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第三十四話 出立前夜、夫に押し倒される
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「ジェシカ、いるか」
「はい。おりますわ」
「入るぞ」
ヒューパート様が入室してきたのは深夜のことだった。
美しい銀髪を揺らす美丈夫。この姿を見るのも今日で最後になるのだと思うと、なんだか感慨深い。
「遅くなった。許せ」
「お気になさらず。……それでは話をいたしましょう、皇太子殿下」
わたくしは彼をあえてそう呼んだ。
これからは元通り赤の他人になるのだから、そんな意味を込めて。
しかし。
「やめろ」
彼は不満げに唇を歪めた。
「私のことはヒューパートと呼べと言っただろう」
「ですがそれは婚姻をしている故でございましょう。離縁するわたくしたちにとって、もはや必要のないことですわ」
「お前はそれを望むのか」
「皇帝陛下に従うのが務めですもの」
そう答えれば、彼は無言でわたくしの方へ歩み寄ってきた。
そしてそのまま、ぼふん、と乱暴にわたくしの隣へ座り込む。彼の気配がすぐ近くにあることに、やはり不快感は覚えなくなっていた。
一体何を言われるだろう。薄情な女だと罵られるだろうか。せいせいしたと笑われるか、反対にお前がいなくなっては別の女を抱かなければならなくなると泣きつかれるか。
どれでも良かった。どうせ結果は、変わらない。
けれど次の瞬間、彼が口にしたのは想像もしていない言葉で。
「私は……無理だ。今更、お前を失うなんて耐えられるわけがないだろうが!」
「――っ」
悲鳴を上げる暇もなかった。
気づけばわたくしはベッドに押し倒され、ヒューパート様の顔をすぐそばで見上げていた。
軽くゆわえていた髪が解け、ベッドの上にはらりと広がる。
わけがわからず、ただ呆然とするわたくしに覆い被さり、ヒューパート様は息を荒げながら続けた。
「お前は私のことが嫌いだ……そんなのわかってた! 悪いのは全部私だ。お前の美しさに惚れて、でも惚れたことを認めたくなかった。だから悪口ばかり言ってしまった」
「殿下っ! 一体どういうおつもりで」
「成長するにつれお前はさらに美しくなった。でも私はお前にますます嫌われるばかりで、嫌だった。悔しかった! でもどうしても自分から言い出せなかった。そんなことをすれば、私はお前に負けたことになる! お前にだけは、負けたくなくて……」
抵抗しようと足掻くわたくしはしかし、まるで力が及ばない。
彼の喉に噛み付くことは可能だが、相手は皇太子殿下。このような意味不明な状況でも、さすがにやっていいことと悪いことの判別くらいはついてしまった。
――それともただ、本心から抵抗する気が起きなかっただけなのかも知れない。
「白い結婚なんて、しなければ良かった」
なぜ、とわたくしは思った。
ヒューパート様はサラ様へ片想いをしていた。これは誰もが噂していた、公然の秘密というやつだった。
何より当人が、何度もサラ様を気にかけるような姿を見せていたではないか。
「サラ様は、どうなさいましたの」
自分でも信じられないくらい冷たい声が出た。
「サラ? ハミルトンの妃のことか? お前は何を言っている」
「ふざけないでくださいませ。サラ様を想っていらっしゃったからこそ、十七年もどなたとも婚約を結ばないでおいでだったのでしょう。わたくしに惚れていたですって? そんな話、虫が良過ぎですわ」
ヒューパート様の赤い瞳は、少しばかり困惑したように揺れている。
しかし困惑しているのはこちらだ。突然ベッドに押し倒され、ありもしない愛を囁かれているのだから。
「それほどまでにサラ様以外の女性と体を重ねたくないのなら、皇太子を降りられてはいかがです。彼女は第二皇子殿下にぞっこんでいらっしゃるようですから、いくら皇太子殿下とて奪えはしないでしょう。それとも彼女の子を次の皇太子とした上で、それでもなお自らが皇帝になるおつもりなのですか」
「待て。彼女は何の関係もないだろう! ハミルトンが溺愛している彼女へ横恋慕など絶対にあり得ない。これは私とお前の、ジェシカの問題だっ!
この際だから言うが、私はお前を想って、今までずっと黙っていただけだ! お前に不本意な子作りを強いたくはない。夜、横目にお前を見ながら私が毎日どれほど悶えていたことか……!」
そんなの、知らない。
信じられるわけがない。わたくしに逃げられたくないヒューパート様が口から出まかせを言っただけ。
わたくしが、ヒューパート様に愛されているはずがないではないか。
誤解をするなと何度もわたくしに彼は言ったのだ。そしてわたくしは誤解をしないように務めた。大嫌いで仕方がなかったのに、惹かれそうになるのを堪えて。
関係性を良くしたかったのはギスギスした空気のままで城を出ていくのが嫌だったからであり、それ以上の意図はなかった。
「あなたに抱かれるのだけは、御免ですわ。それはヒューパート様……いえ、殿下も同じお気持ちのはず。ですからわたくしたちは白い結婚をした。そうでしょう?」
「察しろ! お前のような美しい令嬢を嫌う馬鹿がどこにいる! フロディ王国の王弟は本当に目のない男だ。それともジェシカのあまりの美貌に目が潰されておかしくなったか? おかげで私がお前を娶ることができたから感謝しかないが。
ともかく美人だ。お前はものすごく美人だ。憎たらしいほどにな!」
「やはり憎いのではないですか」
「違う。……憎たらしいのは、お前を直視できない私の甲斐のなさだ」
――ああ。
わたくしとて、憎たらしかった。
幼い頃に言われた悪口のことばかりを考えて、ヒューパート様の優しさを受け入れられなかった自分が。
貴族令嬢が好む恋愛小説のヒーローの一つに、ツンデレという属性がある。
ヒロインのことを想っていながら、素直にそれを口に出せない性質。恋愛小説好きの友人などは「ツンデレヒーロー最高なのよ!!」と力説していたりしたものだが。
まさか彼が、それだというのか。
「父を説得して、もう一年だけ猶予をもらってきた。だから……その……わかれ」
「わかりませんわ、殿下」
「なら」
そう言ったと同時に、彼の顔面がわたくしへと急接近し、互いの唇が重ね合わせられた。
そっと触れるだけの柔らかな口付け。けれど一瞬でヒューパート様はこれでもかというほど顔を赤くしたし、わたくしも高揚した。
その時ふと、遅過ぎる気づきを得た。
ヒューパート様がいつもいつも赤面していたのも目を逸らしていたのも、激昂していたり不満を抱いていたからというわけではなかったのだと。
――可愛らしいですわね。
わたくしは不覚にも、そう思ってしまった。
「はい。おりますわ」
「入るぞ」
ヒューパート様が入室してきたのは深夜のことだった。
美しい銀髪を揺らす美丈夫。この姿を見るのも今日で最後になるのだと思うと、なんだか感慨深い。
「遅くなった。許せ」
「お気になさらず。……それでは話をいたしましょう、皇太子殿下」
わたくしは彼をあえてそう呼んだ。
これからは元通り赤の他人になるのだから、そんな意味を込めて。
しかし。
「やめろ」
彼は不満げに唇を歪めた。
「私のことはヒューパートと呼べと言っただろう」
「ですがそれは婚姻をしている故でございましょう。離縁するわたくしたちにとって、もはや必要のないことですわ」
「お前はそれを望むのか」
「皇帝陛下に従うのが務めですもの」
そう答えれば、彼は無言でわたくしの方へ歩み寄ってきた。
そしてそのまま、ぼふん、と乱暴にわたくしの隣へ座り込む。彼の気配がすぐ近くにあることに、やはり不快感は覚えなくなっていた。
一体何を言われるだろう。薄情な女だと罵られるだろうか。せいせいしたと笑われるか、反対にお前がいなくなっては別の女を抱かなければならなくなると泣きつかれるか。
どれでも良かった。どうせ結果は、変わらない。
けれど次の瞬間、彼が口にしたのは想像もしていない言葉で。
「私は……無理だ。今更、お前を失うなんて耐えられるわけがないだろうが!」
「――っ」
悲鳴を上げる暇もなかった。
気づけばわたくしはベッドに押し倒され、ヒューパート様の顔をすぐそばで見上げていた。
軽くゆわえていた髪が解け、ベッドの上にはらりと広がる。
わけがわからず、ただ呆然とするわたくしに覆い被さり、ヒューパート様は息を荒げながら続けた。
「お前は私のことが嫌いだ……そんなのわかってた! 悪いのは全部私だ。お前の美しさに惚れて、でも惚れたことを認めたくなかった。だから悪口ばかり言ってしまった」
「殿下っ! 一体どういうおつもりで」
「成長するにつれお前はさらに美しくなった。でも私はお前にますます嫌われるばかりで、嫌だった。悔しかった! でもどうしても自分から言い出せなかった。そんなことをすれば、私はお前に負けたことになる! お前にだけは、負けたくなくて……」
抵抗しようと足掻くわたくしはしかし、まるで力が及ばない。
彼の喉に噛み付くことは可能だが、相手は皇太子殿下。このような意味不明な状況でも、さすがにやっていいことと悪いことの判別くらいはついてしまった。
――それともただ、本心から抵抗する気が起きなかっただけなのかも知れない。
「白い結婚なんて、しなければ良かった」
なぜ、とわたくしは思った。
ヒューパート様はサラ様へ片想いをしていた。これは誰もが噂していた、公然の秘密というやつだった。
何より当人が、何度もサラ様を気にかけるような姿を見せていたではないか。
「サラ様は、どうなさいましたの」
自分でも信じられないくらい冷たい声が出た。
「サラ? ハミルトンの妃のことか? お前は何を言っている」
「ふざけないでくださいませ。サラ様を想っていらっしゃったからこそ、十七年もどなたとも婚約を結ばないでおいでだったのでしょう。わたくしに惚れていたですって? そんな話、虫が良過ぎですわ」
ヒューパート様の赤い瞳は、少しばかり困惑したように揺れている。
しかし困惑しているのはこちらだ。突然ベッドに押し倒され、ありもしない愛を囁かれているのだから。
「それほどまでにサラ様以外の女性と体を重ねたくないのなら、皇太子を降りられてはいかがです。彼女は第二皇子殿下にぞっこんでいらっしゃるようですから、いくら皇太子殿下とて奪えはしないでしょう。それとも彼女の子を次の皇太子とした上で、それでもなお自らが皇帝になるおつもりなのですか」
「待て。彼女は何の関係もないだろう! ハミルトンが溺愛している彼女へ横恋慕など絶対にあり得ない。これは私とお前の、ジェシカの問題だっ!
この際だから言うが、私はお前を想って、今までずっと黙っていただけだ! お前に不本意な子作りを強いたくはない。夜、横目にお前を見ながら私が毎日どれほど悶えていたことか……!」
そんなの、知らない。
信じられるわけがない。わたくしに逃げられたくないヒューパート様が口から出まかせを言っただけ。
わたくしが、ヒューパート様に愛されているはずがないではないか。
誤解をするなと何度もわたくしに彼は言ったのだ。そしてわたくしは誤解をしないように務めた。大嫌いで仕方がなかったのに、惹かれそうになるのを堪えて。
関係性を良くしたかったのはギスギスした空気のままで城を出ていくのが嫌だったからであり、それ以上の意図はなかった。
「あなたに抱かれるのだけは、御免ですわ。それはヒューパート様……いえ、殿下も同じお気持ちのはず。ですからわたくしたちは白い結婚をした。そうでしょう?」
「察しろ! お前のような美しい令嬢を嫌う馬鹿がどこにいる! フロディ王国の王弟は本当に目のない男だ。それともジェシカのあまりの美貌に目が潰されておかしくなったか? おかげで私がお前を娶ることができたから感謝しかないが。
ともかく美人だ。お前はものすごく美人だ。憎たらしいほどにな!」
「やはり憎いのではないですか」
「違う。……憎たらしいのは、お前を直視できない私の甲斐のなさだ」
――ああ。
わたくしとて、憎たらしかった。
幼い頃に言われた悪口のことばかりを考えて、ヒューパート様の優しさを受け入れられなかった自分が。
貴族令嬢が好む恋愛小説のヒーローの一つに、ツンデレという属性がある。
ヒロインのことを想っていながら、素直にそれを口に出せない性質。恋愛小説好きの友人などは「ツンデレヒーロー最高なのよ!!」と力説していたりしたものだが。
まさか彼が、それだというのか。
「父を説得して、もう一年だけ猶予をもらってきた。だから……その……わかれ」
「わかりませんわ、殿下」
「なら」
そう言ったと同時に、彼の顔面がわたくしへと急接近し、互いの唇が重ね合わせられた。
そっと触れるだけの柔らかな口付け。けれど一瞬でヒューパート様はこれでもかというほど顔を赤くしたし、わたくしも高揚した。
その時ふと、遅過ぎる気づきを得た。
ヒューパート様がいつもいつも赤面していたのも目を逸らしていたのも、激昂していたり不満を抱いていたからというわけではなかったのだと。
――可愛らしいですわね。
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