど、またキャンドルの香りに気持ち悪くなるといけないので、ミンジェの部屋に行きましょうか」
ズンズンと僕の部屋に連れていかれ、ベッドに放り投げるように転がされる。その際、僕の視界を赤い物がいくつか跳ねて、僕の上にぱらぱらと落ちた。
摘まみ上げてよく見ると、造花じゃなくて本物の薔薇の花弁が、僕のベッドに散らされていた。香りも香料ではなく、天然の香りのようだ。
びっくりしてヨングを見ると、Tシャツを首から抜き去り、着痩せする逞しい裸身を堂々と晒しているところだった。今さらドキッとして目を逸らす。
「ミンジェが僕との『初めて』に、どんな理想を持っていたのか聞いてなかったので参考にしたのは女性の口コミです。貴方は、花が好きでしたよね?」
「好きだけど、いつの間に?」
「昨日の、音楽祭の受賞の時もらった花束の中に薔薇があったので、数本もらいました」
ヨングが、今から僕たちの『初めて』をやり直そうとしてくれるのはわかった。時間がない中で、素敵な演出のサプライズも嬉しい。
だけど……。
ヨングから発せられる気配は甘いものではなく、なんだかピリピリとしている。
それは多分、さっき僕がスヒョンに抱きついた事へのやり場の無い憤り。
そんな嫉妬にまみれた感情で、このまま僕を抱こうとしてるの?
「あの、あのさ?さっきの、スヒョナのことはね……」
「聞きたくないです」
「待って待って、聞いてよ!…んっ」
これ以上会話は無理なんだろうか。覆い被さってくるヨングにTシャツを脱がされると、唇を塞がれ……舌が絡まれば言葉は奪われる。
「あっ、ぁ…はぁっ、待……ぁっ」
あっという間に身体が熱くなってきて、欲情が昂って堪らなくなってくる。
チクリ、チクリと肌を刺すような痛みに胸元を見てみれば、桜の花弁の様だった痕が、薔薇の花弁のように色濃く塗り替えられていく。
お互いこんな気持ちのまま、本当の意味で愛し合えるのか。こんなんで『初めて』をやり直す意味があるのか。
何とかしてヨングに、僕の気持ちと素直に向きあってくれないか考えた。
脳内はすでに快楽に溶かされていて、アイデアは浮かばない。仕方なく、ただヨングに僕の気持ちを伝えようと、胸の辺りにあるヨングの頭を両腕で包み込みんだ。
髪を撫でながら抱き締めて、精一杯、気持ちを込める。
「……ヨング、好きだよ?……ヨング、僕の気持ちが伝わる?」
それでもしばらくは、ヨングの愛撫とは呼べない与えられる快楽に身体を捩り、正直な喘ぎが溢れてしまう。
「あっあっ、そこ、強くしないでっ」
「強くされても気持ちいいでしょう?」
「んんっ!やだ、やさしく、してよぅ」
気持ちの籠らない行為に、僕の喘ぎは啼くように細くなり目尻から生理的な涙が滲む。
「ヨン……グ!やだ、やだ!このままイかせないで……ぅ、ひっ……く!やだ……よぉ」
啜り泣く僕に気がついたヨングが、長いため息を吐いて僕の胸に顔を伏せた。しばらくそうやって耳を胸にあて、僕の鼓動を聞いているようだった。
「……ミンジェ、ごめん」
ゆっくりと顔を上げたヨングは、いつもの優しい彼に戻っていて。そのまま近づいてくる口唇を僕は笑顔で、少しだけ舌を出して迎えた。
乱れた呼吸を懸命に調える僕を、ヨングは自分の胸の上に引っ張り上げて、さっき僕がしたように髪を撫でながら、そっと抱え込む。
ヨングの心臓のリズムが、全力疾走した後のような早さで僕を打つ。まるでまだドクドクと穿たれているような気分になって、ぎゅっとしがみついた。
二人の呼吸のリズムが重なって、波に揺られる小舟のように揺蕩う心地好さ。
『初体験』の上書きが出来た事に、安堵したからか、僕の顔が綻んだ。
「ミンジェは『思春期が落ち着いたら、女性を好きだと思うかもしれない』と言いましたね。僕がミンジェの事を想う気持ちは『錯覚』かもしれないと」
「うん……」
「だから、体を繋げないって」
「……そうだね」
ヨングはずっとその言葉を守って、僕に無理強いしなかった。
「将来自分の子供が欲しいか、ずっとミンジェの隣にいたいか、考えたんです。それで……どんなに考えても、今の僕の答えは『ミンジェの隣にいたい』でした」
「……本当に僕の隣にいることを選ぶの?ヨングの子どもなら、目がくりくりしてて可愛いに決まってるのに……」
「自分の息子がミンジェに懐いたら、どっちに嫉妬するかわかりませんね」
「ふふふっ、たしかに!」
「きっと僕たちは、前世の前世の前世くらい前から一緒にいて、やっぱり離れられないんだと思うんです」
「つまり…『Destiny』なんだね?」
「僕たちは、対になっていて『運命』はずっと廻り続けているんです」
「まるで月になって、太陽に恋してる気分だよ。僕はヨングの光を受けて輝く、月だったんだ……。そうだ!僕たちが将来アーティストとして成功したら、ロケットに乗って月に行こうよ!」
「何年か後には、月へ旅行に行けるようになるかもしれないですね」
「うん、ヨング!一緒に月へ行こう!」
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Never Ending
♪*°.*Happy Ever After*.°*♪
FOREVER
★このお話はフィクションです。★
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トクン…トクン…トクン…トクン…
トクン…トクン…トクン…トクン…
ミンジェの心臓の音が、僕のささくれた心を包み込んで浮上させる。
『 ……ヨング、好きだよ?』
『 ……ヨング、僕の気持ちが伝わる?』
ミンジェの声が聴こえて、眼を開けば。
雪原のように白い無垢なミンジェの肌に、鬱血がいくつも散らされていて。
こんな風に、乱暴するみたいにしなくてもよかったのに。
僕はスヒョンとミンジェの2人が絡むと、冷静でいられなくなってしまう。
2人が大好きなのに、ミンジェの全ては僕だけのミンジェでいて欲しいと思ってしまうんだ。
僕はまだ、わがままな子どもなんだ。
こんな自分は、きっとミンジェを困らせる。
年下だけど、ミンジェを守れる存在に成りたい。
ゆっくりと顔を上げて、ミンジェにキスをした。
どこか泣きそうな表情にも見える笑顔で、少しだけ舌を出して迎えてくれた。
そうやって、いつも僕を誘って欲しい。
僕は貴方に囚われて、掴まえてくれた貴方を、もう離さないから。
「チカラを抜いて……そう、大丈夫です。奥まで……ゆっくり、ね?ほら…、僕が挿入っていくのがわかりますか?」
「あ…あぅ、…ん…」
「ミンジェの中、柔らかくて……凄く熱いです」
「……ヨング…が、熱いよ…」
「痛い、ですか?」
「い、たくない…」
「……動きますよ?」
触れたことがなかったミンジェの奥は、もう知らない感覚ではなかったけど。
「あっあっ、ヨング!僕たち、ちゃんと、繋がってる、ね!」
昨夜とは確かに違う、違うよミンジェ。
「好きっ、だよ!ヨング、あぁっ、」
僕の腕や肩にすがりつく、その腕にだって、ちゃんと意志がある。
僕を見上げる目線や、キスを求める口許も……。
ミンジェはちゃんと感じていて、全身で僕を求めて啼いている。
「ミンジェ!……愛してます!」
「あっ、ぁん、あい、してる。ヨン、グ」
その啼く声を、何度でも聞きたい……。
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