迷宮に捨てられた○○、世界を震わせる

たぬまる

文字の大きさ
上 下
2 / 26
龍人の国

二人のちょっとした過去

しおりを挟む
 結達が転移魔方陣を抜けると眼下に竹林が広がる小高い丘の上に出た。

「わー中国みたいだね」

「なんだそれは?」

「なに~」

「私の居た世界の国の名前だよ、ってりゅーちゃん!」

「なんだ?」

 結が振り向いた先に紫色の長い髪を頭の左右でお団子にしたカッコ綺麗な女性が立っていた。

「人型になってる」

「当たり前だろう、あの姿でもドラゴンはドラゴン、怖がられるだけだ」

 夜を服にしたような黒地に輝くスパンコールが星の様に見えるチャイナドレスを纏っていた。

「あ、なるほど、じゃあピーちゃんも」

「ピーはまだ人化が出来るレベルじゃない、それにスライムは脅威と思われないぞ」

「そっか、街は何処だろう?」

 りゅーちゃんは目を閉じあたりの気配を探る。

「ごしゅじん~、モンスターがくるよ」

 ピーちゃんの声に振り向くと緑色の巨体を揺らしながら4体のモンスターがコッチに向って駆けて来た。

「うえぇ、気持ち悪い、倒そう」

 集中しているのか、りゅーちゃんは意に介した風もなく目を閉じ続けている。

 鑑定を忘れてたと思いモンスターを鑑定してみると。


 バンブーオーガ LV29

力 77 知 1 精 18 技 20 精 12 速 45 運 1

スキル

頑強 LV2 棍棒術 LV3 馬鹿力 LV7

竹林に住む危険な魔物で竹のような柔軟な肉体を持ち、攻撃力が異様に高く、知能が低い。
魔物ランクB 騎士団長やAクラスの冒険者でやっと勝てるぐらい。


 え?これでB?私はどうなってるんだろう?と少し驚いていた。

「がぁぁぁぁ」

 バンブーオーガは手に持った竹の棒を結に向って振り下ろす。それを結は片手で止め、胸に正拳を叩き込むと上半身が爆散してしまった。

「え?え~!!」

 ヒヒイロガネの篭手と吹き飛んだモンスターを何度か目線を往復させて驚くが、今はそれどころじゃないと思いなおして、残りのバンブーオーガに拳を振るう。
 拳が当たった端から吹き飛んでいくバンブーオーガは1分ぐらいで片がついてしまった。

「私、人外・・・ま、いいか♪弱いより強いにこした事ないしね」

「全く・・・すでに力だけなら俺を超えてるな」

 バンブーオーガのドロップアイテムを拾いながら呆れたようにりゅーちゃんが歩いてきた。

「あ、お疲れ!どう?街の場所解った?」

「ああ、アッチの迂回道を行けばそこそこの街があるみたいだ」

 そう言って少し離れた所を通る道を指差した。

「え~なら竹林を抜けたほうが良くない?」

「竹林は歩きにくい上に、迂回道を行くよりも遥かに時間がかかる」

「そっか、じゃぁ行くよ」

 気がついたら、ピーちゃんは疲れて結の頭の上で寝ていた。

 暫く進むと、日が傾き始めたので、そろそろ休もうかと言う話しになったが。

「じゃあ俺は食い物と薪を探してくるとしよう」

「え?なんで?家で寝ようよ」

「この道の何処に家があるというんだ」

「えへへ、私のスキル」

 そう言って胸を張る結にジト目を向けると

「無い胸を張っても虚しいだけだろう」

 と自慢げに自分の胸を強調してみせるりゅーちゃん

「ぐ、無いわけじゃないもん・・・まだ12だしこれから育つもん」

 胸を押さえながらそういって羨ましそうにりゅーちゃんの胸を見る結は、りゅーちゃんにとって可愛く思えた。

「なんだ、もう12か?てっきり10歳ぐらいだと思ったぞ」

「どうせチッチャイですよ」

 そんな会話をしながら三人は異次元自宅に帰って行った。

 異次元自宅の間取りは4LDKでかなり広い間取りになっていた。
 家具家電は無いので、一先ず料理は外でする事になった。

「あれは良い空間だな、家具を入れればノンビリ過ごせる」

「確かにね、料理が外って事以外はお風呂もあるし、トイレもね」

「そうだな、外でしなくて良いのは助かる。熱い季節だと尻など虫に刺されるからな」

「ちょっと、なんて話してんのよ」

「あはは、今は結と我しか居らぬから気兼ねなく話が出来る」

 そう言ってりゅーちゃんが笑うと、結も笑い

「私、前の世界で飛び級して高校生になったんだよね
 それでさ、回りや親も変な目で私を見るわけ。りゅーちゃんと話すみたいに気軽に話をする相手も居なかったんだ。
 だから楽しい」

 そう言ってニッコリと笑う結の頭をりゅーちゃんは少し乱暴に撫でると。

「飛び級の意味は何となくしか解らんが、確かに周りと違うと奇異の目で見られるな。俺もそうだ、あまりに強すぎて、親にも恐れられた。
 仕舞には世界を滅ぼすだの言われて街を追われた。
 だから気持ちはわかるぞ!」

「な~んだ似たもの同士か、これからも宜しくね」

 満天の星空の下、二人は何かが触れ合った気がした。


 次の日、朝から迂回道を歩く二人と一匹は楽しそうに話しながら歩いていた。
 昨日よりも距離が近くなったりゅーちゃんと結は、お互いの事も話せるようになっていた。
しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

無才印の大聖女 〜聖印が歪だからと無能判定されたけど、実は規格外の実力者〜

Josse.T
ファンタジー
子爵令嬢のイナビル=ラピアクタは聖印判定の儀式にて、回復魔法が全く使えるようにならない「無才印」持ちと判定されてしまう。 しかし実はその「無才印」こそ、伝説の大聖女の生まれ変わりの証であった。 彼女は普通(前世基準)に聖女の力を振るっている内に周囲の度肝を抜いていき、果てはこの世界の常識までも覆し——

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...