9 / 54
9.私の全部あなたのもの
しおりを挟む
あの後、ミルカの心臓の位置にキスをした蒼真はすぐに契約の魔法を発動させた。
口づけた箇所から熱が生まれる。魂ごと見えない鎖で繋がれたような奇妙な感覚に、ミルカは恍惚と身を任せた。
だけどそれは徐々に薄れて、今ではなんの違和感ない。
それから再び蒼真に抱かれ、心身ともに、お腹も満たされた。嬉しいことに彼とは体の相性が良い。でもきっとそれだけじゃない。あんなに快楽に溺れたのはやっぱり好きな人だから。
そう思うと蒼真はミルカの初めての相手だと言えるのかもしれない。むしろ蒼真以外の記憶なんか全部消去しよう。そう決めた。
しかし蕩けさせられながらも慣れた手つきに「過去の女、全員コロス」などと自分を棚上げして黒い感情を抱いたことは秘密だ。
骨抜きになったミルカはますます蒼真に対する思いを強固なものにした。
「俺以外から精気を得ないこと。男を誘惑するのもされるのも禁止。約束は絶対に守って。嘘も隠し事も許さない。浮気は言語道断だから。あとは……どうしようかな」
擦り寄るミルカの喉を撫でながら蒼真はつらつらと条件を上げる。契約書への追加も書き換えも、契約者の都合でいつでも可能という条件を最初にプログラムしたと後から告げられて、内心恐ろしさも感じた。
なんともブラックな契約だが、彼のあげる条件はミルカにとってどれも当たり前のことだった。むしろ蒼真から精気をもらえるなんてご褒美でしかない。契約違反なんかする気はないけど、すでにときめきで心臓は壊れてしまいそうだ。
「なんでも聞くわ。ソウマ様はミルカのご主人様だもの♡ ミルカは病めるときも健やかなときも、永遠にソウマ様を愛することを誓います♡」
うっとりと紡いだ誓いに蒼真は一瞬きょとんとして、盛大に笑い出した。
涙を浮かべるほど笑い転げる彼を見るのは初めてだ。
どう反応したらよいのかわからない。落ち着かないミルカの視線に気づいた蒼真は、まだ笑ったままで「ごめん」と謝罪した。
「悪魔がそれを口にするとは思わなかった。ミルカは神に誓いを立てる派?」
目尻に浮かんだ涙を拭う蒼真に、ミルカはぷるぷる首を振る。
「まさか! 神も天使も大っ嫌い。あ、ソウマ様は大好き♡ でも人間のする結婚式にはちょっと憧れちゃう。ミルカ、黒いドレスが着たいな♡」
「ふーん、いいんじゃない?」
「あとね、指輪も欲しい♡」
「高校生の俺が買える範囲でね」
「ああん♡ 好きっ♡」
まさかの肯定にミルカは足をじたじたさせて喜びを体で示す。ドレスについての返事は微妙だったが「俺が着せてあげるよ」の意味も含んでいると思うことにした。
(もしかすると、今ならなんでもお願いしていいのかも?)
もじもじ指を動かすミルカはちらりと上目遣いで蒼真を伺う。乱れた髪に気怠い表情が艶っぽく、叫び出しそうなときめきを抑えるのも大変だ。ミルカはギュンと締め付けられる心臓を押さえる。
「あのね、ソウマ様もミルカのお願い聞いて欲しいな」
「んー、いいよ。なに?」
優しく細められる目にミルカは頬を染めて瞳を潤ませた。
ミルカの周りには当然だが同種の悪魔もたくさんいるし、そもそも人を惑わすため基本的に悪魔の容姿はすこぶる良い。
それでもこんなに惹かれる人に出会ったことはない。蒼真の周りだけ空気がキラキラ澄んでいる気がするのは彼が天使だからだろうか。ミルカはつい大っ嫌いな神に感謝しそうになった。
こんなに魅力的なんだもの。インキュバスだってソウマ様に比べたらただの石ころだわ。ううん、枯れた木の枝よ。やっぱり今ここで言っておかなくっちゃ。
そう意気込んだミルカはずいと距離を詰める。
「ミルカ以外の女と話さないで。目を合わせるのもダメ。むしろ存在を認知しないで、ミルカだけを見て♡ それとね、連絡は秒で返してくれなきゃ泣いちゃう。ううん、それより二十四時間一緒にいて♡」
「うわ……、しんど……」
「なんて?」
「悪いけど、出来ない約束はしない主義なんだ。それにそんなこと心配しなくてもいいから」
膨れるミルカの頬を撫で、軽いキスをした蒼真は首を伝って谷間にくちびるを押し付ける。
「俺も、ミルカだけのものになってあげるよ」
甘い囁きのあと、心臓の位置に口づけられてミルカの体は喜びに打ち震えた。
蒼真の体温を感じるその場所には、赤く発光する魔法陣が浮かび上がっている。
これは蒼真のものである証で、命ごと彼に握られていることが嬉しくて仕方ない。
「嬉しい! ミルカの命もソウマ様のものよ♡ なんだってするし、全部好きにしてね♡」
「……おねーさん、やっぱりかなりヤバい子だよね」
でもそんなミルカを好きになった俺も相当おかしいよな。なんて呟きながらも彼はミルカを抱きしめる。
こつんと頭に顎を乗せた蒼真はため息をついたようだが、見た目よりずっと逞しい腕に身を任せ、ミルカは食後のデザートを催促した。
口づけた箇所から熱が生まれる。魂ごと見えない鎖で繋がれたような奇妙な感覚に、ミルカは恍惚と身を任せた。
だけどそれは徐々に薄れて、今ではなんの違和感ない。
それから再び蒼真に抱かれ、心身ともに、お腹も満たされた。嬉しいことに彼とは体の相性が良い。でもきっとそれだけじゃない。あんなに快楽に溺れたのはやっぱり好きな人だから。
そう思うと蒼真はミルカの初めての相手だと言えるのかもしれない。むしろ蒼真以外の記憶なんか全部消去しよう。そう決めた。
しかし蕩けさせられながらも慣れた手つきに「過去の女、全員コロス」などと自分を棚上げして黒い感情を抱いたことは秘密だ。
骨抜きになったミルカはますます蒼真に対する思いを強固なものにした。
「俺以外から精気を得ないこと。男を誘惑するのもされるのも禁止。約束は絶対に守って。嘘も隠し事も許さない。浮気は言語道断だから。あとは……どうしようかな」
擦り寄るミルカの喉を撫でながら蒼真はつらつらと条件を上げる。契約書への追加も書き換えも、契約者の都合でいつでも可能という条件を最初にプログラムしたと後から告げられて、内心恐ろしさも感じた。
なんともブラックな契約だが、彼のあげる条件はミルカにとってどれも当たり前のことだった。むしろ蒼真から精気をもらえるなんてご褒美でしかない。契約違反なんかする気はないけど、すでにときめきで心臓は壊れてしまいそうだ。
「なんでも聞くわ。ソウマ様はミルカのご主人様だもの♡ ミルカは病めるときも健やかなときも、永遠にソウマ様を愛することを誓います♡」
うっとりと紡いだ誓いに蒼真は一瞬きょとんとして、盛大に笑い出した。
涙を浮かべるほど笑い転げる彼を見るのは初めてだ。
どう反応したらよいのかわからない。落ち着かないミルカの視線に気づいた蒼真は、まだ笑ったままで「ごめん」と謝罪した。
「悪魔がそれを口にするとは思わなかった。ミルカは神に誓いを立てる派?」
目尻に浮かんだ涙を拭う蒼真に、ミルカはぷるぷる首を振る。
「まさか! 神も天使も大っ嫌い。あ、ソウマ様は大好き♡ でも人間のする結婚式にはちょっと憧れちゃう。ミルカ、黒いドレスが着たいな♡」
「ふーん、いいんじゃない?」
「あとね、指輪も欲しい♡」
「高校生の俺が買える範囲でね」
「ああん♡ 好きっ♡」
まさかの肯定にミルカは足をじたじたさせて喜びを体で示す。ドレスについての返事は微妙だったが「俺が着せてあげるよ」の意味も含んでいると思うことにした。
(もしかすると、今ならなんでもお願いしていいのかも?)
もじもじ指を動かすミルカはちらりと上目遣いで蒼真を伺う。乱れた髪に気怠い表情が艶っぽく、叫び出しそうなときめきを抑えるのも大変だ。ミルカはギュンと締め付けられる心臓を押さえる。
「あのね、ソウマ様もミルカのお願い聞いて欲しいな」
「んー、いいよ。なに?」
優しく細められる目にミルカは頬を染めて瞳を潤ませた。
ミルカの周りには当然だが同種の悪魔もたくさんいるし、そもそも人を惑わすため基本的に悪魔の容姿はすこぶる良い。
それでもこんなに惹かれる人に出会ったことはない。蒼真の周りだけ空気がキラキラ澄んでいる気がするのは彼が天使だからだろうか。ミルカはつい大っ嫌いな神に感謝しそうになった。
こんなに魅力的なんだもの。インキュバスだってソウマ様に比べたらただの石ころだわ。ううん、枯れた木の枝よ。やっぱり今ここで言っておかなくっちゃ。
そう意気込んだミルカはずいと距離を詰める。
「ミルカ以外の女と話さないで。目を合わせるのもダメ。むしろ存在を認知しないで、ミルカだけを見て♡ それとね、連絡は秒で返してくれなきゃ泣いちゃう。ううん、それより二十四時間一緒にいて♡」
「うわ……、しんど……」
「なんて?」
「悪いけど、出来ない約束はしない主義なんだ。それにそんなこと心配しなくてもいいから」
膨れるミルカの頬を撫で、軽いキスをした蒼真は首を伝って谷間にくちびるを押し付ける。
「俺も、ミルカだけのものになってあげるよ」
甘い囁きのあと、心臓の位置に口づけられてミルカの体は喜びに打ち震えた。
蒼真の体温を感じるその場所には、赤く発光する魔法陣が浮かび上がっている。
これは蒼真のものである証で、命ごと彼に握られていることが嬉しくて仕方ない。
「嬉しい! ミルカの命もソウマ様のものよ♡ なんだってするし、全部好きにしてね♡」
「……おねーさん、やっぱりかなりヤバい子だよね」
でもそんなミルカを好きになった俺も相当おかしいよな。なんて呟きながらも彼はミルカを抱きしめる。
こつんと頭に顎を乗せた蒼真はため息をついたようだが、見た目よりずっと逞しい腕に身を任せ、ミルカは食後のデザートを催促した。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる