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Kitty編

4. 色 ※

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ソラの身体は、柔らかくて温かかった。これから冬に向かって寒さが厳しくなる季節の中で、お互いを暖め合う行為は、苦しくて切ない。

僕とソラは積み重ねる日々の中で、確かにお互いを大切な存在だと、感じるようになった。

最初は可愛い仔猫だったソラは、僕の『精気』を吸ってどんどん成長し、20代半ばの僕と同じ年頃で止まった。『ヒトガタ』になった姿は同性とは思えないほど、どこもかしこも綺麗になっていった。


猫の時と同じ真っ白な身体には、血管なんて透けて見えないのに、強く吸えばちゃんと痕が付く。顔の造りも大人びてきて、流し目の色っぽさについつい近寄ってしまい、その身体に触れたくなってしまう。

気まぐれなソラはその時々で雰囲気が変わり、行為の最中の艶かしさには舌を巻く。こんなに性欲を掻き立てる人物は見たことがない。そこはさすがに魔物の性だと納得してしまう。

そうかと思うと、少女のようにあどけない時もあった。一緒にテレビでドラマを観ていれば、覚えた愛嬌を女優よりも可愛らしく再現するので「ソラの方が可愛いよ」と言えば、真っ赤になって照れ笑いする。

僕がアイドルの女の子の動画を観て「このコ可愛い」と言えば、わかりやすく嫉妬してしばらく猫の姿で布団に潜って出てこない、という人間のような感情も持っている。

拗ねて布団に潜ったソラをあやすのは得意だ。思い切り可愛がってあげれば、機嫌はすぐに直ってしまう。


「ソラ。ヒトガタにならないの?」


“   …………   ”


「ソラと『せっくす』したいな?」


布団の中でソラに触れていた手の感触が、柔らかいフワフワとしたものから吸い付くような人肌へと変わり。隙間から顔を出したソラが、妖しく目を光らせる。

僕はその、少し尖って開いた唇を啄むために、顔を寄せた。



「………アイシテルがききたい」




突然、鼓膜を震わせる、

テレパシーではない、ソラの『声』

目を伏せて、唇が触れそうなほどの距離だったのに、僕の身体はピタッと止まった。


初めて聞いた声が

“愛してるが聞きたい”  だなんて。



目を開けば、吸い込まれそうな色素の薄いソラの瞳。見つめているうちに、何故か涙が零れそうになった。


「ソラ…愛してるよ。……愛してる」


何度だって聞いて欲しい。

ソラの細い腕が僕の首に回されて、唇はすぐに濡れた音と共に深く重なって、言葉は全て奪われた。









家とバイト先、コンビニの三角形をひたすら往復しているだけの味気無い日々は。


紅葉した、赤や黄色の落ち葉の絨毯という『彩葉』が加わって。


心のアンテナが捉えた『色』は、

キラキラと雪原のような白。

グリーンの光彩と淡いピンク。



僕は、ソラという『色』に、夢中だった。


3日に1回でいいと言われた『せっくす』は、気がつけば毎日になっていた。バイトが休みの日は、前日の夜から執拗く求める事もある。
寝るのが仕事のソラが起きれば、またキスから始めて繋がりたくなった。


「あぁっあっ、もう!おなかいっぱい!」


逃れようとする身体を、俯せにシーツへ押しつけて。引き寄せた細い腰を後ろから貫こうとすれば、柔らかいソコは……すぐに僕を咥え込んで締めてくる。


「っはぁ……ソラ。中が熱くて溶けそう…」


数時間前の残滓が残っているのに、また『精気』を注ぐ。


「ふ…あんっ、やだ…!やだぁ…!」


本気で嫌なら猫になってしまえばいいのに、健気にも『精気』を受け止める。ソコはもう溢れていて、快楽を延ばす役割にしかなっていない精液が、ぐちぐちと粘着力を発揮して僕を離さないのだ。

ソラが髪を振り乱すたびに、キラキラと金粉が舞った。それは、吸収しきれなかった僕の『精気』が気化してるのだと言う。


「あっ!あんっ!ケイ…っ!きもちぃよぉ!」


鼓膜を直接震わせるソラの声は、成長して声変わりしても高く、甘く掠れる矯声は衝動を強く促す。さすがにもう何も出なくなっていたけど、何度も腰を振りドライな痺れだけが脳内を充たしていく。

調わない呼吸、余韻。
こめかみから顎の先へと伝った汗が、ソラの背中にポタポタと落ちる。

ソラの中から引き抜いて、仰向けにさせた腹は案の定べちゃべちゃで、剥がしたシーツで申し訳程度に拭き取った。


「ソラ、ごめんね?」


ソラは、上気した頬で視点も定まらないまま微笑んだ。


「ふふ…おなかいっぱいなのに、もっとケイがほしい。ケイがすきなの」


「っ!」


抱き起こして、力の入らない細い身体をかき抱く。


「僕だってそうだよ!ずっと繋がっていたいくらい……ソラ、愛してる愛してるよ……」



毎日抱いても、何度も抱いても、ソラが欲しくて堪らない。これが『キティ』という関係なのか?
僕は、ソラとの『せっくす』しか考えられなくなっていく……。







傍目に見ても、僕はやつれていった。
バイト先の先輩が、見かねて焼き肉を奢ってくれるという。

「顔色悪いぞ。ちゃんと食べてるのか?ダイエットするほど太ってないだろ」



沢山食べてますよ。ソラのために。





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