最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる

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ハインツ伝

ハインツ調査団3

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 ハインツ達は一旦宿に戻り奴隷ギルドで集めた証拠と、配下の集めた証拠を纏めて討ち入る準備をしていると姫が飛び込んできた。

「はいんつ、へーら、あそぼ~」

「うむ、絵本でも読むかの?」

「えほんあきたの」

「では、何をするかのう?」

「さっきぶらうんがすぱんってやってたの、あれがやりたい」

「ほう、ブラウン様がスパンとな・・・へ?」

「今ブラウン様と?」

 呆然とする二人をよそに姫は楽しそうに出来事を話し始める、その内容は以下のようなことであった。

 暇になった姫が護衛を連れて街の市場に出かけた時、ガラの悪い男達に暴力を振るわれている女の子が居た。
 姫は当然止めに入ったが、護衛の人数を超えたゴロツキに姫にもゴロツキの拳が迫った。
 姫は目を硬くつぶったが、いつまで経っても衝撃は来ない、恐る恐る目を開けると、そこにはブラウンが相手の拳を受け止めてニッコリと笑って立っていた。

「お前、子供に暴力を振るう意味が解っているのか」

「俺たちに歯向かえばこうなると教える、教育だ意味はそれだけだろう」

 ブラウンは周りに居たゴロツキ共を叩きのめすと

「歯向かえばこうなるのか?」

 ブラウンの呟きに意識があったリーダーの男は震えながらブラウンを見上げ。

「なんなんだお前は・・・」

 と青い顔で呟いた。

「俺か?ただの人だよ」

「な、なあ、俺たちのバックにはここの領主と最強のブラウンが付いているんだ。
俺達に付いてくれないか?」

 怯えながら提案をするが、姫が

「ぶらうん?ぶらうんとおなじなまえだね?さいきょうもおそろい?」

「え?ブラウン・・・」

 その言葉を洩らして男の意識はプッツリと糸が切れたように倒れた。

「え?スパンは何処に行ったのですか?」

「あ~えへへ、そのあとね、あのおっきなところのかべをすぱんってしたの」

「え?壁をスパン?」

 ささーっと顔が青くなるハインツ、解らないヘーラをみてハインツが耳打ちをする。

「ブラウン様のスキルに建造物断絶ってあるんですよ」

「つまり、壁が壊れただけなのじゃろう?」

「いえ、すでに建物が崩壊の危機です、いそいで行かないと大変なことになります。
 つまり、さっさとしろのご伝言です」

「では急いでいくとするかのう?」

 二人が話し終わるのを待って姫はヘーラにニッコリと笑って。

「あとね、へーらがのんびりしてると、ぶらうんがかってきたもちふわどーなつみねるばたちとぜんぶたべるって、いってたよ。
おいしかったよ」

 それを聞いたヘーラの顔色が変わり、勢いよく立ち上がると「直ぐ行くのじゃ」と飛び出す勢いで立ち上がった。

「ええ、急ぎましょう」

 ハインツは素早く手勢に指示を出し、街の敵拠点の5ヶ所を抑えさせることにした。


 ハインツ達は代官館に駆け込み止める兵を捕獲した奴隷ギルド員で止めさせると、一気に謁見の間に駆け込んだ。

「なにものじゃ?」

「王国副官ハインツです、あなた方をスラム整備費の不正取得及び、王国奴隷禁止法違反で捕縛します」

「ふ、ふざけるな!!貴様らが死ねば証拠も消えるんだな!!ブラウンやっちゃえ!!」

 代官の声に答えるように160cmくらいの筋肉質な男がショートソードを構えて二人の前に立ちふさがった。

「げへへ、ハンターギルド最強のブラウン様が相手をしてやるよ」

 それを見てハインツは「は~」っとため息をつくとめんどくさそうに手をヒラヒラと振り、ヘーラは大爆笑して笑い転げる。

「な、なんだ貴様ら!馬鹿にしてるのか」

「ええ、していますよ?ブラウン様を知っている身としては馬鹿らしくて仕方ありません、それにこちらは地龍の姫様でブラウン様の良いお方予定ですからね」

「予定ではなく良い人じゃ、結婚もするのじゃ」

「馬鹿な、そんなはず」

「それにブラウン様は高身長ですし」

「もっと良い男じゃ」

 ヘーラはブラウン(笑)に低身長を利用したカチ上げ、からの鳩尾に拳を打ち込み下がった顔に向かって飛び上がり膝蹴りからの踵落としを決めて叩きのめすと、代官に向かって切れ気味の笑顔を向けると

「わらわのドーナツが無くなったらどうしてくれるのじゃ!大人しくつかまれぃ」

 ブラウン(笑)の惨状を見た代官は腰を抜かし床を汚して、青い顔をして頷くしかできなかった。
 その後ハインツたちにより館から全ての人を避難させると、館が音を立てて崩れ落ちた。

「ぎりぎりでしたね・・・これは?」

 奴隷ギルド員の一人が持ってきた紙には、

「ここを立て直すまで帰ってこなくて良いぞ。
 姫は出来れば返してくれ、無理なら仕方ない。
         シール王国 国王」

 あ、あの人は~と心の中でハインツは恨みの声を上げるが仕方ない、ヘーラにも手伝ってもらうことをお願いすると。

「一旦ドラゴニアに戻ってドーナツを食べたら戻ってくるのじゃ、姫行くぞ」

 そう言うとあっと言う間に龍の姿になり背中に姫を乗せて飛び立っていった。

 これが後に言われるハインツ改革領の始まりであった。
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