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6 悪魔の花嫁
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地上では「本物の悪魔が現れた」などと騒ぎになっているらしいですが、今のあたくしにとっては本当にどうでもいい話です。
あたくしはもうこの魔界から出る気もその必要もないのですから。
最初は無理矢理に連れて来られたオグルの居城。
でも住めば都でとても住み心地がいい上、地上で貴族令嬢として肩身の狭い思いをしていた頃よりずっと優雅に、のどかに暮らしているのです。
オグルはあたくしを溺愛していて、何かとあたくしに愛を囁き続けています。あたくしはそれが嬉しくて、悪魔は人間よりも親しみやすく優しいものだ、などと思うのでした。
――そうしていつの間にか時は過ぎ、『その時』が来ました。
そうです。あたくしが悪魔の花嫁となる日、つまりオグルと結ばれるわけです。
あたくしの胸はドキドキと高鳴っておりました。
最初でこそオグルの容姿を恐ろしいなどと思っていたあたくしですが、今は少しもそんなことは思いません。あんな格好が良く優しい美丈夫など世界を探したって彼しかいませんからね。
悪魔の使いである小悪魔たちに着付けをしてもらい、漆黒のウェディングドレスを着てオグルの前に出ます。彼は着飾ったあたくしの姿を見て、にっこりと微笑んでくださいました。
「可愛いね、ボクのビリィは」
「ありがとうございます。とても光栄です。オグルも素敵ですよ?」
「ふふ。ありがとう」
ああ、嬉しい。
オーメン様は決してあたくしを可愛いなど言ってくださいませんでした。今から考えればどうしてあんな男に惚れていたのか謎でなりません。
これからはオグルのために全てを尽くします。そして彼もそんなあたくしを守り、愛してくれることでしょう。
あたくしと彼は手を繋ぎ、抱き合います。
「ボクも大好きだよ、ビリィ。ボクが絶対キミを幸せにしてみせるから。絶対に裏切ったりしない」
「はい。とっても嬉しいです」
たとえ異種族であろうとも常に互いを支え合い続けようと誓って、あたくしたち二人は熱烈な口づけを交わしました。
オグルの紫色の唇はとても柔らかく、まるでとろけるようです。それを味わいながらあたくしは甘美なる幸せを噛み締めたのでした。
こうしてあたくし――かつて悪魔と呼ばれた少女ビリィ・ビルデーは悪魔の花嫁となったのです。
「これから二人の未来に幸あれ!」
それからまもなく悪魔たちのギャアギャアとやかましい歓声が上がり、たちまちに結婚祝いのどんちゃん騒ぎが幕を開けました。
あたくしはもうこの魔界から出る気もその必要もないのですから。
最初は無理矢理に連れて来られたオグルの居城。
でも住めば都でとても住み心地がいい上、地上で貴族令嬢として肩身の狭い思いをしていた頃よりずっと優雅に、のどかに暮らしているのです。
オグルはあたくしを溺愛していて、何かとあたくしに愛を囁き続けています。あたくしはそれが嬉しくて、悪魔は人間よりも親しみやすく優しいものだ、などと思うのでした。
――そうしていつの間にか時は過ぎ、『その時』が来ました。
そうです。あたくしが悪魔の花嫁となる日、つまりオグルと結ばれるわけです。
あたくしの胸はドキドキと高鳴っておりました。
最初でこそオグルの容姿を恐ろしいなどと思っていたあたくしですが、今は少しもそんなことは思いません。あんな格好が良く優しい美丈夫など世界を探したって彼しかいませんからね。
悪魔の使いである小悪魔たちに着付けをしてもらい、漆黒のウェディングドレスを着てオグルの前に出ます。彼は着飾ったあたくしの姿を見て、にっこりと微笑んでくださいました。
「可愛いね、ボクのビリィは」
「ありがとうございます。とても光栄です。オグルも素敵ですよ?」
「ふふ。ありがとう」
ああ、嬉しい。
オーメン様は決してあたくしを可愛いなど言ってくださいませんでした。今から考えればどうしてあんな男に惚れていたのか謎でなりません。
これからはオグルのために全てを尽くします。そして彼もそんなあたくしを守り、愛してくれることでしょう。
あたくしと彼は手を繋ぎ、抱き合います。
「ボクも大好きだよ、ビリィ。ボクが絶対キミを幸せにしてみせるから。絶対に裏切ったりしない」
「はい。とっても嬉しいです」
たとえ異種族であろうとも常に互いを支え合い続けようと誓って、あたくしたち二人は熱烈な口づけを交わしました。
オグルの紫色の唇はとても柔らかく、まるでとろけるようです。それを味わいながらあたくしは甘美なる幸せを噛み締めたのでした。
こうしてあたくし――かつて悪魔と呼ばれた少女ビリィ・ビルデーは悪魔の花嫁となったのです。
「これから二人の未来に幸あれ!」
それからまもなく悪魔たちのギャアギャアとやかましい歓声が上がり、たちまちに結婚祝いのどんちゃん騒ぎが幕を開けました。
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