【R18】地雷系悪魔ちゃんは天使な彼に束縛されたい

ドゴイエちまき

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9.私の全部あなたのもの

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 あの後、ミルカの心臓の位置にキスをした蒼真はすぐに契約の魔法を発動させた。
 口づけた箇所から熱が生まれる。魂ごと見えない鎖で繋がれたような奇妙な感覚に、ミルカは恍惚と身を任せた。
 だけどそれは徐々に薄れて、今ではなんの違和感ない。
 それから再び蒼真に抱かれ、心身ともに、お腹も満たされた。嬉しいことに彼とは体の相性が良い。でもきっとそれだけじゃない。あんなに快楽に溺れたのはやっぱり好きな人だから。
 そう思うと蒼真はミルカの初めての相手だと言えるのかもしれない。むしろ蒼真以外の記憶なんか全部消去しよう。そう決めた。
 しかし蕩けさせられながらも慣れた手つきに「過去の女、全員コロス」などと自分を棚上げして黒い感情を抱いたことは秘密だ。
 骨抜きになったミルカはますます蒼真に対する思いを強固なものにした。

「俺以外から精気を得ないこと。男を誘惑するのもされるのも禁止。約束は絶対に守って。嘘も隠し事も許さない。浮気は言語道断だから。あとは……どうしようかな」

 擦り寄るミルカの喉を撫でながら蒼真はつらつらと条件を上げる。契約書への追加も書き換えも、契約者の都合でいつでも可能という条件を最初にプログラムしたと後から告げられて、内心恐ろしさも感じた。
 なんともブラックな契約だが、彼のあげる条件はミルカにとってどれも当たり前のことだった。むしろ蒼真から精気をもらえるなんてご褒美でしかない。契約違反なんかする気はないけど、すでにときめきで心臓は壊れてしまいそうだ。

「なんでも聞くわ。ソウマ様はミルカのご主人様だもの♡ ミルカは病めるときも健やかなときも、永遠にソウマ様を愛することを誓います♡」

 うっとりと紡いだ誓いに蒼真は一瞬きょとんとして、盛大に笑い出した。
 涙を浮かべるほど笑い転げる彼を見るのは初めてだ。
 どう反応したらよいのかわからない。落ち着かないミルカの視線に気づいた蒼真は、まだ笑ったままで「ごめん」と謝罪した。
 
「悪魔がそれを口にするとは思わなかった。ミルカは神に誓いを立てる派?」

 目尻に浮かんだ涙を拭う蒼真に、ミルカはぷるぷる首を振る。
 
「まさか! 神も天使も大っ嫌い。あ、ソウマ様は大好き♡  でも人間のする結婚式にはちょっと憧れちゃう。ミルカ、黒いドレスが着たいな♡」
「ふーん、いいんじゃない?」
「あとね、指輪も欲しい♡」
「高校生の俺が買える範囲でね」
「ああん♡ 好きっ♡」

 まさかの肯定にミルカは足をじたじたさせて喜びを体で示す。ドレスについての返事は微妙だったが「俺が着せてあげるよ」の意味も含んでいると思うことにした。
 
(もしかすると、今ならなんでもお願いしていいのかも?)

 もじもじ指を動かすミルカはちらりと上目遣いで蒼真を伺う。乱れた髪に気怠い表情が艶っぽく、叫び出しそうなときめきを抑えるのも大変だ。ミルカはギュンと締め付けられる心臓を押さえる。
 
「あのね、ソウマ様もミルカのお願い聞いて欲しいな」
「んー、いいよ。なに?」

 優しく細められる目にミルカは頬を染めて瞳を潤ませた。
 ミルカの周りには当然だが同種の悪魔もたくさんいるし、そもそも人を惑わすため基本的に悪魔の容姿はすこぶる良い。
 それでもこんなに惹かれる人に出会ったことはない。蒼真の周りだけ空気がキラキラ澄んでいる気がするのは彼が天使だからだろうか。ミルカはつい大っ嫌いな神に感謝しそうになった。
 
 こんなに魅力的なんだもの。インキュバスだってソウマ様に比べたらただの石ころだわ。ううん、枯れた木の枝よ。やっぱり今ここで言っておかなくっちゃ。
 そう意気込んだミルカはずいと距離を詰める。
 「ミルカ以外の女と話さないで。目を合わせるのもダメ。むしろ存在を認知しないで、ミルカだけを見て♡ それとね、連絡は秒で返してくれなきゃ泣いちゃう。ううん、それより二十四時間一緒にいて♡」
「うわ……、しんど……」
「なんて?」
「悪いけど、出来ない約束はしない主義なんだ。それにそんなこと心配しなくてもいいから」

 膨れるミルカの頬を撫で、軽いキスをした蒼真は首を伝って谷間にくちびるを押し付ける。
 
「俺も、ミルカだけのものになってあげるよ」

 甘い囁きのあと、心臓の位置に口づけられてミルカの体は喜びに打ち震えた。
 蒼真の体温を感じるその場所には、赤く発光する魔法陣が浮かび上がっている。
 これは蒼真のものである証で、命ごと彼に握られていることが嬉しくて仕方ない。
 
「嬉しい! ミルカの命もソウマ様のものよ♡ なんだってするし、全部好きにしてね♡」
「……おねーさん、やっぱりかなりヤバい子だよね」

 でもそんなミルカを好きになった俺も相当おかしいよな。なんて呟きながらも彼はミルカを抱きしめる。
 こつんと頭に顎を乗せた蒼真はため息をついたようだが、見た目よりずっと逞しい腕に身を任せ、ミルカは食後のデザートを催促した。
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