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監禁生活

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 この日からレオニウスは、アンジュを自室へ監禁するという暴挙にでた。

「あなたは馬鹿ですか! こんなことをして、わたくしが言うことを聞くとでも?」
「どんなに強情なおんなも、こうすれば大抵従順になる。なに、ひとり忽然と消えたところで誰も困りはすまい」
 違います陛下、と、アンジュはレオニウスを見つめた。
「いえ、わたくし一人が戻らなくても任務に支障はありませんが……。陛下、人が一人消えるとは大変なことなのです。皆が、無事を祈りながら懸命に探します。一人一人が大切なのです。探した結果、愚かにも皇帝が犯人だったと知れたら民はひどくがっかりします」
 黙れ、と皇帝は吠える。
「陛下。監禁してもいけない、無闇に斬ってもいけないのです。そんなことをしても、人の心はかわりません」
「いいか! お前は、皇帝に捧げられたおんなだ。俺の機嫌を取るために差し出された生贄だ。このまま好きにさせてもらう」
「なんてことを……!」
 は、と、皇帝は鼻で笑う。ベッドに投げ出したアンジュの下半身をすでにいやらしく撫で回している。
 全裸のアンジュは流石に困惑の表情だが、皇帝を怖がるでも泣くでもない。
 隙あらばここから逃げ出す猫といった雰囲気である。
「まずは淫らな体に作り替えてやる。そして俺なしでは生きていけないように教育しないとな」
「なんの冗談ですか! わたくしが貴方などに頼るだなんて……自信過剰も甚だしい」
「おっと、俺を拒絶する言葉は禁止だ。褒める言葉はいいぞ」
「……何を褒めればいいのやら。ここまで、褒められるポイントは皆無です。褒めて欲しければそのように行動なさって」
 ぽかん、と、レオニウスが目と口を丸くした。
「な、生意気だな、アンジュは! いいか、俺は皇帝だぞ、アンジュ。命令に従え。さもなくば斬る」
 びゅ、と、白刃が突きつけられる。刃こぼれ一つしていないが、血脂による曇りがある。

ーーまた、誰かが犠牲になってる

 途端にアンジュの胸が締め付けられる。
 そう、これを止めに来たのに。なのにどうしてこうなったのだろう。殺戮は止まっていない。
 アンジュは少し俯く。
 その瞬間、にたり、いやな笑いを浮かべる皇帝に組み敷かれ、アンジュは唇を噛んだ。

 レオニウスはアンジュに鎖こそつけないが、部屋から出ることを禁じ、防具や武具のみならず衣服を身につけることを禁じた。
 さすがに全裸で部屋から出るのは恥ずかしいだろうと予想してのことである。
「陛下、さほど恥ずかしくは……」
「なにっ! 嫁入り前のむすめだろうが!」
「……陛下に弄ばれた瞬間、結婚など諦めました」
 だが、レオニウスが予想しなかった部分でアンジュは露骨に怒りをあらわした。
「そんなことより、陛下! せめて剣は手元に置かせてください」
「剣? なぜだ?」
「騎士の仕事道具です。いざというとき、お役に立てません」
 レオニウスは、がっかりしたらしかった。
「お前は……いつまでも騎士でいるんだな」
「当然です!」
「お前とは……皇帝と騎士、なのか?」
「当然です!」
 アンジュは、それ以外の関係を結ぶつもりはない。
 それが皇帝に伝わってしまった。
「アンジュ、俺の気がすむまでここから一歩も出られないと思え!」
 その言葉通り、食事や必要なものは部屋まで届けられ、レオニウスが受け取る。
 身だしなみや入浴は、レオニウスの女官がきて行う。ただし、不必要な会話をすれば女官が斬られる。
 そしてアンジュが湯浴みをしたり着替えをしたりする間に部屋の掃除が行われるため、担当者と接触することはない。
 ただし。
「陛下。騎士たるもの、皇帝たるもの、毎日の鍛錬を欠かすわけにはいきません」
 との激しい主張は認められ、毎日、皇帝の剣術指南役が呼ばれることになった。

「陛下。そのように繋がったままではろくな鍛錬はできませんぞ。さ、出なされ」
 老剣士は、どうやったものかあっさりとアンジュからレオニウスを引き離し、アンジュの中から出て行った雄芯はくったりと力を失っていた。

「師範! ひどいぞ!」
「陛下、性欲が有り余っておるようで。素振り千回」
「ぐ……」

 しかし、レオニウスの仕事はどうなっているのかーー。

 仮にも皇帝である。
 暇なはずがない。
 アンジュの気がかりはそれであるが、それを尋ねると皇帝の機嫌が悪くなる。乱暴に抱かれて、手足を縛られたり目隠しされたりするので、聞けなくなってしまった。
「どうしたら、元の賢帝にもどせるのかしら……」
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