迷宮に捨てられた○○、世界を震わせる

たぬまる

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龍人の国

戦開始、その頃健人は

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 健人はボロボロの体を引きずりながら、薄暗い森の中を息を殺し逃げていた。
 勇者たる俺が何で?などと愚痴をこぼしつつ、身を隠して辺りを伺っていた。
 自分にとってあの戦いは悪夢でしかなかった。

「勇者の必殺技が効かないとかおかしいだろう」

 そう声を上げた瞬間、自分の後ろの茂みがガサゴソと揺れ、健人はビクッと震えた。

 
 正にその頃

 勇者を取り戻せとセアキワ国が軍を起こし、突如現れた巨大な壁に進軍が止まっていた。
 前回の進入時に無かった壁がたった4日だというのに、これほど頑強な壁が出来るとは思っていなかった。
 その建築力に驚いたセアキワ軍5000の陣容が貼り付けられたようになっていた。

「何なんだこの壁は!ただの土の癖に矢も刺さらんとは!」

「王子、侵入出来そうなのは、正面の鉄門だけのようです」

 苛立っているサク王子は怒鳴りつけるように

「ならばさっさと壊して来い!」

「は!」

 そう言って副官を追い出すと、雪が物陰から出て来て王子に背中から抱きつく。

「これで結ちゃんにオシオキが出来るのね♪」

「勿論だ、俺が雪の願いをかなえてやるぞ」

 そう言ってキスをする二人だが、二人の腹の内は違っていた。

”さっさと結を殺して置けば私より目立つこと無かったのに、色ボケ王子だけど私を引き立ててくれるしね”

”この戦、負けてもこいつの責任に出来るし、勝ったら俺の手柄に出来る。
 せいぜい利用してやるさ”

 そう思っていた矢先、不穏当な風切音が聞こえ兵達の悲鳴が木霊し始める。

 サク王子が天幕の外に出ると、矢と矢の間に付けられたネットに掴まった兵達がもがいているのが見え、慌てて周りを見ると矢が次々飛来してくるのが見える。

「こ、コレは?」

 強力な太い矢が地面に矢羽の部分までめり込み兵士を捕らえる様に、恐怖を覚え逃げ出そうとしたタイミングで、恐ろしい量の岩が逃げ道に飛来してくる。
 壁側の矢とネット、逃げ道側の飛来する岩石、正に逃げ場が無い状態だった。

「くっ前進だ!壁に近づけば矢は飛んでこぬ」

 そう言って副官が指示を出すと、兵士達が壁側に殺到したとたん壁から矢の間にロープを付けた矢が放たれ次々と吹き飛ばしていく。

「ばかなぁ!てったぁい!!撤退だ」

 頭に盾を乗せ逃げる騎士、兵士達はほぼ捕えられ、約3000もの兵士はこれから如何なるのだろうと恐怖を抱きつつ、回収が来るまでうな垂れたように時間が経つのを待っていた。

 雪達が逃げ出した頃

 木に手足を縛られた状態で健人は目が覚めた。
 自分を運んでいる毛深いゴリラ型のモンスターを鑑定すると

”穴掘りモホウコング LV87 モホウキング

 穴を見つけると掘らずには居られない習性を持ち、その力はコング系ではベスト3に入る
 そう、どんな穴でもだ”

 と出た。
 その瞬間顔を青ざめさせて暴れる健人の頬を優しくモホウキングが撫でると、熱烈なキスをされてしまう。

「い、いやだ、離せ、離せよ・・・誰か~助けてくれ、だすげでぐれよ~」

 必死に泣き喚き暴れるが、手足を縛られ吊るされた状態では力が出るはずも無く、最後は白目を向いて動かなくなってしまった。

「ウフォ❤」

 満足そうにモホウキングは頷くと巣穴に向かって再び進行し始めた。
 はたして健人の運命は如何に?
 

一方結の村では

「いやぁ~大量だったね。コレで労働力を確保できたよ」

「そうだな、コレで穴掘りはあいつらの仕事だ」

 結達の前に掴まってうな垂れているセアキワ国の兵士達が居た。

「結のレベルも上がっただろうし、テイムの能力も上がってないか?」

「ふぇ?」

 りゅーちゃんに聞かれてテイムの項目を調べてみた。

 LUCテイマーⅢ LUCの確立であらゆるものがテイム可能、なおLUCに応じてテイムした者を強化できる

 LUCスレイヴ  LUCの確立であらゆるものを奴隷化出来る、ルール指定はLUC×2個まで設定可能。

 LUCアーミー 自分もしくはテイムした者が指揮する軍隊は、体力魔力の回復量が秒間マスターのLUC分回復する。
 また、攻撃力、防御力もLUCの1/10アップする。

「「すご!」」

 思わずりゅーちゃんも声を上げて驚いてしまった。

「そんじゃコレで軍隊も出来るな」

「え?防衛用の戦力だよね?」

 結が不安そうに聞くと、りゅーちゃんはにやりと笑って

「当然だろう、防衛軍だし俺達は永世中立国だぜ。
 だが、手ぇ出されたら当然滅ぼすまでやるに決まってるよな?
 舐められたら終りだしな」

 反対されるかと思い、その後の言葉も準備していたりゅーちゃんだったが。

「そうだよね~おじさんも言ってたから、とことんしないとね」

「お、おう・・・」

 人差し指を口元に当てて結が何かを考えるように上を向き、少し時間が経った。

「じゃあセアキワ国は徹底的にしないとだね、早速準備していこうか?」

「え?お、おう、じゅ、準備は任せろ」


 こうして、結の村は報復処置としてセアキワ国への侵攻に舵を切ったのだった。
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