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僕たちのこじれた関係①
2. side M ②
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夜、スヒョンの部屋のベッドでゴロゴロしていて、自分の部屋へ帰るのは面倒になっていた。
ヨングとチームとしての付き合いがギクシャクし始め、このままではよくないとスヒョンに相談してみる。
「ねぇ、スヒョン。ヨングは、僕のこと嫌いなのかなぁ」
「まるで恋をしてるみたいだな?」
「恋?」
「なんか、好きとか嫌いとかを気にしてさ」
「うん、ヨングの事好きだし、仲良くなれたらいいなと思う」
確かにこの気持ちは、スヒョンに対する『好き』とは違う。
けれど『片想い』だし?
同性だから進展なんて、あるはずがない。
と、思っている。
壁やら山やら溝やら難関が沢山あって、僕はもう『推し』という便利な言葉でヨングを括って、それで満足なのだ。
「ミンジェのこと、嫌ってはいないと思う。 ヨングは思春期だから、色々とあるんじゃないの。反抗期とか?」
「うん、そうだね。少しそっとしておいてあげた方が…いいのかもね」
何となく滲んできた涙を、スヒョンが指で拭ってくれた。そっと抱き締められる。
「俺はミンジェが大好き」
「スヒョナ~、僕も大好きだよ」
背中を擦る大きな手。
スヒョンの手は、凄くホッとする。手を繋いで目を閉じればすぐに眠くなって、やがて朝が来る。
朝になれば、ヨングに会える。目覚ましのアラームにも気がつかずにぐっすり眠っているあの子を、僕が起こしてあげないと……。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、なんでぇ~? どうして合わないのぉ~!」
次の日も、僕は踊り疲れて床に倒れ荒い呼吸を調えていた。
汗なのか、涙なのか。
多分両方が僕の目を濡らしていく。
「…っ、」
暫く溢れるものをそのままに。
きっと流さないと思い通りにならない自分の身体を詰って、先に進めなくなりそうだったから。
けれど、明日の仕事が撮影だったら瞼が腫れて迷惑がかかる!と慌てて起き上がった。
すると、背後でバタバタッと音がしてドアがバタン…と閉まる。
まるで、起き上がった僕に驚いて逃げるかのように去っていった。
その一部始終を、鏡越しに見ていた。
スヒョンが言った通り、ヨングの後ろ姿だった…。
“…ヨングだった…。あの優しい手は本当にヨングだったの…?”
僕は減量と焦りで体調を崩していたけれど、踊る事を止めなかった。ヨングは昨日の事でもう練習室には来ないと思っていたのに、バレて開き直ったのか、行動が日に日に大胆さと謎を増していった。
いつものように倒れた僕は、優しくマッサージされたあと、頭を持ち上げられヨングの膝に乗せられた。
気配で、上から覗き込まれていることがわかる。そのうちに、『カシャ』と携帯のカメラの音がした。
ヨングは映像にも興味があって、写真も良く撮る。だから、何かを撮影するのは珍しい事ではない。けれど、今のは僕を撮った…?
「…どうして?」
小さな声で呟いたら、膝がビクッと揺れた。そのまま逃げてしまうかと思い、僕は目を開けて上げるのもやっとな腕を伸ばして、上から覗き込んで泣きそうな顔をしているヨングの頬に触れた。
何故そんな表情で僕を見るの?
しばらく無言で見詰め合ったけれどヨングは逃げる事を諦めたのか「ふぅ…」と、ため息を吐いた。
「今まで、僕が練習で疲れた時マッサージしてくれたの…ヨングァ…だったんだよね?
その、ありがとう。お前のおかげで僕は頑張る事が出来た」
知らなかったよ。おまえの手が大きくて、そんなに優しいなんて。あぁ、やっとお礼が伝えられた…。
ヨングに伸ばした手が、頬に触れたかどうかの所で突然握られる。怒っているような、泣きそうな表情で。
そして僕の頭を膝に乗せたまま、しゃべり始めた内容に、びっくりしてしまった。
「ミンジェニヒョン。どうして一人で練習するんですか?いつも倒れるまで踊ってますよね」
「僕の音取りが皆と合わなくて。迷惑かけちゃうからね」
「だからなんで皆と合わせたいのに、一人で練習するの?」
「それは…、皆には皆のやることが…」
「僕が付き合います!!」
「…え?」
「明日からの練習!僕も一緒にやりますから!」
「ほんとに?」
あんなに僕を避けていたヨングが、どういうことだろう?
僕は嬉しくなってがばっと起きると、ヨングに抱きついた。
「ありがとう!」
僕が抱きついた所為で、顔を真っ赤にしたヨングが可愛くて、朝30分以上かけてヘアセットする髪をぐしゃぐしゃにした。
ヨングとチームとしての付き合いがギクシャクし始め、このままではよくないとスヒョンに相談してみる。
「ねぇ、スヒョン。ヨングは、僕のこと嫌いなのかなぁ」
「まるで恋をしてるみたいだな?」
「恋?」
「なんか、好きとか嫌いとかを気にしてさ」
「うん、ヨングの事好きだし、仲良くなれたらいいなと思う」
確かにこの気持ちは、スヒョンに対する『好き』とは違う。
けれど『片想い』だし?
同性だから進展なんて、あるはずがない。
と、思っている。
壁やら山やら溝やら難関が沢山あって、僕はもう『推し』という便利な言葉でヨングを括って、それで満足なのだ。
「ミンジェのこと、嫌ってはいないと思う。 ヨングは思春期だから、色々とあるんじゃないの。反抗期とか?」
「うん、そうだね。少しそっとしておいてあげた方が…いいのかもね」
何となく滲んできた涙を、スヒョンが指で拭ってくれた。そっと抱き締められる。
「俺はミンジェが大好き」
「スヒョナ~、僕も大好きだよ」
背中を擦る大きな手。
スヒョンの手は、凄くホッとする。手を繋いで目を閉じればすぐに眠くなって、やがて朝が来る。
朝になれば、ヨングに会える。目覚ましのアラームにも気がつかずにぐっすり眠っているあの子を、僕が起こしてあげないと……。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、なんでぇ~? どうして合わないのぉ~!」
次の日も、僕は踊り疲れて床に倒れ荒い呼吸を調えていた。
汗なのか、涙なのか。
多分両方が僕の目を濡らしていく。
「…っ、」
暫く溢れるものをそのままに。
きっと流さないと思い通りにならない自分の身体を詰って、先に進めなくなりそうだったから。
けれど、明日の仕事が撮影だったら瞼が腫れて迷惑がかかる!と慌てて起き上がった。
すると、背後でバタバタッと音がしてドアがバタン…と閉まる。
まるで、起き上がった僕に驚いて逃げるかのように去っていった。
その一部始終を、鏡越しに見ていた。
スヒョンが言った通り、ヨングの後ろ姿だった…。
“…ヨングだった…。あの優しい手は本当にヨングだったの…?”
僕は減量と焦りで体調を崩していたけれど、踊る事を止めなかった。ヨングは昨日の事でもう練習室には来ないと思っていたのに、バレて開き直ったのか、行動が日に日に大胆さと謎を増していった。
いつものように倒れた僕は、優しくマッサージされたあと、頭を持ち上げられヨングの膝に乗せられた。
気配で、上から覗き込まれていることがわかる。そのうちに、『カシャ』と携帯のカメラの音がした。
ヨングは映像にも興味があって、写真も良く撮る。だから、何かを撮影するのは珍しい事ではない。けれど、今のは僕を撮った…?
「…どうして?」
小さな声で呟いたら、膝がビクッと揺れた。そのまま逃げてしまうかと思い、僕は目を開けて上げるのもやっとな腕を伸ばして、上から覗き込んで泣きそうな顔をしているヨングの頬に触れた。
何故そんな表情で僕を見るの?
しばらく無言で見詰め合ったけれどヨングは逃げる事を諦めたのか「ふぅ…」と、ため息を吐いた。
「今まで、僕が練習で疲れた時マッサージしてくれたの…ヨングァ…だったんだよね?
その、ありがとう。お前のおかげで僕は頑張る事が出来た」
知らなかったよ。おまえの手が大きくて、そんなに優しいなんて。あぁ、やっとお礼が伝えられた…。
ヨングに伸ばした手が、頬に触れたかどうかの所で突然握られる。怒っているような、泣きそうな表情で。
そして僕の頭を膝に乗せたまま、しゃべり始めた内容に、びっくりしてしまった。
「ミンジェニヒョン。どうして一人で練習するんですか?いつも倒れるまで踊ってますよね」
「僕の音取りが皆と合わなくて。迷惑かけちゃうからね」
「だからなんで皆と合わせたいのに、一人で練習するの?」
「それは…、皆には皆のやることが…」
「僕が付き合います!!」
「…え?」
「明日からの練習!僕も一緒にやりますから!」
「ほんとに?」
あんなに僕を避けていたヨングが、どういうことだろう?
僕は嬉しくなってがばっと起きると、ヨングに抱きついた。
「ありがとう!」
僕が抱きついた所為で、顔を真っ赤にしたヨングが可愛くて、朝30分以上かけてヘアセットする髪をぐしゃぐしゃにした。
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