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涙で潤む大きな瞳も、囁くような声もぞくりと本能を刺激した。
そこからはもう、少しばかり残っていた理性なんか吹っ飛んでしまった。
のしかかっていた軽い体を押し倒し、噛み付くようなキスをした。技術なんかなくて、ただひたすらに本能のままに紬を貪る。
密着させた腰でしなやかな肢体を揺すると、苦痛に眉を寄せながらも紬は健気に縋り付いてくる。
「つむぎ、かわい……」
そうやって囁くたびに、きゅうっと中が締まる。
それに心なしか少しずつ紬の反応も変化しているように見えた。
「うあっ! れん……っ、あっ、あっ!」
「可愛い、めっちゃ可愛い。可愛すぎてヤバい……」
「んっ、あっ、あ、うれし……ぃっ」
小さく呻くようだった声はいつの間にか甘ったるく響いて、ぬちっとした控えめな音はじゅぷじゅぷと大きな音に変わっていた。
がむしゃらに打ちつける腰は気遣いなんて感じられないけど、身をよじる紬も夢中で蓮を求めているのがわかる。
肌は熱く汗ばんで、混ざる熱に溶けてしまいそうだ。
どうやればいいのかなんてわからない。偶然当たった一点にびくりと紬の体が大きく震える。
今までと違う反応に、蓮はそこばかりを責めてみた。
「あっ! れん……っ! や、やだっ!」
「痛い?」
「ちが……っ、それ、なんか、ちがっ! なんか、へんっ……!」
じたじた暴れる紬を押さえつけるように抱きしめ、嫌がる場所を遠慮なく突く。
強さを加減出来る余裕なんかないし、いやいや首を振る紬も、さっきよりきつく締め付けてくる。
無意識なのか、いつの間にか絡んだ足だってがっしりと蓮の腰を離さない。
「や、だめっ! あっ! ひあぁぁっ!」
しなやかな体が跳ね、びくびく痙攣しながら蓮にしがみつく。
ぎゅうぎゅう断続的に締め付ける紬に抗えず、呻くような声と共に蓮も果てる。
目が眩むほどの快感に達成感すらあった。
できることならこのまま眠りにつきたいところだけど、長く挿入したままだと危険だ。
気怠い体を起こした蓮に、
「コンドームを捨てる時は口を結ぶんだって」
紬はそう得意げにアドバイスしてくる。
最後まできっちり予習済みなその姿に、もはや軽い尊敬すら覚えてしまった。
なんとなく使用済のゴムを眺めると自分でも呆れるほどの量がたぷりと揺れる。
どうしたの? と覗き込んでくる紬には笑って誤魔化し、追及される前にティッシュに包んで捨てた。
下着姿の紬を抱きしめると甘い香りがふわりと漂う。擦り寄る仕草もなにもかも可愛い。
「紬……、好き。かわいい。俺バカになったかも」
「えへ、嬉しい……。わたしも……だいすき」
さっきまでの妖艶さが消え、微笑んだ紬はいつものよく知った顔で笑う。
花のような明るい笑顔。変わらないその表情を改めて好きだと思った。
触れるだけのキスはなんだかくすぐったい。
ぽすっとシーツに落とした華奢な手が溶けたアイスに触れて、そこに視線をやった紬は平たい木の棒を指で突いた。
「アイス、溶けちゃったね」
紬の持っていたアイスはシーツの上で薄墨のような染みを作っているし、未開封の袋も、中身は黒い液体と化しているだろう。
「結局何色になるんだ? やっぱ黒?」
ひとくち齧った程度では舌に色はつかなかったようだ。
それともほんのり変わった色は、見る前に舐め取ってしまったのかもしれない。
ぷっくりした小さなくちびるを親指で押さえた蓮に紬がまた頬を染めた。
「なんだよ、今更」
「だって蓮くん……、距離が……」
「さっきまで、もっとすごいことしてたじゃん」
「そうだけど……!」
もう! と背を向けた紬をそのまま後ろから抱きしめる。
肌はまだしっとりしていて、吸い付くような感触に、ほうっと息が漏れる。
昔は見上げる位置にあった紬の頭も、とっくに追い越した。
それに、肩だって腰だって、蓮よりずっと華奢で頼りない。
片手で滑らかな下腹部を撫でると紬は腕の中でぴくんと震えた。
初めての紬になんの手加減もせず、滾る欲望をぶつけたことを思い出す。
「ごめん……。俺、加減とかわかんなくて……。痛くない?」
「ちょっと痛いけど……、大丈夫だよ。どうしたの? 蓮くん優しい……。さっきも、可愛いとか、好きとか……なんかたくさん言ってくれたし」
ここ数年の態度を思い返せば、たしかに紬が不思議に思う気持ちも理解できる。
なんとなく気まずくなって少し黙ったら、くるりと向きを変えた紬がじっと見つめてきた。
「……彼女が出来たら全力で優しくするつもりだったし。本当はずっと、紬に優しくしたかったけど、ごめん……。て、なに?」
一度逸らした視線を戻した蓮は少し怯む。紬の瞳がやたらとキラキラしていたからだ。
今の話のどこにそんな要素があったのか蓮にはわからない。
だけど紬は自分の頬に両手を当てて、ふるふる感動している。
「彼女……?」
「違うの?」
「ううん! 違わないよ! 嬉しい!」
そうやって満面の笑みを見せる紬は眩しく、目を細めた蓮はゆっくりとキスをした。
変なアイスと、冷えた部屋と、可愛い紬。
――今日のことは一生忘れられないな。
来年も、そのまた次の夏も、この夏をきっと何度も思い出す。
そして隣にはずっと、変わらない紬が微笑んでくれますように。
そんなことを思いながら見上げた窓の外は、明る過ぎる太陽と雲ひとつない青空が広がっていた。
そこからはもう、少しばかり残っていた理性なんか吹っ飛んでしまった。
のしかかっていた軽い体を押し倒し、噛み付くようなキスをした。技術なんかなくて、ただひたすらに本能のままに紬を貪る。
密着させた腰でしなやかな肢体を揺すると、苦痛に眉を寄せながらも紬は健気に縋り付いてくる。
「つむぎ、かわい……」
そうやって囁くたびに、きゅうっと中が締まる。
それに心なしか少しずつ紬の反応も変化しているように見えた。
「うあっ! れん……っ、あっ、あっ!」
「可愛い、めっちゃ可愛い。可愛すぎてヤバい……」
「んっ、あっ、あ、うれし……ぃっ」
小さく呻くようだった声はいつの間にか甘ったるく響いて、ぬちっとした控えめな音はじゅぷじゅぷと大きな音に変わっていた。
がむしゃらに打ちつける腰は気遣いなんて感じられないけど、身をよじる紬も夢中で蓮を求めているのがわかる。
肌は熱く汗ばんで、混ざる熱に溶けてしまいそうだ。
どうやればいいのかなんてわからない。偶然当たった一点にびくりと紬の体が大きく震える。
今までと違う反応に、蓮はそこばかりを責めてみた。
「あっ! れん……っ! や、やだっ!」
「痛い?」
「ちが……っ、それ、なんか、ちがっ! なんか、へんっ……!」
じたじた暴れる紬を押さえつけるように抱きしめ、嫌がる場所を遠慮なく突く。
強さを加減出来る余裕なんかないし、いやいや首を振る紬も、さっきよりきつく締め付けてくる。
無意識なのか、いつの間にか絡んだ足だってがっしりと蓮の腰を離さない。
「や、だめっ! あっ! ひあぁぁっ!」
しなやかな体が跳ね、びくびく痙攣しながら蓮にしがみつく。
ぎゅうぎゅう断続的に締め付ける紬に抗えず、呻くような声と共に蓮も果てる。
目が眩むほどの快感に達成感すらあった。
できることならこのまま眠りにつきたいところだけど、長く挿入したままだと危険だ。
気怠い体を起こした蓮に、
「コンドームを捨てる時は口を結ぶんだって」
紬はそう得意げにアドバイスしてくる。
最後まできっちり予習済みなその姿に、もはや軽い尊敬すら覚えてしまった。
なんとなく使用済のゴムを眺めると自分でも呆れるほどの量がたぷりと揺れる。
どうしたの? と覗き込んでくる紬には笑って誤魔化し、追及される前にティッシュに包んで捨てた。
下着姿の紬を抱きしめると甘い香りがふわりと漂う。擦り寄る仕草もなにもかも可愛い。
「紬……、好き。かわいい。俺バカになったかも」
「えへ、嬉しい……。わたしも……だいすき」
さっきまでの妖艶さが消え、微笑んだ紬はいつものよく知った顔で笑う。
花のような明るい笑顔。変わらないその表情を改めて好きだと思った。
触れるだけのキスはなんだかくすぐったい。
ぽすっとシーツに落とした華奢な手が溶けたアイスに触れて、そこに視線をやった紬は平たい木の棒を指で突いた。
「アイス、溶けちゃったね」
紬の持っていたアイスはシーツの上で薄墨のような染みを作っているし、未開封の袋も、中身は黒い液体と化しているだろう。
「結局何色になるんだ? やっぱ黒?」
ひとくち齧った程度では舌に色はつかなかったようだ。
それともほんのり変わった色は、見る前に舐め取ってしまったのかもしれない。
ぷっくりした小さなくちびるを親指で押さえた蓮に紬がまた頬を染めた。
「なんだよ、今更」
「だって蓮くん……、距離が……」
「さっきまで、もっとすごいことしてたじゃん」
「そうだけど……!」
もう! と背を向けた紬をそのまま後ろから抱きしめる。
肌はまだしっとりしていて、吸い付くような感触に、ほうっと息が漏れる。
昔は見上げる位置にあった紬の頭も、とっくに追い越した。
それに、肩だって腰だって、蓮よりずっと華奢で頼りない。
片手で滑らかな下腹部を撫でると紬は腕の中でぴくんと震えた。
初めての紬になんの手加減もせず、滾る欲望をぶつけたことを思い出す。
「ごめん……。俺、加減とかわかんなくて……。痛くない?」
「ちょっと痛いけど……、大丈夫だよ。どうしたの? 蓮くん優しい……。さっきも、可愛いとか、好きとか……なんかたくさん言ってくれたし」
ここ数年の態度を思い返せば、たしかに紬が不思議に思う気持ちも理解できる。
なんとなく気まずくなって少し黙ったら、くるりと向きを変えた紬がじっと見つめてきた。
「……彼女が出来たら全力で優しくするつもりだったし。本当はずっと、紬に優しくしたかったけど、ごめん……。て、なに?」
一度逸らした視線を戻した蓮は少し怯む。紬の瞳がやたらとキラキラしていたからだ。
今の話のどこにそんな要素があったのか蓮にはわからない。
だけど紬は自分の頬に両手を当てて、ふるふる感動している。
「彼女……?」
「違うの?」
「ううん! 違わないよ! 嬉しい!」
そうやって満面の笑みを見せる紬は眩しく、目を細めた蓮はゆっくりとキスをした。
変なアイスと、冷えた部屋と、可愛い紬。
――今日のことは一生忘れられないな。
来年も、そのまた次の夏も、この夏をきっと何度も思い出す。
そして隣にはずっと、変わらない紬が微笑んでくれますように。
そんなことを思いながら見上げた窓の外は、明る過ぎる太陽と雲ひとつない青空が広がっていた。
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かわいくて初々しいキュンキュンのお話をありがとうございました(♡ω♡ ) ~♪
あっという間の6話でした♡
ごんさんいつもありがとうございます〜!!
キュンキュンしてもらえてめっちゃ嬉しいです!( *´艸`)
やはしアオハルは良い…♡
紬ちゃん可愛い〜〜〜〜❤
エロ漫画で勉強しちゃうのとか健気だしエロ可愛い〜〜〜❤
蓮くんも探りながらなのが初々しくてたまらないです❤
素敵なお話をありがとうございました✨
わー!ユラさんありがとうございます〜!!
エロ漫画で勉強…絶対やめとけな感じだよなと思いつつ、入れたかった箇所なので嬉しい(≧∀≦)
初々しいセッッは良いよね…♡好物♡
こちらこそ嬉しい〜!ありがとう〜!