4 / 8
Kitty編
4. 色 ※
しおりを挟むソラの身体は、柔らかくて温かかった。これから冬に向かって寒さが厳しくなる季節の中で、お互いを暖め合う行為は、苦しくて切ない。
僕とソラは積み重ねる日々の中で、確かにお互いを大切な存在だと、感じるようになった。
最初は可愛い仔猫だったソラは、僕の『精気』を吸ってどんどん成長し、20代半ばの僕と同じ年頃で止まった。『ヒトガタ』になった姿は同性とは思えないほど、どこもかしこも綺麗になっていった。
猫の時と同じ真っ白な身体には、血管なんて透けて見えないのに、強く吸えばちゃんと痕が付く。顔の造りも大人びてきて、流し目の色っぽさについつい近寄ってしまい、その身体に触れたくなってしまう。
気まぐれなソラはその時々で雰囲気が変わり、行為の最中の艶かしさには舌を巻く。こんなに性欲を掻き立てる人物は見たことがない。そこはさすがに魔物の性だと納得してしまう。
そうかと思うと、少女のようにあどけない時もあった。一緒にテレビでドラマを観ていれば、覚えた愛嬌を女優よりも可愛らしく再現するので「ソラの方が可愛いよ」と言えば、真っ赤になって照れ笑いする。
僕がアイドルの女の子の動画を観て「このコ可愛い」と言えば、わかりやすく嫉妬してしばらく猫の姿で布団に潜って出てこない、という人間のような感情も持っている。
拗ねて布団に潜ったソラをあやすのは得意だ。思い切り可愛がってあげれば、機嫌はすぐに直ってしまう。
「ソラ。ヒトガタにならないの?」
“ ………… ”
「ソラと『せっくす』したいな?」
布団の中でソラに触れていた手の感触が、柔らかいフワフワとしたものから吸い付くような人肌へと変わり。隙間から顔を出したソラが、妖しく目を光らせる。
僕はその、少し尖って開いた唇を啄むために、顔を寄せた。
「………アイシテルがききたい」
突然、鼓膜を震わせる、
テレパシーではない、ソラの『声』
目を伏せて、唇が触れそうなほどの距離だったのに、僕の身体はピタッと止まった。
初めて聞いた声が
“愛してるが聞きたい” だなんて。
目を開けば、吸い込まれそうな色素の薄いソラの瞳。見つめているうちに、何故か涙が零れそうになった。
「ソラ…愛してるよ。……愛してる」
何度だって聞いて欲しい。
ソラの細い腕が僕の首に回されて、唇はすぐに濡れた音と共に深く重なって、言葉は全て奪われた。
家とバイト先、コンビニの三角形をひたすら往復しているだけの味気無い日々は。
紅葉した、赤や黄色の落ち葉の絨毯という『彩葉』が加わって。
心のアンテナが捉えた『色』は、
キラキラと雪原のような白。
グリーンの光彩と淡いピンク。
僕は、ソラという『色』に、夢中だった。
3日に1回でいいと言われた『せっくす』は、気がつけば毎日になっていた。バイトが休みの日は、前日の夜から執拗く求める事もある。
寝るのが仕事のソラが起きれば、またキスから始めて繋がりたくなった。
「あぁっあっ、もう!おなかいっぱい!」
逃れようとする身体を、俯せにシーツへ押しつけて。引き寄せた細い腰を後ろから貫こうとすれば、柔らかいソコは……すぐに僕を咥え込んで締めてくる。
「っはぁ……ソラ。中が熱くて溶けそう…」
数時間前の残滓が残っているのに、また『精気』を注ぐ。
「ふ…あんっ、やだ…!やだぁ…!」
本気で嫌なら猫になってしまえばいいのに、健気にも『精気』を受け止める。ソコはもう溢れていて、快楽を延ばす役割にしかなっていない精液が、ぐちぐちと粘着力を発揮して僕を離さないのだ。
ソラが髪を振り乱すたびに、キラキラと金粉が舞った。それは、吸収しきれなかった僕の『精気』が気化してるのだと言う。
「あっ!あんっ!ケイ…っ!きもちぃよぉ!」
鼓膜を直接震わせるソラの声は、成長して声変わりしても高く、甘く掠れる矯声は衝動を強く促す。さすがにもう何も出なくなっていたけど、何度も腰を振りドライな痺れだけが脳内を充たしていく。
調わない呼吸、余韻。
こめかみから顎の先へと伝った汗が、ソラの背中にポタポタと落ちる。
ソラの中から引き抜いて、仰向けにさせた腹は案の定べちゃべちゃで、剥がしたシーツで申し訳程度に拭き取った。
「ソラ、ごめんね?」
ソラは、上気した頬で視点も定まらないまま微笑んだ。
「ふふ…おなかいっぱいなのに、もっとケイがほしい。ケイがすきなの」
「っ!」
抱き起こして、力の入らない細い身体をかき抱く。
「僕だってそうだよ!ずっと繋がっていたいくらい……ソラ、愛してる愛してるよ……」
毎日抱いても、何度も抱いても、ソラが欲しくて堪らない。これが『キティ』という関係なのか?
僕は、ソラとの『せっくす』しか考えられなくなっていく……。
傍目に見ても、僕はやつれていった。
バイト先の先輩が、見かねて焼き肉を奢ってくれるという。
「顔色悪いぞ。ちゃんと食べてるのか?ダイエットするほど太ってないだろ」
沢山食べてますよ。ソラのために。
2
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる