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魔族の勇者の大発明
しおりを挟む人間の国ソクラに100年ぶりに聖剣を引き抜ける勇者が現れた。
魔族との戦を再開するのに良い機会だと、勇者のパーティーを各国から招聘した。
人族の勇者ツイ、エルフ族の弓と精霊魔法使いクール、ノーム族の大賢者パル、ドワーフ族の騎士ピン、彼らは最前戦の一軍を任された。
聖剣を携えた勇者に率いられた軍は魔族領を次々に制圧し、魔族を奴隷として売買するまでにたいした時間はかからなかった。
緑に囲まれた自然豊かな魔王都に、魔剣を引き抜いた魔族の勇者が居た。
勇者の自宅は王都のハズレにあり、未だに引きこもって出て来ていなかった。
「ジャンさま!そろそろ出て来てもらえませんか?人間族が辺境を次々襲っているのですよ~」
”ばん!”
思い鉄の扉が勢い良く開いて、扉を叩いていた兵士の顔面をしたたかに打ちつけた。
「ぐぉぉお」
「ふぁははははは、出来たのだよ!
これで魔族は圧勝だ!」
勇者の姿は年の頃なら14~5、黒髪に黒目、そして勇者に見えないヒョロっとした色白の体で、髪はボサボサの少年だった。
「おい、何を寝てるんだ。
ついに量産型魔剣が完成したぞ!これで戦局は覆る、王城に行くぞ」
勇者は仰向けに倒れている兵士を置いたまま、首無し馬を召喚して魔王城へさっさと行ってしまった。
ジャンは人間の勇者と違い、魔剣を抜いて直ぐに魔剣をバラバラにして研究を始めていた。
「じぃさん!量産型魔剣が完成したぞ!
ついでに魔剣を強化しておいた。」
魔王の執務室の扉を思い切り開けて、ジャンが飛び込んだ。
「ジャン、ノックをしろと何時も言っているだろう?
ってか、魔剣を解析できたのか?」
魔王は40代のガッシリとした体格の黒髪、黒目のダンディーな男だった。
「それで量産は直ぐ出来るのか?」
「勿論だ、それに実験用に5本ほど作成しておいたぞ」
そう言って暗黒収納から5本の剣を取り出した。
「でかした!早速将軍に下賜して前線を覆させるか」
「ふふふ、それもありだが、用途を考えて渡すほうがいい」
興奮する魔王にジャンは人差し指を立てて待ったをかける。
「どういう意味だ?」
「この量産型魔剣は実験用に作成しているからな、本来の魔剣と違い3属性しか使えない。
つまり合う作業は決まっているんだ。
たとえばこの炎と岩石、飛翔魔法を組み合わせた魔剣だがこれは広域殲滅に向いている。
この土と硬化、怪力を組み合わせた魔剣は土木工事に向いているな」
「ほほうつまりは、組み合わせ次第で戦略を考えねば成らぬということだな」
「その通り!そしてこれはじじぃ用の3つのコアストーンを嵌め込めば、色々な魔法が使える量産型魔剣改!是非使ってくれ」
こうして魔王軍の反撃が始まった。
「おめぇら!奪われたウッドアークを取り戻すぞ!」
「「おお!!」」
量産型魔剣は隊長格に、最初の5本の魔剣は前線の5将軍に下賜された。
魔族の隊長が魔剣を天に掲げると
”ニンジャ・アーマード”
魔剣から声が響き、隊長の身体を黒い服型の全身鎧が包み込む。
「ダークコート」
隊長がそう唱えると、2000人の兵士の姿が消えた。
音も無く兵達はウッドアークの破壊された城門を潜った所で、タイムリミットが来て姿を表した。
突如現れた魔族兵に混乱する人族の兵達を次々と倒し捕縛していく。
その光景を見た魔族のある兵士が驚きと共に
「圧倒的ではないか、我が軍は」
と呟いた。
その後捕縛されていたエルフ達を解放し、人族の兵、指揮官合わせて4000人を捕縛した。
エルフ達の男は殺されたり、奴隷にされたり、女性は乱暴され奴隷に落とされていた。
その結果強い恨みを持つエルフは、人族の全員処刑を望んだが、後からやって来た勇者ジャンにとめられた。
「まぁ待て、こいつらは実験材料だ。
我ら魔族がこれ以上血を流す必要がなくなるかも知れぬのだ。
処刑より最高のショーを特等席で見せてやる」
邪悪な笑みを浮かべる勇者に、エルフ達は量産型魔剣の件もあり、一先ず矛を収めた。
「よし!此処の隊長はだれだ?」
ジャンの呼びかけに、黒装束を纏った隊長が前に出てきて頭を下げた。
「ほうぅ、アサシンの魔剣か・・・
丁度いい、これを人族の頭に付けろ。それと魔剣を寄こせ」
魔族の反撃はこうして始まったのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――
アサシンの魔剣 浮遊、消音、霧のコアストーンを持ち、魔族の闇魔法を受けると霧の効果範囲の者の音を消し、姿を消す。
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