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17.幼なじみ
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向かいのソファに座った蒼真は一見にこやかだけど目は笑っていない。顔が整っているだけに無駄に迫力があった。昔はあんなに可愛かったのに。
(あ、これは面倒なやつだ)
長年の付き合いから察した藍音は防御するよう、横に置いてあるクッションを体の前で抱え込む。
「荒れてるって……。ミルカちゃんに聞いたの?」
「まあね、それは兄さんからだけど。ミルカも藍音が遊びに来てくれないって嘆いてるよ。俺の彼女悲しませるのやめてくれる?」
「なによー、あんたは良いわよね。可愛い彼女と毎日仲良くニッコニコなんだから」
素直じゃない蒼真なりの心配も含んでいる(多分)のだと思うけど、面倒そうな態度に藍音はジトリと細めた目で最大の不満を訴えてみた。
蒼真もミルカも基本的にお互いがいればそれでいいのは知っている。しかし今は無性に腹が立つ。
天使らしからぬ妬みいっぱいの重い気を飛ばしてやっても蒼真はスンと澄ました顔のままだ。こんなことをしても浄化が得意な彼には何の影響もなく、それもまた悔しい。
「藍音は変な男ばっかに惚れるから。ミルカから聞いたけど、今回は今までで一番趣味悪すぎ。俺、あいつ嫌いだし」
「あんたの好みなんか知らないわよぉ。なんなの? わざわざ地上から文句言いに来たの?」
上級天使であり転移局で働く藍音が天界と地上を行き来するのは簡単だけど、蒼真が往復するにはそれなりに面倒な手続きがある。
まさか嫌味を言うために訪ねて来るとは思えないが、何をしに来たのかさっぱりわからない。そもそも文句だけならスマホを模した通信機を使えばいいだけなのだ。
「んー、藍音にお願いがあって来た……てことになるのかな。ミルカ曰く縁結びの依頼というか、通信で呼んでも全然来てくれないから俺が直々に来たってわけ」
「縁結びぃ? 依頼ってなによ。そんなの受けてないわよ。てゆーか、あんただって天使なんだからわざわざ呼びに来なくてもいいでしょ」
眉をしかめた藍音は、しっしと手を振って拒否の姿勢を示す。
藍音が恋の成就を得意としていることをミルカは知っている。彼女なりに考えてくれた文言だということはなんとなく察知した。
だけど敢えて気付かないフリをする。悲しいけれど、どう頑張っても結べない縁だって存在するのだから。
「俺は浄化専門なの。縁結びなんて興味ないし、ミルカが言ってるだけで縁結びじゃないし。まあ、人に会うだけだからさ。とりあえず地上に行けばわかるから、ほら早く行こ」
「嫌よ」
蒼真だって天使だというのに、興味ないと言い切るのもどうかと思う。それでも今は指摘する気にもならない。
人に会うということは、待っているのはミルカ、もしくはミルカに呼び出されたナツかもしれない。悪いけど今は会いたくなかった。
(応援してくれるのは嬉しいけど……。もしナツくんを呼んでくれても当の本人があれじゃ、何年経とうが無理に決まってるもの)
プイと顔を背ける藍音を眺めた蒼真は面倒そうなため息をついて立ち上がり、藍音の隣に腰を下ろす。兄妹のように過ごしてきた彼もまた距離が近い。
ぎゅむっとした圧迫感に苦情の目を向けると、蒼真は心の底から呆れた目線を返して来た。
「あのさ、こんなとこで荒れてても虚しくない? 全部ぶつけてスッキリしてくればいいじゃん」
「簡単に言わないでよ。淫魔とは常識が違いすぎるのよ」
それにナツだって二つ返事で会ってくれるとは思えない。そもそも連絡先も知らないし。
そんなネガティブな思考は口にしたくなくて、ため息と共に飲み込んだ。
(あ、これは面倒なやつだ)
長年の付き合いから察した藍音は防御するよう、横に置いてあるクッションを体の前で抱え込む。
「荒れてるって……。ミルカちゃんに聞いたの?」
「まあね、それは兄さんからだけど。ミルカも藍音が遊びに来てくれないって嘆いてるよ。俺の彼女悲しませるのやめてくれる?」
「なによー、あんたは良いわよね。可愛い彼女と毎日仲良くニッコニコなんだから」
素直じゃない蒼真なりの心配も含んでいる(多分)のだと思うけど、面倒そうな態度に藍音はジトリと細めた目で最大の不満を訴えてみた。
蒼真もミルカも基本的にお互いがいればそれでいいのは知っている。しかし今は無性に腹が立つ。
天使らしからぬ妬みいっぱいの重い気を飛ばしてやっても蒼真はスンと澄ました顔のままだ。こんなことをしても浄化が得意な彼には何の影響もなく、それもまた悔しい。
「藍音は変な男ばっかに惚れるから。ミルカから聞いたけど、今回は今までで一番趣味悪すぎ。俺、あいつ嫌いだし」
「あんたの好みなんか知らないわよぉ。なんなの? わざわざ地上から文句言いに来たの?」
上級天使であり転移局で働く藍音が天界と地上を行き来するのは簡単だけど、蒼真が往復するにはそれなりに面倒な手続きがある。
まさか嫌味を言うために訪ねて来るとは思えないが、何をしに来たのかさっぱりわからない。そもそも文句だけならスマホを模した通信機を使えばいいだけなのだ。
「んー、藍音にお願いがあって来た……てことになるのかな。ミルカ曰く縁結びの依頼というか、通信で呼んでも全然来てくれないから俺が直々に来たってわけ」
「縁結びぃ? 依頼ってなによ。そんなの受けてないわよ。てゆーか、あんただって天使なんだからわざわざ呼びに来なくてもいいでしょ」
眉をしかめた藍音は、しっしと手を振って拒否の姿勢を示す。
藍音が恋の成就を得意としていることをミルカは知っている。彼女なりに考えてくれた文言だということはなんとなく察知した。
だけど敢えて気付かないフリをする。悲しいけれど、どう頑張っても結べない縁だって存在するのだから。
「俺は浄化専門なの。縁結びなんて興味ないし、ミルカが言ってるだけで縁結びじゃないし。まあ、人に会うだけだからさ。とりあえず地上に行けばわかるから、ほら早く行こ」
「嫌よ」
蒼真だって天使だというのに、興味ないと言い切るのもどうかと思う。それでも今は指摘する気にもならない。
人に会うということは、待っているのはミルカ、もしくはミルカに呼び出されたナツかもしれない。悪いけど今は会いたくなかった。
(応援してくれるのは嬉しいけど……。もしナツくんを呼んでくれても当の本人があれじゃ、何年経とうが無理に決まってるもの)
プイと顔を背ける藍音を眺めた蒼真は面倒そうなため息をついて立ち上がり、藍音の隣に腰を下ろす。兄妹のように過ごしてきた彼もまた距離が近い。
ぎゅむっとした圧迫感に苦情の目を向けると、蒼真は心の底から呆れた目線を返して来た。
「あのさ、こんなとこで荒れてても虚しくない? 全部ぶつけてスッキリしてくればいいじゃん」
「簡単に言わないでよ。淫魔とは常識が違いすぎるのよ」
それにナツだって二つ返事で会ってくれるとは思えない。そもそも連絡先も知らないし。
そんなネガティブな思考は口にしたくなくて、ため息と共に飲み込んだ。
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