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魔族で魔眼な妹と勇者な兄のそれからと
3.二度目の初恋は愛しい君
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キアラが躊躇するクロウの手を引いて家に入ると、彼はキョロキョロと室内を見渡している。間取りも、二人で揃えた家具も、今の彼には全て新しいものとして目に映っているようだ。
「どういうことだ?僕の家は森の中にあるはず」
「うん、ここはね海辺の町。引越したんだよ」
「父さんが毎年行く町か……? 引越したって父さん母さんは?」
「今は離れて暮らしてるよ。ここは君と私のおうち」
よくわからないと言った顔をする彼を食卓の椅子に座らせて、ちょっと待ってねとキアラは冷めた料理を温め直す。
料理や風呂を温める時は、基本的にどこの家庭も火の魔法石を使っている。その為、生活の必需品となっていて、家事用として売っている火の魔法石は複数回使うことができて長持ちするし、ずっと安価に手に入る。
さっと温めたアクアパッツァと、ベーコンと卵を散らしたサラダ、キアラが好きなふわふわの白パンをテーブルに並べるとクロウの目がキラキラと輝いた。
「どうぞ、食べてね」
いたく感激している彼はごくりと一度喉を鳴らしてから恐る恐る、キアラが取り分けた白身の魚をスープごと掬って口に入れる。そうして嬉しそうに輝いた目に、またキアラは小さく吹き出してしまった。
「すごい……おいしい……最高」
「ありがとう。クロウの方が上手だけど」
「そんなことない。すごくおいしい。店の料理みたいだ」
「大袈裟だよ~」
キアラの記憶ではクロウは昔から料理が上手だった気がするが、この頃のクロウはまだ料理を始めてそれほど経っていない。
彼のイメージする家庭料理と言えばレオの豪快焼きか、一度だけ口にしたサアレ作地獄のメニューの印象がまだ強く、家で手の込んだ料理が食べれることにひどく感激している。
あっという間に完食して、お行儀良くご馳走様と手を合わせた彼は目に見えるように機嫌が良い。
少し遅れて完食したキアラが片付けようと席を立つと、作ってもらったから……と後片付けを申し出たクロウが手際良く食器を洗っていく。
いいと言っても休んでて、と背中を押すようにソファに追いやられてしまったので、キアラは大人しく洗い物をするクロウを眺める。
当たり前だけどキアラにとってクロウは出会った時からずっと年上で、いつも格好良い存在だった。でもこうやって見ると、まだ幼い顔立ちに成長途中の体。
気怠げな口調はそのままに、まだ少年らしい少し高い声。身長もキアラよりちょっぴり低い。
(か、かわいいー!! めちゃくちゃ可愛い! もうやばいくらい可愛い! なんなのこの子!! この可愛い子があの格好良いクロウになるなんて! どうしよう! もう最高の最高なんだけど?!)
いつもの様にキアラが一人で悶えていると、洗い物を終えたクロウが少し迷ってからキアラの隣に座る。
いつもより開いている距離に何となく彼の手を取って指を絡ませてみると、一瞬体を強張らせたが顔を逸らし頬を赤らめているクロウから解かれる気配はない。
「……おいしかった。お姉さんすごいな」
「えへへ、嬉しいな。後片付けありがとう。でも私はお姉さんじゃなくて、クロウがよく知ってるキアラなんだよ?」
しばらくキアラを見つめてうーんと考え込んだクロウは、空いてる手で額を押さえる。この仕草もいつもの彼だ。
こんな昔から癖だったんだ…と今まで見逃していたクロウを沢山知れてるみたいで、キアラはくすぐったいような何とも言えない、嬉しい気持ちが込み上げてくる。
「何度もあのケイって奴から言われたけど……僕が本当は二十歳で、とにかくキアラに会えばわかるからって……」
「本当だよ。君は二十歳の格好良い剣士様で、私はキアラ」
「信じられない」
「そうだよね……困ったなぁ。あ、あと一つ良いこと教えてあげる」
内緒だよ、とでも言う様に口元に手を当てて体の距離を詰め、顔を近付けてくるキアラにクロウの心臓が煩く跳ねる。ふわりといい匂いがして、思わず顔を見ると彼女は優しく微笑んでそっと耳元で囁いた。
「あのね。私は君の恋人で、だから二人で暮らしてるんだよ」
彼にとって突然告げられた事実にしばらく時が止まる。なんとなく、この距離感はおかしいと思っていたけど、しっくり納得がいく。
でも十四歳の彼には俄かに信じることはできない。
やったー!びっくりしてる!とはしゃぐキアラに、ちょっと待ってとクロウは混乱する頭で何とか情報整理を努める。
さっきまで僕は本当に二十歳だったというのか? しかも妹のはずのキアラはどう見ても年上だし、恋人って何のことだ?
「……僕は紛れもなく十四歳だし、キアラは妹なんだけど」
「わぁ! 懐かしいセリフ! でもね、兄妹じゃないって言ったのはクロウなんだよ」
「意味がわからない」
「それでも私はキアラで君の恋人なんだから信じてほしいな。そうだ! 信じるまで離さないんだから!」
そう言ったキアラが勢いよくクロウに横から飛びつくと、何の心の準備もしてなかった彼はバランスを崩し、押し倒されるようにソファに崩れる。
クロウはやめろと焦って叫んでみるが、楽しそうに声をあげているキアラを払い除ける気にもならず、わかったと彼は簡単に降参した。
信じられない。嘘みたいな話だけど、とにかく現状を受け入れるしかない。そのうち色々とわかってくるだろう。
持ち前のなんとかなる精神でとりあえずクロウは自分を納得させる。
それにしても、信じたと告げたはずなのにいつまでもキアラは彼を離さず、覆い被さるような体勢で上から見下ろしている。
よく見ると、澄んだ若葉色の瞳にはうっすらと小さな魔法陣が透けて見える。
不思議だけど綺麗だなとクロウはぼんやりしていたが、近い距離でじっと見つめられいることに気付き、我に返った彼はなんとも言えない胸の高鳴りに躊躇してしまった。
本当に彼女はあの小さなキアラなんだろうか。
(なんだこの動悸は……それになんでキアラはこんなに密着してくるんだ? 出会ったばっかりだぞ?
いや、恋人なんだっけ……恋人……?)
そこまで考えた彼はより一層恥ずかしくなってしまい、片手で顔を覆う。
思春期に入りたてのクロウにとって、年上のお姉さんからの積極的な接触は色んな意味でかなりキツい。
そんなクロウの葛藤も知らず十四と聞いたキアラは、じっと彼の様子を観察しながら、なるほどと出会った初日を思い出す。
出会ってまだそんなに経ってない頃には違いない。
でもキアラの名を出す時にあの嫌悪に溢れた目をしていないと言うことは、少し打ち解けた頃なのかもしれない。
あの聖剣事件より前の今ならまだ魔族への嫌悪はないはずだし、これなら落ち着いて話が出来るかも…とまで考えて、ふとある事に気付く。
「クロウ……私の目、見ても平気なの?」
「目……やっぱりキアラなんだな……。そういえば何も思わなかった」
「覚えてないみたいだけど、深いところで少し記憶が残ってるのかな?」
「何のことだ?」
クロウはさっぱりわからないと首を傾げるが、それはそうだろうとキアラも思う。
「えっとね。私の目、もう封印しちゃったの。クロウがヒントに気付いてくれたおかげなんだよ。ありがとうね」
「意味がわからない……」
「うん、いいの。やっぱり大好き!」
そうよくわからない結論に達したキアラに額に軽く口付けられて少年クロウの顔が真っ赤に染まる。
その様子を嬉しそうに眺めるキアラはどうしてもうずうずとニヤけてしまう。
「何だよ?」
「えへ、さっきからすぐに赤くなってるよね。あのクロウが……信じられない……うわーん! 可愛いー! 好きっ!!」
感極まったキアラが次は頬にキスして来たのでまたあたふたしてると、更に体を密着させてご機嫌に擦り寄ってくる。その柔らかさ、特に遠慮なく押し付けられるたわわな胸にどうしても神経と目が集中しまう。
「やめろって!」
「やめないよ~。こんな機会ないもんね! あーん、可愛いよ~」
「……わかった」
「ん?」
突然静かな声を出したクロウにあれ? としがみついていた腕の力を抜くと、くるりとキアラの視界が回転した。
一瞬の出来事にぱちくりと目を瞬くと赤い顔のままのクロウが見下ろしている。まだ幼くはあるが、ある程度体術も鍛えている彼にとって小柄なキアラを組み敷くのは難しい事ではない。
「恋人なんだろ? じゃあ僕も触っていいよな?」
なんだか切羽詰まったような瞳で頬を赤らめるクロウはキアラにクリティカルヒットを与え、彼女はまたいとも容易く流されそうになるが、彼はまだ子どもだという事を思い出して違う意味で焦ってくる。
これは…手を出してはいけないのでは…?と今更ながらキアラの中の道徳心が顔を出す。
「い、いいけど…あの、さ、触るだけだよ…?」
「あ! 当たり前だ!」
当たり前。
十四歳のクロウ少年の初心さにまたキアラが顔を覆って悶えていると、そっと手を外されてゆっくりと触れるだけのキスが降りてきた。
一瞬触れてすぐに離れた感触に思わず唇に手をやると、まだ頬を紅潮させたクロウは顔を逸らしてついと立ち上がり、キアラから距離を置いて向かいのソファに膝を抱えて座る。
「……初めてだから」
ポツリと呟いて、バツが悪そうに赤い顔を背けるクロウにキアラの可愛いメーターが急激にマックスを超える。恋する乙女は色んな回路を心に持っているので、感情の起伏がとても大変である。
なにそれ! ちょ、ちょ…可愛すぎるんですけど?! これが! あの!クロウなの?! めちゃくちゃ可愛いーーーー!!
「可愛いー!!」
居ても立っても居られなく、ぴょんと立ち上がったキアラは懲りもせずまたクロウに飛びつく。
「やめろってば!」
「やめない! 好き! かわいい!」
どうしてこんな状況に? 彼は戻ることができるのか?
色々考えるべき事は沢山あるのに、とにかく追うだけだったあの日々をやり直せてるような気がして、キアラがやっと冷静になれたのは翌朝目覚めてからのことだった。
「どういうことだ?僕の家は森の中にあるはず」
「うん、ここはね海辺の町。引越したんだよ」
「父さんが毎年行く町か……? 引越したって父さん母さんは?」
「今は離れて暮らしてるよ。ここは君と私のおうち」
よくわからないと言った顔をする彼を食卓の椅子に座らせて、ちょっと待ってねとキアラは冷めた料理を温め直す。
料理や風呂を温める時は、基本的にどこの家庭も火の魔法石を使っている。その為、生活の必需品となっていて、家事用として売っている火の魔法石は複数回使うことができて長持ちするし、ずっと安価に手に入る。
さっと温めたアクアパッツァと、ベーコンと卵を散らしたサラダ、キアラが好きなふわふわの白パンをテーブルに並べるとクロウの目がキラキラと輝いた。
「どうぞ、食べてね」
いたく感激している彼はごくりと一度喉を鳴らしてから恐る恐る、キアラが取り分けた白身の魚をスープごと掬って口に入れる。そうして嬉しそうに輝いた目に、またキアラは小さく吹き出してしまった。
「すごい……おいしい……最高」
「ありがとう。クロウの方が上手だけど」
「そんなことない。すごくおいしい。店の料理みたいだ」
「大袈裟だよ~」
キアラの記憶ではクロウは昔から料理が上手だった気がするが、この頃のクロウはまだ料理を始めてそれほど経っていない。
彼のイメージする家庭料理と言えばレオの豪快焼きか、一度だけ口にしたサアレ作地獄のメニューの印象がまだ強く、家で手の込んだ料理が食べれることにひどく感激している。
あっという間に完食して、お行儀良くご馳走様と手を合わせた彼は目に見えるように機嫌が良い。
少し遅れて完食したキアラが片付けようと席を立つと、作ってもらったから……と後片付けを申し出たクロウが手際良く食器を洗っていく。
いいと言っても休んでて、と背中を押すようにソファに追いやられてしまったので、キアラは大人しく洗い物をするクロウを眺める。
当たり前だけどキアラにとってクロウは出会った時からずっと年上で、いつも格好良い存在だった。でもこうやって見ると、まだ幼い顔立ちに成長途中の体。
気怠げな口調はそのままに、まだ少年らしい少し高い声。身長もキアラよりちょっぴり低い。
(か、かわいいー!! めちゃくちゃ可愛い! もうやばいくらい可愛い! なんなのこの子!! この可愛い子があの格好良いクロウになるなんて! どうしよう! もう最高の最高なんだけど?!)
いつもの様にキアラが一人で悶えていると、洗い物を終えたクロウが少し迷ってからキアラの隣に座る。
いつもより開いている距離に何となく彼の手を取って指を絡ませてみると、一瞬体を強張らせたが顔を逸らし頬を赤らめているクロウから解かれる気配はない。
「……おいしかった。お姉さんすごいな」
「えへへ、嬉しいな。後片付けありがとう。でも私はお姉さんじゃなくて、クロウがよく知ってるキアラなんだよ?」
しばらくキアラを見つめてうーんと考え込んだクロウは、空いてる手で額を押さえる。この仕草もいつもの彼だ。
こんな昔から癖だったんだ…と今まで見逃していたクロウを沢山知れてるみたいで、キアラはくすぐったいような何とも言えない、嬉しい気持ちが込み上げてくる。
「何度もあのケイって奴から言われたけど……僕が本当は二十歳で、とにかくキアラに会えばわかるからって……」
「本当だよ。君は二十歳の格好良い剣士様で、私はキアラ」
「信じられない」
「そうだよね……困ったなぁ。あ、あと一つ良いこと教えてあげる」
内緒だよ、とでも言う様に口元に手を当てて体の距離を詰め、顔を近付けてくるキアラにクロウの心臓が煩く跳ねる。ふわりといい匂いがして、思わず顔を見ると彼女は優しく微笑んでそっと耳元で囁いた。
「あのね。私は君の恋人で、だから二人で暮らしてるんだよ」
彼にとって突然告げられた事実にしばらく時が止まる。なんとなく、この距離感はおかしいと思っていたけど、しっくり納得がいく。
でも十四歳の彼には俄かに信じることはできない。
やったー!びっくりしてる!とはしゃぐキアラに、ちょっと待ってとクロウは混乱する頭で何とか情報整理を努める。
さっきまで僕は本当に二十歳だったというのか? しかも妹のはずのキアラはどう見ても年上だし、恋人って何のことだ?
「……僕は紛れもなく十四歳だし、キアラは妹なんだけど」
「わぁ! 懐かしいセリフ! でもね、兄妹じゃないって言ったのはクロウなんだよ」
「意味がわからない」
「それでも私はキアラで君の恋人なんだから信じてほしいな。そうだ! 信じるまで離さないんだから!」
そう言ったキアラが勢いよくクロウに横から飛びつくと、何の心の準備もしてなかった彼はバランスを崩し、押し倒されるようにソファに崩れる。
クロウはやめろと焦って叫んでみるが、楽しそうに声をあげているキアラを払い除ける気にもならず、わかったと彼は簡単に降参した。
信じられない。嘘みたいな話だけど、とにかく現状を受け入れるしかない。そのうち色々とわかってくるだろう。
持ち前のなんとかなる精神でとりあえずクロウは自分を納得させる。
それにしても、信じたと告げたはずなのにいつまでもキアラは彼を離さず、覆い被さるような体勢で上から見下ろしている。
よく見ると、澄んだ若葉色の瞳にはうっすらと小さな魔法陣が透けて見える。
不思議だけど綺麗だなとクロウはぼんやりしていたが、近い距離でじっと見つめられいることに気付き、我に返った彼はなんとも言えない胸の高鳴りに躊躇してしまった。
本当に彼女はあの小さなキアラなんだろうか。
(なんだこの動悸は……それになんでキアラはこんなに密着してくるんだ? 出会ったばっかりだぞ?
いや、恋人なんだっけ……恋人……?)
そこまで考えた彼はより一層恥ずかしくなってしまい、片手で顔を覆う。
思春期に入りたてのクロウにとって、年上のお姉さんからの積極的な接触は色んな意味でかなりキツい。
そんなクロウの葛藤も知らず十四と聞いたキアラは、じっと彼の様子を観察しながら、なるほどと出会った初日を思い出す。
出会ってまだそんなに経ってない頃には違いない。
でもキアラの名を出す時にあの嫌悪に溢れた目をしていないと言うことは、少し打ち解けた頃なのかもしれない。
あの聖剣事件より前の今ならまだ魔族への嫌悪はないはずだし、これなら落ち着いて話が出来るかも…とまで考えて、ふとある事に気付く。
「クロウ……私の目、見ても平気なの?」
「目……やっぱりキアラなんだな……。そういえば何も思わなかった」
「覚えてないみたいだけど、深いところで少し記憶が残ってるのかな?」
「何のことだ?」
クロウはさっぱりわからないと首を傾げるが、それはそうだろうとキアラも思う。
「えっとね。私の目、もう封印しちゃったの。クロウがヒントに気付いてくれたおかげなんだよ。ありがとうね」
「意味がわからない……」
「うん、いいの。やっぱり大好き!」
そうよくわからない結論に達したキアラに額に軽く口付けられて少年クロウの顔が真っ赤に染まる。
その様子を嬉しそうに眺めるキアラはどうしてもうずうずとニヤけてしまう。
「何だよ?」
「えへ、さっきからすぐに赤くなってるよね。あのクロウが……信じられない……うわーん! 可愛いー! 好きっ!!」
感極まったキアラが次は頬にキスして来たのでまたあたふたしてると、更に体を密着させてご機嫌に擦り寄ってくる。その柔らかさ、特に遠慮なく押し付けられるたわわな胸にどうしても神経と目が集中しまう。
「やめろって!」
「やめないよ~。こんな機会ないもんね! あーん、可愛いよ~」
「……わかった」
「ん?」
突然静かな声を出したクロウにあれ? としがみついていた腕の力を抜くと、くるりとキアラの視界が回転した。
一瞬の出来事にぱちくりと目を瞬くと赤い顔のままのクロウが見下ろしている。まだ幼くはあるが、ある程度体術も鍛えている彼にとって小柄なキアラを組み敷くのは難しい事ではない。
「恋人なんだろ? じゃあ僕も触っていいよな?」
なんだか切羽詰まったような瞳で頬を赤らめるクロウはキアラにクリティカルヒットを与え、彼女はまたいとも容易く流されそうになるが、彼はまだ子どもだという事を思い出して違う意味で焦ってくる。
これは…手を出してはいけないのでは…?と今更ながらキアラの中の道徳心が顔を出す。
「い、いいけど…あの、さ、触るだけだよ…?」
「あ! 当たり前だ!」
当たり前。
十四歳のクロウ少年の初心さにまたキアラが顔を覆って悶えていると、そっと手を外されてゆっくりと触れるだけのキスが降りてきた。
一瞬触れてすぐに離れた感触に思わず唇に手をやると、まだ頬を紅潮させたクロウは顔を逸らしてついと立ち上がり、キアラから距離を置いて向かいのソファに膝を抱えて座る。
「……初めてだから」
ポツリと呟いて、バツが悪そうに赤い顔を背けるクロウにキアラの可愛いメーターが急激にマックスを超える。恋する乙女は色んな回路を心に持っているので、感情の起伏がとても大変である。
なにそれ! ちょ、ちょ…可愛すぎるんですけど?! これが! あの!クロウなの?! めちゃくちゃ可愛いーーーー!!
「可愛いー!!」
居ても立っても居られなく、ぴょんと立ち上がったキアラは懲りもせずまたクロウに飛びつく。
「やめろってば!」
「やめない! 好き! かわいい!」
どうしてこんな状況に? 彼は戻ることができるのか?
色々考えるべき事は沢山あるのに、とにかく追うだけだったあの日々をやり直せてるような気がして、キアラがやっと冷静になれたのは翌朝目覚めてからのことだった。
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