最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる

文字の大きさ
上 下
76 / 87
怒りのハインツ

プリプリの危機

しおりを挟む
 何故こうなった?王都からハインツギルド長が来る事を知り、ワシは北の森の隠し別荘へ避難していた。
 ワシと仲間達が王都へ連行された事を知った時から逃げる算段は出来ていた、それが少し早まっただけだ。

 しかし、愛人秘書と妻を置いて逃げるのは嫌だったために2人に連絡を入れ、到着を待ったが未だに来ない・・・。

 寂しいがそろそろ逃げないといけないからな。

 窓の外に見える景色も見納めか・・・思えはかなり良い思いもしてきたこの土地に少し感謝してもいいかもしれんな。

 別荘の直ぐ側に止めた馬車に荷物と金を詰め込んでいる最中だが、嫌な予感が止まらん。
 まさか妻達が裏切ったわけ無いよな?

 メガネのクソ悪魔ハインツか・・・恐ろしい男と聞く・・・流石に女に乱暴はしまい。

「おい!さっさとしろ!」

「はい」

 ワシの奴隷共も疲れているのか動きが鈍い、イライラする。
 
”ガタン”

 思わずイスから腰を浮かし手元の短剣を握ってしまったが、丁度良い様子でも見に行くか・・・

「おい!何をしているんだ!」

 別荘の入り口を開けて外を見るワシの目に倒れた2人の奴隷の姿が見えた。

「なにをさぼってる!」

「サボってない」

 何処からか良い女の声が聞こえた、しかし、ワシには死神の声にも聞こえたのはワシの危機察知スキルのお陰だろう。

 転がるように飛び退くとそこに短剣が突き刺さり、ワシの動きを縛りやがった。

「誰だ!」

 威嚇するように声を上げるが、手の震えが止まらない。
 
 木の陰から美しい女が出てきた。

 女は絹のような長い白髪で、赤い目がワシの魂をその場に張り付けたように射抜いていた。

「ハインツ特務隊ネザルード、貴様をハインツ様の元まで運ぶ存在」

 は?ネザルード?あいつは男でハインツのお部屋と言われる矯正施設に入れられたはず・・・

「貴様、あのネザルードか?お前男だったと思ったが・・・」

「ふふふ、ハインツサマニカイゾウサレタンダヨ、今では気に入っているがな。
 お前も同じ目にあえや!!」

 ワシは恐ろしさのあまり飛び掛ってくるネザルードに向かって必殺技を出した。

「必殺、カッパ・ド・ライト!」

「ぎゃ!目が!」

  カッパ・ド・ライトはワシの素敵ヘアーを晒すことにより、太陽光線を反射して太陽のごとき光を放つ技なのだ!
 わははは、お?体が動く!影が消えたからか?しめしめ・・・

 ワシは馬車に飛び乗るとさっさと逃げ出した。

 暫く森の整備した道を進んでカモフラージュした隠し道を進んで行った。
 このカモフラージュはよっぽどでないと見破れないように出来ている。だからこそ、音が立ちにくい肉球馬にしたし、馬車も車輪をスライムの皮を使った高級品だ。

「しかし・・・あいつ良い女になっておったな・・・」

 自然と漏れた言葉、返す奴も居ない。

「あら?ありがとう」

 突如の声に顔を上げると、肉球馬の背中にネザルードが立っていた。

「な、何故解った・・・」

「あは♪同じ様な事を考えるだろうなって思って最初に調べておいたよ」

 ワシは愕然とする。確かに似た物同士であったゆえに、話も合ったがまさか此処までとは。

「の、のうワシと貴様の仲だ。どうだ、金ならくれてやろう、見逃せ」

 ワシがそう提案するとネザルードは顎に手を当てて艶やかに笑う。

「ふふふ、昔の私なら喜んで受けていたでしょう。
 でも私は真実の愛に目覚めたのです!!
 その誘いには乗りません」

 こうしてワシは意識を失った、その後どうなるのか知りもせず。


 その頃のハインツ

「以上がこのたびの報告になります」

 レズンの報告を受けてハインツは幾つかの書類に判を押した。

「今回のプリプリに協力していたハンターが20人も居たとは」

 目頭を揉むハインツにそっと紅茶を差し出すレズン。

「流石に見逃せないので確りと罰を与えましょう・・・」

「はい、早速実験体を使いますか?」

 ニヤリといい感じに笑うレズンを見て「ああ、私に似て・・・」と楽しそうに笑うと

「そうですね、彼女に丁度良いテストですね」

 その日捉えられた20名の冒険者にマリオネットの魔道具をつけて、マッソーの汗100%(遅効性下剤入り)を飲ませ訓練所に整列させると、お立ち台に立ち声を上げた。

「貴方達はプリプリと共謀してかなりの悪さ・・・奴隷狩りや殺人をしました。
 その償いはしないといけません」

「俺達はあの凶悪な拷問を受けただろう?
 まだ、何かするのかよ!!」

 はぁっとハインツがため息をつくと、レズンがムチを振るう。それが合図であったかのように、ハンター達は運ばれてきた汗汁を無理やり飲み干す。

 目や鼻、口とあらゆる穴から水を流し虚ろな目をして・・・吐いた、それも全員

「う、受ける、罰を受ける・・・だからあれを飲ませないでくれ」

「まぁ、罰は簡単です。1日中全力で走ってもらいます。
 10日間走り続けられたら終わり、ダメなら連帯責任で穴掘りに行ってもらいます」

 ハインツの下した罰にハンター達は余裕の笑みを浮かべていた。

「はぁ俺達はハンターだぞ、それぐらい余裕だ」

「勿論ペースが落ちたらムチが鳴りますからね」

 こうしてハンター達は仮面をつけた女性に監視されながらのマラソンが始まった。
 最初は舐めていたハンター達だったが、速度が落ちる度にムチが鳴り、その度に腕立て伏せ100回が行なわれ、さながら地獄の訓練の様相となっていた。
 
「じ、地獄だ、くそ!舐めていた」

 地面に倒れ動けないハンター達に仮面の女性が近づいてきた。

「逃げるのも良い、続けるのも良い、逃げたら穴掘りに行くだけよ。
 今日はゆっくり休みなさい。
 解散」

 こうしてハンター達の地獄の訓練は始まったのだった。
しおりを挟む
感想 258

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

ドラゴン王の妃~異世界に王妃として召喚されてしまいました~

夢呼
ファンタジー
異世界へ「王妃」として召喚されてしまった一般OLのさくら。 自分の過去はすべて奪われ、この異世界で王妃として生きることを余儀なくされてしまったが、肝心な国王陛下はまさかの長期不在?! 「私の旦那様って一体どんな人なの??いつ会えるの??」 いつまで経っても帰ってくることのない陛下を待ちながらも、何もすることがなく、一人宮殿内をフラフラして過ごす日々。 ある日、敷地内にひっそりと住んでいるドラゴンと出会う・・・。 怖がりで泣き虫なくせに妙に気の強いヒロインの物語です。 この作品は他サイトにも掲載したものをアルファポリス用に修正を加えたものです。 ご都合主義のゆるい世界観です。そこは何卒×2、大目に見てやってくださいませ。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

処理中です...