【R18】恋する天使は悪魔な彼を捕まえたい

ドゴイエちまき

文字の大きさ
上 下
5 / 25

5.★淫魔な彼と

しおりを挟む
 口移しのチェリーのあと、何が起きたのか咄嗟に理解は出来なかった。それでもアルコールと甘い果実の風味はしっかりと口内に残っている。 

 現況がわからない。
 藍音を置いて席を立ち、カウンターで支払いを終える彼を、ただ眺めることしか出来なかった。馴染みの店らしく笑顔でバーテンダーと話す姿は少し憎らしくもある。
 
(私には笑ってくれないくせに)
 
 なんて拗ねた感情が湧き上がるのはきっと仕方がない。
 
 じっと見ていると振り向いた彼に「何してんの」と手招きされたので、誘われるようふらふらと席を立った。
 それから隣に寄った藍音は手を引かれるまま、ホテルの一室へと辿り着いた。
 
 実は一夜の恋も、ラブホも初めての経験である。
 まず始めに目についたのは存在感のあるベッド。室内は白を基調としたシンプルな空間で、つるっとした質感の床は控えめに光を反射している。
 
 キョロキョロと物珍しく見渡していると、突然ふわりと腰を引き寄せられた。
 思っていたより高かったアルコールは意識こそはっきりさせているものの、足元がおぼつかない。
 
 ふらつく藍音をきわめて自然に抱き上げた彼は、癪なほど余裕を感じさせる手つきでベッドへ下ろした。
 これでも長く生きている身なので、それなりの経験は積んでいる。なのに、やたらとドキドキうるさい鼓動は初めての時を思い出す。
 
 店を出た時は確かに茶色に戻っていたのに、見下ろす瞳はいつの間にか赤く染まっていた。しかもさっきまでの不機嫌な顔から一転し、面白そうに細められている。
 
「よく考えたら天使の精気なんて貴重だもんな。腹減ってるし、どうせならじっくり味合わせてよ。好みじゃないけどあんた可愛いし」
 
 好みじゃないは余計だと思う。地味に傷付いた藍音が抗議しようとすると、頬にかかる亜麻色の髪をそっと払われた。
 その手があまりにも優しく、つい赤の瞳をぱちくりと眺めてしまった。
 しかし彼は特に何も言わず、ちゅっと軽快なキスがひとつ落とされる。
 
 反射的に閉じた瞼の向こう側で「へえ……」と何やら感心する声が聞こえ、間を置かずもう一度くちびるが重なった。
 
 それからは貪られるような、長いキスをしていたように思う。始まりは軽いキスだったのに、くまなく口内を這う舌は驚くほど深くまで侵入して、ついじたじたと暴れてしまったほどだ。
 
 執拗に舐めては舌を絡ませ、くちびるを噛んでは強く緩く吸い付く。しかも背中に回された器用な手はワンピースのファスナーを難なく下ろして、あっという間に脱がされてしまった。

 フロントホックも簡単にぱちりと外され、いつの間にかショーツ一枚で組み敷かれている。
 あまりにも自然過ぎて手際の良さにさえ気付かなかったほどだ。
 ちなみにシャツを脱ぎ捨てた彼の引き締まった体も、藍音を更に高揚させた。
 
 青年は時折り歯を立てながら丁寧に肌を舐めとる。じっくり味わうような愛撫は本当に食べられているようだ。獲物になったような感覚が藍音の劣情を余計に煽る。
 
「こんなに美味い精気、初めて食った。アイネ……だっけ。あんたの言う通り、病みつきになるかも」
 
 アイネ。彼が口に出したのは紛れもなく自分の名前だった。驚きの声を上げる前に、長い舌が胸の膨らみに沿ってゆっくり舐め上げていく。
 
 舌舐めずりする赤い舌も、長く綺麗な指も、信じられないくらい優しく体を這い回る。
 扇情的な光景を直視できない。ふとずらした視線の先、頭の上に丸く捻れたツノを認識した。藍音は思わず二度見してしまう。
 
 あまりにも衝撃的で、咄嗟に彼の頬を両手で包み込んだ。突然制止された青年は面白くなさそうに眉をしかめ、「何?」とだけ口にする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

処理中です...