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僕たちのこじれた関係②
25.side M ❸
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優しくて大きな手に背中を擦ってもらうと、不思議と筋肉の強張りがほぐれて疲れが和らいでしまう。
ウサギみたいにくりっとした目と僕の目が合うと、お互いくしゃっと目尻が下がって優しい顔になっている。見つめ合うと照れるけど、なんだかとっても嬉しいんだ。
僕の拘りやダンスの練習にも、根気よく付き合ってくれる。そして自分にも厳しくて、妥協しない。いつの間にか、練習室に二人だけで残る事が増えていった。
真面目な一面があるかと思えば僕と一緒にふざけてくれて、大騒ぎして楽しくて仕方なくて。
僕の気持ちを尊重してくれて、自分の純潔を捧げてくれたヨング。
約束は守れず、でも結果的に僕たちは身も心も寄り添って、恋人になれたんだよね?
ケンカしているうちに、自分の呼気や身体がお酒臭くて、そんな僕がヨングのベッドにいる事が申し訳なくなって、シャワーを浴びる口実で逃げ出した。
「そういえば、キスマーク付けたって……」
ヨングが着せてくれたTシャツを脱いで、何処にキスマークがあるか確認するつもりで鏡を覗いた。
「え?1個だけじゃ、ない?…1、2、3、…………何個?」
1日経てば消えてしまいそうな、桜の花弁みたいな痕がいくつもあった。強く吸って刻みたかっただろう所有印は、躊躇いと思いやりと…喜びが伝わってくるようで、僕の中の切なさに拍車がかかる。
本当に、昨夜の事を鮮明に覚えていないことが、悔やまれてならない。
ヨングは、この痕を付けるために何度も愛を囁いてくれたに違いないのだ。途中からは僕が恥ずかしがる様を、面白いと思ったかも知れない。
『ミンジェ……』
耳に残る、僕の名前を呼ぶ声が好きだ。
『ミンジェ?…こっち向いて?』
『ミンジェ…、恥ずかしい?』
『ミンジェ……とても…綺麗です…』
『ミンジェ?……好き…』
記憶は曖昧でも、ヨングの声は残っていた。シャワーを浴びたら、余韻が流れてしまうような寂しさがあったけど、抱き合った事はプラスであって何も後悔なんてない。
僕は、ヨングと『初体験』したんだ……。
一線だった『成人』の壁は崩れ、僕たちはこれから何度だって愛し合えるんだ……!
結論に辿り着いたら、後はもう嬉しさが込み上げてきて誰かに話したくてウズウズして。
こんな時はスヒョンを捕まえて、聞いてもらわないと!
「スヒョナ~!聞いて!あのねっ!」
さっさとシャワーを終わらせて、勢いで駆け込んだスヒョンの部屋に、本人は居なくてがっかりした。
「……キッチンにでも行ったのかな?」
そこでキッチンに向かうと、ぼーっと立っているスヒョンを見つけ、僕はおどかそうと後ろから飛びついた!
「スヒョナ~!おっはよう~!」
スヒョンは全然驚かず、ニヤッと笑いながら振り返った。
「おはよ。二日酔いなんだって?大丈夫?」
「え?誰から?」
「ヨング」
その瞬間、スヒョンが僕の頬にキスをした。それ自体は大したことではない。けれど、最悪のタイミングだった。僕の視界へヨングの姿が飛び込んできたからだ。
ヤバい!と思った僕は、スヒョンを突き飛ばすようにして離れる。
「あ、あれ?え?ヨング、いたんだ…」
なんでここに?!
ヨングは水のペットボトルを手に持って、ゆっくり立ち上がった。
うぅぅ…。ヨングが居たら僕の『初体験』話せないじゃんか!かといって、スヒョンを部屋に引っ張っていくわけにもいかない。
「シャワーで少しはスッキリしましたか?」
僕の一瞬の戸惑いを、ヨングが誤解したのがわかった。ヨングのいつもは可愛い兎の瞳が、メラッと焦れたのが見えた。
「う、うん。スッキリした…よ?」
「じゃあ、今からでも大丈夫ですね?今日のスケジュールはヒョン達だけですからね?」
「い、今から…って?何を?」
「スヒョンィヒョン、ヒョンのスケジュールは?」
「……家に帰る。夜は宿舎に戻るけど。夜ご飯にキンパ作って貰ってくるよ」
「わかりました。ありがとうございます。よいしょっと!」
" え?もしかして夜までヨングと2人きりってこと?!それで今から?!"
問答無用で抱き上げられて、ヨングの首に掴まったままスヒョンを振り返る。
スヒョンは肩を竦めて、僕たちを見送っていた。その表情は(苦笑)の形に歪んでいて、僕の耳に呟きが届いた。
「相変わらず……こじれてる」
ウサギみたいにくりっとした目と僕の目が合うと、お互いくしゃっと目尻が下がって優しい顔になっている。見つめ合うと照れるけど、なんだかとっても嬉しいんだ。
僕の拘りやダンスの練習にも、根気よく付き合ってくれる。そして自分にも厳しくて、妥協しない。いつの間にか、練習室に二人だけで残る事が増えていった。
真面目な一面があるかと思えば僕と一緒にふざけてくれて、大騒ぎして楽しくて仕方なくて。
僕の気持ちを尊重してくれて、自分の純潔を捧げてくれたヨング。
約束は守れず、でも結果的に僕たちは身も心も寄り添って、恋人になれたんだよね?
ケンカしているうちに、自分の呼気や身体がお酒臭くて、そんな僕がヨングのベッドにいる事が申し訳なくなって、シャワーを浴びる口実で逃げ出した。
「そういえば、キスマーク付けたって……」
ヨングが着せてくれたTシャツを脱いで、何処にキスマークがあるか確認するつもりで鏡を覗いた。
「え?1個だけじゃ、ない?…1、2、3、…………何個?」
1日経てば消えてしまいそうな、桜の花弁みたいな痕がいくつもあった。強く吸って刻みたかっただろう所有印は、躊躇いと思いやりと…喜びが伝わってくるようで、僕の中の切なさに拍車がかかる。
本当に、昨夜の事を鮮明に覚えていないことが、悔やまれてならない。
ヨングは、この痕を付けるために何度も愛を囁いてくれたに違いないのだ。途中からは僕が恥ずかしがる様を、面白いと思ったかも知れない。
『ミンジェ……』
耳に残る、僕の名前を呼ぶ声が好きだ。
『ミンジェ?…こっち向いて?』
『ミンジェ…、恥ずかしい?』
『ミンジェ……とても…綺麗です…』
『ミンジェ?……好き…』
記憶は曖昧でも、ヨングの声は残っていた。シャワーを浴びたら、余韻が流れてしまうような寂しさがあったけど、抱き合った事はプラスであって何も後悔なんてない。
僕は、ヨングと『初体験』したんだ……。
一線だった『成人』の壁は崩れ、僕たちはこれから何度だって愛し合えるんだ……!
結論に辿り着いたら、後はもう嬉しさが込み上げてきて誰かに話したくてウズウズして。
こんな時はスヒョンを捕まえて、聞いてもらわないと!
「スヒョナ~!聞いて!あのねっ!」
さっさとシャワーを終わらせて、勢いで駆け込んだスヒョンの部屋に、本人は居なくてがっかりした。
「……キッチンにでも行ったのかな?」
そこでキッチンに向かうと、ぼーっと立っているスヒョンを見つけ、僕はおどかそうと後ろから飛びついた!
「スヒョナ~!おっはよう~!」
スヒョンは全然驚かず、ニヤッと笑いながら振り返った。
「おはよ。二日酔いなんだって?大丈夫?」
「え?誰から?」
「ヨング」
その瞬間、スヒョンが僕の頬にキスをした。それ自体は大したことではない。けれど、最悪のタイミングだった。僕の視界へヨングの姿が飛び込んできたからだ。
ヤバい!と思った僕は、スヒョンを突き飛ばすようにして離れる。
「あ、あれ?え?ヨング、いたんだ…」
なんでここに?!
ヨングは水のペットボトルを手に持って、ゆっくり立ち上がった。
うぅぅ…。ヨングが居たら僕の『初体験』話せないじゃんか!かといって、スヒョンを部屋に引っ張っていくわけにもいかない。
「シャワーで少しはスッキリしましたか?」
僕の一瞬の戸惑いを、ヨングが誤解したのがわかった。ヨングのいつもは可愛い兎の瞳が、メラッと焦れたのが見えた。
「う、うん。スッキリした…よ?」
「じゃあ、今からでも大丈夫ですね?今日のスケジュールはヒョン達だけですからね?」
「い、今から…って?何を?」
「スヒョンィヒョン、ヒョンのスケジュールは?」
「……家に帰る。夜は宿舎に戻るけど。夜ご飯にキンパ作って貰ってくるよ」
「わかりました。ありがとうございます。よいしょっと!」
" え?もしかして夜までヨングと2人きりってこと?!それで今から?!"
問答無用で抱き上げられて、ヨングの首に掴まったままスヒョンを振り返る。
スヒョンは肩を竦めて、僕たちを見送っていた。その表情は(苦笑)の形に歪んでいて、僕の耳に呟きが届いた。
「相変わらず……こじれてる」
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