迷宮に捨てられた○○、世界を震わせる

たぬまる

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龍人の国

ギルド登録のち暴風

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 街に着くまでにバトルゴブリン11体、モンクコボルト8体を討伐していた。

「スカート姿では中身が見えてしまうな」

「中身言うな、でも確かに動きやすいけどチョッとなんだよね」

「はなのようせいみたいでわたしはすきだよ」

 とりあえず街に着いたら服をりゅーちゃんのような服に替えようと思う結。
 検問の順番が回ってきた。

「この街には何をしにきた」

「えっと「こいつを冒険者ギルドに登録するためだ」そうそう」

「この子か?まだ子供ではないか?とても冒険者が出来るとは思えんが」

「では、証明すれば良いのか?」

 交渉を完全にりゅーちゃんに任せて、後ろで見ていると

「結、この門番と試合をしろ、勝ったら納得してくれるそうだ」

 結は篭手とレッグアーマーを外すと、待ち構えている門番と対峙する。
 入門を待っていた列の龍人達も興味深げに見ていた。

 結は映画で見た拳法の動きを思い出しながら、腰を落として左手を前に突き出し右手を顎の前に置く構えをとった。

「ほぅ」

 りゅーちゃんは感心したような声を上げる。門番も右手と左手を縦に交差させ腰を落とす。

 後ろ足を大きく踏み込むと、一瞬で距離を詰め、右手を真っ直ぐ突き出すと、門番は勢いをそらすために内側から外に向けて二の腕を当てるが、勢いをそらすことも出来ず吹き飛ばされた。

「ぐはぁ」

 両膝を付いて意識を失いそうになるが、ぎりぎりで踏みとどまる。

「ぐ・・・ご、合格だ、防衛騎士団からの推薦状も書こう」

 そう言い残すと他の門番に肩を借りて詰め所に入っていった。

 結はその後、防衛騎士団の推薦状を貰い無事入場する事が出来た。

「やるな、急に格闘家らしい動きになっていたぞ」

「そう?前に見た映画の動きを真似したんだけど使えそうね」

 結は記憶力に優れていた。そのお陰で飛び級も出来たし、サイコロを含めた技術なども一度見ただけで吸収する事が出来た。
 その事をある程度隠してはいたが、この世界では隠す必要も無くなったので、自由に能力を活用できると喜んでいた。

「これならある程度力加減を覚えれば十分冒険者としてやっていけるな」

「手加減ぐらい出来るよ」

「あれは無意識でやっていたのではないのか?」

 結の言葉に驚くりゅーちゃんを他所に、結は大きな建物を指差して

「あれが冒険者ギルドかな?」

「あ、ああそうだ、早速登録に行くぞ」

 気を取り直して二人は冒険者ギルドの扉を開いた。
 ギルドの中には数人の冒険者が昼から酒を飲んでいて、他の冒険者は出払っているようであった。

「らっしゃいませ、冒険者ギルド、セイト支部へようこそ」

「登録を頼む、俺とこいつだ」

 そう言って推薦状を差し出した。

「しょ、少々お待ちください」

 そう言って裏で上司と推薦状を確認しながら、「あんなに小さい子を冒険者に?」
「でも推薦状は本物ですよ」などと聞こえてきた。

「お、お待たせしました。
 此方が登録書類になっています」

 名前と年齢、メインスキルを書くだけで簡単に登録出来たことに結は驚いたが、りゅーちゃんは平然としていた。

「ギルドの説明は必要ですか?」

「頼む」

 受付穣の説明を纏めるとこんな感じだ。

ランキングはG~SまでありGは登録したて一ヶ月真面目に依頼をこなせばFになり、そこからはクエストポイントによって上昇していく。Cからは貴族と同じ扱いになるため礼儀作法の試験があるという。

「早速だが、これの買取を頼む」

 りゅーちゃんは皮袋からバトルゴブリンとモンクコボルトの魔石を出すと、受付嬢は唖然としたが、直ぐにポーカーフェイスの笑顔に戻って、計算を始めた。

「バトルゴブリンの魔石11、一個20銀貨なので220銀貨、モンクコボルトの魔石8、一個50銀貨なので400銀貨、合計が620銀貨になります、此方をどうぞ」

 二人はその後、今日の分としてゴブリン3匹の討伐の依頼を受けることにした。
 受付に聞くと、バトルゴブリンでもゴブリンと名前がつけば良いとの事。新人はゴブリンを探して
狩るのだが、実力が伴えばゴブリンであれば基準が無いそうだ。

「じゃあ、早速行ってみるか」

「うん、あ、その前に服買いに行かないと」

「ちっ面倒な、ならさっさと買いに行くぞ」

 結の服装は赤地に金刺繍で描かれた不死鳥がド派手なチャイナ服と白の綿パンにした。

「うふふ、私最強な気がしてきたよ♪」

「じゃあ、早速ゴブリンを規定以上に狩って見せてくれよ」

 その日西の森でバトルゴブリンの集落が消滅したという。

「何で、一日でこんなに魔石を持ってこれるんですか!」

 可愛らしい受付穣の叫びは誰にも聞かれることは無かった。


次の日

 少し遅めの朝に結達は依頼を探しにやってきたが、ギルド内は不穏当な空気に包まれていた。

「おいハゲ鷹共、今日という今日はゆるさねぇ」

「ふん!ハイエナが誰かが潰した集落からゴミを漁って来て偉そうにすんじゃねぇよ」

 2~30人の冒険者がにらみ合う中、全く意に介さず依頼ボードまで行く二人に受付はハラハラしていた。

「これ良くない?」

 誰が貼ったのか、りゅーちゃんが手に取った依頼書には

”お願い!ハゲ鷹とハイエナの抗争を止めて
金貨10枚”

と書いてあった。

「でもハゲとハイエナって何処に居るんだろう?」

「あれじゃね?」

 そう言って指を刺す(誤字にあらず)りゅうちゃん。
 りゅうちゃんに頬を突き刺された男はもんどりうって悲鳴を上げる。

「これ受けるよ」

「あの~危険ですよ、彼らはDランクばかりのクラウンですし」

「あ、やっぱりそれがハゲ達だって~」

「誰がハゲだこら!」

 つるつるの頭の男が顔を真っ赤にして怒鳴り返すが、

「じゃあ、今日は俺がやるよ、かる~くな」

 そう言ったとたん男達は宙を舞い、白目をむいて降って来る。

「はや!昨日の私の事怒れないよね?」

「は?魔物と人間は別だろうよ。魔物はいたぶっても最後は消えるんだから、練習に良いだろ?
 人間は消えないし、軽くコツくだけで死じまうんだ、手早く刈り取るのが生かすコツだろう?」

「後二人残ってるし、壁にヒビ入ってるよ、弁償とか言われたら・・・」

「大丈夫。お財布なら、そこらに転がってんじゃねぇか」

「なぁ!」

 残されたリーダ二人は青ざめてコクコクと頷くしか出来なかった。
 しかし、りゅーちゃんの追撃はそこで止まらない。

「ってかよ、お前らが暴れねぇって約束しねぇとよう、解決になりそうにねえな!
ああ!」

「「暴れません・・・俺達なかよしです」」

 二人ともりゅーちゃんに肩を抱かれ消え入りそうな声で約束すると。

「うし!解決だな!ほら」

 そう言って二人に手を出すりゅーちゃん。
 二人は怯えながら手を取ろうとするが、

「違うだろう!迷惑料だよ、ギルドと俺達とな」

「ひぃ」

「だ、出します」

「おう、物分りがいいな、それが長生きのコツだぞ」

 そう言って二人からクラウンの貯蓄から90%今居る奴らの財布の全額を授業料として貰うと

「解決したぜ~あ、これ迷惑料と修繕費な、あと昨日みたいにゴブリンの討伐受けるからよろしく~」

 そう言ってご機嫌にギルドを出て行く二人の姿を、呆然と見送る意識ある二人と、受付嬢たち。
 この日以来、誰もギルド内で争う者は居なくなったという。
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