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怒りのハインツ

支部長達の落日

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 調査の結果を待つ時間が惜しいと、レズン率いる特務隊20をトリーの村へと向かわせたハインツ。
 先ず王都近郊の町は問題なく、距離がある所は少しの不正が数箇所に出始めていたのが確認できた。

「まったく・・・私をイラつかせるのが得意ですね」

「ハインツサマ、トラエタシブチョウ、トドキマシタ」

 特務隊の女性職員が証拠の固まった支部長達の到着を伝えに来た。

「ご苦労様です、さて罪が重いものから順番に連れて来て下さい」

「カシコマリマシタ」

 最初に運ばれてきた男はボロボロになっており、自分で歩く事も出来ない状態だった。

「かなり恨まれていた様ですね」

 ハインツはその者のこれまでの行いを全て町の人間に伝え、夕方まで晒し、許せないと言う者は石を投げることを許していた。

「さて、貴方はゴーブですね?」

 返事も無くうな垂れているゴーブはうめき声を上げるだけだった。

「はぁ・・・仕方ないですね、ゴーブを話せるぐらいに回復させてください」
 
「カシコマリマシタ」

 ハインツの命令通りイスに座らせて、革のベルトで両手足を固定すると、ヘーラの作った回復の魔道具を使って回復させた。

「さて、もう一度聞きます、ゴーブですね?」

「そうだ、オクの町の支部長ゴーブ様だ、何故ワシがこんな目に遭わないといかんのじゃ・・・ひぃ」

 ゴーブは鷲鼻を鳴らしてハインツに威嚇をするが、ハインツの冷たい目を見て息を呑んで黙ってしまう。

「ゴブリン位には危機感知能力は有るようですね・・・
 オクの町で貴方が行ったことを読み上げたと思いますが・・・
 婦女暴行に奴隷販売、不正流用は資金だけでなく、回復アイテムなどの消耗品に至るまで・・・
 あと、人肉が好物と・・・」

 書類から目を上げると鋭い目でゴーブを睨みつけた。

「ひぃ、わ、ワシは支部長だ・・・です、それぐらいは目こぼしがあるべきだ・・・です」

「はぁ、ハンターギルドにはそんな特権などありません。特に身を引き締めて規範となるべき支部長がこれとは・・・」

 ハインツは目頭を押さえつつ、首を何度も振る。
 秘書は気がついていた、開いた片手でハインツは真鍮製のペーパーナイフが拉げてしまうほど握り締めていた所を。

「ワシはどうなるんだ・・・です」

「先ずは王国法に基づいて奴隷売買は終身鉱山送り、人肉を食ったという事は殺人、人数によるが死刑、婦女暴行は鉱山送り、ギルド的な罰則は不正流用が悪質なので解任、ダンジョン探査送り。
 国王陛下から全て任されているので・・・」

「た、助けてくれ、ワシは役に立つぞ!裏の社会ともつながりがある」

 怯えた目でハインツを見るゴーブを冷めた目で見つめるハインツは

「見せしめの意味も込めて、ヘルターリッパーのダンジョン探索送りにします」

「ま、待ってくれ!あそこは・・・あそこだけは!!」

 ヘルターリッパーのダンジョン
 陸の孤島ミカナミ火山の地下に存在する最難関のダンジョンであり、ダンジョンボス不死のヘルターリッパー(地獄の死神)が徘徊しており、未だに攻略されていないダンジョンの一つであった。
 常にヘルターリッパーに怯え、気が休まる時間がないと言われている。

 こうしてゴーブは見せしめとして護送用の檻に入れられて、裁きを待つ支部長の部屋に置かれることになった。

 残りの6名の支部長は最下級職員として、特務隊に監視されつつ、開拓村で開拓に従事することになった。

 判決の後、7人の前に座るハインツはとても穏やかな笑顔を浮かべていた。

「さて、みなさんはそれぞれの赴任地に赴いていただきますが。
 貴方達に折角なのでやる気が出る事をお伝えしますね。
 ゴーブ以外のみなさんには、それぞれに課題を出します。それが達成できたら恩赦を与える可能性があります」

 ハインツの言葉に一番最初に反応したのは、女性元支部長であった。

「ハインツ様それは本当ですか?」

「確かオルキさんでしたね?
 勿論私はウソを付きませんよ、貴方達と違ってね」

「が、頑張ります!ですので、どうか息子の罪をお許しください」

 涙ながらに懇願するオルキにハインツは解ってないと言わんばかりに首を横に振ると。

「貴方の息子には48件の殺人、69件のレイプ、197件の無銭飲食及び恫喝の訴えが出ていますよ。
 それを裁くのは王国法であり、私ではない。
 当然、罪状を見るだけでも町内及び周辺引き回しの上で死刑もしくは被害者が決める私刑でしょうね」

「そ、そんな・・・では私の息子は死以外無いではないですか」

 絶望するオルキを追撃するように、ハインツは書類を見せながら

「貴方の息子の罪はまだまだあるようです、王国史上最悪の犯罪者と言えるでしょうね」

「お待ちを!!後慈悲を持って・・・」

「さて、皆さん出発です。せいぜい頑張って自らの罪を償ってくださいね」

 こうして元支部長達の制裁が終わり、後は本命を残すのみとなっていた。

※オルキは町の評議もしており、盟主であったためその権力も使い、息子の罪をもみ消していました。


その頃プリプリ

 暗く湿度の高い館の地下牢に捕らえた少女の元にやって来ていた。

「ふひひ、どうじゃ?大人しく従う気になったか?」

 顔を腫らした少女はプリプリをにらみ

「だれが・・・」

「ふっひょ~、たまらん!その態度が従順になると思うと楽しみで仕方ないわ!
 せいぜい抵抗しておくが良い。
 ハンターもそこそこ集まった、時期にギルドマスターの名前で軍を起こすつもりでなぁ
 お前の親父も参加するのよ」

「うそ・・・」

 驚愕に目を見開いた少女の目の前にペンダントを出し揺らすと

「これを見せて、参加し勝たないと、持ち主が死ぬかもナァって言ったら泣き喚いて参加を決めたぞ!
 あひゃひゃひゃひゃひゃ」

「悪魔!」

「まぁせいぜい絶望に震えるが良いわ」

 醜い笑顔を浮かべ去っていく背中を殺せそうな視線で睨みつけていた。


 その様子を影に隠れて見つめていた者が居た。
 その者はそっと少女に近づくと

「声を出さないで、私はハンターギルドに所属する者です。
 詳しいお話を聞かせて欲しいんだけど」

「え?何処に?それよりお父さんを助けて!」

「静かに、証拠が集まれば直ぐにでも」

 こうして二人の情報交換が行なわれた。
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