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僕たちのこじれた関係①
16. side Y ⑧
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「ミンジェって呼んでもいいですか?『ヒョン』もいいんだけど名前で呼びたいです」
「ん、いいよ…」
「ミンジェ…」
貴方の名前を声にするだけで、僕の鼓動が早くなる。
“ミンジェ、ミンジェ、ミンジェ … ”
声に出さなくたって、呪文のように唱えれば、胸の奥から『好き』が溢れてくる。
「グゥ…?」
「は、反則です!」
甘い吐息と共に僕の愛称が囁かれ、頬も耳も熱くなって。もう…、理性が溶けそう…。
「ってね、ここまでは良かったんです。そのあとなんか夢中になっちゃって…。だって凄く可愛いんです、ミンジェ…ヒョン」
僕は駆け込み避難場所として、メンバーのスヒョンの部屋に時々来る。
スヒョンから漂う、不思議な空気に触れると何故か冷静になれるので、ミンジェの事で頭に血が上った時などつい来てしまう。
「……それでガッついて?放置してきたと」
「だって!あのまま一緒にいたら理性も何も無くなって、きっとミンジェ…ヒョンを傷つけてしまうと思って…」
「今でも放置されて充分傷ついてると思うけど?」
「えぇえ?どうしよう?」
僕の部屋とは違ったアロマキャンドルの香りが部屋に充満していて、そういえば最近ミンジェからこの香りがしないなと安心した。
ミンジェからスヒョンの残り香を感じると、僕の心の黒いシミが触手を伸ばして胸を締め付け、持て余した感情をミンジェにぶつけてしまいそうになるから。
“ ミンジェ、可愛かった”
眠る前のルーティーン。今日は初めて招いた僕の部屋で、約束していたアレコレを試した。
アレコレとは、ミンジェの性感帯がどう機能しているかの確認というか。つまりは僕がミンジェを触りたいだけなんだけど。
結果、予想以上の感度に僕の理性は飛びそうになり、調子に乗って一線を越えてしまいそうになった。
思い出すと身体が火照ってくる。
『成人するまで身体を繋がない』の約束をしてもう1ヶ月以上経つ。
二人で眠る時にミンジェのベッドを使うのは、少しでもミンジェが安心して休めるように。というのは口実で、僕がミンジェの匂いを感じていたいからかもしれない。彼から匂いたつ、蜂蜜みたいな香りが好きだ。
僕の部屋は、ルームフレグランスの人工的な香りに満ちている。香水さえ付けないミンジェは、きっと香りに酔って眠れない。
その部屋に、置いてきてしまった。
「どうして、最後までさせてくれないんでしょう?」
「ヨングが大事だからだろ」
「大事…?」
「自分の気持ちより、お前を大事にしてるんだろ。あんなに好き好き言われてわからないの」
「好きだったら、繋がりたいですよ…」
「『男同士の恋愛』に誘ったのは自分だと思って、後悔しないように最後の一線を守ってるんじゃないか」
「だから、もう後悔なんてしませんよ!ちゃんと僕だってミンジェヒョンの気持ちを受け止めて、だからこそ全てが欲しいのに!」
「こじれてるな?お前たちって、ほんとにこじれてる」
スヒョンは呆れた顔をして、もう寝るから出てけ、お前はここで寝るな、と僕を部屋から追い出した。
恐る恐る部屋に戻ると、丸めたパジャマを握り締め、ベッドの上でミンジェが顔を擦っていた。もしかして、泣いていた?
顔を覗き込もうと身体を傾けた瞬間、クッションが飛んできて頬を掠めた。
「ぼ、僕をひとりにして!何処に行ってたんだよ!」
「ごめんなさい、ちょっと頭を冷やしてきたんです」
予想外に怒っている。このままではまずいと慌てて近づいて、ミンジェを抱き寄せようとした。けれど、腕を払われパジャマの上着を投げつけられる。
「この匂い!スヒョンのとこじゃん!なんなんだよ!何かあるとすぐスヒョンにばっかり!」
これには僕もカチンと来て、思わず口答えしてしまった。
「ミンジェだってすぐ『スヒョナ~』じゃないですか!」
「スヒョンは親友だもん!」
ミンジェの眼が、涙で盛り上がった。
「どうせ僕が悪いんでしょ!」
「え?」
涙は瞬きと共に、顎先まで伝う。その後に言われた言葉は僕の胸に刺さり、同時に、思っていたより深刻な問題なのだと改めて知ることになる…。
「ん、いいよ…」
「ミンジェ…」
貴方の名前を声にするだけで、僕の鼓動が早くなる。
“ミンジェ、ミンジェ、ミンジェ … ”
声に出さなくたって、呪文のように唱えれば、胸の奥から『好き』が溢れてくる。
「グゥ…?」
「は、反則です!」
甘い吐息と共に僕の愛称が囁かれ、頬も耳も熱くなって。もう…、理性が溶けそう…。
「ってね、ここまでは良かったんです。そのあとなんか夢中になっちゃって…。だって凄く可愛いんです、ミンジェ…ヒョン」
僕は駆け込み避難場所として、メンバーのスヒョンの部屋に時々来る。
スヒョンから漂う、不思議な空気に触れると何故か冷静になれるので、ミンジェの事で頭に血が上った時などつい来てしまう。
「……それでガッついて?放置してきたと」
「だって!あのまま一緒にいたら理性も何も無くなって、きっとミンジェ…ヒョンを傷つけてしまうと思って…」
「今でも放置されて充分傷ついてると思うけど?」
「えぇえ?どうしよう?」
僕の部屋とは違ったアロマキャンドルの香りが部屋に充満していて、そういえば最近ミンジェからこの香りがしないなと安心した。
ミンジェからスヒョンの残り香を感じると、僕の心の黒いシミが触手を伸ばして胸を締め付け、持て余した感情をミンジェにぶつけてしまいそうになるから。
“ ミンジェ、可愛かった”
眠る前のルーティーン。今日は初めて招いた僕の部屋で、約束していたアレコレを試した。
アレコレとは、ミンジェの性感帯がどう機能しているかの確認というか。つまりは僕がミンジェを触りたいだけなんだけど。
結果、予想以上の感度に僕の理性は飛びそうになり、調子に乗って一線を越えてしまいそうになった。
思い出すと身体が火照ってくる。
『成人するまで身体を繋がない』の約束をしてもう1ヶ月以上経つ。
二人で眠る時にミンジェのベッドを使うのは、少しでもミンジェが安心して休めるように。というのは口実で、僕がミンジェの匂いを感じていたいからかもしれない。彼から匂いたつ、蜂蜜みたいな香りが好きだ。
僕の部屋は、ルームフレグランスの人工的な香りに満ちている。香水さえ付けないミンジェは、きっと香りに酔って眠れない。
その部屋に、置いてきてしまった。
「どうして、最後までさせてくれないんでしょう?」
「ヨングが大事だからだろ」
「大事…?」
「自分の気持ちより、お前を大事にしてるんだろ。あんなに好き好き言われてわからないの」
「好きだったら、繋がりたいですよ…」
「『男同士の恋愛』に誘ったのは自分だと思って、後悔しないように最後の一線を守ってるんじゃないか」
「だから、もう後悔なんてしませんよ!ちゃんと僕だってミンジェヒョンの気持ちを受け止めて、だからこそ全てが欲しいのに!」
「こじれてるな?お前たちって、ほんとにこじれてる」
スヒョンは呆れた顔をして、もう寝るから出てけ、お前はここで寝るな、と僕を部屋から追い出した。
恐る恐る部屋に戻ると、丸めたパジャマを握り締め、ベッドの上でミンジェが顔を擦っていた。もしかして、泣いていた?
顔を覗き込もうと身体を傾けた瞬間、クッションが飛んできて頬を掠めた。
「ぼ、僕をひとりにして!何処に行ってたんだよ!」
「ごめんなさい、ちょっと頭を冷やしてきたんです」
予想外に怒っている。このままではまずいと慌てて近づいて、ミンジェを抱き寄せようとした。けれど、腕を払われパジャマの上着を投げつけられる。
「この匂い!スヒョンのとこじゃん!なんなんだよ!何かあるとすぐスヒョンにばっかり!」
これには僕もカチンと来て、思わず口答えしてしまった。
「ミンジェだってすぐ『スヒョナ~』じゃないですか!」
「スヒョンは親友だもん!」
ミンジェの眼が、涙で盛り上がった。
「どうせ僕が悪いんでしょ!」
「え?」
涙は瞬きと共に、顎先まで伝う。その後に言われた言葉は僕の胸に刺さり、同時に、思っていたより深刻な問題なのだと改めて知ることになる…。
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