迷宮に捨てられた○○、世界を震わせる

たぬまる

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龍人の国

二人のちょっとした過去

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 結達が転移魔方陣を抜けると眼下に竹林が広がる小高い丘の上に出た。

「わー中国みたいだね」

「なんだそれは?」

「なに~」

「私の居た世界の国の名前だよ、ってりゅーちゃん!」

「なんだ?」

 結が振り向いた先に紫色の長い髪を頭の左右でお団子にしたカッコ綺麗な女性が立っていた。

「人型になってる」

「当たり前だろう、あの姿でもドラゴンはドラゴン、怖がられるだけだ」

 夜を服にしたような黒地に輝くスパンコールが星の様に見えるチャイナドレスを纏っていた。

「あ、なるほど、じゃあピーちゃんも」

「ピーはまだ人化が出来るレベルじゃない、それにスライムは脅威と思われないぞ」

「そっか、街は何処だろう?」

 りゅーちゃんは目を閉じあたりの気配を探る。

「ごしゅじん~、モンスターがくるよ」

 ピーちゃんの声に振り向くと緑色の巨体を揺らしながら4体のモンスターがコッチに向って駆けて来た。

「うえぇ、気持ち悪い、倒そう」

 集中しているのか、りゅーちゃんは意に介した風もなく目を閉じ続けている。

 鑑定を忘れてたと思いモンスターを鑑定してみると。


 バンブーオーガ LV29

力 77 知 1 精 18 技 20 精 12 速 45 運 1

スキル

頑強 LV2 棍棒術 LV3 馬鹿力 LV7

竹林に住む危険な魔物で竹のような柔軟な肉体を持ち、攻撃力が異様に高く、知能が低い。
魔物ランクB 騎士団長やAクラスの冒険者でやっと勝てるぐらい。


 え?これでB?私はどうなってるんだろう?と少し驚いていた。

「がぁぁぁぁ」

 バンブーオーガは手に持った竹の棒を結に向って振り下ろす。それを結は片手で止め、胸に正拳を叩き込むと上半身が爆散してしまった。

「え?え~!!」

 ヒヒイロガネの篭手と吹き飛んだモンスターを何度か目線を往復させて驚くが、今はそれどころじゃないと思いなおして、残りのバンブーオーガに拳を振るう。
 拳が当たった端から吹き飛んでいくバンブーオーガは1分ぐらいで片がついてしまった。

「私、人外・・・ま、いいか♪弱いより強いにこした事ないしね」

「全く・・・すでに力だけなら俺を超えてるな」

 バンブーオーガのドロップアイテムを拾いながら呆れたようにりゅーちゃんが歩いてきた。

「あ、お疲れ!どう?街の場所解った?」

「ああ、アッチの迂回道を行けばそこそこの街があるみたいだ」

 そう言って少し離れた所を通る道を指差した。

「え~なら竹林を抜けたほうが良くない?」

「竹林は歩きにくい上に、迂回道を行くよりも遥かに時間がかかる」

「そっか、じゃぁ行くよ」

 気がついたら、ピーちゃんは疲れて結の頭の上で寝ていた。

 暫く進むと、日が傾き始めたので、そろそろ休もうかと言う話しになったが。

「じゃあ俺は食い物と薪を探してくるとしよう」

「え?なんで?家で寝ようよ」

「この道の何処に家があるというんだ」

「えへへ、私のスキル」

 そう言って胸を張る結にジト目を向けると

「無い胸を張っても虚しいだけだろう」

 と自慢げに自分の胸を強調してみせるりゅーちゃん

「ぐ、無いわけじゃないもん・・・まだ12だしこれから育つもん」

 胸を押さえながらそういって羨ましそうにりゅーちゃんの胸を見る結は、りゅーちゃんにとって可愛く思えた。

「なんだ、もう12か?てっきり10歳ぐらいだと思ったぞ」

「どうせチッチャイですよ」

 そんな会話をしながら三人は異次元自宅に帰って行った。

 異次元自宅の間取りは4LDKでかなり広い間取りになっていた。
 家具家電は無いので、一先ず料理は外でする事になった。

「あれは良い空間だな、家具を入れればノンビリ過ごせる」

「確かにね、料理が外って事以外はお風呂もあるし、トイレもね」

「そうだな、外でしなくて良いのは助かる。熱い季節だと尻など虫に刺されるからな」

「ちょっと、なんて話してんのよ」

「あはは、今は結と我しか居らぬから気兼ねなく話が出来る」

 そう言ってりゅーちゃんが笑うと、結も笑い

「私、前の世界で飛び級して高校生になったんだよね
 それでさ、回りや親も変な目で私を見るわけ。りゅーちゃんと話すみたいに気軽に話をする相手も居なかったんだ。
 だから楽しい」

 そう言ってニッコリと笑う結の頭をりゅーちゃんは少し乱暴に撫でると。

「飛び級の意味は何となくしか解らんが、確かに周りと違うと奇異の目で見られるな。俺もそうだ、あまりに強すぎて、親にも恐れられた。
 仕舞には世界を滅ぼすだの言われて街を追われた。
 だから気持ちはわかるぞ!」

「な~んだ似たもの同士か、これからも宜しくね」

 満天の星空の下、二人は何かが触れ合った気がした。


 次の日、朝から迂回道を歩く二人と一匹は楽しそうに話しながら歩いていた。
 昨日よりも距離が近くなったりゅーちゃんと結は、お互いの事も話せるようになっていた。
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