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僕たちのこじれた関係②
19. side Y ❶
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僕たちのグループの人気は、デビュー当初こそ中々ランキングの上位に入れなかったけれど、最近はかなりの注目株になりつつある。それと同時に、音楽番組で共演するガールズグループに、声をかけられる事が多くなっていた。
お互い事務所の監視下に置かれていて、顔を合わせるのはこういう歌謡番組かテレビ局の音楽祭しかチャンスはない。
皆がステージに集中しているような時、アーティストが座っている場所は意外と暗いから、いきなり距離を詰められて『あとで連絡先教えて?』って耳元で囁かれる。
振り返ると、大手事務所に所属しているが、名前は曖昧な女の子。艶やかに微笑む紅い口唇に、造られた、大きな眼。
僕は微笑み、手を合わせ軽く会釈。
“ ごめんなさい ”
こういう事は出来ればその場で、早めに対処しないとキリがない。
その日も、僕たちは艶やかな女の子たちの視線の的になっていて、僕は割りと警戒中だった。何を警戒していたかというと、もちろんミンジェだ。
最近僕たちは仲の良さを事務所に注意され、あんまりくっつくなと、僕とミンジェの座る席の間にはスヒョンとナムジュが配されている。つまり、ミンジェのガードががら空きになっていて、さっきから観察しているだけでも3人の女の子が入れ代わり立ち代わり…。
ミンジェは根が優しいからか、こういう事を上手く対処出来ないらしく、恥ずかしげな困った顔で何かを話していて。最後には、可愛らしく手を振って別れる。
そしてミンジェはナムジュに何か囁かれ、真顔になったり急に笑い出したり。その感情の起伏を共有したいのに、届きそうで届かない。
「……ヨング。顔、怖いぞ」
スヒョンに、膝をパシン!と叩かれた。
「だ、だってミンジェ…ヒョンがさっきから女の子に何回も話しかけられていて!僕が隣なら肩を抱いて牽制出来るのに…!」
「……………だから離されてるんだろ」
僕がジリジリしながらスヒョンの陰からミンジェを見詰めていると、ミンジェがパッと顔を上げ僕を見てにっこりした。
「ミ…ミンジェ…!」
僕も笑い返そうとしたのに、次の瞬間ミンジェはパッと振り返ってしまった。今度は確か僕と同い年の、背の高い男がミンジェに近づく。
「あ、あぁあーっ!」
「……なに。うるさいよ」
「近い!近いんですよ!あいつが!」
スヒョンはミンジェの方を向いて、それから僕を見て、
「お前たちだってあんなもんだぞ?」
「だから問題なんですよ!!」
僕はギリギリとスヒョンの衣装を握り締めた。背の高い男とミンジェの距離感は、僕とミンジェだけのパーソナルスペースで、あの男に侵略されて良いものではない。
ミンジェは、ビックリして引いてるのにあいつはさらに距離を詰める。ナムジュが気がついて、ミンジェの肩を抱き寄せた。
抱き寄せるのが、なんで僕では駄目なのだろう…。
「……………もの凄く、複雑な気分です」
「ぶはっ!あはははっ!ちょっヨングッ!あんまり笑わせないで、あぁあ~おかしぃ~!」
涙目の僕の顔を見て、お腹を押さえて笑うスヒョンの声が聞こえたのか、ナムジュ越しにミンジェが不思議そうに見てくる。それだって無意識にナムジュにべったりくっついている。
「くッ!」
「ひぃぃ~っ!」
「笑い過ぎですよ、スヒョンィヒョン!」
僕は引きつった笑顔で、スヒョンの背中を叩いた。
長丁場の音楽祭もあと少しだったけど、トイレ休憩で僕はミンジェと一緒に席を立った。歩きながら、声をかける。
「ミンジェ、今日モテモテでしたね」
「ん?あぁ!なんか今日は声かけてくる人が多かったね!」
"今日のミンジェの雰囲気がカッコ良すぎるからでしょ!"
「ヨングだって!スヒョナと何を話してたの?なんか楽しそうだった~!」
ん?少し口唇尖ってる?嫉妬してくれてるのかと思うと、さっきまでのささくれた心も穏やかになってくる。
僕が立ち止まりさりげなく辺りを見回すと、ミンジェも立ち止まり不思議そうな顔で僕を見上げた。誰もいない事を確認すると、ちゅっと素早くキスした。
ピシッと固まるミンジェ。ゆっくり俯いた頬が、少し遅れて桜色に染まる。
「こんなとこで…ダメだよ…」と呟き、僕の胸を両手で押した。
甘い空気を、振り切るように先に歩き出したミンジェに、慌てて着いていく。機嫌はまだ直っていないようだ。ふ~ん?どうしようかなぁ。
「……さっきさ、ヨングに話しかけてきた女の子、可愛かったね…」
少しトーンが下がったのは、気のせいではない。今までの浮かれた気持ちに急に影が差して、何日か前に言われた事を思い出した…。
『僕じゃなくて!普通の女の子と恋愛した方が良かったんだよ!』
あの時、それ以上話題にするのは怖くて避けてきた。でも、ミンジェの中では全く解決してなくて、特に今日みたいな事があるとまた浮き彫りになるのだろう。
「気になりますか?ミンジェの方が、何倍も可愛いのに」
そう。僕にはミンジェ以外目に入っていないのに、それをわかってもらうには時間がかかるようだ。
お互い事務所の監視下に置かれていて、顔を合わせるのはこういう歌謡番組かテレビ局の音楽祭しかチャンスはない。
皆がステージに集中しているような時、アーティストが座っている場所は意外と暗いから、いきなり距離を詰められて『あとで連絡先教えて?』って耳元で囁かれる。
振り返ると、大手事務所に所属しているが、名前は曖昧な女の子。艶やかに微笑む紅い口唇に、造られた、大きな眼。
僕は微笑み、手を合わせ軽く会釈。
“ ごめんなさい ”
こういう事は出来ればその場で、早めに対処しないとキリがない。
その日も、僕たちは艶やかな女の子たちの視線の的になっていて、僕は割りと警戒中だった。何を警戒していたかというと、もちろんミンジェだ。
最近僕たちは仲の良さを事務所に注意され、あんまりくっつくなと、僕とミンジェの座る席の間にはスヒョンとナムジュが配されている。つまり、ミンジェのガードががら空きになっていて、さっきから観察しているだけでも3人の女の子が入れ代わり立ち代わり…。
ミンジェは根が優しいからか、こういう事を上手く対処出来ないらしく、恥ずかしげな困った顔で何かを話していて。最後には、可愛らしく手を振って別れる。
そしてミンジェはナムジュに何か囁かれ、真顔になったり急に笑い出したり。その感情の起伏を共有したいのに、届きそうで届かない。
「……ヨング。顔、怖いぞ」
スヒョンに、膝をパシン!と叩かれた。
「だ、だってミンジェ…ヒョンがさっきから女の子に何回も話しかけられていて!僕が隣なら肩を抱いて牽制出来るのに…!」
「……………だから離されてるんだろ」
僕がジリジリしながらスヒョンの陰からミンジェを見詰めていると、ミンジェがパッと顔を上げ僕を見てにっこりした。
「ミ…ミンジェ…!」
僕も笑い返そうとしたのに、次の瞬間ミンジェはパッと振り返ってしまった。今度は確か僕と同い年の、背の高い男がミンジェに近づく。
「あ、あぁあーっ!」
「……なに。うるさいよ」
「近い!近いんですよ!あいつが!」
スヒョンはミンジェの方を向いて、それから僕を見て、
「お前たちだってあんなもんだぞ?」
「だから問題なんですよ!!」
僕はギリギリとスヒョンの衣装を握り締めた。背の高い男とミンジェの距離感は、僕とミンジェだけのパーソナルスペースで、あの男に侵略されて良いものではない。
ミンジェは、ビックリして引いてるのにあいつはさらに距離を詰める。ナムジュが気がついて、ミンジェの肩を抱き寄せた。
抱き寄せるのが、なんで僕では駄目なのだろう…。
「……………もの凄く、複雑な気分です」
「ぶはっ!あはははっ!ちょっヨングッ!あんまり笑わせないで、あぁあ~おかしぃ~!」
涙目の僕の顔を見て、お腹を押さえて笑うスヒョンの声が聞こえたのか、ナムジュ越しにミンジェが不思議そうに見てくる。それだって無意識にナムジュにべったりくっついている。
「くッ!」
「ひぃぃ~っ!」
「笑い過ぎですよ、スヒョンィヒョン!」
僕は引きつった笑顔で、スヒョンの背中を叩いた。
長丁場の音楽祭もあと少しだったけど、トイレ休憩で僕はミンジェと一緒に席を立った。歩きながら、声をかける。
「ミンジェ、今日モテモテでしたね」
「ん?あぁ!なんか今日は声かけてくる人が多かったね!」
"今日のミンジェの雰囲気がカッコ良すぎるからでしょ!"
「ヨングだって!スヒョナと何を話してたの?なんか楽しそうだった~!」
ん?少し口唇尖ってる?嫉妬してくれてるのかと思うと、さっきまでのささくれた心も穏やかになってくる。
僕が立ち止まりさりげなく辺りを見回すと、ミンジェも立ち止まり不思議そうな顔で僕を見上げた。誰もいない事を確認すると、ちゅっと素早くキスした。
ピシッと固まるミンジェ。ゆっくり俯いた頬が、少し遅れて桜色に染まる。
「こんなとこで…ダメだよ…」と呟き、僕の胸を両手で押した。
甘い空気を、振り切るように先に歩き出したミンジェに、慌てて着いていく。機嫌はまだ直っていないようだ。ふ~ん?どうしようかなぁ。
「……さっきさ、ヨングに話しかけてきた女の子、可愛かったね…」
少しトーンが下がったのは、気のせいではない。今までの浮かれた気持ちに急に影が差して、何日か前に言われた事を思い出した…。
『僕じゃなくて!普通の女の子と恋愛した方が良かったんだよ!』
あの時、それ以上話題にするのは怖くて避けてきた。でも、ミンジェの中では全く解決してなくて、特に今日みたいな事があるとまた浮き彫りになるのだろう。
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