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第三章
第24話 病院
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走ってくる足音が、病院の廊下に響いていた。
手術室の前のベンチには、涼子が俯いて座っている。
足音は涼子の前で止まった。
「涼子さん……猛は?」
洋介が息を切らして尋ねた。
「富樫組の奴にお腹を刺されて今手術中」
涼子は、自分の手をじっと見つめていた。その手には洗い落としきれていない猛の血がまだ少し残っている。ブラウスの袖口や胸のあたりにも血の跡がついていた。
「涼子さん、怪我は?」
「私は大丈夫。これ、私の血じゃない」
涼子は、自分の手のひら見つめたまま呟いた。
「血がね、なかなか止まらなかった。押さえててもどんどん流れ出してきて……猛の顔はどんどん白くなっていくし……息してないんじゃないかと思うくらい静かで……全然動かなくて……すごく怖かった」
洋介は、動くことができなかった。猛が死ぬかもしれない、猛がいなくなる……想像したら足がすくんで動けなくなる。頭の中が真っ白になって、恐怖のあまり大声で叫びたいのに喉が詰まって声が出ない。
息ができない。
口は酸素を求めて開けているのに、空気が入ってこない。窒息死するのではないかと思うほど息苦しい。手が痺れ、震えが止まらない。
涼子が洋介の様子に気づき、すぐさま洋介をベンチに座らせた。
「猛なら大丈夫。こんなことで死ぬような奴じゃないでしょ。あいつの生命力は半端ないから」
涼子は自分に言い聞かせるように言った。
俯いたままの洋介と視線を合わせられるよう、涼子は洋介の前に跪いた。
固く組まれた洋介の両手は、まだ震えている。
その震える手の上に涼子の手がそっと乗せられた。
「あなたの顔色の方が猛より悪いわよ。しっかりしなさい。そんな顔を猛に見せたら私が承知しない」
洋介は何度も何度も頷いた。
震える手に洋介の涙が落ちた。
手術室の前のベンチには、涼子が俯いて座っている。
足音は涼子の前で止まった。
「涼子さん……猛は?」
洋介が息を切らして尋ねた。
「富樫組の奴にお腹を刺されて今手術中」
涼子は、自分の手をじっと見つめていた。その手には洗い落としきれていない猛の血がまだ少し残っている。ブラウスの袖口や胸のあたりにも血の跡がついていた。
「涼子さん、怪我は?」
「私は大丈夫。これ、私の血じゃない」
涼子は、自分の手のひら見つめたまま呟いた。
「血がね、なかなか止まらなかった。押さえててもどんどん流れ出してきて……猛の顔はどんどん白くなっていくし……息してないんじゃないかと思うくらい静かで……全然動かなくて……すごく怖かった」
洋介は、動くことができなかった。猛が死ぬかもしれない、猛がいなくなる……想像したら足がすくんで動けなくなる。頭の中が真っ白になって、恐怖のあまり大声で叫びたいのに喉が詰まって声が出ない。
息ができない。
口は酸素を求めて開けているのに、空気が入ってこない。窒息死するのではないかと思うほど息苦しい。手が痺れ、震えが止まらない。
涼子が洋介の様子に気づき、すぐさま洋介をベンチに座らせた。
「猛なら大丈夫。こんなことで死ぬような奴じゃないでしょ。あいつの生命力は半端ないから」
涼子は自分に言い聞かせるように言った。
俯いたままの洋介と視線を合わせられるよう、涼子は洋介の前に跪いた。
固く組まれた洋介の両手は、まだ震えている。
その震える手の上に涼子の手がそっと乗せられた。
「あなたの顔色の方が猛より悪いわよ。しっかりしなさい。そんな顔を猛に見せたら私が承知しない」
洋介は何度も何度も頷いた。
震える手に洋介の涙が落ちた。
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