迷宮に捨てられた○○、世界を震わせる

たぬまる

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龍人の国

兵士とその家族

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 結の村に3000のセアキワ兵が従属した事で急遽住居が必要になっていた。
 りゅーちゃんが集めた情報で、りゅーちゃんが有ったと思っていた龍尾族のゲントクが作った都市がセアキワとの国境沿いの険しい岩山の上に作られたのだとしたら、今の龍人族にはたどり着けない。もし誰も住んでいなければ自分達の物にしようと、りゅーちゃん率いる龍人族の冒険者達が捜索に向かっていった。

 丁度その頃、結達に許可を得て王都以外の場所に住む自分達の家族を説得に向かった。
 戻ってきた故郷は荒れ果て、かつての面影もない状態だった。

「どうしてこんな事に・・・」

 家族は兵士達の説得に驚くほどあっさりと応じた。
 もはや食べるものも無く、死を待つばかりであったためだろう。
 王都の兵士の家族も呼び寄せて移住したいと、戻った兵士達が願い出た。
 結はりゅーちゃんが戻ったら結論を出すとした。

 次の日りゅーちゃんが冒険者を率いて戻ってきた。

「おー、あったわ。もうボロボロで誰も住んでねぇ」

「じゃあ移住できそうなの?」

「ああ、かなり広い敷地だから、農業も出来そうだ。
 どうした?」

 ホッとしたような結に問いかけると。

「実はセアキワが大干ばつで、捕獲した兵士さん達の家族を助けたいんだって言われてて」

 結の言葉に近くに居た兵士達は身を縮こまらせて、りゅーちゃんをチラチラと見ていた。

「てめぇらコソコソすんじゃねぇ!あめぇ結に頼んで、てめぇらの意見を通そうとするんじゃねぇ!
 てめぇらは奴隷扱いだろうが!ぶっ殺すぞ」

 りゅーちゃんの怒りで地面が揺れ、雲が真っ二つに割れた。
 兵士達は腰を抜かし涙を流して許しを請うだけだった。
 
「てめぇらの家族も奴隷扱いだ!良いな!」

「ははふぃ」

 辛うじて兵士達から声が漏れたのを聞いて、苛立った様に地面を蹴り付けると、小さなクレーターが出来た。

「確り返事しろや!!」

「は、はい!」

 何とか声を出した後、次々に気を失う兵士達。

「りゅーちゃん優しいね」

「はぁ?結がもっとハッキリしねぇのも悪いんだろうが、ったく」

 後日、結が作り上げたハングライダー1000機で巨大な篭に兵士の家族を連れて岩山の街跡に運んでいった。
 結の魔法の練習がてら城壁の修復を任せて、りゅーちゃんは兵士とその家族を引き連れて建物の修繕と田畑の修復を始めた。

「なんなんだあの女は、ここまで来れば俺達でこの街をもらっちまおうぜ」

「そうだそうだ」

 そう言って反乱を起こそうとした家族が居たが、兵士達が必死に止める。

「助けてもらったんだぞ、俺達も死んでてもおかしくなかったんだ」

「だが、奴隷扱いはおかしいだろう」

「元とはいえ敵国の人間をそう簡単に信じるわけ無いだろう。
 しかも、みんな奴隷になることを承諾してここに居るんだから反乱なんてやめろ」

「何を言われようとやってやるよ、邪魔すんじゃねぇ」

 そう言って反乱を起こした179家族約800人がりゅーちゃんと結を討ち取るべく街を進んで行った。

「馬脚を現したな、愚か者が!」

「仕方ない、舐められるわけに行かないしね」

 そう言って結は作り上げた2メートルの大太刀の腹を真横に構えて振りぬいた。
 刹那、風の壁が反乱軍を一発で吹き飛ばす。

「さーて、誰に喧嘩売ったか教えてやるか・・・」

 二振りの剣を抜いて肩を回しつつ、倒れている反乱軍に突っ込んでいくりゅーちゃん。

「「ぎゃー」」

 反乱軍にとっては阿鼻叫喚の地獄が始まった。
 死にかけても回復させられ、再びボコボコにされる。
 誰も恐怖で逃げることも出来ず、体感で永遠に近いとも思える時間地獄が続いた。

「てめぇらの魂にまで恐怖を刻んでやるぞ」
 
 りゅーちゃんがあまりの速さに残像を残し、ほぼ一斉に800人蹂躙する様を見て反乱軍は恐怖し、兵士達が言っていた事を聞けば良かったと後悔したが遅かった。
 
 その後反乱を起こした家族は奴隷として街外れの崖付近に小屋を建てられ、畑とそこ以外行き来を禁止された。
 そして反乱を起こさなかった家族は奴隷から解放され、市民として受け入れられた。
 そして、反乱者の中には少なからず兵士も混じっており、反乱に加わらなかった兵士達も戦闘市民
として受け入れられたのだった。

 こうして数ヶ月、街の復興に時間をかけ充実した街が出来た。
 
 

 一方その頃のセアキワ王国

 この数ヶ月で食糧難はかなりの物となっていた。
 周りの国に助けを求めるも、今までの不義理や交流の少なさから援助はすずめの涙、全て王族や勇者の食事として消費されていた。

 暴動が各地で起こり、貴族の中にも独立を試みた者も居たが王国騎士に捕えられ、この日お披露目の刑罰に使われると発表があった。

 昼過ぎ強制的に王都の広場に集められた民衆の前で、背筋を伸ばした一人の貴族が連れてこられた。
 広場中央に巨大な鈍色の刃を携えた断頭台が設置されていた。

「ふん、ダニエル元伯爵。何か言い残す事はあるか」

 ニヤニヤと笑い問いかけるサク王子に、鋭い視線を向けると。

「王族達の無計画な行動がこの事態を悪化させているのだ。
 私が倒れても後に続く者が居るだろう!」

 市民に向けてそう言い放つ。
 その後固定具に拘束され、処刑されてしまった。
 首を刎ねるというあまりにも残酷な行為に、市民達は恐怖し怯え誰もが絶望した。

「お前達よく聞け、これを考案したのは私の勇者、雪である!つまりは勇者の断罪の刃だ。
 これは正義の象徴として、捉えた愚か者達を神の御許に送り、更生させるための道具である。
 これより、愚か者達が全て居なくなるまで毎日ここでこの時間に処刑を行う。
 楽しみにしているがいい」

 そう言ってサク王子は王城へと帰っていく。
 あまりに後味の悪い出来事に、徐々に王都から人が減り次第に寂れていくのだが、それはもう少し後の話。

 そして、怨嗟の声がりゅーちゃんと結に届くのはそう遠くない未来だった。

 
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