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第二十九話 今度は彼の誕生日祝いを
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ダブルデートの日の翌朝。
宿で目を覚ましたわたくしたちは、日が昇るとほぼ同時に馬車で発ち、昼頃には王宮へ戻った。
その間にすっかり酒は抜け切って気分は爽快だった。――切なく苦々しかったような気がする昨夜の夢の内容も吹き飛んでしまうほどに。
ここでアンナ嬢たちとはお別れ。出発してから丸一日、とても色濃い時間だったと思う。
「昨日はたくさん楽しませていただきましたわ。本当にありがとうございます」
「こちらこそよ。またいつか一緒に行けるといいわね」
私たちがもうじき離縁するのはわかっているはずなのに、ずいぶん酷なことを言うと思う。
しかしそんな内心はおくびにも出さず、「そうですわね」と答えておいた。
楽しいダブルデートは終わり、日常に回帰する。
わたくしはヒューパート様の執務を手伝い、食事中や就寝前などは彼と何気ない言葉を交わす。以前にはぎこちなかったが、ダブルデートの日を境にずいぶん話しやすくなった気がした。
そしてほんの少しではあるが、ヒューパート様がわたくしに目を向けてくださることが増えた。
「誕生日プレゼントにやった香水をつけているのだな。……いい匂いだ」
「ええ。とても良い香りがするので気に入って使わせていただいておりますわ」
特に香水がお気に入りなようで、わたくしが香水を振りかけている日は必ず気づいてくださる。
本当に些細なことだけれど、確かに前進していることを実感できる。少なくとも彼は、わたくしに対し大きな嫌悪感は抱いていないのだとその都度安堵した。
しかしのんびりしてはいられない。刻一刻と迫る離縁の日まで、できることは全てやっていきたいところだ。
何かきっかけになるような出来事はないだろうかと考える。そしてふと、思いついた。
「そうですわ、ヒューパート様のお誕生日……」
昨年はわたくしのそれは祝っていただいたというのに、ちょうど冷戦状態が始まってしまったのもあってヒューパート様の誕生日を祝おうなど考えつきもしなかった。
けれど今年は違う。わたくしの誕生日、アンナ嬢の協力はあったといえど彼には良くしていただいたのだ。そのお返しをするべきだろう。
わたくしと彼の誕生日は近く、あと一ヶ月もしたらその日が来てしまう。
そうとなれば直ちに準備しなくてはならないと、クロエの元に急いだ。
「せっかくですのでサプライズがよろしいのではないでしょうか、ジェシカ様」
「サプライズ? しかしヒューパート様のご迷惑になるのでは……」
「そんなことはございません。きっとお喜びになりますよ、皇太子殿下なら」
「なら、そうしてみましょうかしら」
相談してみた結果、ヒューパート様に勘付かれないようにして準備をする計画になった。
クロエに手伝ってもらいながら、ヒューパート様に喜んでいただけるような祝いとはどのようなものかを考える。
贈り物などの勝手な押し付けをしてしまっては嫌われるのである程度の調査が必要だ。
その一方で、今まで通り書類整理などして過ごすこともしなければならず、日によっては夜中にこっそりと行うことも。
いくらお返しのためとはいえ、ヒューパート様のためにここまでする義理があるかと言えば否だろう。
だというのに、なぜか苦痛にも不快にも思わなかった。
ヒューパート様には無事知られずに着々と準備が進んでいったが、クロエ以外の全員に伏せ続けていることはどうしてもできない。
ある日、王宮で偶然出会したサラ様が話しかけてきたなんてこともあった。
「ジェシカ様、風の噂でお聞きしましたよ。頑張っていらっしゃるそうですね」
桃色の瞳を微笑ましげに細めるサラ様の言葉に頷いた。
「ええ、近頃になってようやくサラ様のおっしゃっていた歩み寄りの意味が徐々にわかってきたような気がしますの」
「近頃のお二人はお出かけにも行っていらっしゃいましたし、良い変化だと思います。陰ながら応援させていただいております」
にこにこと、何の裏もなさそうな純粋な笑みを向けられる。
その笑顔はとても可憐過ぎた。わたくしには真似できないものだ。だからヒューパート様は彼女に惹かれるに違いなかった。
それを羨む気持ちがないと言えば嘘になるが、わたくしがこれほどまでに手を尽くしても届かないことを笑顔一つでやってのけてしまうだなんて、サラ様は本当にすごいと尊敬してしまう。
「ありがとうございます。その応援に応えられるよう努めさせていただきますわ」
そもそも、サラ様がいなければ恋愛小説を読んで色々なことに挑んでみた日々も、ダブルデートもなかったのだと思うと、感謝の念しか湧いてこない。
彼女のおかげで得られた多くの機会を無駄にしないよう、ヒューパート様の誕生日祭に力を入れようと改めて思った。
サラ様と言葉を交わしてからさらに数日経ち、いよいよ迎える本番の日。
少々の不安を抱えつつも、万全の準備で挑んだのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
当日の未明、起きに弱い体を無理矢理起こし、別室に移ってクロエに身だしなみを整えさせた。
ヒューパート様にいただいたドレスを纏い、香水を振りかけ、ペリドットの首飾りとダブルデートの際に購入したイヤリングをつければ完成。
わたくしが部屋に戻るとすっかり朝になっており、すでにヒューパート様は目を覚ましていた。
当然わたくしの格好に疑問を持ったようで、怪訝そうに問いかけてくる。
「……朝からどこかへ行く予定でもあるのか? それとも今日もまたヴェストリス嬢と茶会でも開くつもりか?」
「いいえ、出かける予定はございませんわ」
「ならどこへ――」
「食堂へ参りましょう、ヒューパート様。お話しはそこでさせていただくとしますわね」
この反応を見る限り、まさかわたくしに自分の誕生日を祝われるなど夢にも思ってもいないのだろう。
疑問たっぷりの眼差しはそのままに、食堂に共に行くことになった。
皇帝陛下と皇妃陛下は早めの食事を済ませてもらっており、昼まで貸切状態。
誰もいない静かな食堂にて、温かな湯気を立てる食事がテーブルの上に並んでいた。皿に盛られているのはジビエ料理からトマトスープまで、多種多様。どれも良い香りがしている。
並べたのはクロエだ。彼女は今、食堂を離れて厨房へと姿を消しているのだった。
「これは何だ、一体?」
呆気に取られている様子のヒューパート様。
彼の呆然とした横顔を眺めながら、わたくしは静かに告げた。
「お誕生日おめでとうございます、ヒューパート様。本日はわたくしからお祝いさせていただきたく、このような場をご用意させていただきましたの。ご満足いただけますと幸いですわ」
「誕生日――――あっ」
わたくしに祝われるか祝われないか以前に、その存在自体を忘れていたらしい。
「私の誕生日ごときのためにどうしてここまで。あれもこれも、一見して料理人が作ったようには見えないが、まさか」
「ええ。恥ずかしながら全て手作りでございます。先日のお返しになればと」
手作り料理は、クッキーを作った際に少なくとも嫌がられはしなかった故に、真っ先に祝いの席に出すものとして思いついた。
けれど喜ばれるどころか嫌がられるかも知れないと躊躇いはしたが、クロエが「とてもいいと思います!」と言っていたので思い切って実行してみたのだ。
「これを全部手作りで……? 正気か?」
まあ、そう言われてしまうのも無理はないほど大変ではあったと思う。
ヒューパート様の好物という好物を徹底的に料理人から聞き出し、かなり凝った内容が多い宮廷料理を料理初心者であるわたくしが上手く作れるようになるまで何日かかったことか。
失敗作はわたくしとクロエで分けて食べた。本来皇太子妃と侍女が同じものを食すなどあってはならないことだが、こればかりは仕方がなかった。それほど大量な失敗作が生まれたわけである。
そんなことを思い出しながら、わたくしは中央の席を指差した。
「どうぞ、お掛けくださいませ」
冷静そうに振る舞っていたが、内心はかなりドキドキしていた。
宿で目を覚ましたわたくしたちは、日が昇るとほぼ同時に馬車で発ち、昼頃には王宮へ戻った。
その間にすっかり酒は抜け切って気分は爽快だった。――切なく苦々しかったような気がする昨夜の夢の内容も吹き飛んでしまうほどに。
ここでアンナ嬢たちとはお別れ。出発してから丸一日、とても色濃い時間だったと思う。
「昨日はたくさん楽しませていただきましたわ。本当にありがとうございます」
「こちらこそよ。またいつか一緒に行けるといいわね」
私たちがもうじき離縁するのはわかっているはずなのに、ずいぶん酷なことを言うと思う。
しかしそんな内心はおくびにも出さず、「そうですわね」と答えておいた。
楽しいダブルデートは終わり、日常に回帰する。
わたくしはヒューパート様の執務を手伝い、食事中や就寝前などは彼と何気ない言葉を交わす。以前にはぎこちなかったが、ダブルデートの日を境にずいぶん話しやすくなった気がした。
そしてほんの少しではあるが、ヒューパート様がわたくしに目を向けてくださることが増えた。
「誕生日プレゼントにやった香水をつけているのだな。……いい匂いだ」
「ええ。とても良い香りがするので気に入って使わせていただいておりますわ」
特に香水がお気に入りなようで、わたくしが香水を振りかけている日は必ず気づいてくださる。
本当に些細なことだけれど、確かに前進していることを実感できる。少なくとも彼は、わたくしに対し大きな嫌悪感は抱いていないのだとその都度安堵した。
しかしのんびりしてはいられない。刻一刻と迫る離縁の日まで、できることは全てやっていきたいところだ。
何かきっかけになるような出来事はないだろうかと考える。そしてふと、思いついた。
「そうですわ、ヒューパート様のお誕生日……」
昨年はわたくしのそれは祝っていただいたというのに、ちょうど冷戦状態が始まってしまったのもあってヒューパート様の誕生日を祝おうなど考えつきもしなかった。
けれど今年は違う。わたくしの誕生日、アンナ嬢の協力はあったといえど彼には良くしていただいたのだ。そのお返しをするべきだろう。
わたくしと彼の誕生日は近く、あと一ヶ月もしたらその日が来てしまう。
そうとなれば直ちに準備しなくてはならないと、クロエの元に急いだ。
「せっかくですのでサプライズがよろしいのではないでしょうか、ジェシカ様」
「サプライズ? しかしヒューパート様のご迷惑になるのでは……」
「そんなことはございません。きっとお喜びになりますよ、皇太子殿下なら」
「なら、そうしてみましょうかしら」
相談してみた結果、ヒューパート様に勘付かれないようにして準備をする計画になった。
クロエに手伝ってもらいながら、ヒューパート様に喜んでいただけるような祝いとはどのようなものかを考える。
贈り物などの勝手な押し付けをしてしまっては嫌われるのである程度の調査が必要だ。
その一方で、今まで通り書類整理などして過ごすこともしなければならず、日によっては夜中にこっそりと行うことも。
いくらお返しのためとはいえ、ヒューパート様のためにここまでする義理があるかと言えば否だろう。
だというのに、なぜか苦痛にも不快にも思わなかった。
ヒューパート様には無事知られずに着々と準備が進んでいったが、クロエ以外の全員に伏せ続けていることはどうしてもできない。
ある日、王宮で偶然出会したサラ様が話しかけてきたなんてこともあった。
「ジェシカ様、風の噂でお聞きしましたよ。頑張っていらっしゃるそうですね」
桃色の瞳を微笑ましげに細めるサラ様の言葉に頷いた。
「ええ、近頃になってようやくサラ様のおっしゃっていた歩み寄りの意味が徐々にわかってきたような気がしますの」
「近頃のお二人はお出かけにも行っていらっしゃいましたし、良い変化だと思います。陰ながら応援させていただいております」
にこにこと、何の裏もなさそうな純粋な笑みを向けられる。
その笑顔はとても可憐過ぎた。わたくしには真似できないものだ。だからヒューパート様は彼女に惹かれるに違いなかった。
それを羨む気持ちがないと言えば嘘になるが、わたくしがこれほどまでに手を尽くしても届かないことを笑顔一つでやってのけてしまうだなんて、サラ様は本当にすごいと尊敬してしまう。
「ありがとうございます。その応援に応えられるよう努めさせていただきますわ」
そもそも、サラ様がいなければ恋愛小説を読んで色々なことに挑んでみた日々も、ダブルデートもなかったのだと思うと、感謝の念しか湧いてこない。
彼女のおかげで得られた多くの機会を無駄にしないよう、ヒューパート様の誕生日祭に力を入れようと改めて思った。
サラ様と言葉を交わしてからさらに数日経ち、いよいよ迎える本番の日。
少々の不安を抱えつつも、万全の準備で挑んだのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
当日の未明、起きに弱い体を無理矢理起こし、別室に移ってクロエに身だしなみを整えさせた。
ヒューパート様にいただいたドレスを纏い、香水を振りかけ、ペリドットの首飾りとダブルデートの際に購入したイヤリングをつければ完成。
わたくしが部屋に戻るとすっかり朝になっており、すでにヒューパート様は目を覚ましていた。
当然わたくしの格好に疑問を持ったようで、怪訝そうに問いかけてくる。
「……朝からどこかへ行く予定でもあるのか? それとも今日もまたヴェストリス嬢と茶会でも開くつもりか?」
「いいえ、出かける予定はございませんわ」
「ならどこへ――」
「食堂へ参りましょう、ヒューパート様。お話しはそこでさせていただくとしますわね」
この反応を見る限り、まさかわたくしに自分の誕生日を祝われるなど夢にも思ってもいないのだろう。
疑問たっぷりの眼差しはそのままに、食堂に共に行くことになった。
皇帝陛下と皇妃陛下は早めの食事を済ませてもらっており、昼まで貸切状態。
誰もいない静かな食堂にて、温かな湯気を立てる食事がテーブルの上に並んでいた。皿に盛られているのはジビエ料理からトマトスープまで、多種多様。どれも良い香りがしている。
並べたのはクロエだ。彼女は今、食堂を離れて厨房へと姿を消しているのだった。
「これは何だ、一体?」
呆気に取られている様子のヒューパート様。
彼の呆然とした横顔を眺めながら、わたくしは静かに告げた。
「お誕生日おめでとうございます、ヒューパート様。本日はわたくしからお祝いさせていただきたく、このような場をご用意させていただきましたの。ご満足いただけますと幸いですわ」
「誕生日――――あっ」
わたくしに祝われるか祝われないか以前に、その存在自体を忘れていたらしい。
「私の誕生日ごときのためにどうしてここまで。あれもこれも、一見して料理人が作ったようには見えないが、まさか」
「ええ。恥ずかしながら全て手作りでございます。先日のお返しになればと」
手作り料理は、クッキーを作った際に少なくとも嫌がられはしなかった故に、真っ先に祝いの席に出すものとして思いついた。
けれど喜ばれるどころか嫌がられるかも知れないと躊躇いはしたが、クロエが「とてもいいと思います!」と言っていたので思い切って実行してみたのだ。
「これを全部手作りで……? 正気か?」
まあ、そう言われてしまうのも無理はないほど大変ではあったと思う。
ヒューパート様の好物という好物を徹底的に料理人から聞き出し、かなり凝った内容が多い宮廷料理を料理初心者であるわたくしが上手く作れるようになるまで何日かかったことか。
失敗作はわたくしとクロエで分けて食べた。本来皇太子妃と侍女が同じものを食すなどあってはならないことだが、こればかりは仕方がなかった。それほど大量な失敗作が生まれたわけである。
そんなことを思い出しながら、わたくしは中央の席を指差した。
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