【R18】突然サキュバスになったので大好きな義兄を誘惑します

ドゴイエちまき

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3.奏多と遥花

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 奏多からするとただの寝言だろうが、それでも腹の立つことには変わりない。鬼の形相をした遥花の近い距離で、形の良い眉が不快げにひそめられた。

 

「うるっさ……。ん?」

 

 不機嫌に開かれた目はまだ寝ぼけているようだ。

 数回まばたきをしたあと、シャープな一重の目がぱっちりと開かれる。

 

「こら! お前はまた潜り込んで……。兄ちゃんはまだ寝るからひとりでコスプレして遊んでろ。社畜の眠りを妨げてはいかん」



 どうやら頭上のツノはコスプレと勘違いされたようだ。追い出そうとする奏多の手を両手で掴み、遥花はじとりとした視線を送る。

 

「はるかって誰よ」

「は?」

「さっき名前呼んだ! 彼女? また出来たの? ほんっと油断も隙もないんだから! 早く別れよ? ね? しょうもない女と一緒にいたらお兄ちゃん不幸になっちゃうよ」



 顔面も面倒見も良い義兄はやたらとモテる。いつも長続きはしないようだが、気づけば隣にどこぞの女がいるのだ。

 そのたびに呪詛を唱える身にもなってほしい。

 しかし、面倒そうな奏多の口からは予想外の答えが飛び出した。

 

「いや……。呼んだかどうかは知らんけど、誰って……お前だろ」

「え……。ほんとだ! あたしじゃん!」



 怒りに燃える遥花の瞳が一瞬にしてキラキラと星のような輝きを取り戻す。

 なんという盲点。今までの経験が邪魔をして、すっかり自分の名前を忘れてしまっていた。



(やっぱりお兄ちゃんはあたしが好き、てゆーかむしろ愛? 義妹だから堂々と言えないんだね。うん、お兄ちゃん世間体とか大事にするタイプだもん。だから寝言でしか言えないんだ。なんてかわいそうなの!)



 たった数秒でそこまで到達する遥花の思考回路は少し特殊だった。ポジティブ度でいうと町内、いや県内トップには入れると自負している。

 機嫌を直した遥花は義兄にべったりとしがみつく。

 

「やっぱりお兄ちゃんもあたしが好きで好きで仕方ないんだね。明日婚姻届もらいに行こうね。あ、ゼク◯ィの付録がいいかな? あたし、ティ◯ァニーのがいいな」

「待て。暴走するな」

「いいの! 言わなくてもわかってる。そんなお兄ちゃんに朗報です」



 感激に打ち震える遥花は冷めた奏多の対応などまったく気にならない。むしろ呆れた視線は日常のものだ。

 布団の中でもぞもぞと移動し、遠慮なく義兄にのしかかる。

 

 奏多は背も高く、遥花のスタイル維持に付き合ってくれるおかげで適度な筋肉を保っている。そんな義兄は簡単に遥花をつまみ出すことができる。

 その余裕のせいか突拍子もない行動をある程度までは傍観するのだ。

 

 今だってされるがままに見下ろされている奏多はスンと冷静である。そろそろ廊下へ放り出されそうな気もするけど、今日は絶対に逃さない。

 なんせこっちには正当な理由があるのだから。

 

「あたし、サキュバスになっちゃったの。だから世間体とかなにも考えなくていいの。だってお兄ちゃんは飢えそうな妹を保護するだけなんだもん。あたしのこと好きにしていいんだよ」

「……は?」

 

 興奮のあまり早口になってしまい一息で言い終えた。

 数秒の沈黙後、疑問を口に出そうとしたくちびるに指を当て、遥花はにっこり微笑んだ。
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