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僕たちのこじれた関係①
11. side M ⑥
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僕は頭に被っていたタオルを、ヨングの頭に乗せた。前髪からポタポタと水滴が落ちて、こんな雨の中……いったいどれくらい僕を探し回ったのだろう。
ヨングの目元は赤くて、頬は涙と雨が混じって濡れている。
「ミンジェヒョン~!」
そしてそんなびしょびしょの身体で僕に抱きつくから、僕だってびしょびしょになった。
「ヨングゥ?なんで泣いてるの」
「ミン、ジェ、、ヒョンがっ、僕のそばに、居てくれないと…!」
「そばに?」
「ぼ、僕は…ミンジェヒョンの、ことが、好きに…なってしまってっ」
「……え?」
「ミンジェ、ヒョンに……、裏切られたと、思ってっ」
真っ赤になってポロポロと涙を零す。思えば、僕から拒絶したのは今回が初めてかもしれない。
僕がヨングを構うのは『営業』なんだと誤解して、今まで僕が君にしてきたこと、全て嘘なんじゃないかって思った?
それで急に不安になって?
自分の気持ちに気がついて?
それでこんなにぐずぐずしてるの?
何それ、可愛い過ぎる。
ヨングの話は支離滅裂で、とりあえずシャワーでも浴びてもらって落ち着かせるしかない。
あぁ~僕もシャワー浴びなきゃだった。
ヨングが『一緒に浴びるのは恥ずかしい』と言うので、交替で浴びてから、とりあえず僕の部屋に行く事になった。
「ち、散らかってるけど…///」
僕は、朝ベッドから出て乱れたままのシーツを手で伸ばし、いくつかあるクッションをヨングに渡した。
さっき『ヒョンの部屋に行きたい』と言い出されて、『は?何で?』って聞いたら『行った事ないから』
考えてみれば、僕だってヨングの部屋には行った事がなかった。
改めて二人きりで部屋に居ると、今まで感じたことのない緊張感で、吐きそうになった。そしてそれはヨングにも伝わったようで、「そんなに緊張しないで下さい」と悲しそうな顔で言われてしまった。
クッションを受け取ってベッドに上がったヨングは、二歳も年下なのに僕より身体が大きくて、急にベッドが狭く感じた。
「なんか…大きくなった?」
「ミンジェヒョンは小さくなりましたね」
「………。この間まで子どもだったのに」
十代の成長は早くて、ヨングとはもちろん仕事で毎日会っていたけれど、こうして見ると大人の身体に近くなっている。
いつまでも可愛い弟のままでいて欲しかった気持ちと、ヨングがどんな大人になっていくのか楽しみな気持ちと。
その時、僕は君の隣で笑っているのかな。
笑って、いたいな。
「僕は子どもだけど、すぐ大人になります。手だって、ミンジェヒョンより大きいし…。
腕だって筋肉がついて、ヒョンを抱き上げられる。身長だって、ヒョンよりも……」
僕はヨングがそれ以上話せないように、クッションを投げつけた。
「……僕の身長の話はしないで。抱き上げるってなに。赤ちゃんだとでも思ってるの!?」
「ふふっ。ミンジェヒョン、口唇尖ってる」
ヨングはクッションを抱き締めて、ころんと横になった。明日も学校だ。朝は早い。
僕はヨングに布団を掛けて、部屋の灯りをサイドランプに切り換えた。
「おやすみ、ヨング……」
「…まだ…、眠りたくない…」
「明日も部屋に来ていいから」
「……う…ん、」
すぐにスースーと寝息が聞こえる。
もう深夜になるのに今日の出来事が衝撃的だった所為で、ヨングの言葉を借りれば、
『まだ眠りたくない』
僕とヨングは、出逢った頃から、なんだか心の距離が近くなったり遠くなったりで。
ここ最近も、二人でしていた練習は僕ひとりになって。理由はわからないけど、嫌われたのかな…と思って寂しかった。
ヒョンたちに、二人で話し合う機会を作って貰い、色々と胸の内を吐き出し合った結果。
さらにこじれて、このままメンバーとしても上手く付き合っていけるか不安になり、途方に暮れたけれど。……僕たちは、お互い好意を持っていた。
ヨングの『ミンジェヒョンが好き』という言葉を聞いて、
『あはは! なぁんだ、そうだったんだ!』
と笑い出したいほど嬉しくて仕方ない。
隣ですやすやと眠るヨングを見つめる。
雨の中、僕を探し回って疲れて寝ちゃうなんて。子どもか!話だって…シャワー浴びて、すぐに部屋に来たから中途半端なのに。
ヨングと一緒に眠るのは初めてだった。どうしたって、寝顔を見つめてしまう。
大きくて、綺麗な眼を縁取る長い睫毛。
高くてまっすぐに通った鼻梁や、寝てる間は開いている口唇。
身体が成長しても、幼い寝顔。
初めて会った時、ヨングは可愛い弟だった。それも、ずっとスヒョンにくっついてるから『親友の弟』みたいな距離感で。
二人で可愛がっているうちに芽生えた感情を、スヒョンは『恋みたい』と言う。
けれど同性だから、どうにかなろうなんて思っていなかった。まさか両想いになる日がくるなんて、思ってなかった。
なんだかフワフワ、ソワソワ、落ち着かない。
明日から仕事になるのかな。ニヤニヤが止まらない気がする。
「ふふっ!」
僕はヨングにくっついて、やがて体温の高さに気持ち良くなって深い眠りに沈んでいった。
ヨングの目元は赤くて、頬は涙と雨が混じって濡れている。
「ミンジェヒョン~!」
そしてそんなびしょびしょの身体で僕に抱きつくから、僕だってびしょびしょになった。
「ヨングゥ?なんで泣いてるの」
「ミン、ジェ、、ヒョンがっ、僕のそばに、居てくれないと…!」
「そばに?」
「ぼ、僕は…ミンジェヒョンの、ことが、好きに…なってしまってっ」
「……え?」
「ミンジェ、ヒョンに……、裏切られたと、思ってっ」
真っ赤になってポロポロと涙を零す。思えば、僕から拒絶したのは今回が初めてかもしれない。
僕がヨングを構うのは『営業』なんだと誤解して、今まで僕が君にしてきたこと、全て嘘なんじゃないかって思った?
それで急に不安になって?
自分の気持ちに気がついて?
それでこんなにぐずぐずしてるの?
何それ、可愛い過ぎる。
ヨングの話は支離滅裂で、とりあえずシャワーでも浴びてもらって落ち着かせるしかない。
あぁ~僕もシャワー浴びなきゃだった。
ヨングが『一緒に浴びるのは恥ずかしい』と言うので、交替で浴びてから、とりあえず僕の部屋に行く事になった。
「ち、散らかってるけど…///」
僕は、朝ベッドから出て乱れたままのシーツを手で伸ばし、いくつかあるクッションをヨングに渡した。
さっき『ヒョンの部屋に行きたい』と言い出されて、『は?何で?』って聞いたら『行った事ないから』
考えてみれば、僕だってヨングの部屋には行った事がなかった。
改めて二人きりで部屋に居ると、今まで感じたことのない緊張感で、吐きそうになった。そしてそれはヨングにも伝わったようで、「そんなに緊張しないで下さい」と悲しそうな顔で言われてしまった。
クッションを受け取ってベッドに上がったヨングは、二歳も年下なのに僕より身体が大きくて、急にベッドが狭く感じた。
「なんか…大きくなった?」
「ミンジェヒョンは小さくなりましたね」
「………。この間まで子どもだったのに」
十代の成長は早くて、ヨングとはもちろん仕事で毎日会っていたけれど、こうして見ると大人の身体に近くなっている。
いつまでも可愛い弟のままでいて欲しかった気持ちと、ヨングがどんな大人になっていくのか楽しみな気持ちと。
その時、僕は君の隣で笑っているのかな。
笑って、いたいな。
「僕は子どもだけど、すぐ大人になります。手だって、ミンジェヒョンより大きいし…。
腕だって筋肉がついて、ヒョンを抱き上げられる。身長だって、ヒョンよりも……」
僕はヨングがそれ以上話せないように、クッションを投げつけた。
「……僕の身長の話はしないで。抱き上げるってなに。赤ちゃんだとでも思ってるの!?」
「ふふっ。ミンジェヒョン、口唇尖ってる」
ヨングはクッションを抱き締めて、ころんと横になった。明日も学校だ。朝は早い。
僕はヨングに布団を掛けて、部屋の灯りをサイドランプに切り換えた。
「おやすみ、ヨング……」
「…まだ…、眠りたくない…」
「明日も部屋に来ていいから」
「……う…ん、」
すぐにスースーと寝息が聞こえる。
もう深夜になるのに今日の出来事が衝撃的だった所為で、ヨングの言葉を借りれば、
『まだ眠りたくない』
僕とヨングは、出逢った頃から、なんだか心の距離が近くなったり遠くなったりで。
ここ最近も、二人でしていた練習は僕ひとりになって。理由はわからないけど、嫌われたのかな…と思って寂しかった。
ヒョンたちに、二人で話し合う機会を作って貰い、色々と胸の内を吐き出し合った結果。
さらにこじれて、このままメンバーとしても上手く付き合っていけるか不安になり、途方に暮れたけれど。……僕たちは、お互い好意を持っていた。
ヨングの『ミンジェヒョンが好き』という言葉を聞いて、
『あはは! なぁんだ、そうだったんだ!』
と笑い出したいほど嬉しくて仕方ない。
隣ですやすやと眠るヨングを見つめる。
雨の中、僕を探し回って疲れて寝ちゃうなんて。子どもか!話だって…シャワー浴びて、すぐに部屋に来たから中途半端なのに。
ヨングと一緒に眠るのは初めてだった。どうしたって、寝顔を見つめてしまう。
大きくて、綺麗な眼を縁取る長い睫毛。
高くてまっすぐに通った鼻梁や、寝てる間は開いている口唇。
身体が成長しても、幼い寝顔。
初めて会った時、ヨングは可愛い弟だった。それも、ずっとスヒョンにくっついてるから『親友の弟』みたいな距離感で。
二人で可愛がっているうちに芽生えた感情を、スヒョンは『恋みたい』と言う。
けれど同性だから、どうにかなろうなんて思っていなかった。まさか両想いになる日がくるなんて、思ってなかった。
なんだかフワフワ、ソワソワ、落ち着かない。
明日から仕事になるのかな。ニヤニヤが止まらない気がする。
「ふふっ!」
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