【R18】地雷系悪魔ちゃんは天使な彼に束縛されたい

53.契約条件

「ああん、つまんない。ソウマ様ってば謙虚なんだからぁ。でもそんなとこも素敵♡」
「俺に魔王が務まるわけないでしょ」

「そんなことないですよぅ！　それにミルカ、ソウマ様のためなら魔王様より強くなっちゃう♡ そしたらソウマ様はミルカのご主人様だから実質魔界ナンバーワンでしょ。魔王の玉座に座るソウマ様……ああん興奮しちゃう♡ その時はミルカを膝に乗せてね♡」
「そんな機会があればね。相変わらずおねーさん、ヤバい子だよね」

　ミルカのテンションに慣れた蒼真は軽く聞き流しながら皿にご飯を盛って、食べる準備をしていく。
　同じようにミルカも少量のルーとフルーツサラダのみをそれぞれ小さな皿に乗せた。

　蒼真に邪道だと言われたが、淫魔には食物からの栄養など必要がない。
　美味しいものは好きだけど、全く食べない日も多いくらいだ。
　食事中の一番の楽しみは、ミルカの手料理を食べる蒼真を眺めることだったりする。
　
「だってヤバいくらいソウマ様が好きなの♡」
「まあ、俺もヤバい自覚あるけどね。あのさ、言ってなかったけど今の契約条件、ほぼ白紙なんだ」
「えっ、どうして……」
　
　今日も変わらず向かいに座り、うっとり蒼真の食事風景を眺めていたミルカはぱちくりと瞳を瞬かせる。
　以前はたくさんあったはずだ。
　思わず小首を傾げると蒼真は一度スプーンを置いた。
　余裕を感じさせる表情はいつもと変わらない。
　
「んー、俺が感情に任せて作動させないように。もうあんな思いしたくないからね。でも怪しい行動は許さない。契約に書き込まなくても約束は絶対に守って。前の条件、全部覚えてる？」

　もちろん蒼真の言うことは全て覚えている。
　こくんと頷くミルカに彼は満足そうな顔でにこりと笑う。

「もし裏切ったら、監禁わからせ調教コースかな」
「はうぅ……それもおいしい♡ でもでも、ミルカ絶対に裏切らないわ。ソウマ様だけがミルカのご主人様だもん」
「そうだね。ミルカのド執着を信じてみるよ」
「でね、ミルカがソウマ様を魔王様にしてあげる♡」
「それは信じてないけど」

　被せるよう否定された言葉に、ぷうっとくちびるを尖らせる。そこは信じて欲しいところなのに。
　でも膨れる顔を見た蒼真はまた楽しそうに笑うから、すぐに許せてしまった。

「今の契約条件はひとつだよ。俺が死ねばミルカも死ぬ。それだけ。シンプルでしょ？」
「さすがソウマ様！　ミルカのことわかりすぎてるぅ♡ あのね、逆も追記してほしいな。もし先にミルカが死んじゃったらソウマ様も一緒に死んでね♡ もちろん側にいてくれなきゃイヤ♡」

　蒼真と同時に心臓が止まるなんて、最高に幸せな最期だ。
　その時に想いを馳せて瞳を潤ませるミルカを眺める彼はいつもの笑みを浮かべている。
　きっとこんなことはお見通しだし、蒼真の答えもわかっている。ミルカは期待に満ちた目で返事を待つ。