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10.可愛い義弟はお姉ちゃんのもの
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それからしばらくまったり抱き合っている。もうすっかり呼吸も整った。エアコンのおかげで部屋はひんやり心地良いし、静かに流れる時間はとても贅沢に思える。
少し冷えた小春の肩がふるりと震え、秋斗の手が暖めるよう触れた。やっぱり手のひらから伝わる体温は小春より高い。
ぴとりとくっつく姉の髪を撫で、先に声を出したのは秋斗だった。
「めっちゃきもちいかった……」
「うん! 私も♡ 何もかも相性最高だね。やっぱり秋には私しかいないんだよ♡」
「……当たり前じゃん」
拗ねたような口調と声は小春がよく知るものだ。さっきまであんなに熱く艶のあった瞳も、不機嫌に細くなっている。
「ずっと小春しか見てなかったし。めっちゃ真面目に考えてたのに、結局こうなったし。俺がどれだけ耐えてきたのかわかる?」
「そんなのわかんなーい! 真面目に考えてくれるのは嬉しいけど、私はもう我慢出来ないもん。秋のこと狙ってる子なんかたくさんいるんだからね。今日だって、知らない子と仲良くしてたし……」
もし秋斗の計画を尊重するのであれば、最低でもあと五年は待たないといけない。今からそんな長い時間を待つなんて小春には出来ないし、真剣な気持ちは申し訳なくも思うけどやっぱり無駄に感じてしまう。
しかしぽつり呟いた不満に秋斗は首を傾げた。
「知らない子?」
「うん、秋と同じ学校の子。これくらいの髪で、可愛い感じの……」
「あー、見てたんだ。あれは違う。あいつ、俺の友達狙いだし」
「まさか友達狙いと見せかけたあざとい作戦……」
「ちげーって。小春が心配するほど俺モテないし」
そんなことはない。それは多分フラグへし折りローラー作戦が効いていたからだと小春は思っている。
ちなみに弟が、顔は良いのに残念なシスコンとして校内で有名なことなど、彼女はおそらくこの先も知ることはない。
大きなため息をつき、一度シーツに突っ伏した秋斗は不服な目で小春を眺めた。
「それに小春のが危ないじゃん。大学にバイトに通学途中……。俺の気苦労マジですげえよ?」
「そんな苦労しなくていいよ。私は秋しか見てないもん。世界で秋だけが恋愛対象なの。だから他の人は興味ないの」
小春にとってこの世の男は、秋斗か秋斗じゃないか。まさにその二択である。
対する秋斗の温度は低い。これでも愛の告白のつもりだったのだが、ドヤったのがいけなかったのかもしれない。
「俺だってそうだよ。頼りになるようでならない可愛い姉ちゃんが、結婚してあげるなんて言うから……当たり前にそうするもんだと思ってた」
「え、お姉ちゃん頼りになるでしょ?」
聞き捨てならない言葉に小春は眉を顰める。今までずっと弟を守ってきたつもりだったのに。
しかし秋斗は揶揄ったり冗談のつもりではないようだ。寝転んだまま頬杖を突く弟の顔はやっぱり冷静だった。
「さあ? 俺のほうが頼りになると思うけど。小春が今まで誰にも手を出されなかったのは俺のおかげだし」
「違うもん。しっかり者のお姉ちゃんが秋を怖ーい女の魔の手から守ってあげてたんだよ?」
「はいはい」
呆れた目をしている秋斗の態度は不満だが、再び抱き寄せる腕は大満足だ。すぐに機嫌を直した小春は頬に擦り寄り、軽いキスを重ねる。
そうすると目を優しく細めた秋斗はなんだか急に大人びて見えた。
「どうしよう、秋がまた格好良くなっちゃった……」
「何それ。よくわかんねーけど良いことじゃん?」
良いけど悪い。秋斗の魅力は自分だけが知っていれば良いのに。
拗ねた口調でつぶやけば秋斗は嬉しそうに笑い、つんとくちびるを尖らせる小春に口づけた。
そもそも卒業した今では高校での秋斗の生活を小春は知らない。きっと学校でしか見せない顔もあるはずだ。
むうっと面白くない表情を気にしない秋斗は、悪戯に体を撫でてゆっくり舌で辿る。
「ん……っ♡ あ、また、するの? あっ♡」
「うん、一箱あるんだろ? せっかく買ってきてくれたんだから使わないとな」
近い距離で囁く声は日常より低く甘い。
秋斗のこんな声も顔も知っているのは世界でただ一人特別な相手だけで、すなわちそれは小春になる。
そう思えばその他大勢が知れる学校での顔よりもっと貴重なものに思えた。
(それに一緒に登校してた時の秋は知ってるもん! 小さな頃だって知ってるし、好きな人の成長をずっと見守ってるなんて最高に幸せ♡)
うずうず湧き出る優越感でにやけながら、何度も軽いキスを繰り返す。見つめ合う秋斗の目は蕩けるほどの欲情を浮かべて、小春は満面の笑みで弟の首にしがみついた。
「大好き! ね、今から全部使い切っちゃおうね♡」
「んーと……。それはまあ、臨機応変に」
一瞬目線を逸らした秋斗は誤魔化すように再び口づける。しっとり重なる熱いくちびるも全部小春のもの。
きっかけをくれたあの女の子には感謝をするべきなのかもしれない。軽々しく触るのは絶対に許さないけど。
少し生意気で可愛い義弟は、出会ったあの日からずっと小春だけのものだから。
少し冷えた小春の肩がふるりと震え、秋斗の手が暖めるよう触れた。やっぱり手のひらから伝わる体温は小春より高い。
ぴとりとくっつく姉の髪を撫で、先に声を出したのは秋斗だった。
「めっちゃきもちいかった……」
「うん! 私も♡ 何もかも相性最高だね。やっぱり秋には私しかいないんだよ♡」
「……当たり前じゃん」
拗ねたような口調と声は小春がよく知るものだ。さっきまであんなに熱く艶のあった瞳も、不機嫌に細くなっている。
「ずっと小春しか見てなかったし。めっちゃ真面目に考えてたのに、結局こうなったし。俺がどれだけ耐えてきたのかわかる?」
「そんなのわかんなーい! 真面目に考えてくれるのは嬉しいけど、私はもう我慢出来ないもん。秋のこと狙ってる子なんかたくさんいるんだからね。今日だって、知らない子と仲良くしてたし……」
もし秋斗の計画を尊重するのであれば、最低でもあと五年は待たないといけない。今からそんな長い時間を待つなんて小春には出来ないし、真剣な気持ちは申し訳なくも思うけどやっぱり無駄に感じてしまう。
しかしぽつり呟いた不満に秋斗は首を傾げた。
「知らない子?」
「うん、秋と同じ学校の子。これくらいの髪で、可愛い感じの……」
「あー、見てたんだ。あれは違う。あいつ、俺の友達狙いだし」
「まさか友達狙いと見せかけたあざとい作戦……」
「ちげーって。小春が心配するほど俺モテないし」
そんなことはない。それは多分フラグへし折りローラー作戦が効いていたからだと小春は思っている。
ちなみに弟が、顔は良いのに残念なシスコンとして校内で有名なことなど、彼女はおそらくこの先も知ることはない。
大きなため息をつき、一度シーツに突っ伏した秋斗は不服な目で小春を眺めた。
「それに小春のが危ないじゃん。大学にバイトに通学途中……。俺の気苦労マジですげえよ?」
「そんな苦労しなくていいよ。私は秋しか見てないもん。世界で秋だけが恋愛対象なの。だから他の人は興味ないの」
小春にとってこの世の男は、秋斗か秋斗じゃないか。まさにその二択である。
対する秋斗の温度は低い。これでも愛の告白のつもりだったのだが、ドヤったのがいけなかったのかもしれない。
「俺だってそうだよ。頼りになるようでならない可愛い姉ちゃんが、結婚してあげるなんて言うから……当たり前にそうするもんだと思ってた」
「え、お姉ちゃん頼りになるでしょ?」
聞き捨てならない言葉に小春は眉を顰める。今までずっと弟を守ってきたつもりだったのに。
しかし秋斗は揶揄ったり冗談のつもりではないようだ。寝転んだまま頬杖を突く弟の顔はやっぱり冷静だった。
「さあ? 俺のほうが頼りになると思うけど。小春が今まで誰にも手を出されなかったのは俺のおかげだし」
「違うもん。しっかり者のお姉ちゃんが秋を怖ーい女の魔の手から守ってあげてたんだよ?」
「はいはい」
呆れた目をしている秋斗の態度は不満だが、再び抱き寄せる腕は大満足だ。すぐに機嫌を直した小春は頬に擦り寄り、軽いキスを重ねる。
そうすると目を優しく細めた秋斗はなんだか急に大人びて見えた。
「どうしよう、秋がまた格好良くなっちゃった……」
「何それ。よくわかんねーけど良いことじゃん?」
良いけど悪い。秋斗の魅力は自分だけが知っていれば良いのに。
拗ねた口調でつぶやけば秋斗は嬉しそうに笑い、つんとくちびるを尖らせる小春に口づけた。
そもそも卒業した今では高校での秋斗の生活を小春は知らない。きっと学校でしか見せない顔もあるはずだ。
むうっと面白くない表情を気にしない秋斗は、悪戯に体を撫でてゆっくり舌で辿る。
「ん……っ♡ あ、また、するの? あっ♡」
「うん、一箱あるんだろ? せっかく買ってきてくれたんだから使わないとな」
近い距離で囁く声は日常より低く甘い。
秋斗のこんな声も顔も知っているのは世界でただ一人特別な相手だけで、すなわちそれは小春になる。
そう思えばその他大勢が知れる学校での顔よりもっと貴重なものに思えた。
(それに一緒に登校してた時の秋は知ってるもん! 小さな頃だって知ってるし、好きな人の成長をずっと見守ってるなんて最高に幸せ♡)
うずうず湧き出る優越感でにやけながら、何度も軽いキスを繰り返す。見つめ合う秋斗の目は蕩けるほどの欲情を浮かべて、小春は満面の笑みで弟の首にしがみついた。
「大好き! ね、今から全部使い切っちゃおうね♡」
「んーと……。それはまあ、臨機応変に」
一瞬目線を逸らした秋斗は誤魔化すように再び口づける。しっとり重なる熱いくちびるも全部小春のもの。
きっかけをくれたあの女の子には感謝をするべきなのかもしれない。軽々しく触るのは絶対に許さないけど。
少し生意気で可愛い義弟は、出会ったあの日からずっと小春だけのものだから。
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