迷宮に捨てられた○○、世界を震わせる

たぬまる

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帝国編

りゅーちゃんと結

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 チョウアンを占拠する軍勢に、昼過ぎに結国軍が一斉に空から槍を打ち込むが、致命傷になろうが動き続ける姿に恐れる者達も続出した。
 バランスを崩して地面に落ちた兵士にヨロヨロとゾンビが歩み寄り、一斉に歯をガチガチと鳴らしながら襲い掛かる。
 首を刎ねられても止まらないゾンビに半狂乱になるも、止まる気配は無い。
 りゅーちゃんが空から聖属性を込めた拳を振るうと、声もなく塵となり、その隙に兵士を引き上げる。
 引き上げられた兵士の鎧はボロボロになっており、ゾンビに触れられると腐蝕する事がわかった。
 りゅーちゃんが結に「頼む」と言うと。
 結が浄化の魔法を込めた歌を歌い上げる。その声が届くと、黒の軍勢は声を上げる間もなく塵となって消滅していった。
 こうしてチョウアンの黒の軍勢は駆逐され、その日の夕方。
 兵士達は未だに煙がくすぶる中町の再建を行っていた。
 民は西の広場に集められていた。
 黒の軍勢の次は龍人かと、一様に暗い顔をしてうつむき加減に座り込んでいた。

 少し高い台の上にりゅーちゃんが立ち、民を見下ろすと。

「貴様らは感謝が出来ぬ愚か者のようだ、支援はこれで終える。後は好きにするがよい」

 その声を聞くと兵達は一斉に復興の手を止め整列する。

「今後一切我が国は貴様らの救援を行わぬ。それは全て貴様らの責任である!
 我らは貴様らを敵と見なす事も重ねて伝え置こう。
 決めたのは貴様らだ」

 りゅーちゃんの言葉に慌てたように民達は声を上げる。

「そんな!我らはこの1800年近く戦もなくこんな事態に慣れてないんだ。
 従ってやるから助けろよ」

「そうだ、平和になるのなら仕方がない。したがってやるよ」

 横柄な声を上げるが、りゅーちゃん達は空に浮かぶと

「ふん、貴様らのその横柄さが国を滅ぼすのだ。
 貴様らは敗戦国の国民として生涯奴隷として過ごすか、あの黒の軍勢のように自分の意思もなく腐っていくが良い。
 我らの攻撃は明日の朝だ」

 りゅーちゃんがそう言い手を上げると、チョウアンを囲うように土壁がせり上がり、完全にチョウアンは出入りを封じられてしまった。

「行くぞ」

 兵達は引き上げ、後に残された民は絶望に叩き込まれた。
 
 事実、フツウ国はこの1800年ほど戦もなく、豊富な地下資源を持って他国と交渉し、繁栄を築いてきた。
 それはチュータツが交渉を行っていたのだが、王族も民も全て自分達が特別な存在であり、永遠の国であると思い込んだ結果、国民も王族もすべてが高慢になっていったのだった。
 故に他国に助けられるのが不服であり、屈辱なのだった。

 その日の夜、必死に土壁を壊して逃げ出そうとする者が続出したが、りゅーちゃんの壁を壊せるはずもなく、怨嗟の声を上げながら朝日が昇るのを待った。

 朝日が昇り、チョウアンの上空を埋め尽くすように兵が配置され、チョウアンの民は恐れおののいた。

「ま、待ってくれ、降伏してやる」

 一人の民がそう声を上げると

「そんな腐ったような降伏はいらん!潰れろ」

 りゅーちゃんがそう言い放つと、兵士達は絶妙なコントロールで建物だけを狙い、次々と爆裂槍を投下していく。
 上空から雨のように降り注ぐ槍、刺さると爆発する様は、恐怖をあおり民はその場にへたり込んだ。

「ゆ、許してくれ、降伏だ。このとおりだ」

「お願い・・・私達が悪かったわ」

 そう言い、腹を見せて寝転がる者が続出した。
 柴犬族は心から降伏すると腹を見せ寝転がる習性を持っていた。
 りゅーちゃんはそれを確認すると、

「降伏しねぇ奴がまだ居るな!連帯責任だ!」

 りゅーちゃんは悪い笑顔で再び攻撃させるために手を上げる。
 振り下ろせば一斉攻撃が起こると感じた民は、未だに反抗的な者達を押さえつけると

「お願いします、お助けください。
 こいつらは説得いたします」

 そう言って空を仰いだ。

「ダメだ」

 そう言って手を振り下ろすと一斉に槍が放たれた。
 正に槍が降りぎ当たる瞬間。
 防壁の魔法を歌に乗せて光り輝く翼を広げ結が槍を防いで見せた。

「りゅーちゃん、許してあげよう・・・」

 そう言ってニッコリと笑う結に、悪い笑みを浮かべると

「ちっ主に言われたらしかたねぇな・・・
 だが、てめぇら。もしおかしな事考えたら、今度こそ殺す」

 この瞬間、反抗的な者達も結を女神として崇め始めた。
 結国には荒御霊りゅーちゃんが居り、悪さをすれば命を狩りに来る。
 和御霊たる結は民を平和に導く女神としての位置付けが決まった瞬間だった。

 当然、これは二人が決めた芝居であった。
 確かに、反抗的で高慢な柴犬族に腹が立ち、実際に滅ぼそうと思ったのはりゅーちゃんだけの秘密だ。
 だが、心から従うと従順で勤勉な所があるため、こんな手に出たのだった。
 
 ゾンビ達によってボロボロになった町も、結達によって次々と建て直され復興していった。



一方 キユ


「そろそろ僕も出ようかな?」

 城のバルコニーから町を見下ろすと、大量の改良ゾンビ兵が蠢いていた。
 
「ふふ、我が軍は精強ではないか。これで世界を狙える」

 そう言って笑うキユを冷たい目で康人は見つめていた。
 その康人の手にはセアキワ元国王、サクの父の首が杖上部に取り付けられていた。
 
「ふふふ、キユも出陣か・・・新たな実験体が届くと良いなァ」

 
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