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第6話 ゲス野郎を叩き潰せ!(お題: アンラッキー7)
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洋介と涼子は現在担当している訴訟の作戦会議の真っ最中。
資料を所狭しと机の上に広げ、互いに持ち寄った情報を精査している。
ここは美咲・真木法律事務所。涼子と洋介、弁護士二人だけの小さな法律事務所だ。
常勤のパラリーガルや事務員はいないが、洋介の恋人である海藤猛が時折二人の仕事を手伝っている。
猛の本業は探偵。自分の仕事がないときはこの法律事務所の仕事を手伝っていることが多い。事務もこなすが、得意なのは外回りの調査。涼子と洋介が担当するケースの事実確認の調査や、時には真犯人の特定、確保まで行うこともある。デスクに張り付いて書類整理をするよりは現場に出て体を張って仕事をこなすほうが得意である。
今回の訴訟は民事。先方が原告、こちらが被告側となる。訴訟の内容はどう考えても単なる言いがかりとしか思えず、証拠と証人を集めれば先方の訴えはほぼ確実に退けられる。証拠と証人は猛が関係者を当たって集めていたが、有力な証拠と証人が確保できたと猛から先程連絡が入っていた。
――バン
ドアが勢いよく開く。もちろん猛だ。
「おい、ノックをしろといつも言ってるだろ」
洋介が何百回同じ小言を言っても猛はノックをしない。言うことを聞かない猛も頑固だが、同じ小言を何百回も諦めずに言う洋介も頑固だ。
「さっきの電話では証拠と証人を見つけたと言っていたが?」
待ちきれない洋介は猛がソファに座る前に尋ねる。
その問を聞きながら猛がドカッとソファに座る。
「ああ、証拠も証人も見つけた」
「何だ? 気が立ってるな」
猛の身体からは薄っすらと殺気のようなものが放たれている。気の弱い者なら逃げ出してしまうほどの気迫だ。だが、今この部屋に気の弱い者はいない。涼子も洋介も猛の殺気など毛ほども気にしない。この二人は腕っぷしの強い猛でも言葉で押さえつけることができるという揺るぎない自信があるからだ。
「何だ、あの男は! 七つの大罪全部盛りのような男だぞ! 傲慢で嫉妬深く、何にでもすぐに腹を立てるくせに自分は怠けてばかりだ。欲しい物は人のものを横取りしてでも手に入れようとするし、美食家を気取って毎夜暴飲暴食三昧、加えてエロ親父! アイツの被害に遭っている者も多いのに殆どが泣き寝入りをしてる、胸糞悪い! どうしてこっちが訴えられる側なんだ!」
今回のクライアントと同じような言いがかりをつけられた何人かから話を聞いてきた猛はその被害者たちに同情して怒り狂っているのだろう。
「で、物的証拠は見つかったのか?」
猛の怒りを目の当たりにしても洋介はお構いなしで冷静に尋ねる。
「見つけた。ドライブレコーダーの映像だ。それと俺が話を聞いた人のうちの一人が証人になってもいいと言ってたぞ」
「今まで泣き寝入りをしてたのにどうして急に証言をする気になったんだ? お前が口説き落としたのか? 相変わらず人たらしだなお前は」
洋介がチクリと嫌味を言う。誰にでもフェロモンを振りまく恋人に腹を立ててのことだろう。
二人の会話を聞いていた涼子は不敵な笑みを浮かべている。
「猛、証言をしてくれた人たちの話を聞かせて。それから洋介は証拠の映像を確認して。さあ、あのエロ親父を叩き潰す準備をするわよ!」と言いながら、涼子は凛とした姿で椅子から立ち上がる。
「おい、洋介。涼子はどうしたんだ? やけに張り切ってるじゃないか」
いつもより気合いが増している涼子の様子を不思議に思った猛が洋介に尋ねる。
「原告人は涼子さんが一番嫌いなずる賢くて人の権利を踏みにじる奴だからだろ。それと原告側の弁護人がやたら涼子さんに絡んでくる人なんだよ。涼子さんを相手にして一度も勝てたことがないのが気に入らないんだろ」
****
裁判の日を迎え、涼子と洋介と猛、そしてクライアントと猛が口説き落とした証人が裁判所の前にいた。
クライアントはさすがに緊張の色を隠せない様子だが、涼子たちは自分たちの勝ちを確信している。
こちらのチームは準備万端、負ける気がしない。
「さあ、あの七つの大罪具現化親父を叩き潰すわよ。今日という日を彼の人生最悪のアンラッキーデイにしてやろうじゃないの!」
そう言うと、涼子は裁判所の大理石の床をハイヒールで「カン」と蹴って法廷へと進んで行った。
資料を所狭しと机の上に広げ、互いに持ち寄った情報を精査している。
ここは美咲・真木法律事務所。涼子と洋介、弁護士二人だけの小さな法律事務所だ。
常勤のパラリーガルや事務員はいないが、洋介の恋人である海藤猛が時折二人の仕事を手伝っている。
猛の本業は探偵。自分の仕事がないときはこの法律事務所の仕事を手伝っていることが多い。事務もこなすが、得意なのは外回りの調査。涼子と洋介が担当するケースの事実確認の調査や、時には真犯人の特定、確保まで行うこともある。デスクに張り付いて書類整理をするよりは現場に出て体を張って仕事をこなすほうが得意である。
今回の訴訟は民事。先方が原告、こちらが被告側となる。訴訟の内容はどう考えても単なる言いがかりとしか思えず、証拠と証人を集めれば先方の訴えはほぼ確実に退けられる。証拠と証人は猛が関係者を当たって集めていたが、有力な証拠と証人が確保できたと猛から先程連絡が入っていた。
――バン
ドアが勢いよく開く。もちろん猛だ。
「おい、ノックをしろといつも言ってるだろ」
洋介が何百回同じ小言を言っても猛はノックをしない。言うことを聞かない猛も頑固だが、同じ小言を何百回も諦めずに言う洋介も頑固だ。
「さっきの電話では証拠と証人を見つけたと言っていたが?」
待ちきれない洋介は猛がソファに座る前に尋ねる。
その問を聞きながら猛がドカッとソファに座る。
「ああ、証拠も証人も見つけた」
「何だ? 気が立ってるな」
猛の身体からは薄っすらと殺気のようなものが放たれている。気の弱い者なら逃げ出してしまうほどの気迫だ。だが、今この部屋に気の弱い者はいない。涼子も洋介も猛の殺気など毛ほども気にしない。この二人は腕っぷしの強い猛でも言葉で押さえつけることができるという揺るぎない自信があるからだ。
「何だ、あの男は! 七つの大罪全部盛りのような男だぞ! 傲慢で嫉妬深く、何にでもすぐに腹を立てるくせに自分は怠けてばかりだ。欲しい物は人のものを横取りしてでも手に入れようとするし、美食家を気取って毎夜暴飲暴食三昧、加えてエロ親父! アイツの被害に遭っている者も多いのに殆どが泣き寝入りをしてる、胸糞悪い! どうしてこっちが訴えられる側なんだ!」
今回のクライアントと同じような言いがかりをつけられた何人かから話を聞いてきた猛はその被害者たちに同情して怒り狂っているのだろう。
「で、物的証拠は見つかったのか?」
猛の怒りを目の当たりにしても洋介はお構いなしで冷静に尋ねる。
「見つけた。ドライブレコーダーの映像だ。それと俺が話を聞いた人のうちの一人が証人になってもいいと言ってたぞ」
「今まで泣き寝入りをしてたのにどうして急に証言をする気になったんだ? お前が口説き落としたのか? 相変わらず人たらしだなお前は」
洋介がチクリと嫌味を言う。誰にでもフェロモンを振りまく恋人に腹を立ててのことだろう。
二人の会話を聞いていた涼子は不敵な笑みを浮かべている。
「猛、証言をしてくれた人たちの話を聞かせて。それから洋介は証拠の映像を確認して。さあ、あのエロ親父を叩き潰す準備をするわよ!」と言いながら、涼子は凛とした姿で椅子から立ち上がる。
「おい、洋介。涼子はどうしたんだ? やけに張り切ってるじゃないか」
いつもより気合いが増している涼子の様子を不思議に思った猛が洋介に尋ねる。
「原告人は涼子さんが一番嫌いなずる賢くて人の権利を踏みにじる奴だからだろ。それと原告側の弁護人がやたら涼子さんに絡んでくる人なんだよ。涼子さんを相手にして一度も勝てたことがないのが気に入らないんだろ」
****
裁判の日を迎え、涼子と洋介と猛、そしてクライアントと猛が口説き落とした証人が裁判所の前にいた。
クライアントはさすがに緊張の色を隠せない様子だが、涼子たちは自分たちの勝ちを確信している。
こちらのチームは準備万端、負ける気がしない。
「さあ、あの七つの大罪具現化親父を叩き潰すわよ。今日という日を彼の人生最悪のアンラッキーデイにしてやろうじゃないの!」
そう言うと、涼子は裁判所の大理石の床をハイヒールで「カン」と蹴って法廷へと進んで行った。
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