19 / 54
19.それって恋なの?
しおりを挟む
「あれ? その人、蒼真のストー……いや、本当に付き合ってるんだ」
「んー。そういうこと」
「そっか。彼女さん、ごめん。これからゲーセン行くんだけど、蒼真連れてっていい?」
「あ、うん……」
いつもなら絶対について行きたいところだけど、今は彼の提案がありがたい。
とにかくナツと蒼真を離すべきだと本能が警告する。
蒼真が人前であれほど感情を昂らせるなんて見たことがなかったから。
頷くミルカに少年は安堵したような表情をした。
癖のない黒髪に、くっきりした二重の瞳。
軽く見える蒼真とは違い、真面目で静かな印象を受ける。
「じゃあまた。行こう蒼真」
ミルカとナツに向かいぺこりと軽く頭を下げ、少年は蒼真の返事を待たず店外へと向かう。
ミルカから腕を解いた蒼真は一度友人に視線を向けて、小さなため息をついた。
「ソウマ様……、あの……」
「あとでミルカの家行くから。また連絡する」
頬杖をつくナツはやり取りを眺めるだけだ。瞳の色もいつの間にか焦茶に戻っている。
ただ見慣れない冷ややかな目線にミルカの心は落ち着かない。
そんなナツとミルカを交互に見た蒼真はそれ以上なにも言わず、友人のあとを追いかけていった。
「ソウマ様……すっごく怒ってた……。契約解かれちゃったらどうしよう……」
あとで会えるのは嬉しいけど、まさかこの流れで機嫌良く会いに来てくれるとは思えない。
悪い想像ばかりが頭を巡り、青ざめるミルカにナツが不機嫌な声で名前を呼んだ。
「あれがいいの?」
「え、めっちゃ格好いいでしょ?! 二十四時間眺めても飽きないし、声も素敵だし♡」
「ミルカ、相当見る目ないわー。あいつヤバいよ。独占欲の塊って言うか、ガキじゃん」
「そこがいいの♡ もっと独占してほしい♡ でも……許してもらえるかな……。あれ? 許す? なんであんなに怒ってるのかわかんないし、どうしよう……。ねえ、ナツ、どうしたらいいかな」
ナツとは幼馴染であって、蒼真だってクラスの女子と気軽に話したりする。
それを目撃するたびに仄かな殺意を滾らせるのだが、そんな自身をミルカはまたもや棚上げした。
ぐるぐる変わる感情に振り回されながら幼馴染に縋りつく。
情けない顔で腕を掴んだミルカの鼻を、ナツは唐突に軽く摘んで離した。
「んぷ。なにするのよう」
「いいじゃん、さっさと契約解かれてこいよ。絶対俺のほうが優良物件だろ。寛大だし、優しいし、顔もいいのに。すっげームカつく」
苛ついた口ぶりにミルカは首を傾げる。ただ単に蒼真が気に食わないというより、それ以上の苛立ちを感じる。
もしかしてこれは嫉妬というものでは?
身に覚えのある感情をまさかナツから向けられるとは予想外にも程がある。
ミルカは思わずぽかんと口を開けた。
「……もしかしてナツって、ミルカのこと好きだったの?」
「好きだけど? ミルカ可愛いし、相性も良いし。ずっと仲良いじゃん俺ら」
「そうだけど……それって恋なのかな?」
ミルカ自身たった一人に心を奪われたなんていまだに不思議で、蒼真に会う前の自分に言っても絶対に信じないだろう。
淫魔にとって、恋など無駄な感情でしかない。同種であるナツもきっと同じだ。
それに長い間一緒にいて、彼から焦がれるような眼差しなど感じたことはない気がする。
「うーん……ミルカがナツ以外から精気をもらったらどうする?」
「別にどうもしない。だって仕方ないだろ。ただの食事だし」
「やっぱりそうだよね。ミルカもそう思ってたの。でもね、ソウマ様は他の人から精気をもらったらミルカのこと殺しちゃうって」
「は?! やっばいだろそれ……俺たちの特性からして無茶振り過ぎ」
ナツの気持ちはよくわかる。以前のミルカなら同じことを言っていた。
先程の驚愕から落ち着いたミルカは細いツインテールの先をくるくると指に巻きつけながら、視線を上に向ける。
「んーとね、契約でソウマ様と繋がってるからそんなにお腹空かないんだよね。それにソウマ様の精気を知っちゃったらもう他のなんて食べられないし♡」
蒼真から与えられる快感、触れる手、キスの感触を思い出しニヤけるミルカをナツは冷めた表情で見つめる。
面白くなさそうな顔のままココアを飲み終えた彼は再度ミルカに手を伸ばした。
「んー。そういうこと」
「そっか。彼女さん、ごめん。これからゲーセン行くんだけど、蒼真連れてっていい?」
「あ、うん……」
いつもなら絶対について行きたいところだけど、今は彼の提案がありがたい。
とにかくナツと蒼真を離すべきだと本能が警告する。
蒼真が人前であれほど感情を昂らせるなんて見たことがなかったから。
頷くミルカに少年は安堵したような表情をした。
癖のない黒髪に、くっきりした二重の瞳。
軽く見える蒼真とは違い、真面目で静かな印象を受ける。
「じゃあまた。行こう蒼真」
ミルカとナツに向かいぺこりと軽く頭を下げ、少年は蒼真の返事を待たず店外へと向かう。
ミルカから腕を解いた蒼真は一度友人に視線を向けて、小さなため息をついた。
「ソウマ様……、あの……」
「あとでミルカの家行くから。また連絡する」
頬杖をつくナツはやり取りを眺めるだけだ。瞳の色もいつの間にか焦茶に戻っている。
ただ見慣れない冷ややかな目線にミルカの心は落ち着かない。
そんなナツとミルカを交互に見た蒼真はそれ以上なにも言わず、友人のあとを追いかけていった。
「ソウマ様……すっごく怒ってた……。契約解かれちゃったらどうしよう……」
あとで会えるのは嬉しいけど、まさかこの流れで機嫌良く会いに来てくれるとは思えない。
悪い想像ばかりが頭を巡り、青ざめるミルカにナツが不機嫌な声で名前を呼んだ。
「あれがいいの?」
「え、めっちゃ格好いいでしょ?! 二十四時間眺めても飽きないし、声も素敵だし♡」
「ミルカ、相当見る目ないわー。あいつヤバいよ。独占欲の塊って言うか、ガキじゃん」
「そこがいいの♡ もっと独占してほしい♡ でも……許してもらえるかな……。あれ? 許す? なんであんなに怒ってるのかわかんないし、どうしよう……。ねえ、ナツ、どうしたらいいかな」
ナツとは幼馴染であって、蒼真だってクラスの女子と気軽に話したりする。
それを目撃するたびに仄かな殺意を滾らせるのだが、そんな自身をミルカはまたもや棚上げした。
ぐるぐる変わる感情に振り回されながら幼馴染に縋りつく。
情けない顔で腕を掴んだミルカの鼻を、ナツは唐突に軽く摘んで離した。
「んぷ。なにするのよう」
「いいじゃん、さっさと契約解かれてこいよ。絶対俺のほうが優良物件だろ。寛大だし、優しいし、顔もいいのに。すっげームカつく」
苛ついた口ぶりにミルカは首を傾げる。ただ単に蒼真が気に食わないというより、それ以上の苛立ちを感じる。
もしかしてこれは嫉妬というものでは?
身に覚えのある感情をまさかナツから向けられるとは予想外にも程がある。
ミルカは思わずぽかんと口を開けた。
「……もしかしてナツって、ミルカのこと好きだったの?」
「好きだけど? ミルカ可愛いし、相性も良いし。ずっと仲良いじゃん俺ら」
「そうだけど……それって恋なのかな?」
ミルカ自身たった一人に心を奪われたなんていまだに不思議で、蒼真に会う前の自分に言っても絶対に信じないだろう。
淫魔にとって、恋など無駄な感情でしかない。同種であるナツもきっと同じだ。
それに長い間一緒にいて、彼から焦がれるような眼差しなど感じたことはない気がする。
「うーん……ミルカがナツ以外から精気をもらったらどうする?」
「別にどうもしない。だって仕方ないだろ。ただの食事だし」
「やっぱりそうだよね。ミルカもそう思ってたの。でもね、ソウマ様は他の人から精気をもらったらミルカのこと殺しちゃうって」
「は?! やっばいだろそれ……俺たちの特性からして無茶振り過ぎ」
ナツの気持ちはよくわかる。以前のミルカなら同じことを言っていた。
先程の驚愕から落ち着いたミルカは細いツインテールの先をくるくると指に巻きつけながら、視線を上に向ける。
「んーとね、契約でソウマ様と繋がってるからそんなにお腹空かないんだよね。それにソウマ様の精気を知っちゃったらもう他のなんて食べられないし♡」
蒼真から与えられる快感、触れる手、キスの感触を思い出しニヤけるミルカをナツは冷めた表情で見つめる。
面白くなさそうな顔のままココアを飲み終えた彼は再度ミルカに手を伸ばした。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる