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17:王子殿下、ハーレムを望むも叶わない。
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私――ダスティーを正妃に、他二人を側妃に。
大声でそんな宣言をしたスペンサー殿下に、私を含め一同の視線が集まりました。
そして、
「「「はぁ?」」」
当然ながら、私たちは首を傾げたのです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この国には正妃、側妃という制度があります。
基本、婚約者として長く付き合った末に婚姻を結び、妻となるのが正妃。
そしてその正妃に子供が生まれなかった場合や、仲が悪かった場合に迎え入れられるのが側妃。側妃というのは言ってみれば愛人・妾の立ち位置であり、決して名誉なことではない。
けれどもスペンサー殿下は、あろうことか公爵令嬢のリーズロッタ様と聖女ダコタ様を側妃にし、私などを正妃に据えようというのです。
子を孕めないわけでもないのに。
……つまり王子殿下は、ハーレムをご所望なのです。
ハーレムというのは動物に良くあることではありますが、人間がそんなことをしたら不謹慎この上ありません。
ので、今までそういったことはありませんでした。実際に妾を幾人か屋敷に住まわせハーレム状態になっていた貴族は、スキャンダルとして取り上げられ、結局爵位返上になったと聞きます。
ハーレムを望もうとはこの場の誰も考えていず、目が点になってしまいました。
「スペンサー様……、それ、正気ですの?」
「嫌だ嫌だ、ダコタ、王子様と一緒に他の女が寝てるところなんて見たくないもん!」
「私も正妃になるなんてお断りです!」
当然ながら指名された当の三人は、断固拒否。
私が正妃になる? 先ほどまでの修羅場は一体何だったのでしょうと思ってしまうこの結論に、私は呆れました。
私はわざわざ殿下と婚約破棄をしたのです。どうやらその意味が、まだわかっていらっしゃらないようでした。
「王子様がそんな馬鹿だとは思わなかった! このアホ王子!」
「そうですわそうですわ、スペンサー様の人でなし!」
先ほどまで愛を叫んでいた二人までこの様です。
殿下、あなた一体どういうつもりなんです?
「皆が僕のことを好きなんだったら、全員妻になればいいじゃないか。そうだろう?」
「私、殿下のことをお慕いしておりません。むしろ嫌い」
「そんなわけないだろう。あんなに僕に懐いてくれてたじゃないか。照れ隠しはもうわかったから、ね?」
スペンサー殿下はやはり、私のことなど一ミリも考えてくださっていないようです。
そのことを改めて実感し、私はため息を吐きたくなりました。
「あたくしを側妃に据えるだなんて、いくらスペンサー様とはいえ許しがたい発言ですわ! 謝罪を求めたく思います!」
「王子様、見損なったよ」
二人からの評価も駄々下がりです。
これ以上、殿下の見苦しい姿は見たくありませんね……。「では私はそろそろお暇を……」
「待て! 待ってくれ! ダスティーだけは逃さないぞ! じゃあこうしよう。リーズロッタが正妃、他二人が側妃。いいな?」
さっきの失望ぶりが一転、自信満々でスペンサー殿下が叫びました。
しかし――。
「良くないです」
「いいわけないじゃん!」
側妃だなんて不名誉な立場を、理由もなしに与えないでください。
私はダコタ様が可哀想になって来ました……。名前すら呼ばれず、妾にしかしていただけないダコタ様。不憫です。
私はまもなくこの場から撤退するつもりですが、ダコタ様はどうなさるおつもりでしょう? ハーレムは男の夢とどこかで聞いたことがありますから、やはり側妃にならざるを得ないのでしょうか。
……なんかすみません、私のせいで。
気まずいのでとっとと逃げてしまいましょう!
「で、では、私はこれにて失礼いたします! オネルド」
「わかっておりますダスティー様!」
私たちは早速、この場から撤退することにしました。
これ以上この場にいても埒が明きません。殿下に絡め取られて思い通りになるのだけは嫌なのです。
そうして部屋を飛び出した私たち。「こら待て」とかなんとか声が聞こえて来ますが、しかしスペンサー殿下は美少女二人の餌食になるはず。追っては来ないと思われました。
「……さようなら、殿下」
振り返るとそこには、ダコタ様やリーズロッタ様に組み伏せられるスペンサー殿下の姿がありました。
あなたのご所望したハーレムは叶いません。ですからどうぞ、奥さんとお幸せに。
あなたと過ごした時間は少しだけ、幸せでしたよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私たちはただ必死に逃げました。
さすが王城は警備の頑丈さが違います。あらゆるところで見つかってしまい、しまいには大勢の警備兵たちに追いかけ回される始末。
しかしオネルドは私を決してその脅威に晒すことなく、勇敢に走り続けてくれました。そして捕まることなく逃げ切ったのです。
数ヶ月暮らしたこの城ともお別れですね。辛い時もありましたが、過ぎ去ってしまえばいい思い出かも知れません。
彼の温もりがとても心地よく、私はなんだか眠たくなってしまいます。
ああ……やはり、彼の胸に抱かれているこの時が一番安心できますね。
私はそんなことを思いながら、いつの間にか眠りに落ちていました。
大声でそんな宣言をしたスペンサー殿下に、私を含め一同の視線が集まりました。
そして、
「「「はぁ?」」」
当然ながら、私たちは首を傾げたのです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この国には正妃、側妃という制度があります。
基本、婚約者として長く付き合った末に婚姻を結び、妻となるのが正妃。
そしてその正妃に子供が生まれなかった場合や、仲が悪かった場合に迎え入れられるのが側妃。側妃というのは言ってみれば愛人・妾の立ち位置であり、決して名誉なことではない。
けれどもスペンサー殿下は、あろうことか公爵令嬢のリーズロッタ様と聖女ダコタ様を側妃にし、私などを正妃に据えようというのです。
子を孕めないわけでもないのに。
……つまり王子殿下は、ハーレムをご所望なのです。
ハーレムというのは動物に良くあることではありますが、人間がそんなことをしたら不謹慎この上ありません。
ので、今までそういったことはありませんでした。実際に妾を幾人か屋敷に住まわせハーレム状態になっていた貴族は、スキャンダルとして取り上げられ、結局爵位返上になったと聞きます。
ハーレムを望もうとはこの場の誰も考えていず、目が点になってしまいました。
「スペンサー様……、それ、正気ですの?」
「嫌だ嫌だ、ダコタ、王子様と一緒に他の女が寝てるところなんて見たくないもん!」
「私も正妃になるなんてお断りです!」
当然ながら指名された当の三人は、断固拒否。
私が正妃になる? 先ほどまでの修羅場は一体何だったのでしょうと思ってしまうこの結論に、私は呆れました。
私はわざわざ殿下と婚約破棄をしたのです。どうやらその意味が、まだわかっていらっしゃらないようでした。
「王子様がそんな馬鹿だとは思わなかった! このアホ王子!」
「そうですわそうですわ、スペンサー様の人でなし!」
先ほどまで愛を叫んでいた二人までこの様です。
殿下、あなた一体どういうつもりなんです?
「皆が僕のことを好きなんだったら、全員妻になればいいじゃないか。そうだろう?」
「私、殿下のことをお慕いしておりません。むしろ嫌い」
「そんなわけないだろう。あんなに僕に懐いてくれてたじゃないか。照れ隠しはもうわかったから、ね?」
スペンサー殿下はやはり、私のことなど一ミリも考えてくださっていないようです。
そのことを改めて実感し、私はため息を吐きたくなりました。
「あたくしを側妃に据えるだなんて、いくらスペンサー様とはいえ許しがたい発言ですわ! 謝罪を求めたく思います!」
「王子様、見損なったよ」
二人からの評価も駄々下がりです。
これ以上、殿下の見苦しい姿は見たくありませんね……。「では私はそろそろお暇を……」
「待て! 待ってくれ! ダスティーだけは逃さないぞ! じゃあこうしよう。リーズロッタが正妃、他二人が側妃。いいな?」
さっきの失望ぶりが一転、自信満々でスペンサー殿下が叫びました。
しかし――。
「良くないです」
「いいわけないじゃん!」
側妃だなんて不名誉な立場を、理由もなしに与えないでください。
私はダコタ様が可哀想になって来ました……。名前すら呼ばれず、妾にしかしていただけないダコタ様。不憫です。
私はまもなくこの場から撤退するつもりですが、ダコタ様はどうなさるおつもりでしょう? ハーレムは男の夢とどこかで聞いたことがありますから、やはり側妃にならざるを得ないのでしょうか。
……なんかすみません、私のせいで。
気まずいのでとっとと逃げてしまいましょう!
「で、では、私はこれにて失礼いたします! オネルド」
「わかっておりますダスティー様!」
私たちは早速、この場から撤退することにしました。
これ以上この場にいても埒が明きません。殿下に絡め取られて思い通りになるのだけは嫌なのです。
そうして部屋を飛び出した私たち。「こら待て」とかなんとか声が聞こえて来ますが、しかしスペンサー殿下は美少女二人の餌食になるはず。追っては来ないと思われました。
「……さようなら、殿下」
振り返るとそこには、ダコタ様やリーズロッタ様に組み伏せられるスペンサー殿下の姿がありました。
あなたのご所望したハーレムは叶いません。ですからどうぞ、奥さんとお幸せに。
あなたと過ごした時間は少しだけ、幸せでしたよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私たちはただ必死に逃げました。
さすが王城は警備の頑丈さが違います。あらゆるところで見つかってしまい、しまいには大勢の警備兵たちに追いかけ回される始末。
しかしオネルドは私を決してその脅威に晒すことなく、勇敢に走り続けてくれました。そして捕まることなく逃げ切ったのです。
数ヶ月暮らしたこの城ともお別れですね。辛い時もありましたが、過ぎ去ってしまえばいい思い出かも知れません。
彼の温もりがとても心地よく、私はなんだか眠たくなってしまいます。
ああ……やはり、彼の胸に抱かれているこの時が一番安心できますね。
私はそんなことを思いながら、いつの間にか眠りに落ちていました。
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