最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる

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ハインツ伝

ハインツ調査団5

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 改革も最終段階に差し掛かったある日の夜更け、レズンはあわてたようにハインツの部屋の扉をノックした。

「どうしましたか?こんな時間に珍しい」

「夜更けに申し訳ありません、地下開発部隊がおかしなものを発見いたしました。」

 地下開発部隊は東側を拡張していた時に遺跡のような物を発見したらしい。
 そこで、ハインツに確認と指示をお願いしたいとの事であった。

「行きましょうか」

 ハインツは素早く外套を羽織ると、レズンを引き連れてさっさと外に出て行く。
 元この街の奴隷ギルドのギルド員達が黒い仮面をつけて夜間警備にあたっていた。
 そのため夜の治安は何処よりも良くなり、女性がよる一人歩きが出来るレヴェルにまでになっていた。

「で、その遺跡というのは、どのような形状ですか?」

「はい、古代オリヴェントに似てるようですが、かなり変質しているようで、いまいち断定できないようです」

「まぁ拡張部隊では能力が足りないですからね」

 この街の夜は馬車での移動は音の観点から禁止であり、ハインツたちは人力車で移動していた。
 地下もかなり広くなっており、今では街とほぼ同じ大きさに拡張していた。

「これですか・・・確かに柱の感じはオリヴェント文明に似ていますが、彫りこみは違いますね」

 ハインツは柱や壁を観察して文明を調べようとするが色々なものが混ざったような感じで不思議な様相であった。
 暫く調べると、幾つかの文字を発見できた。

「レズン、この文字を出来る限り解読をしておいてくれ、専門家の招致の書類も出しておこう
それと拡張部隊には発掘をする様に・・・」

「ハインツサマゴメイレイヲ」

 発掘の指示を出そうとしたとき、拡張部隊の隊長がぬっと現れ支持を求めてきた。
 それに対してレズンはイラッとした顔をして睨みつけるが、隊長は知らん顔をして跪いたまま指示を待っていた。

「ああ、拡張部隊は発掘をしてくれ、後崩れそうな場所は確りと補強するように」

「ハイ」

 嬉しそうに頭を少し下げると、立ち上がり指示に向かおうとするが、レズンが声をかける。

「貴方、ハインツ様からのお言葉を聞くのはワタクシ、貴方はご遠慮するべきなのよ」

「ワレラノアルジハハインツサマ、オマエデハナイ」

「はぁ、配下同士の争いは禁止ですよ、とりあえず二人とも今言った方針で、明日ある程度の報告書を書けるようにしたいので、安全に急いでくださいね」

 そう言って、ハインツは暫く観察してから館に戻って行った。


 次の日、ハインツはヘーラを訪ねたがあいにくと留守であった。
 仕方なく執務室で書類を片付けつつ報告を待ったが、夕刻まで報告は無く、レズンを呼び出そうとした時、やっと報告書を持ってレズンがやってきた。

「ハインツ様遅くなり申しわけありません」

「かまいませんよ、では報告を」

「はい、先ずは遺跡の発掘状況ですが、昼夜作業を行っており、遺跡の87%発掘できております。
 規模はさほど大きくなく、損傷は中度とのことです。
 続いて壁に書かれた文字の解読ですが、ワタクシの方で調べた結果やはり古代オリヴェント文明の物で間違いないようでした。
 内容は「ここに災いを封じる、封を開けることなかれ」それ以外の解読は出来ませんでしたが、かなり危険なものかと。」

「ははは、危険ですね・・・なんでこんな時に・・・埋めなおすのも危険な気がするので暫くは立ち入り禁止にしましょう。
 念のためヘーラ様に話をしておきましょう」

 矢継ぎ早に指示を出すとイスに体を預けると、仕事はまだ終らないとぼやくのだった。

 遺跡は監視対象としてハインツ調査団から警護を出し、ハインツ調査団としては街の発展の手柄を持って解散となり、新たにダーヌ騎士団に再編されたのだった。


その日の夜

「これを壊せば災いが広がる・・・ハインツよ我が恨み受けるのでおじゃる」


 何時の間にか遺跡の中に忍び込んだ男が手に持った石で何度も石板を叩き、その音が無人の部屋に響く。
 部屋は防音らしく外に音が漏れることは無かった。
 暫くの時間の後、石板は悲鳴を上げる様に割れ、男の悪意と同じような黒い煙が噴出した。
 男の笑い声と共に広がる煙は静かに確実に闇に紛れ広がっていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ブラウンの場合

「いやな予感がする」

 ブラウンが城の外に目をやり目を細める。

「ブラウンが珍しいね」

 国王は目の前の書類にサインをし押印を押してクロバに渡す。

「ああ、良くない気配が・・・ダーヌからする」

 そう言うと壁に立てかけていた大剣を背負うと、ボールに抱きついているパンダヌキに「行くぞ」と声をかける。
 パンダヌキは小さく鳴くとブラウンの足元にやってくる。

「行ってくれるのかい?」

「ああ、心配だからな」

「なら、ハインツに経費はつけておくとするかね」

 人の悪い笑みを浮かべるクロバに「ほどほどにな」と言い、国王に向きなおすと。
 国王は真面目な顔をして、ブラウンに頭を下げ「ダーヌを頼む」と声をかけた。

「頼まれた」

 子供のような笑顔を浮かべるとベランダからパンダヌキに乗って飛び立っていった。
 
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