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第二十四話 アンナ嬢からのお誘い
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「悪くはない」
クロエの協力を得ながら、三日かけてようやく完成させた手作りクッキーへの評価がこれである。
悪くはないが良くもないということだろう。もしかするとこの言葉はヒューパート様なりの気遣いでしかなく、本当は食べられたものではなかったのかも知れない。
けれどそもそも食べること自体あまり乗り気ではなさそうだったし、まずいと言われて吐き捨てられることも可能性として考えていたので、わたくしは心から安心していた。
――まあ、だからと言って何という話でもないのですけれど。
ヒューパート様のなんとも言えない表情を見つめながら、そんな風に考える。
大きな進展はない。でも続けていくしかないのだろうと思った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アンナ嬢と相談したものの結局答えは出ず、今までに読んだ恋愛小説を参考に、クロエに心配されない程度に試行錯誤する日々だ。
一緒に出かけようという誘いもダメ。手作り菓子も効果なし。特に菓子は宮廷料理人にヒューパート様が好むであろう味を聞き込み、調整を重ねながら作るよう努力したのだが、今まで厨房に立つという経験が一切なかったせいでまともなものが作れなかった。
他に何か手はないかと常に頭を悩ませ、部屋で一人、唸りながら打開策を考える。
恋愛小説の中には花を贈るシーンがよく出てくるが、あれは告白の時だ。わたくしはヒューパート様との関係を恋愛的な意味で良くするつもりはないので、その手は使わないし使えない。
ならば恋愛小説以外を参考とすればいいのではと思い立っても、ヒューパート様と嫌い合っている時期があまりに長過ぎるものだから、何をすれば喜ぶかなんて当然のようにわからないし、むしろさらに嫌われるような事態に陥る確率の方が高い気がした。
「困りましたわね……」
考えれば考えるほど八方塞がりだった。
しかし一度やると決めた以上は諦めたくない。それに、意地でもヒューパート様の笑顔を見てから離縁してやりたいから。
「ヒューパート様、三日後に某伯爵家にて気さくな集いがあると聞き及びましたわ。ご一緒にいかがでございましょう?」
「毎日お仕事でお疲れでしょう。差し出がましいかも知れませんけれど、休暇を取られた方がよろしいのではと思いますの」
「たまには少しゆっくりお茶でもいたしませんこと?」
次々と提案するも、その大抵は却下され、お茶をしてもいまいち話題が弾まないしヒューパート様が気まずそうにしている。
やはり、数ヶ月前にわたくしが「余計な配慮をなさらないでくださいませ」と拒絶したことの影響なのだろう。
その解し方がわかればいいのだけれど、どうにも難しかった。
――だがそんなある日、とある好機が訪れることになる。
それはアンナ嬢から届いた一枚の手紙。またお茶会のお誘いかしらと思って手紙の封を開けてみれば、そこに書かれていたのは予想もしていなかった言葉だった。
こちらが皇太子夫妻という立場である故、文面はいやに長ったらしかったが、一言で要約できる。
「今度のジェシカ妃殿下のお誕生日を私からもお祝いしたいの。私の婚約者と一緒に、ダブルデートと洒落込まないかしら?」と、こういうわけであった。
これが前回のお茶会にて彼女が考えると言っていた新たな策なのだろう。
わたくしの十九の誕生日はもう間近に迫っているという事実を思い出し、わたくしは目を丸くする。そしてダブルデートという文面に思わず固まってしまった。
デート。ダブルとはいえ、デート。
それではまるで、恋人みたいではないか。
いや、もちろんすでに婚姻を結んでいるのだから、恋人という関係には相応しくないだろうが、仲の良い夫婦の演技はもう懲り懲りだ。
それをわたくしの話を聞いてわかっていながらこうして提案してくることを考えるに――。
「環境を整えるからこれを機にせめてまともに話せるくらいの関係になりなさい、ということなのでしょうね」
わたくしは呟くと、手紙を片手にヒューパート様の執務室へ向かう。
彼が果たしてこの話を受ける気になってくれるかはわからない。ヒューパート様とアンナ嬢の面識はないに等しいし、わたくしと出かけるなど彼にとっては喜ばしいことではないに違いなかった。
それでも躊躇ってはいられないと、執務室の戸を開けた。
「ヒューパート様、失礼いたしますわ。少々お話したいことがございますの」
「……なんだ?」
こちらへ振り返ることなくヒューパート様が問うてくる。目も合わせられないことに何も思わないわけではなかったが、今ばかりはあまり深く考えないようにしよう。
「わたくしの友人であるヴェストリス侯爵家息女アンナ嬢から、お手紙が届きました。ご覧くださいませ」
「これは私宛てか?」
「ヒューパート様とわたくしの双方に宛てられたものです」
わたくしの手から手紙を受け取ったヒューパート様は、しばらく手紙に読み耽っていた。
しかしやがて顔を上げると、一言。
「正気か、これは」
「あら、皇太子夫妻であるわたくしどもにアンナ嬢が冗談でお手紙をくださるなんてことはあり得ませんわ? それほどわたくしの友人は愚かではございません」
「ぬっ……。し、しかし、一体どういうつもりなのだ。わけがわからん」
疑うような目でわたくしを見つめてくるヒューパート様。
わたくしが手紙を書いたとでも疑われているのだろうか。そうだとすれば心外だ。
「皇太子殿下ともお近づきになりたいという考えでしょう。お嫌でしたら断ってもよろしいのですけれど」
「だが、ジェシカの友人なのだろう? それなら断っては外面が悪い。……お前はどうしたい」
お前はどうしたい、だなんて訊かれるのは初めてだったから、少々どころではなく驚いてしまった。
しかしわたくしはすぐに微笑みを浮かべて答える。
「ヒューパート様さえよろしいのであれば、行かせていただきたいと考えておりますわ」と。
もしもこれでも反論されるようなら、どうにかして言いくるめなければならない。
そう考えていたのだけれど。
「……わかった。お前がそこまで言うなら付き合ってやってもいいぞ。お前の友人関係が悪くなったらこれからのことに差し支えるからな。ヴェストリス侯爵令嬢とその婚約者のことは気にしなければいいことなのだし」
こくこくと何度もうるさいくらいに頷き、意外とあっさりヒューパート様はダブルデートへの参加を受け入れたのだった。
ちなみにそのあと、「ジェシカと遠出……」などとぼそぼそ呟いているのが聞こえたが、それはさておき。
「ご配慮いただきありがとうございます。ではお返事のお手紙を書かせていただきますわね」
ヒューパート様の同行を決定させることができた。あとは手紙の返信をして、時を待つだけだ。
ダブルデートという言葉の響きにまだ抵抗はあるが、まあいい。わたくしの目的はヒューパート様とのなんとも言えないしこりのある関係を改善し、心置きなく別れられるようになること。
それさえうまくいけば、なんら問題はないのだ。
クロエの協力を得ながら、三日かけてようやく完成させた手作りクッキーへの評価がこれである。
悪くはないが良くもないということだろう。もしかするとこの言葉はヒューパート様なりの気遣いでしかなく、本当は食べられたものではなかったのかも知れない。
けれどそもそも食べること自体あまり乗り気ではなさそうだったし、まずいと言われて吐き捨てられることも可能性として考えていたので、わたくしは心から安心していた。
――まあ、だからと言って何という話でもないのですけれど。
ヒューパート様のなんとも言えない表情を見つめながら、そんな風に考える。
大きな進展はない。でも続けていくしかないのだろうと思った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アンナ嬢と相談したものの結局答えは出ず、今までに読んだ恋愛小説を参考に、クロエに心配されない程度に試行錯誤する日々だ。
一緒に出かけようという誘いもダメ。手作り菓子も効果なし。特に菓子は宮廷料理人にヒューパート様が好むであろう味を聞き込み、調整を重ねながら作るよう努力したのだが、今まで厨房に立つという経験が一切なかったせいでまともなものが作れなかった。
他に何か手はないかと常に頭を悩ませ、部屋で一人、唸りながら打開策を考える。
恋愛小説の中には花を贈るシーンがよく出てくるが、あれは告白の時だ。わたくしはヒューパート様との関係を恋愛的な意味で良くするつもりはないので、その手は使わないし使えない。
ならば恋愛小説以外を参考とすればいいのではと思い立っても、ヒューパート様と嫌い合っている時期があまりに長過ぎるものだから、何をすれば喜ぶかなんて当然のようにわからないし、むしろさらに嫌われるような事態に陥る確率の方が高い気がした。
「困りましたわね……」
考えれば考えるほど八方塞がりだった。
しかし一度やると決めた以上は諦めたくない。それに、意地でもヒューパート様の笑顔を見てから離縁してやりたいから。
「ヒューパート様、三日後に某伯爵家にて気さくな集いがあると聞き及びましたわ。ご一緒にいかがでございましょう?」
「毎日お仕事でお疲れでしょう。差し出がましいかも知れませんけれど、休暇を取られた方がよろしいのではと思いますの」
「たまには少しゆっくりお茶でもいたしませんこと?」
次々と提案するも、その大抵は却下され、お茶をしてもいまいち話題が弾まないしヒューパート様が気まずそうにしている。
やはり、数ヶ月前にわたくしが「余計な配慮をなさらないでくださいませ」と拒絶したことの影響なのだろう。
その解し方がわかればいいのだけれど、どうにも難しかった。
――だがそんなある日、とある好機が訪れることになる。
それはアンナ嬢から届いた一枚の手紙。またお茶会のお誘いかしらと思って手紙の封を開けてみれば、そこに書かれていたのは予想もしていなかった言葉だった。
こちらが皇太子夫妻という立場である故、文面はいやに長ったらしかったが、一言で要約できる。
「今度のジェシカ妃殿下のお誕生日を私からもお祝いしたいの。私の婚約者と一緒に、ダブルデートと洒落込まないかしら?」と、こういうわけであった。
これが前回のお茶会にて彼女が考えると言っていた新たな策なのだろう。
わたくしの十九の誕生日はもう間近に迫っているという事実を思い出し、わたくしは目を丸くする。そしてダブルデートという文面に思わず固まってしまった。
デート。ダブルとはいえ、デート。
それではまるで、恋人みたいではないか。
いや、もちろんすでに婚姻を結んでいるのだから、恋人という関係には相応しくないだろうが、仲の良い夫婦の演技はもう懲り懲りだ。
それをわたくしの話を聞いてわかっていながらこうして提案してくることを考えるに――。
「環境を整えるからこれを機にせめてまともに話せるくらいの関係になりなさい、ということなのでしょうね」
わたくしは呟くと、手紙を片手にヒューパート様の執務室へ向かう。
彼が果たしてこの話を受ける気になってくれるかはわからない。ヒューパート様とアンナ嬢の面識はないに等しいし、わたくしと出かけるなど彼にとっては喜ばしいことではないに違いなかった。
それでも躊躇ってはいられないと、執務室の戸を開けた。
「ヒューパート様、失礼いたしますわ。少々お話したいことがございますの」
「……なんだ?」
こちらへ振り返ることなくヒューパート様が問うてくる。目も合わせられないことに何も思わないわけではなかったが、今ばかりはあまり深く考えないようにしよう。
「わたくしの友人であるヴェストリス侯爵家息女アンナ嬢から、お手紙が届きました。ご覧くださいませ」
「これは私宛てか?」
「ヒューパート様とわたくしの双方に宛てられたものです」
わたくしの手から手紙を受け取ったヒューパート様は、しばらく手紙に読み耽っていた。
しかしやがて顔を上げると、一言。
「正気か、これは」
「あら、皇太子夫妻であるわたくしどもにアンナ嬢が冗談でお手紙をくださるなんてことはあり得ませんわ? それほどわたくしの友人は愚かではございません」
「ぬっ……。し、しかし、一体どういうつもりなのだ。わけがわからん」
疑うような目でわたくしを見つめてくるヒューパート様。
わたくしが手紙を書いたとでも疑われているのだろうか。そうだとすれば心外だ。
「皇太子殿下ともお近づきになりたいという考えでしょう。お嫌でしたら断ってもよろしいのですけれど」
「だが、ジェシカの友人なのだろう? それなら断っては外面が悪い。……お前はどうしたい」
お前はどうしたい、だなんて訊かれるのは初めてだったから、少々どころではなく驚いてしまった。
しかしわたくしはすぐに微笑みを浮かべて答える。
「ヒューパート様さえよろしいのであれば、行かせていただきたいと考えておりますわ」と。
もしもこれでも反論されるようなら、どうにかして言いくるめなければならない。
そう考えていたのだけれど。
「……わかった。お前がそこまで言うなら付き合ってやってもいいぞ。お前の友人関係が悪くなったらこれからのことに差し支えるからな。ヴェストリス侯爵令嬢とその婚約者のことは気にしなければいいことなのだし」
こくこくと何度もうるさいくらいに頷き、意外とあっさりヒューパート様はダブルデートへの参加を受け入れたのだった。
ちなみにそのあと、「ジェシカと遠出……」などとぼそぼそ呟いているのが聞こえたが、それはさておき。
「ご配慮いただきありがとうございます。ではお返事のお手紙を書かせていただきますわね」
ヒューパート様の同行を決定させることができた。あとは手紙の返信をして、時を待つだけだ。
ダブルデートという言葉の響きにまだ抵抗はあるが、まあいい。わたくしの目的はヒューパート様とのなんとも言えないしこりのある関係を改善し、心置きなく別れられるようになること。
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