【R18】魔族の姫は隣国の王子に溺愛されたい!

ドゴイエちまき

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63.封じられた抵抗

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 じたじた暴れてみても押さえつける手も、触れる体もびくともしない。
 それどころか両手を難なく一括りにされてしまった。

 メイリーンもそうだったが、高貴な身分でありながら単独で過ごすということは、それなりに武を持ち合わせているのだろう。
 抵抗するジゼルは魔法には自信があるが、腕力はない。睨みつけても、体を捩っても、フェリクの余裕は崩れなかった。

「見たところ大した力はなさそうだ。見つけたのが俺で良かったじゃないか。もし妹だったら命はなかったからな。俺は優しいから、時間をかけてゆっくり聞き出してやるよ」

 首元で囁かれる声。触れる吐息にぞわりと嫌悪が溢れる。
 もうこれ以上の我慢は限界だ。リュートの居場所は自力で探し当ててみせる。

 弟を大切に思う彼の気持ちを踏みにじるようで少し胸が痛みはするけど、今はただこの状況から解放されたかった。心の中で謝罪し、眠りの魔法を発動させようと指先に魔力を込める。

 しかし次の瞬間、どういうわけか魔力は霧散してしまった。
 もう一度、今度は頭の中でより強力な魔法式を展開してみてもやっぱり何も発動しない。
 試しに得意の雷魔法を指先に集めても、思うように形にならなかった。

(どういうこと? まさかこの男も特殊な体質なの?)

「おい、聞いているのか」

 焦りだしたジゼルを訝しむフェリクは強く手首を掴んだ。強引な力は単純な恐怖を煽ってくる。
 屈辱と悔しさで涙が溢れ出しそうだった。イブリスの姫として、こんなことあってはならないのに。

 痛みに顔をしかめたジゼルは咄嗟に未完成な電撃を解き放つ。術式自体は最後まで紡ぐことは出来なかったが、制御できなかった魔力は過剰に放たれたはずだ。

 それでも指先から生まれた僅かな光が儚く散るだけだった。あとは空気が振動したのみで、なにひとつ作動しなかった。
 おそらくフェリクには魔力の流れなど読み取れない。この国には存在しないものだからだ。

 だけど揺れた空気の気配に表情が鋭くなった。青ざめるジゼルから体を離し、フェリクは不可解な表情で周りを一瞥した。

「なんだ今のは……。一体何をした?」
「なんで……」

 不安に瞳は揺れ、声が震える。そんなジゼルを眺めるフェリクは眉を顰めた。この様子だと、おそらく意図的に防御したわけではなさそうだ。
 解せないジゼルが視線を彷徨わせた先。腕を掴むフェリクの指に光る、金の指輪が妙に気になった。

「綺麗な指輪ね」
「ああ、先祖代々伝わる守護の指輪だ」
「守護……。もしかして、魔法を無力化する効果があるのかしら」

 根拠があったわけではない、ただの勘だ。しかしフェリクは驚いたように眉を上げた。

「なんだ、よく知っているな。そうか、お前は盗人か? 今となっては効果もわからないものだが、これはやれないな」

 睡眠魔法は初歩的な魔法だが、ジゼルの魔力を封じたのだから指輪の効果は抜群だ。
 しかしこれはまずい。ジェイドのように武器も扱える者なら問題はないけれど、抵抗する術を封じられたも同然だった。冷える背中に嫌な汗が伝う。

「触らないで」
「そう怯えなくてもいい。お前ほど美しい女はそうそういないからな。大人しくしてれば悪いようにはしないさ」

 拘束を解かないまま、もう片方の手で服の上から体のラインがなぞられる。
 豊かな膨らみから細い腰へ。明確な目的を持った動きはジゼルの喉を引きつらせた。

 再び抜け出そうとして体を捩っても、押さえつける力は一向に緩まない。全力で振り切りたいのに恐怖でうまく体は動かなかった。

 スカートを捲り上げた無遠慮な手が直接腿に触れる。
 耐えがたい屈辱から逃げたくても、圧倒的な力の差ではどうすることも出来なかった。
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