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僕たちのこじれた関係①
12. side M ⑦
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「ヨング!こらっ!起きろっ!ヨングーッ!!」
翌朝、もっと甘い雰囲気で起きるのかなって、想像していた。確かにヨングの腕やら脚は、僕の身体に絡みついていて離れないし、抱き締められていると言えばそうなんだろうけど。
でもこのままでは、ヨングが学校に遅刻してしまう。
「ヨングーッ!」
「……起きてます…ミンジェヒョン、うるさい」
「起きてるなら早く言ってよ!恥ずかしいだろ!」
僕はプンプン怒って、ヨングの腕が緩んだ瞬間振り払って起き上がった。けれど、ほとんど同時に起き上がったヨングに腕を引かれる。
「……キス」
「は?」
「おはようのキスして?」
「は。何言って…ふ、あはは!」
急に脇をくすぐられて、ベッドに倒れ込む。ヨングが僕に馬乗りになって、さらにくすぐってくる。
「あははっ!くすぐったいって!やめ…、」
頬に柔らかいものが触れて、僕は抵抗をぴたりと止めた。今のはもしかして…。
「ミンジェヒョン、まだ怒ってる?」
「お、おこ…ってない」
「良かった……。あ、支度しなきゃ。ミンジェヒョン!またね!」
ヨングは、颯爽と部屋を出ていった。
“ なんだあいつ!生意気っ!”
至近距離、耳元で聞いた寝起きの掠れた声が、あんなにカッコいいなんてズルい。
ヨングは学校へ行き、僕はダイニングでグループの長兄ソクの作っている朝食を、スヒョンと一緒に食べていた。
「え?昨夜そんな事があったの?!まあでも、仲直り出来て良かったな」
「はい」
スヒョンと顔を見合わせながら、ソクに僕たちのこじれた関係をかい摘まんで話した。
「まあ、でも、アレだ。仲が良いのはいいんだけど…良すぎない程度に。ミンジェは成人して間もないしヨングは高校生だし」
「ん?仲が良すぎるとダメなの?どういうこと?」
「その調子なら、俺の心配は杞憂だな。スヒョンも気をつけて見てやって」
「……はい」
ソクとスヒョンは、僕を見て微妙な笑顔でウンウンと頷いた。二人にしかわからないような、僕をお子さま扱いするようなニュアンスに、カチンとくる。
その後僕たちは事務所に出勤して、スヒョンには今夜もヨングが部屋に来るから部屋には行かないと話す。
「つまんないな」と酷くガッカリした顔をされて、「じゃあ3人で遊ぼ?」と言ったら、今度は困った顔。
「ヨングは多分、ミンジェと2人で遊びたいんじゃないかな…。俺は、また今度で」
そう言って遠慮するので、そうなのかな?と思いつつ、ヨングが学校を終えて練習室に来るのを、ドキドキしながら待っていた。
全体での練習を終えて休憩中、僕はヨングに近づいてこの後の個人練習をどうするか訊いてみた。
「僕、今日はボイトレの日です。終わったらヒョンの練習室行きますね」
「ボイトレかぁ…。あぁ~、僕さ…、上京してくるまで、ちゃんと歌を歌った事がなくて…。ボイストレーニングとか学校の授業でちょっとやった位で…」
「そうなんだ?」
「だからヨングの歌!凄く上手いなって、カッコいいなって!ずっと思ってた… どうしたらそんな風に素敵に歌えるの?」
「僕はミンジェヒョンの声…好きですよ」
気がつくと、ヨングは照れ臭そうにしていた。僕は『声が好き』って言って貰った事が、嬉しくて…。なんだろう、すごくやる気が出てきた。
「ほんとに?わぁ、僕、もっと上手く歌えるように頑張る!」
ポジティブな気持ちは原動力だ。
今日は一人での練習も、歌いながら踊るのが楽しくて、あっという間に時間が過ぎた。
よほど集中していたのか、部屋の角に座って僕を見てるヨングに気がつかなかった。
「あれっ?ヨングゥ来てたの?」
振り返って近づく。ヨングは僕に向けていた携帯を慌てて下ろす。
“ スヒョナが言ってた『盗撮』?ww”
僕はニヤニヤして、揶揄うように言った。
「今僕を撮ってた?見せてよ?」
「イヤです、ダメです」
携帯を奪おうとして、しばらく攻防が続いたけれど、両手を握り込まれてしまう。
振りほどこうとした。でも僕の手は小さくて、ヨングの大きな手に握り込まれたら引き抜くことも出来ない。
手はゆっくりと降ろされて、ヨングの手が離れそうになってから、今度は指の間に指を差し込み軽く握られる。
“ あ、コレカップル繋ぎっていう…?”
「ミンジェヒョン…」
僕が「えっ?」と振り仰いだら、ヨングの顔が迫ってきて、おでこがちゅっと鳴った。
" 今の、なに?"
「今日はもう、帰りましょう?」
「え?…あ、うん」
何故か急に甘くなった空気に耐えられなくなり、もう帰ろうと言われて素直に帰る気になってしまった。
そのままヨングと練習室の片付けをして、荷物を持ち、忘れ物が無いか確認すると手を繋いで出口に向かった。
ヨングが照明を消して真っ暗になると、僕の口唇に柔らかいものが触れた。数回、啄むようにして離れる。
「………」
「ごめんなさい…。我慢できなくて…」
暗くて、顔が見えなくて良かった。
ファーストキスに動揺するなんて、見られたら死ぬほど恥ずかしい。
翌朝、もっと甘い雰囲気で起きるのかなって、想像していた。確かにヨングの腕やら脚は、僕の身体に絡みついていて離れないし、抱き締められていると言えばそうなんだろうけど。
でもこのままでは、ヨングが学校に遅刻してしまう。
「ヨングーッ!」
「……起きてます…ミンジェヒョン、うるさい」
「起きてるなら早く言ってよ!恥ずかしいだろ!」
僕はプンプン怒って、ヨングの腕が緩んだ瞬間振り払って起き上がった。けれど、ほとんど同時に起き上がったヨングに腕を引かれる。
「……キス」
「は?」
「おはようのキスして?」
「は。何言って…ふ、あはは!」
急に脇をくすぐられて、ベッドに倒れ込む。ヨングが僕に馬乗りになって、さらにくすぐってくる。
「あははっ!くすぐったいって!やめ…、」
頬に柔らかいものが触れて、僕は抵抗をぴたりと止めた。今のはもしかして…。
「ミンジェヒョン、まだ怒ってる?」
「お、おこ…ってない」
「良かった……。あ、支度しなきゃ。ミンジェヒョン!またね!」
ヨングは、颯爽と部屋を出ていった。
“ なんだあいつ!生意気っ!”
至近距離、耳元で聞いた寝起きの掠れた声が、あんなにカッコいいなんてズルい。
ヨングは学校へ行き、僕はダイニングでグループの長兄ソクの作っている朝食を、スヒョンと一緒に食べていた。
「え?昨夜そんな事があったの?!まあでも、仲直り出来て良かったな」
「はい」
スヒョンと顔を見合わせながら、ソクに僕たちのこじれた関係をかい摘まんで話した。
「まあ、でも、アレだ。仲が良いのはいいんだけど…良すぎない程度に。ミンジェは成人して間もないしヨングは高校生だし」
「ん?仲が良すぎるとダメなの?どういうこと?」
「その調子なら、俺の心配は杞憂だな。スヒョンも気をつけて見てやって」
「……はい」
ソクとスヒョンは、僕を見て微妙な笑顔でウンウンと頷いた。二人にしかわからないような、僕をお子さま扱いするようなニュアンスに、カチンとくる。
その後僕たちは事務所に出勤して、スヒョンには今夜もヨングが部屋に来るから部屋には行かないと話す。
「つまんないな」と酷くガッカリした顔をされて、「じゃあ3人で遊ぼ?」と言ったら、今度は困った顔。
「ヨングは多分、ミンジェと2人で遊びたいんじゃないかな…。俺は、また今度で」
そう言って遠慮するので、そうなのかな?と思いつつ、ヨングが学校を終えて練習室に来るのを、ドキドキしながら待っていた。
全体での練習を終えて休憩中、僕はヨングに近づいてこの後の個人練習をどうするか訊いてみた。
「僕、今日はボイトレの日です。終わったらヒョンの練習室行きますね」
「ボイトレかぁ…。あぁ~、僕さ…、上京してくるまで、ちゃんと歌を歌った事がなくて…。ボイストレーニングとか学校の授業でちょっとやった位で…」
「そうなんだ?」
「だからヨングの歌!凄く上手いなって、カッコいいなって!ずっと思ってた… どうしたらそんな風に素敵に歌えるの?」
「僕はミンジェヒョンの声…好きですよ」
気がつくと、ヨングは照れ臭そうにしていた。僕は『声が好き』って言って貰った事が、嬉しくて…。なんだろう、すごくやる気が出てきた。
「ほんとに?わぁ、僕、もっと上手く歌えるように頑張る!」
ポジティブな気持ちは原動力だ。
今日は一人での練習も、歌いながら踊るのが楽しくて、あっという間に時間が過ぎた。
よほど集中していたのか、部屋の角に座って僕を見てるヨングに気がつかなかった。
「あれっ?ヨングゥ来てたの?」
振り返って近づく。ヨングは僕に向けていた携帯を慌てて下ろす。
“ スヒョナが言ってた『盗撮』?ww”
僕はニヤニヤして、揶揄うように言った。
「今僕を撮ってた?見せてよ?」
「イヤです、ダメです」
携帯を奪おうとして、しばらく攻防が続いたけれど、両手を握り込まれてしまう。
振りほどこうとした。でも僕の手は小さくて、ヨングの大きな手に握り込まれたら引き抜くことも出来ない。
手はゆっくりと降ろされて、ヨングの手が離れそうになってから、今度は指の間に指を差し込み軽く握られる。
“ あ、コレカップル繋ぎっていう…?”
「ミンジェヒョン…」
僕が「えっ?」と振り仰いだら、ヨングの顔が迫ってきて、おでこがちゅっと鳴った。
" 今の、なに?"
「今日はもう、帰りましょう?」
「え?…あ、うん」
何故か急に甘くなった空気に耐えられなくなり、もう帰ろうと言われて素直に帰る気になってしまった。
そのままヨングと練習室の片付けをして、荷物を持ち、忘れ物が無いか確認すると手を繋いで出口に向かった。
ヨングが照明を消して真っ暗になると、僕の口唇に柔らかいものが触れた。数回、啄むようにして離れる。
「………」
「ごめんなさい…。我慢できなくて…」
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