迷宮に捨てられた○○、世界を震わせる

たぬまる

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龍人の国

セアキワ進行

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 結達の下にダニエル元伯爵の一子ローザが助けを求めて龍谷関に駆け込んできた。
 ローザは元は上質な乗馬服であったのであろうが、所々割け、美しい肌も傷だらけになっていた。
 そして守備兵に連れられ、結達の前に連れてこられた時には痩せこけた頬に涙が流れていた。

「わ、ワタクシはダニエル=ミューゼンの一子、ローザ=ミューゼンと申します」

 ボロボロで痩せこけていても貴族の娘、確りとした礼を取り玉座の結と隣に立つりゅーちゃんに頭を下げる。

「遠路ご苦労様、シンドイだろうから少し座って」

 結にそう言われ豪華なイスに腰を降ろすと、震える声でセアキワ国の実情を語った。
 話が進むに連れてりゅーちゃんから恐ろしいほどの殺気がもれ、結は恐ろしい顔をして奥歯を食いしばっていた。

「レン、ローザさんにお風呂の後食事を。ギム、制空隊2000の出陣準備をして」

 結の言葉に二人の副官が頷くと、ローザを連れて退出して行った。

「一先ずローザの元領地の奪還に動こう、丁度此方に接した面が旧ミューゼン領の様だ」

 地図を広げ、地域を赤い線で囲い説明していく。

「今の軍だとここまでを防衛するのが精一杯かな?」

 結の疑問にりゅーちゃんが赤い線の端と端に駒を置き

「この駒の間を赤い線に沿って、結と俺の土魔法で龍谷関のような城壁を素早く築く事が出来たら防衛は出来るだろう。
 それに食料も今の所、ここまでが限界だな」
 
 りゅーちゃんの真剣な目に結は

「そうだね、これでも十分家の食料に大打撃だよね。
 そう言えばりゅーちゃんは雨を降らせる魔法とか無いの?」

 結の言葉にハッとしたように頷くと。

「有る。それに結に魔法をサポートしてもらえたら食糧問題も解決するぞ」

 りゅーちゃんは何か思いついたようにニコリと笑うと、

「俺が兵士を引きいて王国兵を討伐してくる。その間、結は土魔法で城壁を頼む」

「は~い」

 そう言って二人は旧ミューゼン領に旅立って行った。

 ミューゼン領にりゅーちゃん達が到着した時、その凄惨さに兵達は嘔吐し、またある者は腰を抜かした。
 
「許せん・・・支配者は民を守り、国を健やかに次世代に手渡すためにいるのだ!!なのに!このような仕打ち・・・このような悪逆!俺は・・・俺はこのような外道が一番嫌いだ!!
 てめぇら!生き残りを急いで集めろ!この状況の原因を突き止めろ!!
 俺はこの民を埋葬する」

 怒りに涙を流し、杭に刺された幼子の身体を引き抜くと回復魔法で傷を癒し、土魔法で穴を掘って埋葬していく。
 無数の杭に刺された民を降ろしていくりゅーちゃんの姿に兵士達は涙し、街中の生き残りを探すため町の中に駆け出して行った。

「すまない・・・すまない・・・俺が、俺がこの時代に蘇りながら救えなかった・・・だが安心して眠るがいい。この俺と結がお前達の敵を取ってやる・・・」

 一方その頃、雪は

 城で穏やかな午後を過ごしていた。

「王子・・・そろそろかなぁ」

 自分好みの美少年をイスとテーブルにして、王子の結果報告を待っていた。


 玉座の間に剣を携えたサクが現れ、父王の眉間に剣先を突きつけた。
 王は玉座に張り付いたようになり恐怖で声が出なくなっていた。

「父上、この干ばつは貴方の政策に対する神の答えだと思いませんか?」

「ああ、な、なにを・・・」

 サク王子はニヤリと笑うと、そのまま剣を父王の心臓に突き立てた。
 ウュシイレカ・フォン・セアキワの最後はあまりにもあっけなく、自分が最も愛した息子に殺されてしまった。

「ああ、これで雪を王妃に出来る・・・さぁ明るい幕開けだ」

 サクはこの日セアキワ国国王に就任し、王妃を勇者、雪と大々的に発表。民達が餓える中、3日3晩盛大なパーティーを開き、更に増税をし、雪のために白亜の宮殿を立て、次々に贅沢をして行った。

 旧ミューゼン領と分断されても意に介していなかったが、旧ミューゼン領が豊かだと知ると、すぐさま騎士団を派遣した。

 そんな単純な行動を読めない結とりゅーちゃんでは無く、仕掛けられた罠にサク率いる騎士団ははまって行った。

「何?城門が開いていて誰も居ないだと?なら進み制圧だ!」

 そう言って突入し騎士団が全員入ると、前後の門が締まり火が放たれた。
 騎士達は必死に扉を開こうとするが扉が開く気配は無く、騎士の上に騎士が乗り上に逃げようとする者が現れた。
 サク王は息を殺し、最初の一人が壁の上に手を掛け上ったのを確認すると一気に壁の上に駆け上がり、最初に上がった騎士を蹴り落とし、さっさと逃げてしまった。

「この俺よりも先に逃げるとは不忠義な奴だ、焼かれるがいい」

 その行動を最後まで見届けたりゅーちゃんが魔法で火を消し、空から閉じ込められた騎士を見下ろした。
 騎士達は火が消えたことでホッと息を吐き、何が起きたのか辺りを見回していた。

「愚かなるセアキワ国騎士よ。俺は結(むすび)国丞相、りゅーである。
 降伏するのなら食事と寝床を用意しよう、歯向かうのなら骨の髄まで燃やしてくれる」

 騎士達は上空にいるりゅーちゃんの圧力にへたり込む。

「私は近衛兵団団長、ミサバタイと言う。
 降伏させて欲しい、頼める義理ではないが我が国民を頼む。救ってやって欲しい」

 そう言って頭を下げるその姿を見て、他の騎士たちも頭を下げていく。

「ふん。そこまで腐ってはいなかったようだな、良かろう。
 後から来る兵士に話を聞け」

 こうしてセアキワ国の士気が劇的に下がり、軍としての纏まりが無くなっていくのであった。

 旧ミューゼン領はかつて無い賑わいに満ちていた。
 りゅーちゃんと結の木と光の混合魔法ですくすくと作物は育ち、水魔法で大地は確りと潤っていた。
 りゅーちゃんから騎士団の捕縛の結末を旧ミューゼン伯爵領で間借りしている伯爵屋敷で聞いていた。 

「そっか・・・少しずつ進行していくしかないね~」

 りゅーちゃんが机の上に地図を広げ幾つかの色で進行ルートを書き入れた。

「ここまではそうだが、ここ、ザイビス領が元セアキワの穀倉地帯だったらしい。
 ここを手に入れて開発できればかなりの食料を生産できるだろう。
 ザイビスまでの辛抱だ」

 こうして、結達のセアキワ進行が始まったのだった。
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