26 / 54
26.蒼真と蓮②(side蒼真)
しおりを挟む
会いに来るなと言ったものの、あのミルカがこれだけ連絡をしてこないのは初めてだ。
思わず重くなった気分を切り替えるよう、無理にでもゲームに集中することにした。
トップ画面からイベントへと進み、属性を考えながらパーティを組む。
蒼真と同じく、画面を見たままの蓮がぽつりと話し出した。
「で、何があったんだよ」
「んー?」
「ストーカーのお姉さん、改め彼女さんと」
「あーね、呼び方……」
「あの人、毎日来てたもんな。誰に告られてもスルーしてた蒼真が、まさかストーカーと付き合うとは思わなかった。まあ、可愛いけどさ」
冷静な蓮に思わず苦笑する。
確かにモテるけども老若男女問わず人間に好感を持たれるように振る舞っているのだから、当たり前の結果だと思っている。幸いにも顔がいいのは自覚済みだが。
もちろん手を出して面倒ごとにはなりたくないので、好意はありがたくお断りしていた。
天使と人間では寿命も違うし、正体を明かすわけにもいかない。
それ以上に悪魔なんて論外だ。なのにほんの悪戯心で手を出してしまった。まさか付き纏われることになるとは思っていなかったけど。
「俺さぁ、めっちゃ一途なの」
「良いことじゃん」
「でしょ? でもクッソ重いんだよね。自分でも異常だと思うし。でさ、そういうのバレたくないじゃん? だから隠して付き合うんだけど、いっつも変に距離が出来るんだよね。でもミルカだったらそういうの全部受け止めてくれるかなーとか……、なんかそう思っちゃって。で、気付いたら好きになってた」
今まで蓮に、というより誰にもこんな話はしたことがなかった。
だけど心のモヤモヤが驚くほどするすると出てくる。どうやら抱え込むのも限界らしい。
蓮は変わらず冷静な顔でスマホの画面を見ながら相槌を打つ。その適当さが今はありがたかった。
「ふーん……、ミルカさんて言うんだ。あの人、蒼真の塩対応にめげたことないもんな。あれは俺なら心折れるわ。マジで強メンタル」
「そ、めげないんだよね。可愛いでしょ。ド執着の塊だし、従順だし、素直だし、えっろいし。なんでも言うこと聞いちゃうんだよね。俺のためなら犯罪でもサクッとしそうなとこが好き」
そう惚気た途端、指が滑ったらしい蓮の操作が大きくミスった。
攻撃を受けた蓮のキャラに慌てて回復アイテムを使用し、ボスに属性ダメージを与える。クエストクリアの文字を見た蒼真はふうっと息をついた。
「れーん、何やってんの。俺に感謝しなよー。……ん? どうかした?」
「どうって……、引いてる。お前そんな趣味してたんだ……」
心なしか物理的な距離も開いた気がする。どんな趣味だと思われたのかはわからないが、異常な執着には自覚がある。わざとらしく人差し指をくちびるに当て、蒼真はにっこり微笑んだ。
「んー、内緒にしといてね。優しくて爽やかな俺のイメージが崩れるから」
「どうでもいいけど……。元気ないから愚痴聞いてやろうと思ったけど惚気じゃん。なんで喧嘩してんの?」
わざわざ探しに来たのは蓮なりの気遣いだったらしい。クエストの手伝いは口実ではなさそうだが。
うーんと唸った蒼真は再び机に突っ伏した。
「喧嘩というか……蓮はさ、彼女の過去とか気にならん? 元カレとか」
「俺んとこはお互い初めてだから」
「なにそれ初々しい。俺の彼女さー、色々あったのは承知の上だったんだけど、実際その相手を知るとやっぱダメって言うか……我慢ならんと言うか……。いや、ほんとは過去全部許せないんだけど……」
こうやって口にするとあまりにも稚拙な嫉妬だと思い知る。過去に相手がいるくらい、ごく普通のことなのに。
顔も存在も知らない相手にすら嫉妬してしまう身としては、ああやって親しい姿を見てしまうとどうにもダメだった。
語尾につれて声は小さくなったが蓮には聞こえていたらしい。
「なんとなくわかるけど、彼女さん年上だし仕方なくね?」
「まー、そうなんだけど……。価値観の違いって、思ってたよりしんどい」
まさに蓮の言う通りだが、蒼真にとってのセックスは特別な行為であって、ミルカにとってはただの食事。
今は契約で縛り付けているけど、それがなければきっと彼女は本能に抗えない。
そんなことわかっているはずなのに納得できない青さは、学生としてあまりにも長く過ごしているせいだろうか。
ため息をついた蒼真に蓮が憐れむような視線をよこした。
思わず重くなった気分を切り替えるよう、無理にでもゲームに集中することにした。
トップ画面からイベントへと進み、属性を考えながらパーティを組む。
蒼真と同じく、画面を見たままの蓮がぽつりと話し出した。
「で、何があったんだよ」
「んー?」
「ストーカーのお姉さん、改め彼女さんと」
「あーね、呼び方……」
「あの人、毎日来てたもんな。誰に告られてもスルーしてた蒼真が、まさかストーカーと付き合うとは思わなかった。まあ、可愛いけどさ」
冷静な蓮に思わず苦笑する。
確かにモテるけども老若男女問わず人間に好感を持たれるように振る舞っているのだから、当たり前の結果だと思っている。幸いにも顔がいいのは自覚済みだが。
もちろん手を出して面倒ごとにはなりたくないので、好意はありがたくお断りしていた。
天使と人間では寿命も違うし、正体を明かすわけにもいかない。
それ以上に悪魔なんて論外だ。なのにほんの悪戯心で手を出してしまった。まさか付き纏われることになるとは思っていなかったけど。
「俺さぁ、めっちゃ一途なの」
「良いことじゃん」
「でしょ? でもクッソ重いんだよね。自分でも異常だと思うし。でさ、そういうのバレたくないじゃん? だから隠して付き合うんだけど、いっつも変に距離が出来るんだよね。でもミルカだったらそういうの全部受け止めてくれるかなーとか……、なんかそう思っちゃって。で、気付いたら好きになってた」
今まで蓮に、というより誰にもこんな話はしたことがなかった。
だけど心のモヤモヤが驚くほどするすると出てくる。どうやら抱え込むのも限界らしい。
蓮は変わらず冷静な顔でスマホの画面を見ながら相槌を打つ。その適当さが今はありがたかった。
「ふーん……、ミルカさんて言うんだ。あの人、蒼真の塩対応にめげたことないもんな。あれは俺なら心折れるわ。マジで強メンタル」
「そ、めげないんだよね。可愛いでしょ。ド執着の塊だし、従順だし、素直だし、えっろいし。なんでも言うこと聞いちゃうんだよね。俺のためなら犯罪でもサクッとしそうなとこが好き」
そう惚気た途端、指が滑ったらしい蓮の操作が大きくミスった。
攻撃を受けた蓮のキャラに慌てて回復アイテムを使用し、ボスに属性ダメージを与える。クエストクリアの文字を見た蒼真はふうっと息をついた。
「れーん、何やってんの。俺に感謝しなよー。……ん? どうかした?」
「どうって……、引いてる。お前そんな趣味してたんだ……」
心なしか物理的な距離も開いた気がする。どんな趣味だと思われたのかはわからないが、異常な執着には自覚がある。わざとらしく人差し指をくちびるに当て、蒼真はにっこり微笑んだ。
「んー、内緒にしといてね。優しくて爽やかな俺のイメージが崩れるから」
「どうでもいいけど……。元気ないから愚痴聞いてやろうと思ったけど惚気じゃん。なんで喧嘩してんの?」
わざわざ探しに来たのは蓮なりの気遣いだったらしい。クエストの手伝いは口実ではなさそうだが。
うーんと唸った蒼真は再び机に突っ伏した。
「喧嘩というか……蓮はさ、彼女の過去とか気にならん? 元カレとか」
「俺んとこはお互い初めてだから」
「なにそれ初々しい。俺の彼女さー、色々あったのは承知の上だったんだけど、実際その相手を知るとやっぱダメって言うか……我慢ならんと言うか……。いや、ほんとは過去全部許せないんだけど……」
こうやって口にするとあまりにも稚拙な嫉妬だと思い知る。過去に相手がいるくらい、ごく普通のことなのに。
顔も存在も知らない相手にすら嫉妬してしまう身としては、ああやって親しい姿を見てしまうとどうにもダメだった。
語尾につれて声は小さくなったが蓮には聞こえていたらしい。
「なんとなくわかるけど、彼女さん年上だし仕方なくね?」
「まー、そうなんだけど……。価値観の違いって、思ってたよりしんどい」
まさに蓮の言う通りだが、蒼真にとってのセックスは特別な行為であって、ミルカにとってはただの食事。
今は契約で縛り付けているけど、それがなければきっと彼女は本能に抗えない。
そんなことわかっているはずなのに納得できない青さは、学生としてあまりにも長く過ごしているせいだろうか。
ため息をついた蒼真に蓮が憐れむような視線をよこした。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜
まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください!
題名の☆マークがえっちシーンありです。
王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。
しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。
肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。
彼はやっと理解した。
我慢した先に何もないことを。
ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。
小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大事な姫様の性教育のために、姫様の御前で殿方と実演することになってしまいました。
水鏡あかり
恋愛
姫様に「あの人との初夜で粗相をしてしまうのが不安だから、貴女のを見せて」とお願いされた、姫様至上主義の侍女・真砂《まさご》。自分の拙い閨の経験では参考にならないと思いつつ、大事な姫様に懇願されて、引き受けることに。
真砂には気になる相手・檜佐木《ひさぎ》がいたものの、過去に一度、檜佐木の誘いを断ってしまっていたため、いまさら言えず、姫様の提案で、相手役は姫の夫である若様に選んでいただくことになる。
しかし、実演の当夜に閨に現れたのは、檜佐木で。どうも怒っているようなのだがーー。
主君至上主義な従者同士の恋愛が大好きなので書いてみました! ちょっと言葉責めもあるかも。
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる