52 / 54
52.ミルカの魔界事情
しおりを挟む
「ん、充電完了。マジでチート過ぎるよね。落ちこぼれ天使の俺がエッチなサキュバスを調教したら超絶チートな嫁になりました、とかそんな感じ」
「ああん嫁って言われちゃった♡ よくわかんないけどソウマ様の役に立ってるなら嬉しい♡ それにソウマ様は落ちこぼれじゃないわ。ミルカのご主人様だもん」
曇りないまなこで見上げると、少し照れた蒼真に髪を撫でられる。
表情は澄ましていてもお揃いのピアスが光る耳元が赤い。
それを確認したミルカはニマニマ締まりのない顔でキッチンへと向かった。
今日は蒼真の好きなカレーだ。
といっても彼の好物が食卓に並ばない日はない。
胃袋を掴む作戦も地味に実行中である。
ミルカに妥協という文字はなかった。それもまた蒼真に関してのみだけど。
ご機嫌なミルカは最近よく聞く流行りの歌を口ずさみながら、カレーの入った鍋を温め直す。
野菜の切り方から調味料によるアレンジ。
研究を重ねたルーは力作だ。
スパイシーな香りが鼻腔をすぐり、ミルカは満足げに頷く。
(今日の出来も最高! ミルカってば出来る嫁すぎるぅ♡)
こうやってにやけるのも毎日のことだったりする。ちょうどいい具合に温まった頃、着替え終えた蒼真が後ろから覗き込んできた。
「いい匂い、めっちゃおいしそー。いつもありがと。意外になんでも出来るよね」
「そうなの♡ ソウマ様のためなら何だって出来ちゃう♡ 」
「魔力も異常だしさ、マジでチートが過ぎる」
コップに注いだ水を飲み込んだ蒼真はじっとミルカを見つめる。
何も言わず真剣な表情でただ眺めてくる彼は珍しく、不思議に思ったミルカは首を傾けた。
「どうしたの?」
「んー、ずっと気になってたんだけど……。ミルカってもしかして魔王の娘とか、そういうのだったりする?」
「まさか! 違いますよう!」
少し緊張したような問いはあまりにも予想外で、くすくす笑うミルカに蒼真もホッと表情を緩める。
「だよね、魔界のプリンセスが天使のために地上でカレー作るわけないか」
「そうですよぉ、ミルカのパパは魔王様の補佐なんだもの」
にこやかに言った途端、蒼真の持っていたコップが大きな音を立ててシンクに落ちた。
幸いガラスではないので割れはしなかったが、ぽかんとする彼の表情はこれまた珍しく、切長の目が大きく見開かれている。
「補佐……?」
「そうなの。腹心であり右腕であり親友? なんかよくそんなこと言ってるけど、ミルカには関係ないし」
「いや、あるだろ?! 魔王の腹心って超上級だし、めっちゃ重要人物じゃん……」
俺、もしかしてとんでもない子に手出した……? など呟く蒼真の顔が青くなっていく。
まさか高すぎる両親の地位で引かれるなんて最悪でしかない。
それは自分ではどうにも出来ないからだ。
慌てたミルカは必死にメリットを考える。
「あのね! そう! ソウマ様が望めばパパの跡を継ぐことも出来るよ。天使の補佐だなんて魔王様も喜ぶと思うの。天使初の魔王補佐なんて格好いい♡ ああん素敵♡」
「どう考えても喜ばないでしょ……」
「大丈夫! だって魔王様、面白いこと大好きだもん。でもミルカね、ソウマ様には補佐より魔王のほうが似合うと思うの♡ 魔王の座奪っちゃう? ミルカ、全力で協力しちゃう♡」
「奪わないって。おっそろしいこと言うね」
軽く言ってみたが至って本気だ。
怖いものなしのミルカを震え上がらせることができる彼こそ、次期魔王に相応しいと思っている。
次に帰ったら魔王様に提案してみよう、そんなことをこっそり企んでいるのはまだ蒼真には秘密だけど。
「ああん嫁って言われちゃった♡ よくわかんないけどソウマ様の役に立ってるなら嬉しい♡ それにソウマ様は落ちこぼれじゃないわ。ミルカのご主人様だもん」
曇りないまなこで見上げると、少し照れた蒼真に髪を撫でられる。
表情は澄ましていてもお揃いのピアスが光る耳元が赤い。
それを確認したミルカはニマニマ締まりのない顔でキッチンへと向かった。
今日は蒼真の好きなカレーだ。
といっても彼の好物が食卓に並ばない日はない。
胃袋を掴む作戦も地味に実行中である。
ミルカに妥協という文字はなかった。それもまた蒼真に関してのみだけど。
ご機嫌なミルカは最近よく聞く流行りの歌を口ずさみながら、カレーの入った鍋を温め直す。
野菜の切り方から調味料によるアレンジ。
研究を重ねたルーは力作だ。
スパイシーな香りが鼻腔をすぐり、ミルカは満足げに頷く。
(今日の出来も最高! ミルカってば出来る嫁すぎるぅ♡)
こうやってにやけるのも毎日のことだったりする。ちょうどいい具合に温まった頃、着替え終えた蒼真が後ろから覗き込んできた。
「いい匂い、めっちゃおいしそー。いつもありがと。意外になんでも出来るよね」
「そうなの♡ ソウマ様のためなら何だって出来ちゃう♡ 」
「魔力も異常だしさ、マジでチートが過ぎる」
コップに注いだ水を飲み込んだ蒼真はじっとミルカを見つめる。
何も言わず真剣な表情でただ眺めてくる彼は珍しく、不思議に思ったミルカは首を傾けた。
「どうしたの?」
「んー、ずっと気になってたんだけど……。ミルカってもしかして魔王の娘とか、そういうのだったりする?」
「まさか! 違いますよう!」
少し緊張したような問いはあまりにも予想外で、くすくす笑うミルカに蒼真もホッと表情を緩める。
「だよね、魔界のプリンセスが天使のために地上でカレー作るわけないか」
「そうですよぉ、ミルカのパパは魔王様の補佐なんだもの」
にこやかに言った途端、蒼真の持っていたコップが大きな音を立ててシンクに落ちた。
幸いガラスではないので割れはしなかったが、ぽかんとする彼の表情はこれまた珍しく、切長の目が大きく見開かれている。
「補佐……?」
「そうなの。腹心であり右腕であり親友? なんかよくそんなこと言ってるけど、ミルカには関係ないし」
「いや、あるだろ?! 魔王の腹心って超上級だし、めっちゃ重要人物じゃん……」
俺、もしかしてとんでもない子に手出した……? など呟く蒼真の顔が青くなっていく。
まさか高すぎる両親の地位で引かれるなんて最悪でしかない。
それは自分ではどうにも出来ないからだ。
慌てたミルカは必死にメリットを考える。
「あのね! そう! ソウマ様が望めばパパの跡を継ぐことも出来るよ。天使の補佐だなんて魔王様も喜ぶと思うの。天使初の魔王補佐なんて格好いい♡ ああん素敵♡」
「どう考えても喜ばないでしょ……」
「大丈夫! だって魔王様、面白いこと大好きだもん。でもミルカね、ソウマ様には補佐より魔王のほうが似合うと思うの♡ 魔王の座奪っちゃう? ミルカ、全力で協力しちゃう♡」
「奪わないって。おっそろしいこと言うね」
軽く言ってみたが至って本気だ。
怖いものなしのミルカを震え上がらせることができる彼こそ、次期魔王に相応しいと思っている。
次に帰ったら魔王様に提案してみよう、そんなことをこっそり企んでいるのはまだ蒼真には秘密だけど。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
Home, Sweet Home
茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。
亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。
☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる