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1.突然のサキュバス化
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小鳥がさえずるのどかな日曜。
うららかな朝の日差しは優秀な遮光カーテンに遮られている。
そんな薄明るい部屋で、呆れた視線を向ける奏多に覆いかぶさり、遥花はちろりと舌なめずりした。
出会った日からずっとずっと四つ上の義兄、奏多が好きだった。おかげで二十になった今でも他の男になんか興味が持てないでいる。
なのに奏多は遥花を妹としか見てくれない。
もちろんそれは当たり前のことで、人として正しい生き方なんだろう。しかし我が道をゆく遥花には納得できなかった。
世間一般の正しさなんて興味がない。遥花にとって大切なのは自分の心が了承するか否か。ただそれだけだ。
だから今回の変異は神様からのご褒美。そうとしか思えなかった。
さかのぼること数年前、突然変異というものが突如世間に現れ始めた。
体の一部もしくは全身に動物の特徴が現れたり、ツノが生えたり、体の色が変化したり。
症状は様々で、いまだに原因は解明されていない。
だけど変異した体はなにかしらのスキルを宿すものだ。よって国からは保護される対象となっている。
人権にうるさい時代ゆえに差別に苦しむこともなく、遥花にとって困ることはない。
それになにより、これでガードの固い義兄を丸め込む理由ができたのだから。
***
目覚めた遥花は妙な違和感を覚えた。
窓から差し込む日の光は優しく、ゆっくりと瞬きをする。
今日はダラダラ眠って、午後から義兄の部屋で映画でも観ようと思っていたのに。
小鳥の鳴き声がする今はきっとまだ早朝に違いない。
なんだかやけに喉が渇いているし、お尻のあたりに妙な感触がある。
「なにぃ……、なんか、へん……」
まだ覚醒しきっていない頭のまま、そろりと腰の後ろに手を伸ばす。やたらとむずむずするこれはなんだろう。
眉をしかめ、ふわもこのショートパンツの中に入れた指はすぐにぴたりと動きを止めた。
「ん? なにこれ……」
指に当たるものがある。細く長く、つるんとした触感は昨日までなかったものだ。しかも触れるとぞわぞわ背中がくすぐったい。
心当たりはないが、思い浮かぶものはあった。
まさかと慌てて飛び起き、ショートパンツを豪快に脱ぎ捨てる。
スタンドミラーの前に立った遥花は背を向け、おそるおそるといった視線で鏡の中を覗いた。
お気に入りのピンクのショーツの上。ずれた布地の上には長く細いしっぽがある。
つやっとした滑らかな質感。先が尖ったハートに見えるそれは、鏡の中でゆらりと揺れた。
「は? え? なに、これ、しっぽ……?」
しかも鏡に映る自分の頭には山羊のようなツノが左右に一本ずつ。これもまた昨日まではなかったものだ。おずおずと触ればちゃんと感覚がある。
「え、うそ、やば! これって……リアルにミリアンじゃん!」
興奮が抑えきれず、つい叫んでしまった。遥花の高揚に合わせてしっぽがゆらゆら揺れる。
染まる両頬を押さえた遥花の瞳は、もはや感激のあまり泣き出しそうに潤んでいた。
うららかな朝の日差しは優秀な遮光カーテンに遮られている。
そんな薄明るい部屋で、呆れた視線を向ける奏多に覆いかぶさり、遥花はちろりと舌なめずりした。
出会った日からずっとずっと四つ上の義兄、奏多が好きだった。おかげで二十になった今でも他の男になんか興味が持てないでいる。
なのに奏多は遥花を妹としか見てくれない。
もちろんそれは当たり前のことで、人として正しい生き方なんだろう。しかし我が道をゆく遥花には納得できなかった。
世間一般の正しさなんて興味がない。遥花にとって大切なのは自分の心が了承するか否か。ただそれだけだ。
だから今回の変異は神様からのご褒美。そうとしか思えなかった。
さかのぼること数年前、突然変異というものが突如世間に現れ始めた。
体の一部もしくは全身に動物の特徴が現れたり、ツノが生えたり、体の色が変化したり。
症状は様々で、いまだに原因は解明されていない。
だけど変異した体はなにかしらのスキルを宿すものだ。よって国からは保護される対象となっている。
人権にうるさい時代ゆえに差別に苦しむこともなく、遥花にとって困ることはない。
それになにより、これでガードの固い義兄を丸め込む理由ができたのだから。
***
目覚めた遥花は妙な違和感を覚えた。
窓から差し込む日の光は優しく、ゆっくりと瞬きをする。
今日はダラダラ眠って、午後から義兄の部屋で映画でも観ようと思っていたのに。
小鳥の鳴き声がする今はきっとまだ早朝に違いない。
なんだかやけに喉が渇いているし、お尻のあたりに妙な感触がある。
「なにぃ……、なんか、へん……」
まだ覚醒しきっていない頭のまま、そろりと腰の後ろに手を伸ばす。やたらとむずむずするこれはなんだろう。
眉をしかめ、ふわもこのショートパンツの中に入れた指はすぐにぴたりと動きを止めた。
「ん? なにこれ……」
指に当たるものがある。細く長く、つるんとした触感は昨日までなかったものだ。しかも触れるとぞわぞわ背中がくすぐったい。
心当たりはないが、思い浮かぶものはあった。
まさかと慌てて飛び起き、ショートパンツを豪快に脱ぎ捨てる。
スタンドミラーの前に立った遥花は背を向け、おそるおそるといった視線で鏡の中を覗いた。
お気に入りのピンクのショーツの上。ずれた布地の上には長く細いしっぽがある。
つやっとした滑らかな質感。先が尖ったハートに見えるそれは、鏡の中でゆらりと揺れた。
「は? え? なに、これ、しっぽ……?」
しかも鏡に映る自分の頭には山羊のようなツノが左右に一本ずつ。これもまた昨日まではなかったものだ。おずおずと触ればちゃんと感覚がある。
「え、うそ、やば! これって……リアルにミリアンじゃん!」
興奮が抑えきれず、つい叫んでしまった。遥花の高揚に合わせてしっぽがゆらゆら揺れる。
染まる両頬を押さえた遥花の瞳は、もはや感激のあまり泣き出しそうに潤んでいた。
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