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6.★結婚しよう

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「ひゃ、あ、覚えてる……っ」
「そうか、よかった」

 安堵を感じさせる声が吐息と共に耳に触れる。忘れているのは彼のほうだと思っていたのに。熱い息をもらすリィラを振り向かせたシリウスは、ゆっくりとくちびるを重ね合わせた。 
 はじめてのキスは想像していたよりずっと熱い。けれども頭がぼうっとするほど気持ちがよくて、離れてしまう彼の顔を名残惜しく見つめてしまった。

「俺と結婚しよう、リィラ。そうしたら俺たちは家族だ。怖がらせたくなかったからゆっくり進めるつもりだったけど、気が変わった」

 腹を撫でていた手のひらがそのまま上へと滑り、布地の上からやわらかなふくらみを包みこむ。
 リィラが好む衣服は人の国に比べて布地の面積が小さい。シリウスが滞在を始めた当初、それとなく指摘されたことがあるのだが、その時はなにも思わなかった。
 こういったデザインは魔族にとって珍しいことではなく、肌を露出することに抵抗を感じたことなどないからだ。

 だが遠慮のない彼の指は躊躇なく胸元の布をずらし、白いふくらみがたやすく外気へ晒される。
 リィラに気安く触れようとする者などメランにはいない。よってこんな所を人に、しかも異性に見られることなど初めての経験になる。
 今になってシリウスの言った「無防備」という言葉の意味がわかってしまった。

「あっ、や、やめ……」
「嫌なら抵抗すればいい。俺はもう魔法に対する術がないからな。リィラなら俺を簡単に殺せるだろ」
「ばかっ! なんてことを……あ、ん……っ」

 反射的に出た大きな声は、言い終える前に甘い響きに変わってしまった。
 シリウスの長い指がそれぞれ左右の蕾を摘んでは撫でる。擦り上げられるたびリィラの口からは甘ったるい声が上がり、体はびくびく小刻みに跳ねた。

「やっ、あ、あ、やだぁ……」

 いやいやと体をくねらせてもシリウスは解放してくれない。
 本気で嫌なわけではないけれど、それでも急な展開に心がついていかなかった。ついさっきまでいつも通り、優しいだけの男だったのに。
 どうすればいいのかわからず、混乱するリィラはただ甘い吐息をもらすことしかできないでいる。

「可愛い抵抗だな。でも本気で嫌がらないと離してやらない。それとも、このまま俺に好きにされてもいいのか?」

 もちろんこの行為の意味がわからないわけじゃない。

(シリウスの、好きに……?)

 それは、このまま快楽を刻み込まれ、彼のものになるということだろう。
 そう考えた途端、おなかの奥深くにひときわ大きな疼きが走った。シリウスは優しくて、言葉でも態度でも、いつもリィラのほしいものを与えてくれる。
 今だって強引に進めているようで、指先はとろけるほど優しく甘い。
 嫌悪感などひとつもなく、むしろ嬉しいなんて思ってしまう自分はおかしいのだろうか。
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