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僕たちのこじれた関係①
5. side Y ①
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『来年にはデビューするって…』そんな言葉が、練習生の間で囁かれていた。
何故かというと、僕たちデビュー組のチームに加入する7人目の候補者が、上京してきたからだ。
「パク▪ミンジェです、よろしくお願いします…」
初めてミンジェを見た時は、身長が自分と変わらないほど小柄で、同い年かと思うくらい幼かった。笑うと糸目になる所に愛嬌があり、同郷のイントネーションに親近感を抱いた。
一緒にダンス練習を始めて思った事は、流れるような所作に全て華があり、表情や雰囲気に惹き込まれる。魅了されるその動きに、気がつくと目が離せなくなった。
それは、今の僕には持っていない華やかさで、とても…眩しかった。けれど、彼には彼で課題としている点があり、克服するためにいつも過酷な練習メニューを組んでいた。
僕にも問題が起きた。プロデューサーに、“ お前のダンス、感情が伝わってこない”と言われてしまったのだ。
そんなことを言われたって。
僕はまだ子どもで、ダンスに感情を込められるほど人生経験が無いのに…と言い訳。
しばらく試行錯誤していると、夏の長期休暇を利用してアメリカに短期留学する事が決まった。アメリカ在住の有名な振付師の先生が、少人数制のダンススクールを開講していて、所属事務所が通わせてくれると言うのだ。
僕と同じようなレベルの練習生なんて、いくらでもいるだろうに、こんなチャンスが与えられるなんて!
それだけ僕に期待してるということが、単純に嬉しかった。
心残りは、大好きなチームメイトのスヒョンと休暇中に沢山遊ぶ約束をしていたのに、それが叶わなくなったこと。どうせなら、スヒョンも一緒にアメリカに行けたら良かったのに。
僕は、初めて飛行機に乗って留学し、言葉もほとんどわからないまま必死でダンスを学んだ。自分の事はなるべく自分でやったし(とにかく洗濯が大変だった!)、とても充実した時間を過ごせた。だから、少し成長したように思う…。つまり、自信がついたってこと。
早くスヒョンに成長した自分を見せたくて、帰国後宿舎に送って貰うと、真っ先にスヒョンの部屋を目指した。深夜だったけど、多分まだ起きているはず!
「ヒョン!ヒョンただいま!」
ドアをノックしたけれど、返事がないのでそのままガチャっと開けた。
スヒョンはベッドに入っていて、携帯を弄っていた顔を上げた。素早く口唇に、人差し指を当てる。
「シーッ!……大きな声出すなよ?やっと眠ったんだから…」
「………。」
顔の造りが整っているから、不機嫌そうな顔をすると酷く冷たい印象を受ける。
二ヶ月近くも会っていなかった最愛の義兄は、帰国の挨拶をしに来た義弟に、冷たい一瞥を送ると自分の懐にデレッデレな笑顔を向けた。
その時点で僕は、留学している間にスヒョンが犬か猫でも飼い始めたのかと思った。
「え?…何?…可愛い?」
「うん、可愛いよ。」
しかし、スヒョンの懐を覗いて目をむいた。どう見ても、人間の頭がある。
「マ、マズイよ!ヒョン!宿舎に女の子連れ込んだら駄目だって言われてるじゃん!」
僕は叫んでスヒョンに飛びついた!ガクガクとゆさぶる。デビュー前に、こんなスキャンダルが露見したら確実に退所だ。
「はぁ~?」
「…ぅぅ~っ!何?なん、か、うるさ…、」
「え?」
「わぁぁあーっ!ヨングァ?え?帰ってきた?え?スヒョナ?何で僕ここで寝てんの?!」
ガバッと起き上がったのは、女の子ではなくミンジェだった。僕を見て悲鳴を上げ、スヒョンを見て悲鳴を上げ。僕が言うのもおかしいけど、落ち着きが無さすぎる。
「え?え?」
布団の端を握りしめ、キョロキョロと僕たちを見回す様は確かに可愛いかった。けれど、さっき見た寝ているミンジェに向ける、スヒョンの無邪気な笑顔。
その表情は今まで見たことがなく、その事実は僕の胸に棘を差した。
「ごめん…僕、寝惚けた、みたい。」
恥ずかしそうに顔を赤らめるミンジェ、またスヒョンが、何だか幸せそうに笑う。
「あ…えっと。ヨングァ!おかえり!LAはどうだった?疲れたでしょ」
ベッドを降りながらミンジェが、人懐こく笑って労いの言葉をかけてくれる。それまでスヒョンの塩対応に寂しくなっていた僕には、救いの言葉だった。
“ アレ?ミンジェニヒョンて…もっと大人しい人じゃなかったっけ?”
腕を引っ張られ、スヒョンの隣に逆戻りしたミンジェは、『ひゃはは!』と楽しげに笑う…。
僕が留学している間に、2人はとても仲良くなっていた。
僕が、嫉妬するほどに……。
けれど僕が戸惑ったのは、いったいどっちのヒョンに嫉妬したのだろうということ……。
何故かというと、僕たちデビュー組のチームに加入する7人目の候補者が、上京してきたからだ。
「パク▪ミンジェです、よろしくお願いします…」
初めてミンジェを見た時は、身長が自分と変わらないほど小柄で、同い年かと思うくらい幼かった。笑うと糸目になる所に愛嬌があり、同郷のイントネーションに親近感を抱いた。
一緒にダンス練習を始めて思った事は、流れるような所作に全て華があり、表情や雰囲気に惹き込まれる。魅了されるその動きに、気がつくと目が離せなくなった。
それは、今の僕には持っていない華やかさで、とても…眩しかった。けれど、彼には彼で課題としている点があり、克服するためにいつも過酷な練習メニューを組んでいた。
僕にも問題が起きた。プロデューサーに、“ お前のダンス、感情が伝わってこない”と言われてしまったのだ。
そんなことを言われたって。
僕はまだ子どもで、ダンスに感情を込められるほど人生経験が無いのに…と言い訳。
しばらく試行錯誤していると、夏の長期休暇を利用してアメリカに短期留学する事が決まった。アメリカ在住の有名な振付師の先生が、少人数制のダンススクールを開講していて、所属事務所が通わせてくれると言うのだ。
僕と同じようなレベルの練習生なんて、いくらでもいるだろうに、こんなチャンスが与えられるなんて!
それだけ僕に期待してるということが、単純に嬉しかった。
心残りは、大好きなチームメイトのスヒョンと休暇中に沢山遊ぶ約束をしていたのに、それが叶わなくなったこと。どうせなら、スヒョンも一緒にアメリカに行けたら良かったのに。
僕は、初めて飛行機に乗って留学し、言葉もほとんどわからないまま必死でダンスを学んだ。自分の事はなるべく自分でやったし(とにかく洗濯が大変だった!)、とても充実した時間を過ごせた。だから、少し成長したように思う…。つまり、自信がついたってこと。
早くスヒョンに成長した自分を見せたくて、帰国後宿舎に送って貰うと、真っ先にスヒョンの部屋を目指した。深夜だったけど、多分まだ起きているはず!
「ヒョン!ヒョンただいま!」
ドアをノックしたけれど、返事がないのでそのままガチャっと開けた。
スヒョンはベッドに入っていて、携帯を弄っていた顔を上げた。素早く口唇に、人差し指を当てる。
「シーッ!……大きな声出すなよ?やっと眠ったんだから…」
「………。」
顔の造りが整っているから、不機嫌そうな顔をすると酷く冷たい印象を受ける。
二ヶ月近くも会っていなかった最愛の義兄は、帰国の挨拶をしに来た義弟に、冷たい一瞥を送ると自分の懐にデレッデレな笑顔を向けた。
その時点で僕は、留学している間にスヒョンが犬か猫でも飼い始めたのかと思った。
「え?…何?…可愛い?」
「うん、可愛いよ。」
しかし、スヒョンの懐を覗いて目をむいた。どう見ても、人間の頭がある。
「マ、マズイよ!ヒョン!宿舎に女の子連れ込んだら駄目だって言われてるじゃん!」
僕は叫んでスヒョンに飛びついた!ガクガクとゆさぶる。デビュー前に、こんなスキャンダルが露見したら確実に退所だ。
「はぁ~?」
「…ぅぅ~っ!何?なん、か、うるさ…、」
「え?」
「わぁぁあーっ!ヨングァ?え?帰ってきた?え?スヒョナ?何で僕ここで寝てんの?!」
ガバッと起き上がったのは、女の子ではなくミンジェだった。僕を見て悲鳴を上げ、スヒョンを見て悲鳴を上げ。僕が言うのもおかしいけど、落ち着きが無さすぎる。
「え?え?」
布団の端を握りしめ、キョロキョロと僕たちを見回す様は確かに可愛いかった。けれど、さっき見た寝ているミンジェに向ける、スヒョンの無邪気な笑顔。
その表情は今まで見たことがなく、その事実は僕の胸に棘を差した。
「ごめん…僕、寝惚けた、みたい。」
恥ずかしそうに顔を赤らめるミンジェ、またスヒョンが、何だか幸せそうに笑う。
「あ…えっと。ヨングァ!おかえり!LAはどうだった?疲れたでしょ」
ベッドを降りながらミンジェが、人懐こく笑って労いの言葉をかけてくれる。それまでスヒョンの塩対応に寂しくなっていた僕には、救いの言葉だった。
“ アレ?ミンジェニヒョンて…もっと大人しい人じゃなかったっけ?”
腕を引っ張られ、スヒョンの隣に逆戻りしたミンジェは、『ひゃはは!』と楽しげに笑う…。
僕が留学している間に、2人はとても仲良くなっていた。
僕が、嫉妬するほどに……。
けれど僕が戸惑ったのは、いったいどっちのヒョンに嫉妬したのだろうということ……。
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