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20.★仲良さそうだったけど
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ごく自然に肩を抱かれ、距離が縮まる。
あまりにも流れるような動作に抵抗をする間もなかった。だけどくちびるが触れ合う寸前にミルカは手のひらで静止をかける。
「あっぶない! 浮気したらミルカ死んじゃうから! ソウマ様とそういう契約してるの。危うく罰を受けるところだったじゃない! ミルカはソウマ様を裏切らないの!」
「死……? なにそれ、こっわ……。キスだけで死ぬとか、悪魔より怖いわ」
「やっばいよね! さすがソウマ様♡ 愛されてる感じがして滾っちゃう♡ それにミルカだってソウマ様が他の子とキスしたら許せないもん。てゆーか絶対に処す」
契約解除されるより命を捧げるほうがずっといい。そしたらきっと蒼真は一生ミルカを忘れられなくなる。
にまにま笑うミルカに若干引きながらナツは近づいていた体を離した。カウンターに頬杖を突いたその顔はどう見ても呆れている。
「相変わらずポジティブが過ぎる。俺には理解出来ないけど……ミルカがいなくなるのは嫌だから、殺されないようにしろよ。後で会うの大丈夫か? 一緒にいてやろうか?」
「ナツってば心配症なんだから。大丈夫だってば、むしろ邪魔しないで。じゃあミルカはもう帰るね。ソウマ様が来る前に片付けないと」
スッと席を立つミルカの腕をナツが掴む。珍しく真剣な目に、ミルカはきょとんと大きな瞳を向けた。
「何かあったら俺を呼べ。絶対に行くから」
「うん……? わかった」
よくわからないけど、心配してくれていることは伝わってくる。浮かない顔をしたナツは少し気になるけど、ミルカの第一優先は蒼真だ。
手を振り、店を後にしたミルカは急いで家へと足を早めた。
先日と同じく、蒼真は友人とご飯を食べてくるとのことだった。
連絡があった時間はもうすぐで、ミルカはソワソワと時計を何度も確認している。
お気に入りの猫耳パーカーワンピのルームウェアも、結わず丁寧に梳かした髪も、それに湯上がりメイクだって準備は万端だ。
いつだって蒼真に会う時は最高に可愛くしていたいミルカは何度も鏡で確認する。
蒼真は独占欲が強い。それは身をもって知っているし、彼自身もそう言っていた。ナツのことを聞かれることは間違いないだろう。
でもナツはただの幼馴染だ。そこに恋愛感情はない。蒼真と契約を結んでからは、やましいことなど一つもない。
淫魔の体質は蒼真も知っているし大丈夫。
説明すればきっとわかってもらえる。あとはいつも通りイチャイチャ過ごしたい。
だって今日も朝まで一緒にいられるはず。楽観的なミルカは暗い考えを振り切り、楽しい想像に努めることにした。
そうしないと嫌な予感に押しつぶされてしまいそうだったから。
***
「おかえりなさい、ソウマ様♡」
満面の笑みで迎えたミルカを見て少し驚いた顔をした蒼真に抱きつき、キスをせがむ。
少し間はあったものの、抵抗も拒否もせず彼はいつも通り応えてくれる。
何度か啄んでいるうちに軽いキスは次第に深いものへと変わっていった。
ミルカの部屋の玄関は広い。
なのに華奢な体は追い詰められ、背後の壁に押し付けられている。
彼の長い指が腕を辿り、両手を壁に縫い付けられた。その力は強く、少し痛みを伴う。
恍惚の吐息を漏らしたミルカを見下ろす瞳はカフェで見た時と同じ、凍てつくような月色をしている。
夢中で口づけを交わしていたミルカは、思っていた以上の苛立ちを含む視線にびくりと体を強張らせた。
「さっきの悪魔、すごく仲良さそうだったけど……本当にただの幼馴染?」
冷たい眼差しと、いつもより低い不機嫌な声。怯むミルカはこくこく頷く。
「そ、そうなの……。ナツとは子どもの頃からずっと仲良くて、兄妹みたいな感じで……」
「んー、俺が聞きたいのはそういうのじゃなくて……。ミルカの力を封じてた間、悪魔から精気を貰ってたって言ってたよね。それって、あいつ?」
「あ……」
蒼真に知られたくなかったこと。それを言い当てられて血の気がざあっと引いた。
そういえば初めて抱かれたあの日、蒼真のマンション前で「幼馴染」と口を滑らせたことを思い出す。
あれは蒼真と契約を結ぶ前の話だ。契約違反にはならないし、ナツに異性として特別な感情があるわけではない。
なにもやましいことはないはず。だけど蒼真の冷たい視線に、とてつもない罪悪感を感じてしまう。
あまりにも流れるような動作に抵抗をする間もなかった。だけどくちびるが触れ合う寸前にミルカは手のひらで静止をかける。
「あっぶない! 浮気したらミルカ死んじゃうから! ソウマ様とそういう契約してるの。危うく罰を受けるところだったじゃない! ミルカはソウマ様を裏切らないの!」
「死……? なにそれ、こっわ……。キスだけで死ぬとか、悪魔より怖いわ」
「やっばいよね! さすがソウマ様♡ 愛されてる感じがして滾っちゃう♡ それにミルカだってソウマ様が他の子とキスしたら許せないもん。てゆーか絶対に処す」
契約解除されるより命を捧げるほうがずっといい。そしたらきっと蒼真は一生ミルカを忘れられなくなる。
にまにま笑うミルカに若干引きながらナツは近づいていた体を離した。カウンターに頬杖を突いたその顔はどう見ても呆れている。
「相変わらずポジティブが過ぎる。俺には理解出来ないけど……ミルカがいなくなるのは嫌だから、殺されないようにしろよ。後で会うの大丈夫か? 一緒にいてやろうか?」
「ナツってば心配症なんだから。大丈夫だってば、むしろ邪魔しないで。じゃあミルカはもう帰るね。ソウマ様が来る前に片付けないと」
スッと席を立つミルカの腕をナツが掴む。珍しく真剣な目に、ミルカはきょとんと大きな瞳を向けた。
「何かあったら俺を呼べ。絶対に行くから」
「うん……? わかった」
よくわからないけど、心配してくれていることは伝わってくる。浮かない顔をしたナツは少し気になるけど、ミルカの第一優先は蒼真だ。
手を振り、店を後にしたミルカは急いで家へと足を早めた。
先日と同じく、蒼真は友人とご飯を食べてくるとのことだった。
連絡があった時間はもうすぐで、ミルカはソワソワと時計を何度も確認している。
お気に入りの猫耳パーカーワンピのルームウェアも、結わず丁寧に梳かした髪も、それに湯上がりメイクだって準備は万端だ。
いつだって蒼真に会う時は最高に可愛くしていたいミルカは何度も鏡で確認する。
蒼真は独占欲が強い。それは身をもって知っているし、彼自身もそう言っていた。ナツのことを聞かれることは間違いないだろう。
でもナツはただの幼馴染だ。そこに恋愛感情はない。蒼真と契約を結んでからは、やましいことなど一つもない。
淫魔の体質は蒼真も知っているし大丈夫。
説明すればきっとわかってもらえる。あとはいつも通りイチャイチャ過ごしたい。
だって今日も朝まで一緒にいられるはず。楽観的なミルカは暗い考えを振り切り、楽しい想像に努めることにした。
そうしないと嫌な予感に押しつぶされてしまいそうだったから。
***
「おかえりなさい、ソウマ様♡」
満面の笑みで迎えたミルカを見て少し驚いた顔をした蒼真に抱きつき、キスをせがむ。
少し間はあったものの、抵抗も拒否もせず彼はいつも通り応えてくれる。
何度か啄んでいるうちに軽いキスは次第に深いものへと変わっていった。
ミルカの部屋の玄関は広い。
なのに華奢な体は追い詰められ、背後の壁に押し付けられている。
彼の長い指が腕を辿り、両手を壁に縫い付けられた。その力は強く、少し痛みを伴う。
恍惚の吐息を漏らしたミルカを見下ろす瞳はカフェで見た時と同じ、凍てつくような月色をしている。
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「んー、俺が聞きたいのはそういうのじゃなくて……。ミルカの力を封じてた間、悪魔から精気を貰ってたって言ってたよね。それって、あいつ?」
「あ……」
蒼真に知られたくなかったこと。それを言い当てられて血の気がざあっと引いた。
そういえば初めて抱かれたあの日、蒼真のマンション前で「幼馴染」と口を滑らせたことを思い出す。
あれは蒼真と契約を結ぶ前の話だ。契約違反にはならないし、ナツに異性として特別な感情があるわけではない。
なにもやましいことはないはず。だけど蒼真の冷たい視線に、とてつもない罪悪感を感じてしまう。
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