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龍人の国
抗うための準備
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セアキワ国を退けた3日目の朝、結達の元に女性冒険者達が集まって来た。
「どうしたの?みんな」
「朝っぱらから何だってんだ」
未だに眠そうで不機嫌そうに声を出すりゅーちゃんに、若干恐れる女性冒険者達。
それでも女性冒険者のリーダーが一歩前に出て、片膝を付いて頭を下げると、残りのメンバーもそれに習うように片膝を付く。
「皆で話し合ったんだ。3日前の戦闘でアタイ達はりゅーさんや結ちゃんについていこうと決めたんだ」
真剣にりゅーちゃん達を見つめる女性冒険者達に、りゅーちゃんは一瞬結を見つめ視線を戻すと。
「聞けよ、俺は結にティムされた絶対龍王「ソウ モウトク」。今はりゅーと名づけられている」
それを聞いて驚く者、よく解っていない者、だが龍人族の3人は腰を抜かし、地面に水溜りを作っていた。
「そ・・・ソウ モウトク」
乾いた口と喉が水分を求めるように口をパクパクと動かして、
「モウトク公は帰らずの迷宮に石化の呪いをかけられ封印されたはず・・・」
まるで死神でも見たかのような顔をした龍人族の冒険者はかすれた声を辛うじて出す。
「そうだな、確かに俺は封じられた。そして結に封印を解かれ、今ここに居る」
「ねぇ、こんな時に言って良いのか解らないんだけど、ソウ モウトクがりゅーちゃんの本名?」
空気が読めない子がここに居た。
「ああ、昔の名前だな。今はりゅーで良いぜ」
「御伽噺に出てくる、治世の能臣、乱世の奸雄って言われてる「大魔王 ソウ」の事?
実在したの?」
「あああああああ、アンタ何言ってるのよ!おだまり」
そう言ってそろりとりゅーちゃんの顔色を伺うが、気にした風も無く平然としている姿をみてほっと胸をなでおろす。
「確か、3つ前の龍人族の皇帝にあまりに苛烈な政策に反旗を翻され、一騎討ちの末に敗れた。
その時に「俺が復活したら龍人族を皆殺しにしてやる」って言って消滅したってお話だったよね?」
「ほぅ、あのプライドの高いチュータツの言いそうなことだ。
実際は皇帝に成りたがったチュータツが晩飯の時に呪いの粉を部屋に撒いて、重臣共々石にしやがったってだけだがな」
りゅーちゃんの思わぬ言葉に唖然とする龍人族の冒険者達。
「だが、俺が苛烈なのは間違いねぇわ。だからって龍人族を皆殺しは作りすぎだ」
そう言って屈託無く笑うりゅーちゃんにその場に居た全員が頷き
「かなり驚いたけど、やはり貴方達について行くわ。
あのセアキワ国には戻る気も無いし。
アタイ達を助けてくれた恩も有るからね」
そう言って不器用なウィンクをする女冒険者を、少し困ったような優しい笑みで見つめるりゅーちゃん。そして
「ねぇねぇ、いっその事こっちから仕掛けちゃおうか?」
「どうやってだよ!こっちはまだ9人だぞ、防衛位ならともかくどうやんだよ!」
「え~例えば、そこそこの村に健人を放すの。そのついでに井戸に下剤を投げ込むと・・・」
と手を口に当てて邪悪な笑みを浮かべる結。
「おま・・・」
ドン引きの女性冒険者と声を上げて固まるりゅーちゃん。
「お前は天才か!
確かにそうすれば、あいつが来たとたんとなるし、上手くすれば疫病神扱い・・・
更に噂が広まれば・・・ひひひ。
楽しそうだな」
”あんたらは天災だよ”と女子冒険者達が突っ込みを入れていた。
「ってまぁ冗談は置いておいて」
”冗談かい!”
「でもある程度仕返ししないとまた来るだろうし」
「そこでだ。あの森の奥に険しい岩山に挟まれた場所がある、そこを塞ぐ形で関を作ろうと思う」
りゅーちゃんが胸の谷間から地図を取り出すと、机の上に広げて指差して説明した。
「村の壁を作った時のような方法で良いんだよね?」
「ああ、人の胸ぐらいの所に巨大クロスボウを並べて設置し、壁の上には遠くまで届く何かがあれば良いんだが」
りゅーちゃんの期待に満ちた目を受けて結は
「巨大クロスボウを鋼も混ぜて作ったら飛距離が伸びるから威力も上がるし、矢と矢の間にネットを付けると広範囲で敵兵も捕獲できるよ」
りゅーちゃんは邪悪な笑みを浮かべて手をポンと叩くと。
「それ良いな。
捕らえた兵士を結がティムしたら、強くなるしな」
「え?そんな効果があったんだ」
効果を聞いて驚く結に呆れた顔を向けるとりゅーちゃんは
「自分のスキルぐらい把握してろよ、今の俺なら石化の呪いごとき無効に出来るぐらいだぞ」
「あはは、私には効果ないからね」
ズイッと前に女性冒険者達が出て来て
「結さん私達をティムしてください」
「ええ!!良いの?」
「「勿論です」」
あまりの勢いにビックリして纏めてティムしてしまう。
「す、凄い、何この力?一気にレベルが上がったような・・・」
その日7龍将と言われる女性冒険者達が誕生した。
「どうしたの?みんな」
「朝っぱらから何だってんだ」
未だに眠そうで不機嫌そうに声を出すりゅーちゃんに、若干恐れる女性冒険者達。
それでも女性冒険者のリーダーが一歩前に出て、片膝を付いて頭を下げると、残りのメンバーもそれに習うように片膝を付く。
「皆で話し合ったんだ。3日前の戦闘でアタイ達はりゅーさんや結ちゃんについていこうと決めたんだ」
真剣にりゅーちゃん達を見つめる女性冒険者達に、りゅーちゃんは一瞬結を見つめ視線を戻すと。
「聞けよ、俺は結にティムされた絶対龍王「ソウ モウトク」。今はりゅーと名づけられている」
それを聞いて驚く者、よく解っていない者、だが龍人族の3人は腰を抜かし、地面に水溜りを作っていた。
「そ・・・ソウ モウトク」
乾いた口と喉が水分を求めるように口をパクパクと動かして、
「モウトク公は帰らずの迷宮に石化の呪いをかけられ封印されたはず・・・」
まるで死神でも見たかのような顔をした龍人族の冒険者はかすれた声を辛うじて出す。
「そうだな、確かに俺は封じられた。そして結に封印を解かれ、今ここに居る」
「ねぇ、こんな時に言って良いのか解らないんだけど、ソウ モウトクがりゅーちゃんの本名?」
空気が読めない子がここに居た。
「ああ、昔の名前だな。今はりゅーで良いぜ」
「御伽噺に出てくる、治世の能臣、乱世の奸雄って言われてる「大魔王 ソウ」の事?
実在したの?」
「あああああああ、アンタ何言ってるのよ!おだまり」
そう言ってそろりとりゅーちゃんの顔色を伺うが、気にした風も無く平然としている姿をみてほっと胸をなでおろす。
「確か、3つ前の龍人族の皇帝にあまりに苛烈な政策に反旗を翻され、一騎討ちの末に敗れた。
その時に「俺が復活したら龍人族を皆殺しにしてやる」って言って消滅したってお話だったよね?」
「ほぅ、あのプライドの高いチュータツの言いそうなことだ。
実際は皇帝に成りたがったチュータツが晩飯の時に呪いの粉を部屋に撒いて、重臣共々石にしやがったってだけだがな」
りゅーちゃんの思わぬ言葉に唖然とする龍人族の冒険者達。
「だが、俺が苛烈なのは間違いねぇわ。だからって龍人族を皆殺しは作りすぎだ」
そう言って屈託無く笑うりゅーちゃんにその場に居た全員が頷き
「かなり驚いたけど、やはり貴方達について行くわ。
あのセアキワ国には戻る気も無いし。
アタイ達を助けてくれた恩も有るからね」
そう言って不器用なウィンクをする女冒険者を、少し困ったような優しい笑みで見つめるりゅーちゃん。そして
「ねぇねぇ、いっその事こっちから仕掛けちゃおうか?」
「どうやってだよ!こっちはまだ9人だぞ、防衛位ならともかくどうやんだよ!」
「え~例えば、そこそこの村に健人を放すの。そのついでに井戸に下剤を投げ込むと・・・」
と手を口に当てて邪悪な笑みを浮かべる結。
「おま・・・」
ドン引きの女性冒険者と声を上げて固まるりゅーちゃん。
「お前は天才か!
確かにそうすれば、あいつが来たとたんとなるし、上手くすれば疫病神扱い・・・
更に噂が広まれば・・・ひひひ。
楽しそうだな」
”あんたらは天災だよ”と女子冒険者達が突っ込みを入れていた。
「ってまぁ冗談は置いておいて」
”冗談かい!”
「でもある程度仕返ししないとまた来るだろうし」
「そこでだ。あの森の奥に険しい岩山に挟まれた場所がある、そこを塞ぐ形で関を作ろうと思う」
りゅーちゃんが胸の谷間から地図を取り出すと、机の上に広げて指差して説明した。
「村の壁を作った時のような方法で良いんだよね?」
「ああ、人の胸ぐらいの所に巨大クロスボウを並べて設置し、壁の上には遠くまで届く何かがあれば良いんだが」
りゅーちゃんの期待に満ちた目を受けて結は
「巨大クロスボウを鋼も混ぜて作ったら飛距離が伸びるから威力も上がるし、矢と矢の間にネットを付けると広範囲で敵兵も捕獲できるよ」
りゅーちゃんは邪悪な笑みを浮かべて手をポンと叩くと。
「それ良いな。
捕らえた兵士を結がティムしたら、強くなるしな」
「え?そんな効果があったんだ」
効果を聞いて驚く結に呆れた顔を向けるとりゅーちゃんは
「自分のスキルぐらい把握してろよ、今の俺なら石化の呪いごとき無効に出来るぐらいだぞ」
「あはは、私には効果ないからね」
ズイッと前に女性冒険者達が出て来て
「結さん私達をティムしてください」
「ええ!!良いの?」
「「勿論です」」
あまりの勢いにビックリして纏めてティムしてしまう。
「す、凄い、何この力?一気にレベルが上がったような・・・」
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