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第五章
第42話 虐め
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暗闇の中、声の主は踊るように移動する。
こちらかと思えばあちらから声が聞こえ、あちらかと思えば息がかかるほどの近さで囁く。
洋介は身体の自由を奪われ、視界をも奪われ、為す術がなかった。
ふいに声の主の手が洋介のシャツの胸元に触れた。かと思うと、勢いよく左右に引き裂かれる。
ボタンが弾き飛び、洋介の胸が顕わになる。
左腕の傷口から流れ落ちる血の軌跡は、まるで洋介の身体に絡みつく赤い蛇のようで美しい。
――ゴクリ
洋介の美しさに息を呑む。目が離せない。
声の主の頬が嫉妬で紅潮する。
声の主は――もちろんミゲルだ。
「アイツはこの肌に触れたのかな……きみはアイツに触れられて喜びに震えたのかな」
「……」
無言のままの洋介。
ミゲルの手が洋介のベルトに伸び、バックルをゆっくりと外す。
ボタンを外し、ジッパーを途中まで下ろす。
下着に指をかけ、左腰骨の下までゆっくりと下ろす。
ミゲルの指が肌に触れた瞬間、洋介の身体がビクリと硬直する。身体が動いたせいで左腕に激痛が走る。
「うっ!」
痛みで表情が歪む。
「きみは知っているかい? 痛みを感じているときの表情は絶頂を迎えているときの表情ととても似ていることを」
ミゲルは続ける。
「今のきみの表情はとても良かったよ。アイツの好きな表情だ」
「……きみはどこまでも僕を苛立たせる」
ミゲルの瞳は怒りで蒼く燃えていた。
こちらかと思えばあちらから声が聞こえ、あちらかと思えば息がかかるほどの近さで囁く。
洋介は身体の自由を奪われ、視界をも奪われ、為す術がなかった。
ふいに声の主の手が洋介のシャツの胸元に触れた。かと思うと、勢いよく左右に引き裂かれる。
ボタンが弾き飛び、洋介の胸が顕わになる。
左腕の傷口から流れ落ちる血の軌跡は、まるで洋介の身体に絡みつく赤い蛇のようで美しい。
――ゴクリ
洋介の美しさに息を呑む。目が離せない。
声の主の頬が嫉妬で紅潮する。
声の主は――もちろんミゲルだ。
「アイツはこの肌に触れたのかな……きみはアイツに触れられて喜びに震えたのかな」
「……」
無言のままの洋介。
ミゲルの手が洋介のベルトに伸び、バックルをゆっくりと外す。
ボタンを外し、ジッパーを途中まで下ろす。
下着に指をかけ、左腰骨の下までゆっくりと下ろす。
ミゲルの指が肌に触れた瞬間、洋介の身体がビクリと硬直する。身体が動いたせいで左腕に激痛が走る。
「うっ!」
痛みで表情が歪む。
「きみは知っているかい? 痛みを感じているときの表情は絶頂を迎えているときの表情ととても似ていることを」
ミゲルは続ける。
「今のきみの表情はとても良かったよ。アイツの好きな表情だ」
「……きみはどこまでも僕を苛立たせる」
ミゲルの瞳は怒りで蒼く燃えていた。
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