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第2話 チャラ男風後輩との出会い②
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「あの、駿先輩って呼んでもいいかな」
「は?」
「いきなりで悪いとは思うけど、同じ部活の仲間になるんだから大事じゃん? ……あ、オレのことはぜひ綾小路って呼んで」
入部手続きを終えて、真に新入部員となった彼。
彼の入部初日に突然話しかけられた時は驚いたものだ。
先輩にタメ口を叩くのはいかがなものかとか、挨拶もしないのかとか、誰かから聞いたのだろう僕の名前……しかも苗字ではなく下の名前を知っているのかとか。
色々言いたいことはあるが、それよりも。
――なんでわざわざ、真っ先に僕に?
他の部員がたくさんいながら、それらには見向きもせずに僕の元に来ることを選んだ。その事実に、はっきり言って違和感しかない。
うちの部は結構美人が多い。
部長を筆頭に、三年生と二年生の女子も可愛い子揃いなので、やぼったい男の僕なんかに絡みに来るのではなく彼女らをナンパしそうなものなのに。
彼の入部理由はてっきり演劇部の女子生徒を引っ掛けるためだと思っていた。その僕の考えは間違っていたのだろうか?
人形のような綺麗な顔立ちをまじまじと眺め、沈黙する僕。
ずいぶん『感じの悪い先輩』という風になってしまったが、嫌われるなら嫌われても構わなかった。
でも。
「駿先輩、これからよろしく!」
そう言った彼の笑顔はキラキラと輝いていて。
なんだこいつ……と若干気圧されながら、「あ、ああ」とやっとの思いで言葉を返した。
綾小路はへらへらとした見かけによらず、いわゆる大型新入部員というやつだったらしい。
声や呼吸の仕方は完璧、体力も凄まじい。他の新入部員がひぃこらと言っている側で飄々とこなしてしまう。経験者ではないかと問うた部員が複数いたが、どうやらそうではないようだ。
なのに綾小路は余裕そのもの。一年間演劇部をやってきたはずの僕を簡単に超越する有能さに、少しくらくらした。
――なんでこんな奴が。
横目で見ながら、そんな思いを抱かずにはいられない。
そもそも演劇に対してさしたる興味もないのに運動部に入るのが無理だからという理由だけで部活選びをしたのだ、妬みのような気持ちを抱くのは不自然なのかも知れないが、きっと相手が気に入らない新入部員だからという単純な理由だろう。我ながら情けないと思う。
でも見た目からして苦手なものは苦手なのだ。
今日こそ綾小路に絡まれないよう、彼の目から逃れるように自分の動きに最新の注意を払っていた。
なのに、気がついたら捕まってしまっていた。
「駿先輩、演技指導してよ」
相変わらずの距離感のなさで、耳元に囁いてくる。壁際に追い詰められた僕は逃げられぬままに吐息で首筋を軽く撫でられ、反射的にぞくりと震えた。
まるで顔が良ければ何でも許されると思い込んでいるかのような振る舞いである。さすがチャラ男というかなんというか、きっとこのようにして女子を虜にしているに違いない。
「なんだよ、鬱陶しいな」
「駿先輩はつれないなぁ。新入部員からの可愛いお願いなんだ、聞いてくれてもいいじゃないか」
「僕はあんまり上手くないんだよ。どうせお前演技も得意なんだろ」
「初めてだからさすがにそれはないない」
それからしばらくせがまれ続けたが、頑として断った。誰がわざわざお前に教えてやるものか、というささやかな抵抗の意味もある。
結果的にはその選択は正しかったと思う。
だって案の定、『恋する少年』の台本を読んだ綾小路が有能さを見せつけて、古参部員たちを圧倒してしまったので。
「は?」
「いきなりで悪いとは思うけど、同じ部活の仲間になるんだから大事じゃん? ……あ、オレのことはぜひ綾小路って呼んで」
入部手続きを終えて、真に新入部員となった彼。
彼の入部初日に突然話しかけられた時は驚いたものだ。
先輩にタメ口を叩くのはいかがなものかとか、挨拶もしないのかとか、誰かから聞いたのだろう僕の名前……しかも苗字ではなく下の名前を知っているのかとか。
色々言いたいことはあるが、それよりも。
――なんでわざわざ、真っ先に僕に?
他の部員がたくさんいながら、それらには見向きもせずに僕の元に来ることを選んだ。その事実に、はっきり言って違和感しかない。
うちの部は結構美人が多い。
部長を筆頭に、三年生と二年生の女子も可愛い子揃いなので、やぼったい男の僕なんかに絡みに来るのではなく彼女らをナンパしそうなものなのに。
彼の入部理由はてっきり演劇部の女子生徒を引っ掛けるためだと思っていた。その僕の考えは間違っていたのだろうか?
人形のような綺麗な顔立ちをまじまじと眺め、沈黙する僕。
ずいぶん『感じの悪い先輩』という風になってしまったが、嫌われるなら嫌われても構わなかった。
でも。
「駿先輩、これからよろしく!」
そう言った彼の笑顔はキラキラと輝いていて。
なんだこいつ……と若干気圧されながら、「あ、ああ」とやっとの思いで言葉を返した。
綾小路はへらへらとした見かけによらず、いわゆる大型新入部員というやつだったらしい。
声や呼吸の仕方は完璧、体力も凄まじい。他の新入部員がひぃこらと言っている側で飄々とこなしてしまう。経験者ではないかと問うた部員が複数いたが、どうやらそうではないようだ。
なのに綾小路は余裕そのもの。一年間演劇部をやってきたはずの僕を簡単に超越する有能さに、少しくらくらした。
――なんでこんな奴が。
横目で見ながら、そんな思いを抱かずにはいられない。
そもそも演劇に対してさしたる興味もないのに運動部に入るのが無理だからという理由だけで部活選びをしたのだ、妬みのような気持ちを抱くのは不自然なのかも知れないが、きっと相手が気に入らない新入部員だからという単純な理由だろう。我ながら情けないと思う。
でも見た目からして苦手なものは苦手なのだ。
今日こそ綾小路に絡まれないよう、彼の目から逃れるように自分の動きに最新の注意を払っていた。
なのに、気がついたら捕まってしまっていた。
「駿先輩、演技指導してよ」
相変わらずの距離感のなさで、耳元に囁いてくる。壁際に追い詰められた僕は逃げられぬままに吐息で首筋を軽く撫でられ、反射的にぞくりと震えた。
まるで顔が良ければ何でも許されると思い込んでいるかのような振る舞いである。さすがチャラ男というかなんというか、きっとこのようにして女子を虜にしているに違いない。
「なんだよ、鬱陶しいな」
「駿先輩はつれないなぁ。新入部員からの可愛いお願いなんだ、聞いてくれてもいいじゃないか」
「僕はあんまり上手くないんだよ。どうせお前演技も得意なんだろ」
「初めてだからさすがにそれはないない」
それからしばらくせがまれ続けたが、頑として断った。誰がわざわざお前に教えてやるものか、というささやかな抵抗の意味もある。
結果的にはその選択は正しかったと思う。
だって案の定、『恋する少年』の台本を読んだ綾小路が有能さを見せつけて、古参部員たちを圧倒してしまったので。
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