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アレス編 1日目
一日の終わり
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アーリアの通信でややこしい事になりそうだったので、アーリアの着けている指輪に向かって転移を行なった。
俺が転移を終らせると、ぽかーんとしたアーリアと身なりの良い見たことの無いおじさん二人がいた。
「詳しい話を聞きに来たんだが……大丈夫か?」
「は!アレス様?どうやって此処に?」
アーリアが俺の手を握って目をウルウルさせて見上げてくる。
「ああ、転移魔法で来たんだ。
そのほうが早いだろう?」
この転移魔法でも元の「オリンポスファンタジー」に戻る事は出来なかったが、場所の移動はちゃんと出来た。
それがゲームだと感じるはずなのに、本能が恐ろしいほど現実感を感じて、どうしてもこの世界が現実だと理解してしまう。
「転移魔法はもう使える者が居なくなって久しいのですが、それを使えるだなんて流石です」
「おにゅ……ゴホン、お主は伝説級の魔法を使えて、アーリアちゃんに簡単にアーティファクトを渡せるほどの冒険者なのか?」
誰だ?雰囲気的にはアーリアの父親か?顔は似てないから母親似なのかな?
「何処までが伝説級なのか解らないが、大体の魔法は使えるよ。
アーティファクトって言っていたが、マジックアイテムなら作ることが出来るから……
う~ん、俺の気が向く限りは無限かな?」
俺の答えに国王?は顎が外れそうなほど口を開いて固まり、部屋の隅に居た地味めの顔のおじさんがオズオズと右手を上げて
「あ、あ、あの……アーリアの叔父のオルキドって言うんだけど……たとえばだけど、この指輪に魔法を付与出来るって事なのかな?かな?」
オルキドが差し出してきた指輪を鑑定すると
”ルビーの指輪 拡張:☆☆☆-―
素材:銀、ルビー
サーキッド公爵家当主の証”
「出来るよ、何が良い?」
俺がそう答えると、ビックリしたような顔を俺に向け、キラキラした目をして
「で、出来ればもう少し存在感が欲しいんだけど……」
「後は?2つ付けれるけど」
「え、えっと……自信が欲しいかな、後は……おススメでお願いしても良いかな?」
「了解」
”エンチャント「オーラアップ」「ライオンハート」「ブレス・オブ・ブルーフレイム」”
俺がエンチャントを実行すると、黄金の魔法陣が3つ中空に浮かび上がり、次々に指輪に入っていく。
”ルビーの指輪 拡張:★★★--
素材:魔法銀、スタールビー
サーキッド公爵家当主の証
付与:オーラアップ、ライオンハート、ブレス・オブ・ブルーフレイム”
よし、ちゃんと出来た。
俺が出来たばかりの指輪を差し出すと、オルキドはオズオズと受け取って緊張した面持ちで指輪を嵌めた途端。
「う…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「オルキド!」
「叔父様!」
国王?が慌ててイスから腰を浮かせ、アーリアは驚いて一歩前に出たが。
「兄上大丈夫です!これは凄いですよぉ、怖くない!何より自信が湧いてきます!」
自信に満ちた顔をしたオルキドは、さっきまでと打って変わって存在感も増し、すがすがしい笑顔を浮かべていた。
「だ、大丈夫なのか?」
「勿論ですよ!アレス君に感謝です!生まれて初めてこんなに自信が出て来ていますからね!」
「な、なら良いのだが、そういえば魔法の効果を聞いても?」
オルキドから目を離して俺に問いかける国王。
「ああ、オーラアップはオーラを外から吸収して、装備者のオーラを増やし存在感を上げると同時に防御力を40%に上げる効果があるんだ、本来はガーディアン向けのスキルだな。
ライオンハートは性格補正に勇敢を付与して、攻撃力を15%上げ、防御力を10%下げる効果がある。
ブレス・オブ・ブルーフレイムは民を守るときに限り、攻撃力と防御力が4倍になる特殊魔法だよ」
「あ?なぁぁぁぁぁぁぁ!にぃぃぃぃぃぃ!
何だその壊れ性能は!ぶっ壊れすぎだろう!!!!」
「あ、あの、アレス様。そんなに簡単にアーティファクトを超えられると価値観が壊れそうですわ」
あ?この世界だとこれでぶっ壊れ性能なんだ……薄々は気がついていたが……
じゃあこれ出すの不味いかな?
”ロード・オブ・ロード 拡張:★★★★★★★★★★
素材:オリハルコン、全能神の神石、12神の血、10属性の煌石
神すら超え全ての世界において頂点である証、全ての武器に変形する事が出来る不壊付きの武器
所有者固定:アレス
オールマジックLVUP極大
HP自動回復極大
MP自動回復極大
オールジョブ性能UP極大
魔法性能UP極大
復活魔法習得
レギオンの主”
これは「オリンポスファンタジー」内において唯一のワールドアイテム(世界改変道具)で「オリンポスファンタジー」初のランキング1位になった時に挑戦できた全能神ゼウスを倒した時に手に入れたアイテムを3年の時間をかけて強化して完成させた最強の武器だ。
全能神ゼウスに挑戦できたのは最初の上位3名だけ、そして勝利したのは俺だけだった。
間違いなく「オリンポスファンタジー」最強の敵キャラで、あまりの強さに運営が二度と出しませんと言ったほどだ。
俺は何となく腰に付けたロード・オブ・ロードを撫でると、国王が鑑定のメガネをつけて視ているのに気がついた。
俺が声をかけようとした途端、鑑定のメガネがはじけ飛び、国王が目を抑えて転がり悶えた。
「人の持ち物を勝手に鑑定しようとするからだ、まったく……」
「ぐおぉぉぉ、そ、それはいったい何なのだ?」
国王は涙目になりながら俺を見上げつつ、床を何度も叩いて問いかけてきた。
「自分の名前も名乗らない、高圧的な奴に教えるわけ無いだろう。
もう、俺とお前との縁は綺麗に消えた、たとえ国王だろうが俺は許す気はない!」
「そうですわ、ご挨拶も出来ないお父様なんて嫌いです。
私とのご縁も切れたと思いますわ」
俺とアーリアの口撃で身体をビクンとさせた国王は、慌てて身体を起こすと
「ワシは「残念ながら聞く気がない」だ」と、俺は国王の言葉にかぶせて拒否をした。
唖然としたように国王がこちらを見るが無視しよう。
「アーリア、今からお兄さんをボコボコにしに行くが良いか?」
「ええ、かまいません、思い切り教育してあげてください」
「僕からもお願いするよ!!どうもジキルドは我侭が過ぎるように思うからね、からね!」
二人の許可を取ったので、俺は宿屋の前で待つことにすると伝えて転移した。
「あの~パパは……」
おっかなビックリに問いかけた国王は、アーリアの冷たい視線で固まると
「横暴な何処かのミケーネ帝国の帝王よりも悪質で横暴なお父様なんて知りません!
私キプロス・ポリスで独立いたしたいです。
全くもって恥ずかしい」
「まったくだね!兄上は少しでも反省するべきだと思うよ、思うよ!!」
何の反論も出来ない国王であった。
俺がアネモイを連れて宿の外で待っていると、国王に似た彫りの深いゴリマッチョが200位の兵を率いてやってきた。
アネモイは悪い笑みを浮かべると、楽しそうに鎌の柄を数度地面を叩き音を鳴らした。
「マスター、半分意識を狩り、半分殺してもよろしいですか?」
あ~キレてるけど少し冷静だな、此処で止めるとややこしくなりそうだな……しかし
「アーリアとの約束でボコボコにするのは良いんだが、殺すのは無しで頼む。
生きていればどんな状況でもいいから……な?」
アネモイは美しい礼をして、顔を上げた。
「勿論マスターのオーダーに従います。ただし……精神は死ぬかもしれませんが」
「ま、それぐらいならかまわないだろう」
俺達が兵士の処理を話し合っているとゴリマッチョ……確かジキルドだったな、が前に出て来て偉そうに腕を組んで俺を睨みつけてきた。
「お前がアレスか!貴様の持つ全てのアーティファクトを寄こせ!さもなくば反逆罪でこの場で殺してやるぞ!」
俺がそれに答えようとしたら、アネモイがそっと耳打ちをしてきた。
「マスター、こういった輩は話し合いなど無用です。此処は私にお任せください」
現実で召喚したからか「オリンポスファンタジー」では解らなかったアネモイの柔らかなローズの香が俺の鼻をくすぐり、少しドキドキしてしまう。
そのドキドキを隠すように鷹揚にうなずいてみせると、華の様な笑顔を浮かべたアネモイがジキルドと俺の間に立ち
「マスターは貴様ごとき子供と話される舌をお持ちではありません。
夢はベッドで見なさい。この愚か者が」
静かに毒を吐くアネモイに、顔を赤くしたジキルドがアネモイを指差して唾が確実に飛んでいるのが解るほどの醜態を晒して。
「こ、この女と男を殺せぇ!!
この俺を馬鹿にして生きていられると思うなよ!!」
しかし、アネモイにその命令は手遅れだよ。
俺はついつい意地の悪い笑顔を浮かべて、可愛そうな犠牲者に視線を送った。
「では折角夢を見てらっしゃるのデスから、この夢もお楽しみください」
兵士が武器をかまえた途端、芝居がかった礼をすると、影や暗くなっている所から闇が伸び、あっと言う間に兵士達を包み込む。
その闇の中から絶叫じみた悲鳴が上がり、武器がぶつかり合う音が聞こえた。
ジキルドは何が起きているのか解らず、うっすらと汗をかき、腰の剣を抜いてアネモイに突きつけた。
「何をした!俺はこの国の王子であり、お前が攻撃しているのはこの国の兵だ!大人しくしろ!!」
「は?何を言ってるんでしょうか?武器を構えて敵対行動を取れば、王子だろうが国の兵だろうが関係ないでしょう?
……特にマスターに無礼を働いたのです、滅びなさい」
俺はアイテムボックスからスイングチェアーとテーブルを出して、腰を降ろしてゆったりともたれると、アネモイが紅茶を入れてくれた。
「ありがとう」
「お待たせして申しわけありません、今しばらくお待ちを」
アネモイは柔らかな笑みを浮かべてジキルドに向き直ると、指を鳴らして闇のドームを解除した。
そして、その後にはだらしなく口をあけて涎をたらしたり、地面に両手をついてブツブツとわけの解らない事を呟く兵士達が居た。
「お、おおおおぉぉぉぉぉぉお前達どうした!何がおきたのだ!!」
ジキルドの問いに全く反応しない兵士達。
あ、完全に精神を殺したな……まぁ良いけど、ジキルドにはどうするのかな?
「マスターの御前です、何時まで立ってバカ面を晒しているのですか?」
そう言っている間にもアネモイがジキルドの両足をへし折り、両腕を曲がらない方へ曲げて行く。
「がぁぁ、お、俺の腕が……いだい」
泣きながら地面に頭をつけるジキルド、少しやりすぎの気もするがこうなっては仕方が無いな。
「マスターのお言葉を聞け、聞けないならそんな耳要らないですね?」
「ぎぎまず、ぎぎまずがら」
ジキルドは涙と鼻水で顔をグシャグシャにして俺に顔を向けたが
「マスターのご尊顔を拝するのは1000年早いデスわ」
そう言ってアネモイはジキルドの頭を踏みつけて真下に向くようにした。
「あ~今回の件はアーリアも承諾済みだ、二度とバカな事は考えるなよ」
「がい、もうじまぜん」
ジキルドの返事を聞いたので、ジキルドの痛みをとって、攻撃したら即折れるようにヒビを入れた状態で回復させて、兵士はどうにか動けるぐらいに回復させた。
アネモイの与えたトラウマは治らないが。
「すきありぃぃ!ごあ」
いきなり立ち上がって剣を振り下ろそうとしたが、あっさりと両腕と両足が再び折れてグシャっと地面に再び倒れるジキルド。
「あががが、だずけでぐだざい」
涙を流して懇願してくるが
「バカだな……助ける気も起きないぞ。
帰るからお前らこの生ごみを持って帰れよ」
そう言ってその日は宿の部屋でゆっくり休む事にした。
俺が転移を終らせると、ぽかーんとしたアーリアと身なりの良い見たことの無いおじさん二人がいた。
「詳しい話を聞きに来たんだが……大丈夫か?」
「は!アレス様?どうやって此処に?」
アーリアが俺の手を握って目をウルウルさせて見上げてくる。
「ああ、転移魔法で来たんだ。
そのほうが早いだろう?」
この転移魔法でも元の「オリンポスファンタジー」に戻る事は出来なかったが、場所の移動はちゃんと出来た。
それがゲームだと感じるはずなのに、本能が恐ろしいほど現実感を感じて、どうしてもこの世界が現実だと理解してしまう。
「転移魔法はもう使える者が居なくなって久しいのですが、それを使えるだなんて流石です」
「おにゅ……ゴホン、お主は伝説級の魔法を使えて、アーリアちゃんに簡単にアーティファクトを渡せるほどの冒険者なのか?」
誰だ?雰囲気的にはアーリアの父親か?顔は似てないから母親似なのかな?
「何処までが伝説級なのか解らないが、大体の魔法は使えるよ。
アーティファクトって言っていたが、マジックアイテムなら作ることが出来るから……
う~ん、俺の気が向く限りは無限かな?」
俺の答えに国王?は顎が外れそうなほど口を開いて固まり、部屋の隅に居た地味めの顔のおじさんがオズオズと右手を上げて
「あ、あ、あの……アーリアの叔父のオルキドって言うんだけど……たとえばだけど、この指輪に魔法を付与出来るって事なのかな?かな?」
オルキドが差し出してきた指輪を鑑定すると
”ルビーの指輪 拡張:☆☆☆-―
素材:銀、ルビー
サーキッド公爵家当主の証”
「出来るよ、何が良い?」
俺がそう答えると、ビックリしたような顔を俺に向け、キラキラした目をして
「で、出来ればもう少し存在感が欲しいんだけど……」
「後は?2つ付けれるけど」
「え、えっと……自信が欲しいかな、後は……おススメでお願いしても良いかな?」
「了解」
”エンチャント「オーラアップ」「ライオンハート」「ブレス・オブ・ブルーフレイム」”
俺がエンチャントを実行すると、黄金の魔法陣が3つ中空に浮かび上がり、次々に指輪に入っていく。
”ルビーの指輪 拡張:★★★--
素材:魔法銀、スタールビー
サーキッド公爵家当主の証
付与:オーラアップ、ライオンハート、ブレス・オブ・ブルーフレイム”
よし、ちゃんと出来た。
俺が出来たばかりの指輪を差し出すと、オルキドはオズオズと受け取って緊張した面持ちで指輪を嵌めた途端。
「う…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「オルキド!」
「叔父様!」
国王?が慌ててイスから腰を浮かせ、アーリアは驚いて一歩前に出たが。
「兄上大丈夫です!これは凄いですよぉ、怖くない!何より自信が湧いてきます!」
自信に満ちた顔をしたオルキドは、さっきまでと打って変わって存在感も増し、すがすがしい笑顔を浮かべていた。
「だ、大丈夫なのか?」
「勿論ですよ!アレス君に感謝です!生まれて初めてこんなに自信が出て来ていますからね!」
「な、なら良いのだが、そういえば魔法の効果を聞いても?」
オルキドから目を離して俺に問いかける国王。
「ああ、オーラアップはオーラを外から吸収して、装備者のオーラを増やし存在感を上げると同時に防御力を40%に上げる効果があるんだ、本来はガーディアン向けのスキルだな。
ライオンハートは性格補正に勇敢を付与して、攻撃力を15%上げ、防御力を10%下げる効果がある。
ブレス・オブ・ブルーフレイムは民を守るときに限り、攻撃力と防御力が4倍になる特殊魔法だよ」
「あ?なぁぁぁぁぁぁぁ!にぃぃぃぃぃぃ!
何だその壊れ性能は!ぶっ壊れすぎだろう!!!!」
「あ、あの、アレス様。そんなに簡単にアーティファクトを超えられると価値観が壊れそうですわ」
あ?この世界だとこれでぶっ壊れ性能なんだ……薄々は気がついていたが……
じゃあこれ出すの不味いかな?
”ロード・オブ・ロード 拡張:★★★★★★★★★★
素材:オリハルコン、全能神の神石、12神の血、10属性の煌石
神すら超え全ての世界において頂点である証、全ての武器に変形する事が出来る不壊付きの武器
所有者固定:アレス
オールマジックLVUP極大
HP自動回復極大
MP自動回復極大
オールジョブ性能UP極大
魔法性能UP極大
復活魔法習得
レギオンの主”
これは「オリンポスファンタジー」内において唯一のワールドアイテム(世界改変道具)で「オリンポスファンタジー」初のランキング1位になった時に挑戦できた全能神ゼウスを倒した時に手に入れたアイテムを3年の時間をかけて強化して完成させた最強の武器だ。
全能神ゼウスに挑戦できたのは最初の上位3名だけ、そして勝利したのは俺だけだった。
間違いなく「オリンポスファンタジー」最強の敵キャラで、あまりの強さに運営が二度と出しませんと言ったほどだ。
俺は何となく腰に付けたロード・オブ・ロードを撫でると、国王が鑑定のメガネをつけて視ているのに気がついた。
俺が声をかけようとした途端、鑑定のメガネがはじけ飛び、国王が目を抑えて転がり悶えた。
「人の持ち物を勝手に鑑定しようとするからだ、まったく……」
「ぐおぉぉぉ、そ、それはいったい何なのだ?」
国王は涙目になりながら俺を見上げつつ、床を何度も叩いて問いかけてきた。
「自分の名前も名乗らない、高圧的な奴に教えるわけ無いだろう。
もう、俺とお前との縁は綺麗に消えた、たとえ国王だろうが俺は許す気はない!」
「そうですわ、ご挨拶も出来ないお父様なんて嫌いです。
私とのご縁も切れたと思いますわ」
俺とアーリアの口撃で身体をビクンとさせた国王は、慌てて身体を起こすと
「ワシは「残念ながら聞く気がない」だ」と、俺は国王の言葉にかぶせて拒否をした。
唖然としたように国王がこちらを見るが無視しよう。
「アーリア、今からお兄さんをボコボコにしに行くが良いか?」
「ええ、かまいません、思い切り教育してあげてください」
「僕からもお願いするよ!!どうもジキルドは我侭が過ぎるように思うからね、からね!」
二人の許可を取ったので、俺は宿屋の前で待つことにすると伝えて転移した。
「あの~パパは……」
おっかなビックリに問いかけた国王は、アーリアの冷たい視線で固まると
「横暴な何処かのミケーネ帝国の帝王よりも悪質で横暴なお父様なんて知りません!
私キプロス・ポリスで独立いたしたいです。
全くもって恥ずかしい」
「まったくだね!兄上は少しでも反省するべきだと思うよ、思うよ!!」
何の反論も出来ない国王であった。
俺がアネモイを連れて宿の外で待っていると、国王に似た彫りの深いゴリマッチョが200位の兵を率いてやってきた。
アネモイは悪い笑みを浮かべると、楽しそうに鎌の柄を数度地面を叩き音を鳴らした。
「マスター、半分意識を狩り、半分殺してもよろしいですか?」
あ~キレてるけど少し冷静だな、此処で止めるとややこしくなりそうだな……しかし
「アーリアとの約束でボコボコにするのは良いんだが、殺すのは無しで頼む。
生きていればどんな状況でもいいから……な?」
アネモイは美しい礼をして、顔を上げた。
「勿論マスターのオーダーに従います。ただし……精神は死ぬかもしれませんが」
「ま、それぐらいならかまわないだろう」
俺達が兵士の処理を話し合っているとゴリマッチョ……確かジキルドだったな、が前に出て来て偉そうに腕を組んで俺を睨みつけてきた。
「お前がアレスか!貴様の持つ全てのアーティファクトを寄こせ!さもなくば反逆罪でこの場で殺してやるぞ!」
俺がそれに答えようとしたら、アネモイがそっと耳打ちをしてきた。
「マスター、こういった輩は話し合いなど無用です。此処は私にお任せください」
現実で召喚したからか「オリンポスファンタジー」では解らなかったアネモイの柔らかなローズの香が俺の鼻をくすぐり、少しドキドキしてしまう。
そのドキドキを隠すように鷹揚にうなずいてみせると、華の様な笑顔を浮かべたアネモイがジキルドと俺の間に立ち
「マスターは貴様ごとき子供と話される舌をお持ちではありません。
夢はベッドで見なさい。この愚か者が」
静かに毒を吐くアネモイに、顔を赤くしたジキルドがアネモイを指差して唾が確実に飛んでいるのが解るほどの醜態を晒して。
「こ、この女と男を殺せぇ!!
この俺を馬鹿にして生きていられると思うなよ!!」
しかし、アネモイにその命令は手遅れだよ。
俺はついつい意地の悪い笑顔を浮かべて、可愛そうな犠牲者に視線を送った。
「では折角夢を見てらっしゃるのデスから、この夢もお楽しみください」
兵士が武器をかまえた途端、芝居がかった礼をすると、影や暗くなっている所から闇が伸び、あっと言う間に兵士達を包み込む。
その闇の中から絶叫じみた悲鳴が上がり、武器がぶつかり合う音が聞こえた。
ジキルドは何が起きているのか解らず、うっすらと汗をかき、腰の剣を抜いてアネモイに突きつけた。
「何をした!俺はこの国の王子であり、お前が攻撃しているのはこの国の兵だ!大人しくしろ!!」
「は?何を言ってるんでしょうか?武器を構えて敵対行動を取れば、王子だろうが国の兵だろうが関係ないでしょう?
……特にマスターに無礼を働いたのです、滅びなさい」
俺はアイテムボックスからスイングチェアーとテーブルを出して、腰を降ろしてゆったりともたれると、アネモイが紅茶を入れてくれた。
「ありがとう」
「お待たせして申しわけありません、今しばらくお待ちを」
アネモイは柔らかな笑みを浮かべてジキルドに向き直ると、指を鳴らして闇のドームを解除した。
そして、その後にはだらしなく口をあけて涎をたらしたり、地面に両手をついてブツブツとわけの解らない事を呟く兵士達が居た。
「お、おおおおぉぉぉぉぉぉお前達どうした!何がおきたのだ!!」
ジキルドの問いに全く反応しない兵士達。
あ、完全に精神を殺したな……まぁ良いけど、ジキルドにはどうするのかな?
「マスターの御前です、何時まで立ってバカ面を晒しているのですか?」
そう言っている間にもアネモイがジキルドの両足をへし折り、両腕を曲がらない方へ曲げて行く。
「がぁぁ、お、俺の腕が……いだい」
泣きながら地面に頭をつけるジキルド、少しやりすぎの気もするがこうなっては仕方が無いな。
「マスターのお言葉を聞け、聞けないならそんな耳要らないですね?」
「ぎぎまず、ぎぎまずがら」
ジキルドは涙と鼻水で顔をグシャグシャにして俺に顔を向けたが
「マスターのご尊顔を拝するのは1000年早いデスわ」
そう言ってアネモイはジキルドの頭を踏みつけて真下に向くようにした。
「あ~今回の件はアーリアも承諾済みだ、二度とバカな事は考えるなよ」
「がい、もうじまぜん」
ジキルドの返事を聞いたので、ジキルドの痛みをとって、攻撃したら即折れるようにヒビを入れた状態で回復させて、兵士はどうにか動けるぐらいに回復させた。
アネモイの与えたトラウマは治らないが。
「すきありぃぃ!ごあ」
いきなり立ち上がって剣を振り下ろそうとしたが、あっさりと両腕と両足が再び折れてグシャっと地面に再び倒れるジキルド。
「あががが、だずけでぐだざい」
涙を流して懇願してくるが
「バカだな……助ける気も起きないぞ。
帰るからお前らこの生ごみを持って帰れよ」
そう言ってその日は宿の部屋でゆっくり休む事にした。
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