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ハインツ伝

ハインツ調査団1

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 戦も終わり数ヶ月経ち王国周辺も落ち着いた頃、ハインツは国王の密命を受けてローンダーヌ地方にやってきていた。
 ローンダーヌ地方は絹の産地として有名な土地であり有数の資金が豊かな土地としても有名であった。
 ハインツを乗せた商人用馬車にはヘーラが護衛として付いて来ていた。

”正直護衛は大量に居るのですが、お断りした時の笑顔が怖すぎですね”

 王城でハインツは一度へーラの護衛を断っていた。

「うん?よう聞こえなかったのじゃ」
 
 と笑顔で手に持っていた水晶の原石を握りつぶしたヘーラは、軽く手をはたき、ハインツの肩に両手を置き

「もう一度言ってほしいのじゃ?」

 と可愛らしい笑顔で首をかしげて聞いてきた。

「是非お願いいたします」

 ハインツにはそう答えるしか選択肢が無かった。

「そうかそうか、今から楽しみじゃ、ブラウン殿にも報告せんとな」

 そう言って笑顔で出て行くヘーラを見送るハインツは、行った先で騒動が起こることが確定したと肩を落としたのだった。

 王都からローンダーヌの領都ダーヌへの道すがらチョコチョコと買い食いしたり、気ままに食料馬車に遊びに行ったりと過ごすので予定より遅れて到着したのだった。

「ヘーラ様・・・ダーヌでは大人しくしていてくださいね」

「うん?わらわは何時も大人しいのじゃ」

「・・・ですね」

 こうしてダーヌの街門を通過して宿で荷降ろしを商人に扮した兵達がしていたが、ハインツの所にあわてて駆け寄ってくる

「じ、実は食料馬車に・・・」

「はぁ・・・やぱっり」

「ご存知で?」

「予想してた、という所ですかね」

 ハインツは苦笑いをしながらヘーラの部屋に向かっていった。

「なんじゃ?ハインツ」

 部屋の前に着くと中からヘーラの声が聞こえた。

「失礼します」
 ハインツが入ると、ヘーラは大きな一人用のイスに座りフットレストに足を乗せて、リラックスしたように体を伸ばしていた。

「ヘーラ様、姫を連れてきましたね?」

「お?やっと見つかったか?どうじゃ?ビックリしたかのう?」

 悪びれもせず悪戯が成功したかのような笑顔を向けるヘーラに、ハインツは眉間に指を当て「は~」とため息をつくと。

「つれてこられるなら最初から言って下さい、ここまでよくバレなかったものです」

「馬車の一部を魔法で拡張して壁を作っておいたのじゃ」

「また大掛かりな仕掛けを・・・は?拡張?・・・出来るんですか?」

「ああ、ブラウン殿に聞いてやってみたのじゃが、上手くいってのう」

「え?ブラウン様は魔法が使えたのですか?」

「うん?勿論使えるが?わらわ達でも思いつかない魔法の使い方をしておるがのう」

「ゴホン、その話は後で聞くとして、この宿に空き部屋無いので、ヘーラ様と同室になりますが、よろしいですか?」

「勿論じゃ」

 こうしてその日は過ぎて翌日

「おはよ~はいんつ」

「おはようございます、姫、ヘーラ様」

「今日の朝食はなんじゃ?」

 三人は朝食を取り幼い姫と護衛を宿に残し、ヘーラと二人で街に出てみた。
 ヘーラは無邪気にあちらこちらに足を運び、気になる物を見たり、昼飯をメニュー全部などと楽しんでいるように見えた。
 平和に見え、疑惑をもたれている街整備費の不正取得も無いと思えた。

「ハインツ、気付いておるか?」

「ええ、この街は綺麗過ぎますね・・・所々に見える地下への入り口が気になりますね」

「そうじゃのう、わらわの探知では地下にかなりの人数がおるように感じる」

 二人は夕食を取るために、一旦宿に戻るとすねた姫の出迎えを受ける羽目になった。

「では、手勢の中から進入する者を選んで送っておきますので、後ほどお二人で私の部屋に来ていただければ魔法とかの話をしましょう」

 ハインツは自分の兵に一晩調査をし、明日には報告をまとめる様に指示を出し、自分の部屋に戻ると、ぶどうジュースを準備して二人が訪れるのをまった。
 二人が訪れると、姫には神学の絵本を数冊渡し、ヘーラと魔法の話をしていくのだが、そこには驚きの連続が待っていた。

 ブラウンの理論で完成した空間拡張魔法は空間把握と土の中を拡張、物に魔法を付与するのが得意な地龍と相性がよかった。
 たとえば、馬車の柱から向うの壁を土と認識してその奥の空間を掘る事で空間を拡張し、柱に固定の魔法をかけると完成する。
 使用魔法は全て土を掘るための魔法であり、土を空間に置き換えるには膨大な魔力が必要だが、土龍姫たるヘーラならこの宿を越える空間を掘る事が可能だった。

 二人はその魔法の理論を更に発展させるべく話し合いを進め、ある程度の理論の完成が見えてきた時、姫がハインツの裾を引っ張って絵本の続きをねだって来た。
 少し眠いのか欠伸をしつつ読みたがるので、ハインツもヘーラも今日は終わりにして寝ようと提案した。

「う~わかったの」
 
 そう言って部屋を出る時、ふと絵本をパラパラと見たヘーラが

「これは、ハインツが造ったのか?出来が良いのう」

「はは、姫の絵本は全て私の手作りですよ」

「意外と器用じゃな」

 こうして、調査初日は終ったのだった。

―――――――――――――――――――――――

ハインツ調査団のお話を4~5話の予定で書く予定です。
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